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俺と不死鳥と異世界トリップ  作者: ネギ抜き
第1章 孤児院編
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8 自惚れ

 難なくヘビラピを獲ったアリスと合流した俺は、一度狩猟した食料をマリアさんの所に持っていくことにした。

 氷漬けの鹿を魔法で持ってくる幼児というのがよほどシュールだったのか、合流した時はアリスに、孤児院に戻るとみんなに驚かれた。

 シャロンたちは、俺が教えた組手形式の練習をして暇つぶしをしていたようだ。

 シュレーダーたちの様子を聞くと、ヘビラピが3匹獲ったそうだ。子供2人で狩りをしているんだから相当すごいと思う。話を聞くとシュレーダーは魔法使わずに物音で獲物を探して狩りをしているらしい。シュレーダーみたいにいつも狩りに行っているからできる芸当だとアリスはあきれていたが、今度おれも挑戦してみようかな?

 獲ったモノを渡すとまた森に戻る俺とアリス。試したいことがあるし楽しみだな。



   ―――トビアスside―――




 おう! 俺はシュレ兄貴の弟のトビアスだ。

 一度穫ったヘビラピを置きに行った後にさっきよりも森の奥に来ている所だ。

 ベル達はまだ戻って来てなかったけど兄貴はヘビラピを3匹も穫ったんだぜ!

 凄かったんだぜ?

 俺にはよくわかんないんだけど、兄貴には獲物がどこら辺にいるかわかるみたいでいきなり弓を構えて撃ったと思ったら獲物を仕留めてるんだよ!!

 ベルのことをアリス姉が助けてるみたいだけどこんな事が兄貴が負けるはずがない!!

 それよりも、狩り勝負を始まった位から気になってたんだけど、兄貴はベルに対してそんなに怒ってないみたいなんだ。

 逆に、勝負してるのが嬉しいみたいに上機嫌なんだよ。

 今も、ベルが口ずさんでた音楽を鼻歌で歌いながら獲物探してるし、今は大丈夫そうだし、聞いてみようかな?

「兄貴、聞きたいことあるんだけどいい?」

 兄貴は鼻歌を止めてこっちに向き直って言ってみろ俺を促す。

「兄貴はベルが母さん達に悪い事してないの分かってて喧嘩売った?」 兄貴はニヤっと口元を上げた。

「当たり前だろ? あの家族大好きなベルがみんなが嫌がるような事するはずないじゃんか」

「じゃあ、なんで変な挑発までして勝負してるの? こんな事しなくても良かったんじゃ?」

「逆に聞くけど、トビアスはベルの俺達に対する態度どう思う?」

 兄貴に聞かれて考えてみる。

 俺の知っているベルは、何かと気が利いて、大人っぽい雰囲気が出ている。家族みんなの事を第一に考えていて、この前も俺が魔法の練習で分からない所があると教えてくれた。どっちが年上か分からないような奴だ。

 それを兄貴に言うと、ちょっと怒った顔になった。

「お前はそう考えてるのか。俺はハッキリ言ってベルは俺達にまだ距離を置いている気がするんだ。あの他人行儀な話し方がその証拠だ。ベルが自分の事を話してくれた時だけ砕けた話し方をしていたけど、今はまた戻っちまった。俺はもっと家族として普通に接して欲しいんだよ。他人行儀な話し方なんて認められない。だから一度正面からぶつかり合う必要があると思ったんだ。俺は母さんやシャロン姉みたいに賢くないからこれしか浮かばなかったんだよ」

 兄貴の話を聞いて俺はジーンと心に来てしまった。

 どれくらい来たかと言うと流石兄貴だ!これからも付いて行きますと思う位にジーンと来た!

 兄貴がここまで考えて動いてるんだ。俺ももっと頑張らないと!!

「兄貴! 絶対に勝ちましょうね!!」

「当たり前だろ? 俺を誰だと思ってるんだ? やるからには絶対に勝つ!」

 兄貴の考えを達成するためにももっと大きな獲物を捕まえないと!!

