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魔法使いが束になっても、俺の詠唱「カバディ」は止められない  作者: 早野 茂
第2章:異種族チーム「風」誕生

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第14話 暴走する虎、止まれない呼吸

山を越え、赤土の街道を抜けた先。

風の匂いが変わった。

土と、草と、獣の体温が混ざったような濃い気配。

「この先が獣人連邦の領域です」

レアが言うと同時に、遠くの茂みがガサリと揺れた。

「――にゃはっ! その匂い、道だーッ!!」

弾丸のような影が飛び出してきた。

速い。

風魔法を使ったライラとは違う、純粋な筋力による爆発的な加速。

「うおっ!?」

道が身構える間もなく、その影は道の胸にドスッとタックルを決めてきた。

「久しぶりー! 会いたかったぞ異界人!」

顔を上げると、虎耳の少女が満面の笑みを浮かべていた。

武闘祭で戦い、道が落下を受け止めた少女、リィナ・タイガーテイルだ。

「リィナか……。元気そうだな」

「元気元気!

 森中走り回ってたところ!

 で、なになに?

 王女様とデート?

 それとも迷子?」

尻尾をブンブン振り回しながら聞いてくる。

警戒心ゼロだ。

道は苦笑しながら、単刀直入に切り出した。

「スカウトに来たんだ。俺のチームに入ってくれ、リィナ」

「チーム?」

リィナはきょとんとして、次の瞬間、パァっと顔を輝かせた。

「いいよ!!」

即答だった。

「え、いいのか? 話も聞かずに」

「だって道の匂い、好きだし!

 あの時助けてくれたし!

 それに、面白そうなこと始めるんでしょ?

 混ざる混ざる!」

エルフやドワーフでの苦労が嘘のような軽さだ。

レアが「あっさりと……」と驚いている横で、リィナは既に屈伸運動を始めている。

「じゃあ早速チーム練しよ! まずは鬼ごっこね!」

「鬼ごっこ?」

「そう! 私が逃げるから捕まえてみて!

 捕まえられなかったらチーム加入は取り消しー!」

「おい待て、話はまだ──」

ドンッ!!

地面が爆ぜた。

言うが早いか、リィナは残像を残して森の奥へ消えていった。

「ははっ! 遅い遅いー! こっちだよー!」

声だけが遠ざかっていく。

「……あの子、人の話を聞かないタイプですね」

レアがため息交じりに言う。

道は頭を抱えた。

「速いのはいい武器だが……あれじゃ連携チェーンなんて無理だぞ」

「どうします?」

「追いかけるしかねぇだろ。

 ……捕まえて、座らせて、説教だ」

道は深く息を吸い込む。

肺に圧を溜める。

この森の障害物を縫って走るには、カバディのステップワークが最適だ。

「行くぞレア。はぐれるなよ」

「はい!」

道とレアは、暴走する虎の尻尾を追って森へ飛び込んだ。

だが、リィナの速さは異常だった。

ただ速いだけじゃない。

木々を蹴り、岩を飛び越え、止まることを知らない。

(……あいつ、ブレーキが壊れてるのか?)

道は走りながら違和感を覚えていた。

彼女の走りは、確かに速い。

だが、“止まる気配”がない。

カバディにおいて、最も重要なのは「速さ」ではない。

「制御」だ。

ライン際でピタリと止まる制動力。

それがなければ、勢い余って場外へ出てアウトになる。

今のリィナは、まさにそれだ。

「見つけた!」

開けた場所に出ると、リィナが崖に向かって疾走していた。

その先は断崖絶壁だ。

「おいリィナ! そこは行き止まりだ!」

道が叫ぶ。

リィナは振り返り、「へ?」と顔を向けたが、足は止まらなかった。

「うわ、ほんとだ!

 止ま……れな……うにゃあああ!?」

勢いがつきすぎて、ブレーキが間に合わない。

彼女の身体が、崖の縁から宙へ飛び出した。

(……またかよ!)

「――カバディッ!!」

道は全速力で踏み込んだ。

「圧導」を足裏に集中させ、地面を削りながら急制動をかける。

崖の縁ギリギリで踏ん張り、手を伸ばす。

「キャッチ!!」

空中のリィナの手首をガシリと掴む。

凄まじい慣性が腕にかかるが、道は体幹を固めて耐え切った。

「……ふぅー。セーフ」

宙吊りの状態で、リィナが目を白黒させている。

「……お前なぁ。武闘祭の時といい、学習能力ゼロか?」

「えへへ……止まるの、苦手なんだよね」

道は彼女を引き上げ、地面に降ろした。

そして、逃げられないように両肩をガシリと掴んだ。

「いいかリィナ。チームに入る条件だ。

俺がお前に、カバディの『止まり方』を教える。

それを覚えるまでは、勝手な暴走は禁止だ」

「えー、止まる練習? 地味そう……」

「地味じゃねぇ。最強のブレーキがあって初めて、最速のアクセルが踏めるんだよ」

リィナは少し考え、ニッと笑った。

「分かった!

 道が言うならやってみる!

 その代わり、練習終わったらまた競争ね!」

(……前途多難だな)

道は天を仰いだが、その表情は明るかった。

この圧倒的な速度。

制御さえできれば、最強の武器になる。

こうして、三人目の「問題児」が確保された。


リィナの暴走をキャッチし、「止まり方」を教えることで手懐けました。

これでパワー(ドワーフ)とスピード(獣人)が揃いましたね。

残るは一人。 最も協調性がなく、最もひねくれた「影」の使い手。

魔族領のノワール。

彼はそもそも、姿さえ見せてくれないようで……?

次回、『影の国、見えない拒絶』。

姿が見えない相手を、呼吸音だけで捕まえます。

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