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俺と不死鳥と異世界トリップ  作者: ネギ抜き
第1章 孤児院編
10/35

7 狩猟 修正

 孤児院を囲んでいるラージの森は比較的魔物が少なく、野生の動物が多く生息している比較的危険度の低い場所である。

 危険な動物といっても2メートルを超える体格と赤い毛皮が特徴の大型肉食動物のレッドベアや基本的に3、4匹で行動する中型のブルウォルフ位だろう。

孤児院には、マリアが作った動物除けの結界が張ってあり、狩りをする際には少し遠出をしなければならないという不便さはあるものの、子供たちが安全に生活できる要因の一つでもある。

あとは、毒草と稀に他の地域からやってきた魔物に気をつければ十分に暮らしていける場所である。

 現在、ダイキとアリスはシュレーダーとの勝負のため、ラージの森に入って狩りをしている。



♦♦♦




 事は、約一時間前に遡る。


「ベルっ!! 俺と勝負しろ!!」


「……はぁー、分かった。

その勝負受けるよ!」


 いつもの遊具場は、ダイキとダイキを睨みつけてくるシュレーダーで殺伐とした空気になっている。


 発端は、ダイキがシャロンとエリーに体術を教えていた所に、見守っていたアリスとケインとマリアが「自分たちにも教えてほしい」と頭を下げてきた所に、何も知らないシュレーダーたちが現れ、ダイキに頭を下げているマリアさん達を見て何か勘違いをしたらしく勝負を挑んできた。

 話術で回避する事も出来たがシュレーダーの性格上それでは納得しないと考えた俺がその勝負を受けた結果こんな状況になった。


「シュレーダーは一度落ち着いて私の話を話を聞きなさい!

 ベルも話がややこしくなるから受けないで」

 すかさずマリアさんが仲裁に入ってきた。


「そうだよ、ベルはわるいことはしてないんだからうけることないよ!」


「シュレ兄さんも、ぼくたちのはなしをきいてください!」


 この状況を何とか収めるべくアリスとケインもマリアに続く。

しかしダイキ達は聞く耳を持たなずに挑発しあう。


「勝負って言っても何をするんだ?

 殴り合い?

 そしたら僕の勝ちは決まってるね?」


 鼻で笑いながらバカにする言うダイキ。


「だれがリュウジンのおるにかつって?

 そんなちいさいからだでおれにとどくのか?」


 シュレーダーも挑発を挑発で返す。


(20過ぎが4歳児と口喧嘩なんて恥ずかしいな…

 彩花にこんなところ見せたら何言われるか……)


 口論しつつも冷静なダイキが今の状況について考えていると、マリアがお互いに火花を散らしている姿を見て諦めたらしく提案をしてきた。


「勝負するにしても、納得行く手段でやらないとダメよ!

 殴り合いは絶対にダメ!

 その他の場合でも、家族みんなが納得出来る方法にしなさい!」


(殴り合いはダメで家族が納得するやり方か……

 要するに怪我をしないやり方にしろと?)


ダイキが いい案がないか考えていると、反対側にいたシュレーダーがこれしかないだろと言わんばかりのドヤ顔でお題を出した。


「やるのはかりしょうぶだ!」


(ふむ…… 狩りか。俺一回も狩りした事ないんだけど、能力差を考えるとそれで五分五分かな?)


 確かにいいかもなんて考えていると、アリスが猛反対しだした。


「そんなのダメに決まってるでしょ!!

 ベルはまだ数える位しか狩りに行ったことないんだよ!?

 シュレーダーが有利すぎるよ!!」


 アリスに続きマリアも苦言を示す。


「確かにそれは平等じゃないわね…

 やるなら一回で納得できるようにしないと…」


「俺はいいよ?

 何回かやってるからどんなものかは分かってるし」


「でもねぇ………」


 マリアは納得できないようで他に何か良いアイディアがないか考えている。


「そしたら、各自相方を1人付けるのはどう?

 経験の差も相方がいれば教えてもらえるし、平等だと思うんだけど?」


「おれはそれでもいいぜ!

 おれのあいかたにはトビアスをつれていくぜ!!

 トビアスもそれでいいな?」


「いいよ!!」


 マリアたちが返事する前にシュレーダーが自分の相方を決めてしまう。

 当事者たちがいいと言っているので何も言えなくなったようで反論はないようだ。


(そしたら、相方を決めないとな)


 ダイキは、子供達に視線をやる。


(まずは、母さんは審判になるだろうし相方にしても逆にこっちが有利になっちゃうから却下。

 エリーは、狩りのような肉体労働は苦手だし、荒事にも慣れてないから同じく却下。

 ライオットは、相方にしてもいいけど不測の事態が起こったときに危険だから却下。

 となると、残りはアリスかケインかシャロンの3人か。

 うーん……正直誰でもいいかな)