 俺はさっきよりも張りきって兄貴の後を追った。




   ---トビアスsideoutーーー




 

   ーーーマリアsideーーー




 ちょっとシュレーダー達が奥に入り過ぎかしら? 奥に行かれると木が邪魔で良く見えないから監視しにくいのだけど……

 私は、勝負の審判兼監視役のため天属性中級魔法『飛行』を使って、森の上空からシュレーダー達を見守っているわ。

 今のところ、シュレーダーがヘビラピ3匹、ベルがホーンディア一頭とヘビラピ2匹か。

 ベルのほうが先行してるわね。

 シュレーダーを見てると、あの子もいろいろ考えてるみたいね。

 トビアスとの話を盗み聞きさせてもらったけど、あそこまで考えているとは思っていなかったわ。

 子供の成長は親が考えている以上に早いと聞くけど実感させられたわ。

 この問題は、シュレーダに任せましょう。

 それにしても、ベルがホーンディアを仕留めた魔法。あれは、今までに見たことがない種類の魔法だったわね……

 身体が氷に包まれていたから水属性の魔法だと思うけど空間干渉型ではなかった。もし、空間干渉型なら外部のマナを使うから動きが活発になるし、そしたらホーンディアが気付かないはずはないもの。だとすると、体内で生成したマナを使った魔法しか考えられないけど方法が浮かばないわ。

 ああーモヤモヤする!!

 一魔法使いとして方法が知りたいけど、今聞きに行くわけにはいかないし……

 自分で言うのも変だけど、これでも国で上位の魔法使いだったのよ。たくさんの書物を読んで、多くの実践をこなして師匠≪せんせい≫にも勝てるくらいになったのに、まだ子供なのに私より魔法の扱いが上手いベルを見てると、妬みの気持ちがでないで、精進しなきゃと素直に認められるのだから不思議よね。とりあえずこの勝負が終わったらベルに聞いてみましょう。

 あら?

 考え込んでいたらシュレーダー達が見えなくなっちゃったわ。

 さっきの方向だと奥には進んだはずだから探して連れ戻さないといけないわね。

 まだそんなに進んでないと思うし、ここら辺は結界の対象外だから危険な動物と遭遇しちゃうかもしれないし早く見つけないと。

 私は、シュレーダー達が進んだであろう方向に向かって降下していった。




   ---マリアsideoutーーー




 次の獲物を探して森の中を歩き回る俺とアリス。最初のように簡単に獲物が見つからなくなり少し奥のほうまで来ている。深部に近づくにつれて木々の間隔が狭まって行動が制限され、自分の身長を簡単に超える木々から生えた葉が日光を遮り視界を悪くしている。

(前にテレビで見た富士の樹海にそっくりだな。そこらへんに骨でも落ちてるんじゃないのか?)

 流石に、今まで味わったことのない気味悪さに若干ビビりながら索敵魔法を展開している俺。

 後ろでは、物音に過敏に反応するアリスがいる。

「アリスねぇは狩りをする時にここまで来ないんですか?」

 少し気分を変えるために俺はアリスに話題を振ってみた。

「私は、お母さんに言われて結界の効果範囲の近くでしかしてなかったからここまで来るのは始めてよ」

 そうか…… だいぶ奥まで来たとは思ってたけどここは完全に結界の外なのか。それなら、アリスの警戒が異常に高いのもわかるな。

「でも、アリスねぇってお母さんと旅してましたよね? こんな所よりも危険な場所はたくさんありそうですし、修羅場にも慣れてそうですけど?」

「お母さんはギルドの依頼とか危険なことは1人でやってたから、私は基本留守番だったよ。野宿とかもしてたけどお母さんが周りに簡易結界を張ってたから危なくなかったし、私も全然弱かったから……」

「そうなんですか。だったら僕がアリスねぇを守りますよ」

「ありがとね。でも、守るのは私だよ。私はベルのお姉ちゃんなんだから!!」

 アリスは、周りの雰囲気に怯えながらも自分に活を入れて奮い立たせる。

 そんなアリスが健気過ぎてヤバい!! 妹がいたらこんなに可愛いのかな? 彩花はどっちかって言うとアリスやエリーみたいなタイプじゃなかったから凄い新鮮だ。

「分かりました。お願いしますねアリスお姉ちゃん!!」

 そう言うとアリスは嬉しそうな表情を見せた。

 やっぱり…、いいなぁ。

 はっ、これがいわゆる萌えなのか!?

 アリスから久しぶりの萌え分を回復させる俺であった。

 別にロリコンではないからな?

 小さい子を愛でたいだけだからな?

 勘違いするなよ?

 俺が一番好きなのは彩花だから浮気じゃないからな!




