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俺と不死鳥と異世界トリップ  作者: ネギ抜き
第1章 孤児院編
13/35

10 旅立ち

 フェイと出会ってから4ケ月が過ぎた。

 フェイと色々話した日の翌日にみんなにフェイを紹介した時はマリアさんがビックリし過ぎて気絶しそうになったのはいい思い出になっている。

 フェイの性格もありすぐに仲良くなり、今ではシュレに続く兄貴分的な存在になっている。。

 孤児院の中で変わった事と言えば、まず魔法の時間の他に武道の時間が加わった事だ。

 俺と情報を共有しているフェイが先生となり効率良く教えるようにしている。今は基礎を教えているため、マリアさん、シャロン、エリー、ケインには投げ技や関節技重視の柔術系を、アリス、シュレ、トビアス、ライオには打撃技重視に空手やムエタイを中心に教えている。 誰に何を教えるかは、フェイと綿密に話し合って決めている。

 4カ月も教えていると動きが様になってきたので練習に本格的な組み手を導入した。

 組み手をすると怪我人が必ず出るのでエリー達の治癒魔法の練習にもなっている。マリアさん以外が使える治癒魔法は擦り傷や軽い打撲や捻挫を治せる初級魔法『ヒール』だけ(マリアさんは中級で状態異常を治す『リカバー』や複数の人を同時に治す『使える)だが、今では骨のヒビや骨折と言った重傷レベルも治癒出来るようになった。

 俺は治癒魔法と相性が悪く、軽い『ヒール』しか使えないが、それとは別にフェイの炎を操って完全治癒が出来るようになっているので余り困っていない。

 俺の組み手相手はいつもフェイにしてもらっている。フェイは俺と同じかそれ以上の実力を持っていて、俺の知識から自己流の技を使ってくる。たまに、身長を変えてもらったりして色々な状況を試せるのでとても助かっている。

 魔法練習では、いつも俺の魔法補助をしてくれているフェイがマリアさんと一緒に教えるようになった。フェイの説明はマリアさんの説明よりも細かくて分かりやすく、たまにマリアさんが知らない技術や知識を言う事もあり、マリアさんがフェイに教えを乞う事もある。まさにフェイ様々って感じだ。


 授業面はこんな感じかな?

 生活面では、フェイが俺の世界の服を着ていた時にマナで作ったって言ってたのでやってみたら、出来ちゃいました!

 と言うことで、今の孤児院には俺の世界の物で溢れています。

 例えば、衣服類。

 今までは、マリアさんが町に行った時に、ギルドの報酬や菜園の野菜を売って出来たお金で買ってきた手触りの悪い安物の服を買って着まわしていた。

 そこで、元の世界の服や下着を作って渡したらそれはもう喜ばれた。手触りが良く、色も複数あり、機能性が高かった為だ。これくらいの品になるとどの国の上流階級でも持っていないんじゃないかって言われた位だ。

 もし孤児院の財政が悪くなったらこれを作って売れば恩返しになるな!

 てゆうか、この世界にブラジャーがなかったようで聞いてみたら服を着ていただけだったらしい。いわゆるノーブラだな。パンツも男物と女物の違いがあるのは貴族や王族だけで、特注品になるからとても高いそうだ。一般人は、別に穿かなくても気にならない程度の物だったそうだ。

 まさか、漫画やアニメのパンチラや露出シーンがこんな所で役立つとは思わなかったな……


 布団や毛布といった寝具も創った。

 孤児院の布団は薄い布を3枚敷いての雑魚寝でちゃんとした布団で寝たかったからだ。

 その寝心地の良さにみんな満足したらしく、最近はライオがその布団で昼寝する事が日課になっているようだった。

 寝る子は育つって言うし、ライオはきっと大きくなるんだろう。


 食事面では、俺が食事当番のときに彩花のお母さんに教えてもらった料理を作るようになった。もちろん、ここは異世界。どうしても材料が足りないものが出てきてしまうが、そこはフェイと一緒に考えて頑張って作りましたよ!! といっても、野菜や香辛料だけだけどね。お肉はどうしても作れなかったから近くで獲った肉で補った。別の肉でも十分喜んでくれたけど、牛肉が食べたいな……

 余った野菜等は近くの村で売りに出して孤児院の資金にしてもらっている。珍しい形で美味しい野菜と甘い果物、どの料理にも合う香辛料は村でも人気が高いらしく、商人から売らせてほしいと交渉に来るくらいになっている。そこはマリアさんに任せているがそこまでお金に困っていないらしいし当分はそう言うことはないだろうな。


 と、こんな感じの4か月だった。他にも色々あったんだけど、それは別の機会に話そうと思う。この4か月で分かったことは基本マナさえあれば何でも出来るってこと。こんな力を家族の前以外、特に権力者の前で使うとどうなるか分からないし人前では控えよう!




