↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR

一発ネタ

婚約者が“10股”かけてた! ~ハーレムとか言ってるけど、普通に気持ち悪いから婚約破棄します~

作者: 涙目
掲載日:2026/09/12

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。


「ねえ、知ってる? エドワード様、また女の子と一緒にいたらしいわよ」


「また?」


「ええ。今度は男爵令嬢ですって」


学園の昼休み。


そんな噂話が、私の耳にも入ってきた。


「そう」


私は紅茶を一口飲む。


婚約者――エドワード・フォン・グランツ伯爵令息。


確かに、彼は女性との距離が近い。


誰にでも優しく、よく笑い、女性から相談を持ちかけられれば親身になって話を聞く。


そのせいか、女性関係の噂は絶えなかった。


「婚約者がいるのに、よくやるわよね」


「本当に。リリアーヌ様も大変ね」


「……まあ」


私は肩をすくめた。


正直に言えば、面白くはない。


けれど、私たちはまだ学生だ。


卒業後の正式な結婚まで時間はある。


それに、私との婚約を破棄するような明確な行動を取ったわけでもない。


多少の遊びくらいなら。


そう思っていた。


……実際に、その現場を見るまでは。


---


ある日の放課後。


私は図書室へ向かう途中、中庭を通った。


そこで、エドワードを見つけた。


「エドワード様……」


彼は一人の令嬢と向かい合っていた。


距離が近い。


あまりにも近い。


「君だけだよ」


「本当ですか?」


「ああ。僕がこんなことを言うのは、君だけだ」


……なるほど。


私は足を止めた。


しばらく眺めていると、令嬢がエドワードの腕に手を絡める。


彼も嫌がる様子はない。


私はため息をついた。


「……学生の間だけ、ですわよ」


そう呟いて、その場を離れた。


私は寛容な婚約者だった。


少なくとも、そのつもりだった。


---


数日後。


エドワードから呼び出された私は、学園の応接室にいた。


「リリアーヌ。今日は君に話しておきたいことがある」


「何でしょう?」


妙に嬉しそうだ。


嫌な予感がした。


「僕には、愛する女性がいる」


「……そうですか」


「一人じゃない」


「…………」


私は黙って彼を見た。


「二人でもない」


「…………」


「三人でもない」


嫌な予感が、どんどん膨らんでいく。


「十人だ」


「…………十人?」


「そう!」


エドワードは胸を張った。


「僕は十人の女性と愛し合っている!」


私は、言葉を失った。


十人。


十人。


……十人?