 そんな調子で20分ほど歩いていた。

 さっきまで元気だったアリスも偶に聞こえる鳥の鳴き声や足元に落ちてる動物の食い荒らされた死がいを見てシュンと身体を縮めている。

 あまりにも視界が悪いので魔法で木を吹き飛ばそうかとも考えたけど、レッドベアーやブルウォルフに気付かれると大変なので我慢している。

 もちろん、索敵魔法もマナがあふれないように注意して使っている。今は抑える事に慣れてきたので範囲をさっきの倍にしている。

 先ほどまでと違いシュレーダー達とマリアさんの反応があったのでおちらに進路を変えて森の中を進んでいる。反応の動きをみるとシュレーダー達が俺達よりも奥に進んでいてマリアさんがそれを追っているようで、俺達はマリアさんに一度合流しようと移動している最中である。

 すると、マリアさんの移動速度がいきなり早くなった。それと同時に、シュレーダー達がいる場所のほうから獣の遠吠えが聞こえた。何かあったと考え急ぐ俺とアリス。 

 少し近づくと今までと違う反応が8つシュレーダー達の近くにいるのが分かった。さっきの遠吠えを考えると十中八九ブルウォルフだろう。

 多分、シュレーダー達がブルウォルフ達の領域に入ってしまったのだ。索敵魔法を使っていればそれを避けられただろうが、シュレーダーは気配や音で獲物を見つけるって言ってたから仕方がないんだろうな。マリアさんはブルウォルフの反応にいち早く気がついたから速度を上げたようだ。俺達が行っても邪魔になるかもしれないが、シュレーダー達を守りながら8頭の相手は厳しいだろう。

 マリアさん達に近づくにつれて次第に戦闘音が聞こえてきた。反応を見ていると、マリアさんが合流して2人でトビアスをかばいながら戦っている。敵の数はまだ減っていないところをみると苦戦しているようだ。

「母さん!! シュレーダー!! トビアス!! ッッッ、『炎弾』!!!」

 3人の名前をを呼びながら囲んでいるうちの1頭に、移動中に作っていた指先大の青い弾を撃つ。銃で打ち出したのと同じスピードで飛んでくる弾に、不意打ちで後ろからの攻撃に反応出来る訳もなくそいつの背中に着弾。青い炎がソイツの内外を燃やし尽くし、仲間はそれを見ている事しか出来ない。

 炎が燃え尽きると炭になった死体と肉が焦げた匂いが辺りに広がっている。

 俺はそのままマリアさん達に合流し数秒遅れてアリスも到着。

 ブルウォルフ達は、仲間がやられた事で警戒しながら距離を置いた。

 ブルウォルフ達を牽制しながら3人を確認する。

 マリアさんとシュレーダーは少し息を切らしている程度だったが、トビアスは2人の間で左脇腹から血を流して呻きながら横になっている。

 見た所ブルウォルフの一頭に噛まれたようで深い傷のようだ。アリスが急いで治癒魔法をかけ始める。

 俺は急いで2人にトビアスの容態を確認した

「トビアスは大丈夫なんですか?!」

「私が見た限りじゃ内臓にまで達しているわ。すぐにでも直してあげたいんだけど私たちの治癒魔法じゃ止血まではできても傷を治す事が出来ないの」

「すまねぇ。木の影に隠れていて対応出来なかった…… 兄貴失格だ」

 2人は、いつもよりトーンを落として答えた。

 俺は、その態度に苛立ち素の口調で怒鳴ってしまう。

「シュレーダーはそういうの後で言え!! トビアスは後どれくらい持ちますか?!」

「私見だけど、このままだと長くて十分が限界だと思うわ。私も隙を見て治癒魔法をかけてみたけど私の腕では表面は直せても内部の傷までは治せないわ」

 マリアさんは自分の不甲斐なさに顔をしかませながら言う。

「どうしよぅ…… 血が全然止まらないよぅ………」

 アリスが目から涙を流しながら治癒魔法を続ける。

 この傷では、治癒が得意なエリーにも治せないだろう。

 どうする!?

 どうすればトビアスは助かる!?

 マリアさんは治癒魔法が得意ではないと言っていたし、残り十数分でブルウォルフ達を倒して、傷を治すにはどうすればいい?

 こんな時に彩花がいれば……

 いや、ないもの強請りしても仕方ないな。 と言うか考えなくてもいいじゃないか!