 誰にするか悩んでいるとアリスが自分が相方をすると立候補した。


「私ならシュレーダーと同じかそれ以上の経験があるし、何かあったときでもベルを守れるから私がやるわ!」


 アリスがやる気に満ちた声で言う。

 他の二人もそれでいいようだ。

 マリアもそれで同意したので、ダイキの相方はアリスに決定した。


「勝負のルールだけど、大きさじゃなく数と種類で判定しましょう。

 そのほうが、夕食も豪華になるだろうしね。

 時間は私が魔法で合図するまでよ」


 そう言ってマリアがルールを決めた。


「俺はそれでいいよ」


「俺もそれでいいぜ」


「後は、注意事項ね。

 狩りはあまり孤児院から離れすぎないこと。

 めったにないけど、レッドベアやブルウォルフや魔物を見かけたらすぐに逃げる事!

 それ以外でも、命の危険を感じた瞬間に助けを呼ぶこと!

 後は、アリスにだけど、ベルは初めての狩りだから基本から教えてあげる事!

 私が教えてもいいんだけどアリスもお姉さんなんだからしっかりした所も見せないとね。

 万が一に備えて私は空から4人を監視しているからずるをしちゃダメよ。

 シャロン達ライオの面倒を見てあげてね」


 マリアの言葉に全員が了承の返事をした。


「じゃあ、4人は準備してらっしゃい。

 準備ができたら始めるわよ」


 マリアさんがそういうと俺たちは狩りの準備のために孤児院に向かった。




   ♦♦♦



 孤児院の女部屋、狩りで使う道具を取りに来ていたアリスはむりやり理不尽な勝負をダイキに挑んだ

 シュレーダーに憤慨していた。


(まったくもう!!

 シュレったら大人げなさすぎよ!

 確かにあの場面は勘違いしちゃうかもしれないけど…………

 だけど、理由も話してくれて仲直りしたっていうのに、話も聞かないで喧嘩ふっかけるなんてっ!

 しかも狩り勝負ってなによ!?

 自分の得意な事で勝負しようなんて!

 ……いや、ただ単に思いつかなかっただけかもすれないかな~

 ともかく、ベルはシュレーダーなんかに負けさせないんだから!)


 アリスは自分の道具を手に持つと無意識に握っていた手により力を込めるのだった。




   ♦♦♦



 アリスがシュレーダーを目の敵にしながら、狩りで使う弓を準備している。

 アリスの弓は、自分で作ったらしく、成長途中の身体に合わせた小さめの物だ。

 弓本体と矢は森の木を加工して作り、弦は村で買った伸縮性のある糸を束ねているようだ。

 シュレーダーのも弓矢も同じ物らしく今は矢筒にいれて肩にかけている。

 相方のトビアスは、補助に徹するようで狩った動物を持ち運ぶ布の袋の準備をしている。

 今回は、警戒が強い動物を目標にするため遠距離から仕留める弓を主流で使うようだ。

 ダイキは、弓の扱いがあまり上手くないため、魔法と投擲で狩りをする事になった。

 アリスの話だと野生の動物はマナの動きに敏感らしく、魔法を使おうとするとすぐに逃げてしまうらしい。

 やってみないと分からないが、色々工夫する必要があるようだ。

 俺はトビアスと同じ袋と腰に刃渡り10cm位のナイフを持っている。アリスが基本弓で攻撃するため両手を使わなくてもいい俺が狩った動物を持つ事になった。


(やる気といい、装備といいこれじゃあどっちが相方なのか分からないな……)


 ダイキは、相変わらずシュレーダーに鋭い視線を送りながら張り切って準備してるアリスをみて苦笑してしまった。



    ♦♦♦




 そして、話頭に戻る。

 森に入ってから約20分が経過している

 最初は森に入ってすぐの場所を探していたが、1匹も見つからなかったため今はポイントを変えている所だ。

 ダイキが前衛、アリスが後衛のポジションで狩りをおこなっており、ダイキが獲物を探し、アリスが狙うという役割になっている。

 ダイキは、その獲物を探すために索敵魔法を展開している。

 この魔法は自分の半径500mの生物が解るものでレーダーをイメージして作った。

 野生動物はマナの動きに敏感らしいのでマナを出来るだけ身体の中に抑えて使っているため、多分気づかれないと思われる。

 その分範囲もせまいというデメリットもあるのだが。

 そのまま歩いていると、3時の方向に小動物の反応が出た。

 周りの木がブラインドになっているためまだ目視では確認出来ないが間違いない。


「アリスねぇ、あっちに動物の反応がある。

 多分ヘビラピだと思うよ。

 距離は約500」


 ダイキは、アリスに反応の方向に指を指しながら報告する。


「あっちにいるのね?

