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1 日常

 梅雨が明けて、地球温暖化の影響で例年よりも蒸し暑い日が続いているある日。

 東北地方にある真新しい一軒家の一室に二人の大学生が、一人は床に、もう一人はベッドの上に倒れている。


「うあぁ~~」

呻き声をあげながら床にうつ伏せに倒れている男性は、この現在、この部屋の主である浅沼大貴だ。

 大貴は、現在大学3年生で彩花とは同い年だ。趣味は、スポーツ観戦と読書。読書は主に、漫画(バトル、スポーツ物)とライトノベルをよく読む。特技は、読んで得た知識や動きを実際にやって出来るものは身につける事が特技である。これは、小さい頃にもう1人の幼馴染みであると色々研究もとい習い事で学んでいた時に、漫画やアニメで描かれていたカッコいい技を使ってみたいと思い始めた事だった。当時、史上最強の師匠達の弟子になる漫画であった、掌底が防がれた時の方法をお互いにやって首がムチ打ちみたいになったのは今やいい思い出だ。現在も、その時の喜びを忘れられず、偶に面白そうな技があると練習したりしている。こんな感じの技なのかな?という物はいくつかあるが、自分ではわからないため確認のしようがないのが現状である。

特技は、小学生から始めた野球と料理だ。

 座右の銘は「七転八起」で、何事もあきらめなければ結果に結びつくという感じが好きだからという事だ。


「あっ、暑い~、暑いよぉ……」

 ベッドに大の字で寝転がっている女性は、この家の主の息子の彼女であり、幼なじみでもある阿部彩花だ。

 彼女を一言で表すなら天真爛漫だろう。

 身長は150cmを超えた位で、背中まで伸ばした綺麗な黒髪が、整った顔と健康的なボディラインを引き立てていて、今はその髪を後ろで結んでおりポニーテールの状態になっている。人柄も良く男女問わずどこに行っても人気者になってしまうカリスマ性も持っている。

 ともかく勘が良く、必要に応じて対応できる応用力とそれを決める決断力の高さは彼氏も羨ましいと思う時さえある。

 趣味は、音楽鑑賞と料理で特に料理は彼女の母が調理師免許と栄養士の資格を持っていて料理に関しては手を抜かない人だった影響があり、趣味というより特技といった方がいいのかもしれない。

特技は、料理の他にもテニスを中学、高校と部活動でやっており、高校では持ち前の勘と決断力に加え、幼なじみ達とのトレーニングの成果もあり全国大会に出場するほどの実力を持っている。

 彼女の座右の銘は「進取果敢」だ。中学生の時に辞書をひらいている時に見つけた言葉で、自分の考えにピッタリだと言う事らしい。実際、その通りなのだが……


 大貴と彩花の関係は小学校にまで遡る。父親が消防士だったのだが、仕事の関係で関東から東北に異動になり引っ越してきたのが丁度その頃。

右も左も分からない浅沼家が、息子の入学式に行く途中でちょうど近所に住んでいた阿部家に出会い、世間話をしているうちに親達が意気投合してその影響でよく遊ぶようになった。

 中学校は地区が違う関係で別々の学校になったが家族ぐるみの付き合いは続いていた。

その頃は、彩花と同じ頃に出会ったもう1人の幼馴染みで親友でもある前田裕貴の家族も加え、毎月一回は食事会を開き近況報告的な事をしていた。

 2人が付き合い始めたのは高校3年の夏だった。2人がお互いに異性として意識し始めたのは中学1年の時に、今まで兄妹同前に意識していた大貴達が別々の学校に行くようになってからだ。周りと比べて身体の成長が遅かった彩花は、この頃から身体が丸みを帯びてきたりと女性らしさがが出始める。だが、お互いに部活動があり、大貴は野球、彩花がテニスに力を入れていたためお互いに色恋沙汰をしている余裕がなくそのまま高校生にまで行く。

高校生になって同じ学校になった2人だが、相変わらず部活に勤しむ毎日。だが、日頃から彩花への気持ちが強くなっていった大貴が、高3の夏の県大会で優勝した日の夜に勢いで彩花に自分の気持ちを伝えた。