 俺が、速攻でコイツらを始末して、トビアスに治癒魔法をかければいいだけだ!!

 俺の身体マナで真っ赤に輝きだす。マリアさん達はあまりの眩しさに目を瞑る。ブルウォルフ達も規格外のマナの多さにジリジリと後ずさりをしてしまう。

「マリアさん達は一歩も動かないでくださいね!」

(イメージは炎の槍。それを俺達を中心に全方位展開。動きを封じるために鎖を巻き付ける。時間がない…… この一撃で終わらせる!!)

 俺から放たれた光が21本の槍になりブルウォルフ達に槍先を向ける。同時にブルウォルフ達の脚や身体に赤い鎖がキツく絡みついて動きを封じる。

「悪いがさっさと終わらせる!!」

「『炎宙刺突』」

 宙に浮かんだ赤い槍がブルウォルフ達の頭部、喉元、胸に吸い込まれる。重要器官の3箇所に刺さった槍がブルウォルフ達の命の源を燃やし尽くす。残ったのは狼だったタンパク質の塊だけ。

 辺りを見回し、脅威が無くなった事を確認すると最大の問題に意識を切り替える。

 トビアスはアリスが変わらず止血を試みているが未だに止まっていない。顔が紫色に近い状態で息も弱くなってきている。 残りは数分という所だろう。

 俺は、アリスをどかしトビアスの傷口に手を置き治癒魔法をかける。

 水属性の魔法は何故か相性が悪く、あまり効果が出ないが有りっ丈のマナを治癒魔法に使えばきっと完治すると考えてた。



 しかし、現実はそんなに甘くないようだ……

 マナを注ぎ込んでも魔法に変換出来ておらず効果が出ない。俺の横ではマリアさんとアリスが目に涙を浮かべながら治癒魔法をかけ続けている。シュレーダーは、手をトビアスの傷口に当てて必死に止血しようとしている。

 そうだよな……

 そう上手くいくはずないんだよな……

 こっちに来てから普通じゃできないことができていたから知らないうちに何でもできるって調子に乗ってたんだろうな。

 でも、今はダメだ!

 絶対に成功させないと俺の家族が死んでしまう!

 まだだ!

 まだ何かが方法があるはずなんだ!!

 マナがただ漏れの治癒魔法をしながら方法はないかと思考を巡らせる。

 しかし、どんなに考えてもいい方法が見つからない。

 トビアスの血が止まることなく地面を赤く染め上げていてもう失血によるショック症状が出てもおかしくない……



 目を瞑って、いるかも分からない神様に祈る……



 どうかトビアスを助けてください、と…………



 すると、突然俺の右手の腕輪が光り出し、俺達の前に紅翼の鳥が姿を現れた。

 その紅鳥は成人男性より少し高い位の体長から生えた大きい翼をはためかせてその願い叶えようと言っているかのように「ケー」っと鳴いた。 

 紅鳥は黄色い嘴を開けて炎を俺達に向かって炎を出した。

 俺達はまるで金縛りにあったかのように身動きがとれず視界を炎に覆われ何をされているのか分からなくなった。

 数秒後、炎が消えると全ての傷が癒えた俺達と紅鳥が存在していた。

 正気に戻った俺は急いでトビアスを見る。

 トビアスの顔色は赤みが戻っており、俺達が治癒魔法をかけても治らなかった傷が消えている。今は、眠っているようで静かに寝息を立てている。

 とりあえず、この紅鳥がトビアスを救ってくれたと考える事にした俺は感謝の意味を込めて90°に腰を曲げる。

 他の人も、正気に戻り俺に習って頭を下げる。

 紅鳥はまた「ケー」っと一鳴きすると身体が光に変わって、姿を消した。

 それを確認すると、まだ何が起こったか分からない顔をしているマリアさんにこれからの事を尋ねる。

「今はトビアスも大丈夫みたいだし荷物をまとめて孤児院に帰りましょう」

 俺とアリスで持ってきた装備を持ち、シュレーダーがトビアスをおんぶすると、マリアさんが『飛行』を発動し孤児院に帰った。



 トビアスが助かって良かったけど、あの紅い鳥は何なんだろう?

 あの鳥が出現した時に腕輪が反応していたし、一息ついたら考えてみよう。

 とりあえず、今回のことで自分の思い上がりに気付けたし、終わりよければすべて良しかな?

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