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魔法使いが束になっても、俺の詠唱「カバディ」は止められない  作者: 早野 茂
エピローグ 最強の家族と師

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後日談第3話 師ヴィクラムのカバディ教室

「ノンノン、ノンノン! なってないネ! 全然なってないヨ!」

世界カバディ連盟の会議室。

そこに、派手なアロハシャツを着た男――ヴィクラムの呆れた声が響き渡った。

彼の前には、ホワイトボードと、異世界カバディ界の重鎮たちが並んでいる。

魔族の将軍ノワール、ドワーフの英雄バルド、そしてエルフの女王代理ライラ。

そうそうたるメンバーが、まるで補習授業を受ける学生のように、机に座らされていた。

部屋の隅では、我波 がば・どうが心配そうに見守っている。

(ヴィクラム師匠……変なこと教えなきゃいいけど)

「何が『なってない』と言うのだ、貴様」 ノワールが不機嫌そうに腕を組む。

「我々のカバディは、虚無王すら倒した最強の戦術だぞ」

「それは『戦争』としては100点ネ。

でも『スポーツ』としては30点ヨ」

ヴィクラムは、昨日の決勝戦の録画映像(魔導モニター)を指差した。

「見てみなさい。君たち、便利なエネルギー技に頼りすぎネ。  

 レイダーが来たら『氷の壁』を作る?

 重力で押し潰す?  

 ……ナンセンス!

 それじゃあ相手との駆け引き(・・・・)が生まれないヨ!」

ヴィクラムは、自身のこめかみを指でトントンと叩いた。

「カバディはね、究極の心理戦ナノヨ。  

 相手の視線、呼吸、筋肉のピクリとした動き……そこから『次の一手』を読んで、罠を張る。  

 エネルギーでドーン! は楽だけど、相手の心を折るには不十分ネ」

「心を……折る?」

ライラが怪訝な顔をする。

「イエス。例えばこれを見て」

ヴィクラムは、スタジアムにいる練習生たちの模擬戦の様子を指差した。

攻撃手レイダーは、獣人族の期待の若手スピードスターだ。

対する守備アンティは、屈強なドワーフ5人。

「この状況、君たちならどう守る?」

「決まっておる。全員で囲んで押し潰す!」

バルドが即答する。

「ブブー! それじゃあ獣人のスピードに逃げられるネ。

 ……私なら、こうするヨ」

ヴィクラムがスタジアムのマイクを奪い取り、ドワーフたちに指示を飛ばした。

『ヘイ、そこのヒゲのボウヤたち!  

 圧導障壁バリアを解きなさい!

 そして、わざと一番端の選手コーナーが、背中を見せて油断したフリをするネ!』

「なっ!? 背中を見せるだと!? 自殺行為だ!」

バルドが叫ぶ。

だが、ドワーフたちは困惑しながらも指示に従い、一人が靴紐を結ぶフリをして背中を見せた。

すると。

「(……隙ありッ!)」

獣人の若手が反射的に反応した。

レイダーの本能だ。無防備な背中を見せられれば、タッチしたくなる。

獣人が加速し、その選手に手を伸ばした、その瞬間。

『今ネ!』

ヴィクラムが指を鳴らした。

背中を見せていたドワーフが、靴紐を結ぶ体勢から、バネのように低空タックルを仕掛けたのだ。

それだけではない。

獣人の意識が「端の選手」に向いた瞬間、死角になっていた反対側の選手が、音もなく背後から回り込んでいた。

「なっ……!?」 獣人が驚愕する。

エネルギーの壁なら感知できた。

だが、これは純粋な「演技」と「視線誘導ミスディレクション」による罠だ。

ドガッ!

低いタックルが獣人の足首を刈り取り、背後からのカバーが上半身を押さえ込む。

エネルギー技など使っていない。

ただの連携だけで、期待のスピードスターが完全に封殺された。

「……嘘だろ」 獣人がマットに沈みながら呟く。

「オゥイェス! ビューティフル!」

ヴィクラムが手を叩いて喜ぶ。

「見たかい? これがテクニックだヨ。  

 圧導という『強すぎる武器』を捨てさせることで、相手に『いける』と錯覚させる。

 その慢心を狩るのが、カバディの醍醐味ネ!」

「……なんという卑怯な……いや、合理的な戦術だ」

ノワールが感心したように唸る。

「相手の思考を誘導し、自ら死地へ飛び込ませるとは……。

 ふふ、気に入った。私の美学に近い」

「ワシらの肉体だけでも、これほど戦えるとはな……」

バルドも、圧導を使わずに若手を倒した部下たちを見て、目を輝かせている。

ヴィクラムはニヤリと笑い、ホワイトボードに大きく文字を書いた。

『脱・エネルギー依存ノー・エネルギー

心理誘導マインド・ゲーム

「今日から君たちに教えるのは、圧導の出力アップはおろか、呼吸の仕方ですらないヨ。

 ……相手の嫌がることを、徹底的にやる『性格の悪さ』を教えるネ!」

「(……やっぱり始まった)」 道が頭を抱える。

この師匠、技術は超一流だが、教える戦術がいちいち性格が悪いのだ。

「ハハハ! さあ、授業再開ヨ!  

 次は『審判レフリーに見えない反則スレスレのユニフォームの引っ張り方』を教えるネ!」

「それは教えるなァァァッ!!」

たまらず道がツッコミを入れる。

だが、ノワールたちは「ほう、興味深い」と身を乗り出してメモを取り始めていた。

異世界カバディに、新たな「テクニック」が注入された瞬間だった。

出力任せの力技に頼っていた彼らが、この「いやらしい技術」を習得した時、

異世界カバディは、スポーツとしてもう一段階、凶悪に進化することになる。


「背中を見せて油断を誘う」「審判に見えない反則」 ヴィクラム師匠、教えることがエグいです。

でも、これこそが「駆け引き(マインドゲーム)」。

真面目なノワールやバルドが、どんどん「カバディ沼」にハマっていきます。

一方、ノワールの城では悲鳴が。

母・聖子によるヨガ教室が開催されています。

あの「空気椅子」にダメ出しが入ります!

次回、『母のヨガと、魔族の柔軟性』。

和式便所スタイルから、真の「椅子のポーズ」へ

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