「最初は僕も悩んだんだ」


彼は真剣な顔で語り始める。


「誰か一人を選ばなければならないのかって。でも、気づいたんだ」


「……何に?」


「全員を愛せばいいんだって!」


「…………」


「僕は誰か一人を捨てるようなことはしない!」


「…………」


「僕は十人全員を幸せにしてみせる!」


その瞬間だった。


「……気持ち悪い」


ぽつり。


考えるより先に、口から出ていた。


「え?」


エドワードが固まる。


「……今、何て?」


「気持ち悪い、と」


「…………」


「普通に気持ち悪いですわ」


「そ、そんな……」


エドワードは傷ついた顔をした。


「君は……そんなに僕が愛されていることが嬉しいんだね?」


「…………」


私は、しばらく彼を見つめた。


何をどう解釈したら、今の言葉からそうなるのだろう。


そして、私の目から温度が消えた。


「……どこまでお目出度い頭なのかしら?」


「なっ!?」


「私は、貴方のその思考回路が理解できませんわ」


「だ、だって僕は――」


「もう結構です」


私は立ち上がった。


「婚約を破棄いたしましょう」


「待ってくれ!」


「嫌です」


「僕たちは婚約者だぞ!」


「ええ。だからこそですわ」


私は扉へ向かった。


「……ただし」


振り返る。


「この話は、これだけでは終わりませんわよ」


---


翌週。


グランツ伯爵家の応接室には、エドワードとその両親。


そして、十人の令嬢と、それぞれの家族が集められていた。


私は一枚の書類を机の上に置いた。


「まず確認いたします」


私は全員を見回した。


「エドワード様。先日、貴方は十人の女性と交際していると仰いましたね?」


「あ、ああ……」


「こちらにいらっしゃる十名で間違いありませんか?」


「……そうだ」


「では、次です」


私は別の書類を取り出した。


「こちらは、エドワード様がそれぞれの女性に送った手紙です」


「なっ!?」


「『君だけを愛している』」


一枚。


「『僕の本当の気持ちを理解してくれるのは君だけだ』」


二枚。


「『婚約者との関係は形だけだ』」


三枚。


「『卒業したら、君との未来を考えたい』」


四枚。


「……まだありますわ」


エドワードの顔が青ざめていく。


「こちらは、密会の日付と場所」


「……」


「こちらは贈り物の記録」


「……」


「こちらは目撃証言」


「…………」


私は最後の書類を机に置いた。


「そして、こちらが決定的な証拠です」


「ま、待ってくれ!」


エドワードが叫んだ。


「違う! これは全部、本当に彼女たちを愛していたから――!」


「それは結構です」


私は微笑んだ。


「貴方が何を思っていたかなど、今は問題ではありません」


「…………」


「婚約者がいる身で、複数の女性と交際していた」


「それは……」


「事実でしょう?」


「…………」


「では、次に参りましょう」


私は十人の令嬢へ視線を向けた。


「皆様」


「…………」


「エドワード様を愛していらっしゃったのですよね?」


十人は互いの顔を見合わせた。


沈黙。


やがて、一人が小さく口を開いた。


「だって……」


「ねぇ……」


別の令嬢が続く。


「婚約者がいるのに……」


「他の人が好きになるような人……」


「ええ……」


「無理ですわよね」


「…………」


エドワードの顔が引きつった。


「な、何を言ってるんだ……?」


「私たち、本命は別にいますもの」


「そうですわ」


「エドワード様は、その……」


「遊び相手としては、まあ……」


「ちょうどよかったと言いますか……」


「…………」


「んなっ!?」


エドワードが絶叫した。


「お、俺を愛してるって言ってくれたじゃないか!」


令嬢たちは再び互いに目を合わせた。


「……社交辞令ですわ」


「それに、婚約者がいる男性に本気になるなんて」


「面倒ですもの」


「ですから、私たちも本気では……」


「待て!」


エドワードが叫ぶ。


「じゃあ、僕だけが本気だったのか!?」


「……そういうことになりますわね」


「そんな……!」


私はため息をついた。


「内輪揉めはもうよろしいですか?」


「…………」


全員が私を見る。


「では、最後に一つ」


私は笑顔で告げた。


「貴方方にも、もちろん慰謝料を請求しますね」


「「「え?」」」


「人の婚約者に手を出している時点で、同じ穴の狢ですから」


私は満面の笑みを浮かべた。


「何を自分たちは悪くないみたいにおっしゃっているんですか?」


「…………」


「貴方方にも責任はあります」


「そ、そんな!」


「嫌ですわね」


私は紅茶を一口飲んだ。


「証拠は、全部揃っておりますもの」


---


数週間後。


婚約は正式に破棄された。


エドワードは女性十人から振られ、婚約者からも捨てられ、さらに複数の家から慰謝料を請求された。


その後どうなったのかは知らない。


知りたいとも思わない。


私は窓の外を眺めながら、紅茶を啜った。


恋愛とは、難しいものなのだろう。


けれど。


少なくとも私には、十人も必要ない。


一人でいい。


心から愛し、愛される相手が一人いれば、それで十分だ。


「愛する人は、一人で十分ですわ」


そう呟いて、私は静かにカップを置いた。

お読み頂き、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。