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魔法使いが束になっても、俺の詠唱「カバディ」は止められない  作者: 早野 茂
エピローグ 最強の家族と師

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後日談第6話 伝説の馴れ初め

「……それでね、私が『あら、この人いい筋肉してるじゃない』って思ったのが最初なのよ」

女神国エンシアの王城、中庭のテラス。

優雅なティータイムの席で、我波 聖子の楽しげな声が響いていた。

彼女を囲んでいるのは、この世界の重要人物たちだ。

女神国の女王レア・エルフェリア。

エルフ族の代表ライラ。 そして、獣人族のリィナ(お菓子につられて参加)。

彼女たちは皆、背筋をピッと伸ばし、緊張した面持ちで聖子の話を聞いていた。

なにせ、あの魔族将軍を「姿勢矯正」だけで屈服させた最強の母だ。

下手な失言はできない。

「へぇ……。じゃあ、お母様からアタックされたんですか?」

ライラが恐る恐る尋ねる。

「ええそうよ。巌さんってば奥手でねぇ。

 道場で目が合っても、顔を真っ赤にして黙り込むのよ。可愛いでしょ?」

「(あの大岩のような巌殿が……可愛い……?)」

レアたちは顔を見合わせ、想像しようとしたが無理だった。

「でもね、決定打になったのは……やっぱりあの『虎』の一件ね」

聖子が紅茶を一口すすり、うっとりと遠い目をした。

「当時、私たちはインドの山奥で修行中だったの。

 ある日、私が川で洗濯……じゃなくて、水行すいぎょうをしていたら、

 茂みからベンガルトラが飛び出してきたのよ」

「ひっ……!」 リィナが尻尾を膨らませる。

第2話で巌に聞かされた話だ。

「私、とっさにヨガの『木のポーズ』で気配を消そうとしたんだけど、やっぱり怖くて悲鳴を上げちゃったの。

そうしたら……巌さんが、茂みを突き破って飛び込んできたのよ」

聖子の声が熱を帯びる。

「彼はね、武器なんて持ってなかった。

 ただ、自分の身一つで私の前に立って……。

 飛びかかってきた虎の牙を、左腕一本で受け止めたの」

「う、腕で……!?」 レアが息を飲む。

「ええ。骨が砕ける音がしたわ。血も凄かった。

 でも彼は、一歩も引かなかった。

 噛みつかれたまま、虎の喉元を逆の手で掴んで……そのまま地面に叩きつけたの。

 ……あの一瞬の背中。

 『ああ、この人なら命を預けられる』って、私の本能がそう言ったのよ」

テラスが静まり返る。

それは単なる武勇伝ではない。

「愛する者を守るために、己の肉体を盾にする」という、究極の献身の物語だった。

「男はね、言葉じゃないの」 聖子はカップを置き、レアたちの顔を一人一人、じっと見つめた。

「いざという時に、体を張れるか。  

 理屈じゃなく、損得じゃなく……大事なもののために、痛みを引き受けられるか。

 それが一番大事なのよ」

そして、聖子は少し意地悪そうに、でも優しく微笑んで問いかけた。

「……ねえ。 うちのむすこは、どうかしら?」

それは、母親としての問いであり、同時に「英雄の仲間」としての彼女たちへの試問テストだった。

あの子は、あなたたちのために体を張れているか。

そして、あなたたちは、あの子のそれを「愛して」くれているか。

ライラとリィナが、互いに顔を見合わせる。

そして、誰よりも早く口を開いたのは、レアだった。

「……彼は」

レアは、真っ直ぐに聖子の目を見つめ返した。

女王としての威厳ではない。

一人の女性としての、偽らざる本音の瞳だった。

「彼は、世界で一番、体を張ってくれました」

レアの脳裏に、これまでの戦いが蘇る。

魔法が使えない体で、強大な魔族に立ち向かった背中。

虚無王の圧倒的な暴力の前に、ボロボロになりながら立ちはだかった姿。

彼はいつだって、自分の命を、仲間のための「盾」にしていた。

「彼は、不器用で、無茶ばかりして、見ていてハラハラします。

 でも……いざという時、必ず誰よりも前に立ってくれる。

 私の……いえ、私たちの誇りです」

レアの言葉に迷いはなかった。 ライラも、リィナも、深く頷いている。

「……そう」

聖子は数秒、じっとレアの瞳を見ていたが、やがてふわりと表情を緩めた。

「ふふっ。合格ね」

「え?」

「あの子、いい仲間を見つけたわねってこと。

 ……安心したわ。あの子の背中を預けられる人たちがいて」

聖子はポットを持ち上げ、レアの空になったカップに紅茶を注いだ。

「これからも、あの子をよろしくね。

 ……あ、でも調子に乗って無茶してたら、私の名前を出して叱ってやっていいから。

 『お母さんに言いつけますよ!』って言えば、あの子一発で大人しくなるから」

「ふふっ……はい、覚えておきます」

レアが初めて、緊張を解いて笑った。

テラスに、温かな空気が流れる。

最強の母による「お嫁さんチェック」は、どうやら無事にクリアされたようだ。

だが。

「……よし! 良い話も終わったことだし!」

聖子がパン! と手を叩き、立ち上がった。

その目に、ギラリとした「武人」の光が宿る。

「息子の成長、口だけじゃなくて……『体』でも確かめておかないとね」

「え……?」

聖子はスタジアムの方角を見据え、ニヤリと笑った。

「ヴィクラムさんが面白いこと提案してくれたのよ。

 ……道の実力テスト、やるわよ」

伝説の馴れ初め話は、次なる激闘へのゴングだった。

母の愛は深いが、それゆえに試練もまた、とてつもなく重いのだ。


「彼は、世界で一番体を張ってくれました」

レア様の言葉、グッときましたね。

無事に聖子さんの合格をいただきました。

良い話で終わるかと思いきや、 「息子の成長、体で確かめないとね」

戦闘狂の血が騒ぎ出しました。

最強の親(3人)vs チーム・ウィンド(7人)。

ハンデ戦?

いえ、これでも親側が有利かもしれません。

次回、『息子・道の実力テスト』。

魔法禁止のカバディ勝負、開幕です!

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