 ベルの索敵魔法は凄いね。方向じゃなくて距離まで分かるんだ?」


 極力音を出さないようにしながら反応した方向に向かいながらアリスが小声で話し掛けてきた。


「偶々イメージし易いものが前の世界にあっただけだよ。

 後300。

 移動はしてないみたい」


「分かった。

 それでも、使えるんだからベルは凄いよ。私は頑張っても200mが限界だもん……」


「後で見てみる?」


「いいの?

 創るのって疲れるんでしょ?」


「創れるかは分かんないけど、もし出来たらどんなものかも教えるよ。

 後200」


「私のにも反応あったよ。それじゃあお願いしようかな?

 ……ベルは優しいね」


 アリスは、ダイキに聞こえるかどうかな小声でお礼を言うとと担いでいた弓矢を手に取った。

 ダイキは何を言われたのかはあまり聞き取れなかったものの、お礼を言われたと解釈した。


 そのまま近づいていくと、残り170mの所で草を食べている約30cmのヘビラピが見えた。

 向こうはまだこちらに気づいていないようで地面に生えている雑草をムシャムシャと食べ続けている。

 アリスは獲物が動かないことを確認すると矢をつがえて弦を引き狙いを定める。

 その状態で止まること約3秒。

 打ち気を抑えて自然体になっているアリスの指が矢を離した。

 限界まで引かれた弦から射出された矢は獲物まで真っ直ぐに飛んでいき右後ろ足に刺さった。

 キーと甲高い鳴き声が聞こえると同時にダイキは急いで獲物に向かう。

 足に矢が刺さって動けなくなったヘビラピはその場で鳴くだけになっていた。

 ダイキは、これから命を奪う事を心の中で謝りながら腰に差したナイフを抜きヘビラピの首にストンと落とした。

 首を切られたヘビラピは血が噴出し少しの間痙攣していたがすぐに動かなくなった。

 ダイキは再びナイフを腰に差すと、自分が奪った命に目を瞑って手を合わせた。

 すると、後ろから追いついたアリスがダイキに声をかけてくる。


「それが、ベルの世界での狩りの作法?」


「作法って訳じゃないですけど……手を合わせたい気分だっただけだよ」


 目を開けると、腐らないように魔法で死体の周りを氷で覆って袋に入れる。


「ベルってこういう時に凍らせるけど、何で?」


 アリスが立ち上がったダイキに質問してきた。


「死体が腐るのを遅くする為だよ。

 奪った命を無駄にしてはいけないからね。

 凍らせることで少しでも新鮮な状態で食べられるようにしてるんだよ」


 といっても、ダイキの冷凍はただ単に身体の外から氷で包んでいるだけで現代のいわゆる細胞単位での冷凍技術ではなかったので意味があるのかは分からないのだが……


「へぇ~」


 アリスは、ダイキの説明を完全に理解したわけではないものの、良いことという事は分かったようでなる程と首を縦に振る。

 そのまま次の獲物を探して歩いていると次の獲物を発見した。

 2時の方向にヘビラピ、10時の方向にヘビラピよりも少し大きい反応があった。


「ちょっと気になる反応があるから様子を見てくるよ。アリスねえは、ここから向かって斜め右500m位にヘビラピが1匹いるみたいだからそっちをお願いできる?」


「それなら私が見てくるよ?」


「中型の反応だし、気になっただけだから大丈夫だよ」


「分かった。

 気をつけてね」


 ちょっと納得がいかないようだがアリスの了承を得ると小走りで反応の方向へ向かう。

 残り250mというところで鹿みたいな動物を見つけた。

 みたいなというのは毛並みは黄色で、角が3本生えていて、尻尾が2本になっていたからだ。

 はぐれブルウォルフかと思って警戒していたダイキだったが、これなら大丈夫そうだと不安が解消されそのまま狩りに移る。

 ダイキは、照準がずれないように射線が開いた場所に体育座りして膝の上に手を置くと、身体の中からマナを作り身体強化魔法の応用、視力強化を使って右手をピストルの形にしてイエディア(仮)に向ける。


(イメージは蒼い弾丸、着弾と同時に氷が展開して身体を氷で固める)


 指先に水球とは違う直径2cm程の蒼い玉が生まれる。

 相手はこちらに気付いていないようでゆっくりと歩いている。

 相手が動く先を読んで狙いをつける。

 手が動かないように膝で固定しいつでも打てるようにする。

 そしてイメージと獲物の動きが重なった瞬間に玉を発射した。

 無音で発射された蒼玉は一瞬でイエディアの左腹部に着弾し、次の瞬間氷の塊に包まれた。

 ダイキは今できた氷の塊に近づき、成功しているかどうか確認する。


(上手くいったみたいだな。

 玉のスピードは思ったより速かったけど狙った所に当たったしまずはオッケーか。

 後は、電気の玉でも使って試してみるか)


ダイキは、次は何を試そうか考えながら自分より大きいイエディアを風の魔法で浮かせて、ヘビラピを獲ったであろうアリスの元へ小走りで向かった。







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