 シャロンがピースフルの学校に出発する前日、俺はフェイとシャロンとラージの森でキノコ狩りをしている。マリアさんに、送別会の準備をするからシャロンが気づかないようにしてと頼まれたのでキノコの種類を見分けられない事を理由にシャロンを連れ出した。

 すでに数時間が経過し、充分な量が採れたので俺の袋はパンパンに膨らんでいる。

「もうそろそろ戻っていいかな?」

 俺は戻っていいかの確認をフェイにする。

「うーん、もういいんじゃねぇか? 採れるだけ採ったしこれ以上は無理だろ」

「そうだな。シャロンに訝しまれてもダメだし戻ろうか。シャロ~ン、もうそろそろ戻ろうよ~!」

 話がまとまったので、少し離れてキノコを採っているシャロンに声をかける。

「分かりましたわ~!」

 声を聞いたシャロンはいつも通りの育ちのいい?口調で返事を返すと、置いていた袋を持ってこちらに歩いて来た。

「ベルもたくさ見つけたみたいですわね」

「これもシャロンが丁寧に教えてくれたおかげだよ。ありがとう」

「そんなことないですわ。それに、ベルには日頃お世話になってますもの。逆にこっちがお礼を言いたいくらいですわ」

「そういう事にしておくよ。それじゃあ戻ろうか」

 そう言って孤児院の方向に向かって歩き出した。

「そう言えば、シャロンって普段はそういう話し方だけど何でなの?」

「俺もそれは気になってたんだよ。シャロンって怒るとみんなと同じ感じになるのになんでなんだ?」

 俺とフェイが聞くとシャロンは苦笑いを浮かべながら答えてくれた。

「これは、ピースフルに言った時の為ですわ」

 俺とフェイは理解できなくて互いを見て首を傾げる。

 シャロンはそれを気にせずに続ける。

「ベルは私たちが何でピースフルの学校に入れるかは知ってますよね?」

「確か母さんの知り合いがピースフルの先生をやってるからじゃなかったっけ。でも入れるって言っても入学試験を受けられるだけでしょ?」

「それでも何か悪い事をしなければ合格が決まっている状態です。そして、その知り合いはお母様の師匠に当たる方です。これがどういう事か分かりますわね?」

「なるほどな。マリアの師匠がマリアを信頼して内定をあげてるのに、もし落ちたりしたらマリアの評価が一気に下がる可能性が高いな。それだけじゃない。マリア孤児院の名前も傷ついちまうな」

「その通りです。そして、それは学校に入ってからの生活でも続きます。その為の言葉使いですわ」

 凄いな…… 俺が5才の時にそんな事考えていなかったよ。テレビでヒーロータイム見て「変っ身!」とか言って遊んでたもんな。それに比べ、シャロンは考え方が大人だな。それだけ苦労してるってことなんだろうけどさ……

「俺、シャロンが姉さんで良かったよ。そこまで考えられるシャロンを心の底から尊敬する」

「俺もだ。シャロンは自分のことをもっと誇っていいぜ! それだけのことをしてるんだからな!」

「ありがとう。でも、フェイはともかくベルは1歳なんですから私より凄いと思いますよ?」

「本当はシャロンよりずっと年上なんだから自慢にならないって」

 俺達は、その後他愛もない話をしながら草と木に囲まれた道を歩いて行った。




 孤児院に戻った俺達を待っていたのは豪華な食事とみんなの騒がしい歓迎の声だった。

 集会広場に連れていかれた俺達が見たのは、「シャロン頑張ってきてね会」と氷で書かれているオブジェクトだった。その隣には、「フェイの家族になったお祝いの会」と「ベルが家族になって半年になったお祝いの会」と書かれたものが置いてある。

