7.ハンバーガーはお好きですか?
順調にエルヴィラの異動の手続きが進む中、急に騎士団へ出動要請が入った。
王国の騎士団は日々鍛錬を欠かさないものの、実を言うと戦争があるわけではない。もちろんその抑止力としての役割も大きいが、周辺諸国もそれぞれ潤沢な土地柄なので基本的には争う理由がない。では日頃何をしているのか、というと……魔物退治。
王都に魔法が多いせいか、都にほど近い森の中でも魔物が現れる。その魔物たちから国民や街を守るため、日々鍛え上げているのだ。
「で、昨日近隣に魔物が現れたと」
「そうらしい」
侯爵様が騎士団のホールで統括団長として説明をしてくださっている。魔物はそもそも通常の獣より体格が大きい。更に魔力を持っているので攻撃に強く厄介な相手だ。普段は森の奥にいるらしいけど、秋になると収穫を求めて人里近くに来てしまうのは、ほかの獣と変わりない。討伐のために騎士団が出る事は割とあることだけど、今回はちょっと事情が違うらしい。
「詳細は言えないが、今回は私が視察として同行させてもらう」
下位騎士も多いここに侯爵様がお見えになったので、みんな少し緊張しているようでざわついている。
「厨房で何かできることはありますか?」
マシューさんが挙手で質問をした。
「昼に持っていける食事を頼む。あー、……私の分は魔力多めで」
最近は侯爵様も、ほんのりと魔力を得ているので色々と仕事に幅が出てきたらしい。自分の魔力が役立っていると思うと、嬉しいような大変なような。
「わかりました。早めにお持ちします」
出撃の人数を確認して調理にとりかかることになった。
「急いでお弁当の準備をしないとね!」
「はい、よろしくお願いします!」
元々、今日の昼はハンバーグの準備をしていた。サラダ用の野菜もお弁当用に転用することにする。
荒く叩いた肉を細かく刻む間に、マシューさんが硬くなったパンをチーズのすりおろし器で細かくする。みじん切りにしたたまねぎはフライパンで軽く炒め、冷ましてからパン粉と一緒に肉に混ぜ込む。
遠征なので万が一を思い、つなぎに卵は使わないことにした。 塩・こしょうで味を整えながらよくよく捏ねる。こうして肉から粘り気を出し、小さなボール状に分けてからフライパンに押し付けて平たく成型した。薄くしたので火も早く通る何、肉の焼けるいい匂いがキッチンに充満した。
バターを塗って軽く焼いたパンの上にハンバーグ、洗っておいたレタスと薄切りにしてもらっておいたトマトをからしマヨネーズと一緒に重ねていき、こんがり焼いたベーコンとうすくスライスしたチーズを乗せて、もう一枚のパンで蓋をする。
ボリュームたっぷりで手軽に肉が食べられるこの「ハンバーガー」は、騎士の皆様にもウケがいい。
「今回は珍しく、侯爵様が同行されるんだね」
マシューさんからさりげなく言われる。もちろん自分の手元で作っているのは当の侯爵様の分だ。
ここ数日、自分の料理で多少の魔力がついたとはいえ、侯爵様は騎士団で言うとまだ初心者レベル。
「うーん、魔力のテストにはまだ早いんじゃないかと思いますが……」
そもそも統括として騎士団のTOPに名を連ねてはいるけれど、基本はデスクワークが主な管理者だ。こちらが不安になるくらい心もとない。普段見慣れている騎士様たちとは色々と違うと思う。
「エルヴィラ、母親みたいなことを言うわね」
「そうですか?でも大切な雇用主がいなくなっては、大変ですから」
烏滸がましくも、せっかく決めた一生の雇用主を失うわけにはいきませんので!魔力MAXバーガー作ります!
[続く]