 告白した当初は、彩花も全国大会へのキップを手に入れたばかりだった事や、いきなりされた事の驚きもあり、その場での返事は保留と言う事になった。その時大貴は、振られたと思い込み情緒不安定になっていたが、大阪に向かう前日に直接了承の返事を受け付き合う事になった。大貴が告白してから一週間後の事だったが、大貴は人生の中で一番長く感じた一週間だったが、それは、彩花にも同じだったらしい。廊下とかであってもお互いに見て見ぬ振りで、クラスでも必要最低限の会話しかせず、目も合わなかった。遂には、裕貴をはじめにクラスメイトや友人達にも心配されてしまった。

 返事が返ってきたとき彩花は泣きながら、「だってお兄ちゃんだと思ってた人にいきなり告白されたんだよ? 頭混乱しちゃうし、顔見ると恥ずかしくて何も考えられなかったの!!」と言っていた。

 それから、付き合い始めた2人。進路を決める時には、大貴は、身体能力の高さなどから大学や社会人からスカウトが、彩花には、その容姿と実力などからモデルやテニスプレーヤーとして色々注目されていたが、二人で話し合った結果、そう言ったプロの舞台に興味が無かったため東北にある国立大学に行く事になった。幸い成績がどちらも良かった事と、大貴が以前住んでいた家が使えると言う事から問題なく進路が決まった。しかし、受験勉強で忙しく、余り2人で遊べなかった分、大学に行くようになってからは、それまでの時間を取り戻すかのように、もちろん勉学を影響が出ない程度に2人の時間を大切にするようになった。その、あまりのくっつき具合に大学の友人達からは「卒業したらすぐに結婚だな。」って冷やかされている。実際は、本人達は人前だという事で遠慮している部分もあったのだが、幼馴染みということで他の人よりも距離感が近かったのだろう。

 と、まあ2人の話はこれ位にしておこう。今は大学に入って3回目の長い長い夏休み中である。




「もう我慢出来ない!! 日本はいつから砂漠みたいに暑くなったの!? ダイ君涼しい北の国に移住しよう!!」

 額から汗を流しながら彩花はムチャクチャな事を言い出す。

「それで涼しい国行って寒くなったらあったかい国行こうって言い出すんだろ?」

 大貴は、その言葉に苦笑いを浮かべながらダメ出ししてやると頬を膨らまして唸りだした。

そんな彩花の姿を見て和んでいると、彩花は腕を組んで何かを考え始める。

数秒程そのまま考えていたがいきなり、「じゃあ水着買って海に行こう!」と言い立ち上がった。

 大貴は、彩花の言葉を一瞬理解出来ずにいたが、彩花はその間に膳は急げと大貴の手を引っ張って部屋の外に歩きだす。

 しかし今の時刻はいわゆる午後3おやつのじかんだ。

 水着を買いに行くために近くのアウトレットモールに向かっても、クルマで20分。そこから海に向かったら、到着する頃には真っ暗で遊んでいる時間はない。もちろん第一目標は涼しい場所に行く事だが、どうせ行くなら2人で海で遊びたいと考える大貴。大貴は、ここで止めようとするときっとゴネるんだろうなぁ、と考えながら彩花に進言する。

「ストップ、ストーップ!! 今日は遅いから水着買いに行くだけにして、海は明日にしよう?」

「ええ~ やだやだ~!」

 彩花は、大貴の予想通りに首を横に振ってゴネだす。

大貴は、そんな姿をみて、精神年齢何歳だよ!?、と考える反面その仕草に可愛いと心の中で思う大貴。

「じゃあどうすればいいんだ?」

「うーん、ダイ君が水着選んで買ってくれたらきっと機嫌よくなるよ?」

 そう言って潤んだ目でこっちを見てくる彩花の究極武器アルティメットウェポン、上目遣いが炸裂する。

この攻撃は、彩花が自分の願いを通したい時に必ずと言っていい程使ってくるもので大貴は一度も破った事がなかった。

そして、それは今回も変わらなかった。

大貴は一度息を吐いてから答えた。

「分かったよ。今回だけだかんな。」

 自分の意見が通ると分かると彩花はニヤッと笑った。

 その後、俺と彩花は水着を買いに愛車に乗ってアウトレットモールに向かう。

気分の上がった彩花は、モールに着くとすぐに目的の店にいき色んな水着を試着しては大貴に見せてきた。それが約1時間程続き、最終的には大貴の反応が一番良かった青のビキニを買った彩花。八千円という予想外の出費をしたものの、彩花の満足気な姿をみて大貴は表情を揺るました。



 日が落ちるまで買い物を続けた二人は、夕食を食べた後――もちろん大貴が会計した――明日の時間を決めてから帰宅した。




 

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