 シャロンの送別会をすると聞いていた俺とフェイは自分たちのものがあるのに驚愕して固まってしまった。

 その反応にみんなは満足だったらしく軽い足取りで自分の席に座って行く。テーブルには俺が教えた豪華な料理が乗っている。

 俺達も、マリアさんに誘導されて配置されたシャロンの隣の席に座る。

「それじゃあ、これからシャロンの送別会とベルの孤児院に来て半年記念とフェイの歓迎会を始めるわよ」

 マリアさんが開会のあいさつをしながら木製のコップを持ち、みんなもそれに続く。

「ベルとフェイに出会わせてくれた神と精霊に感謝を、シャロンのこれからに神と精霊の祝福があらん事を祈って……」

 全員が右手を胸に当てて目を瞑る。

「……………………それじゃあ準備は出来てる? 行くわよ、かんぱーい!」

「「「「「「「「「カンパーーーーーーイ!!」」」」」」」」」

 元気良く叫びながら持っているコップをぶつけて勢いよく飲み物を飲む。


 そこからは、雑談や食事といつもと変わらない雰囲気になった。


 お腹が膨れたころ、みんなが雑談している隙に俺はフェイに声をかけて部屋の外にでた。

「こんなところに連れ出してどうした?」

 まだ手に料理をもっているフェイが訪ねてくる。

「気づいてるか? 俺達だけシャロンに何もしてあげてないぞ!」

「ハッ! そうだ、なにもしてやってねえ! どうする!? 何かいい案はあるのか?!」

「落ち着け。確認だけど、フェイは俺の記憶を共有してるよな?」

「ああ。ダイキも俺の記憶を共有してるけど情報量が多すぎて意図的に止めてるけどな」

「ならこんなことしようと思ってるんだけど。ゴニョゴニョ……」

「ああ、大丈夫だ! でも、アレが足りないんじゃないか?」

「それは、マナで作って俺がやるからまかしておけ!」

「よし、じゃあ早速やるか!」

 バンッ

 俺達が勢いよくドアを開けるとみんなの視線が集まる。

「これから、俺たちがシャロンに歌を送ります!」

 俺はマナを集めて邪魔にならないところに白い鍵盤と四角い赤紫色のアップライト・ピアノと椅子を創りだした。

「ポーン、ポーン」

 椅子に座って鍵盤を押して音がずれてないことを確認し、フェイにアイコンタクトをする。

 みんなが、好奇の目でそれを見守る。

「それでは、俺の世界の曲を歌わせてもらいます!曲名は『旅立ちの日に』」

 ピアノから泣かせにかかる伴奏が流れて俺がテノール、バスを、フェイにソプラノのパートを歌ってもらった。あまり上手いとは言えなかったが、シャロンが涙を流しながら聞いてくれたのでそれに気づいたフェイと一緒に喜んだ。 

 

 俺達の歌で場が少ししんみりしてしまったが、すぐに騒がしくなり、残っていた料理を腹に入れていった。食べ終わった食器を片付けて一息するとシャロンの決意表明になった。

「私は明日ピースフルに出発します。といっても半年したら中間休みで帰ってくるつもりですけどね。まだ合格が決まったわけではありませんが、向こうに行ってもクラインの名に恥じない生活を送ることを誓います。わたしがいなくなってもアリスお姉さまがいるから大丈夫だと思う「まかせて!」けど、シュレとケインもみんなをしっかりまとめるのよ。「おう!」「はい!」 トビアスとライオもみんなの言う事をちゃんと聞くこと。「まかせて!」「わかった!」エリーは、アリスお姉さま達を助けてあげて。エリーは優しいからきっとできるはずよ。頑張って。「うん……グスっ、分かった」 ベルとフェイは、何も言わなくてもいいわね。お母様達をよろしくね。「わかった」「まかせときな!」 最後にお母様、私を拾ってくれてありがとうございました。お母様のおかげで大切な新しい家族が出来ましたし、こうやって学校に行くチャンスができました。私はこの感謝の気持ちをを一生忘れません…… 本当にありがとうございました」

 言い終わると、目から涙を流しながらマリアさんに抱きつくシャロン。マリアさんもシャロンの言葉に感激したらしく話の途中ですでに泣いていた。そこに、エリーやライオが抱きつき遅れてトビアスとケイン、シュレ、アリスが加わる。みんなももらい泣きしたみたいだ。

 すると、隣にいたフェイが目を赤くしながら小さくつぶやいた。

「こういうのも悪くないな……」

 フェイも今までは神獣として生きてきたためこういった経験がない。初めて家族と初めての気持ちに身をゆだねているみたいだ。

 俺もその光景に前の世界の家族達の事を思い出して涙ぐんでしまったが、それを隠すようにフェイに声をかけた。

「ほら、こんなところにいないで一緒に行こうぜ!」

「おう! そうだな!!」

 俺達は、マリアとシャロンを中心に出来た泣き笑いした輪の中に入って行った。

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