表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
金貨の娘  作者: 之#u4e4b
第1章 悪夢の檻

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/105

第1章 第3節 隻腕の女

「あの、(げん)(かん)に、

 (わす)(もの)をしたんだけれど…。」



()(あら)(じょ)(もど)ってから、

わたしはスーに(うそ)をついた。



「まだ()べててもいいよ?

 ()ってこようか?」



わたしは(くび)(よこ)()り、

(かの)(じょ)()(づか)いを(ことわ)った。



(ひと)りで(みなみ)(げん)(かん)へと()かう。



(しき)()(へい)(かこ)まれた(しょう)(かん)



()(あら)(じょ)から()(へい)には(ひさし)があり、

梯子(はしご)もなく、(かべ)(のぼ)って()()すのは

わたしには()()(のう)だった。



(へい)(さき)には(てつ)(とげ)()てられ、

()られた()(ども)(だっ)(そう)(ゆる)してはくれない。



――ニースだわ…。ニースよ…。



(あたま)(なか)(なん)()(おな)(こと)()(つぶや)くわたしは、

(はや)くあの(ろう)(かん)(かえ)りたかった。



わたしの()るべき()(しょ)は、ここではない。



(けもの)(おとこ)()(しゃ)()れられてから、

もっと早く()げるべきだった。



これから(しょう)()になるなんて、

()(ぶん)姿(すがた)(そう)(ぞう)するだけでも()()(がた)い。



スーには(うそ)をついて(やかた)()ていく。



(かの)(じょ)(たい)する(うら)()りに(おも)えて(こころ)(いた)む。



けれどいまは、

あの(おり)から()てしまった

(ざい)(あく)(かん)(ほう)(くる)しい。



(とびら)()かった()()(はず)し、

(やかた)(おも)(もん)()のハンドルに(たい)(じゅう)(あず)け、

身体(からだ)(とお)るだけの(すき)()(つく)った。



その(とき)(げん)(かん)(なか)にある(となり)部屋(べや)から()てきた

()(なか)(まる)めた(しょう)(じょ)()()った。



挿絵(By みてみん)



わたしくらいの(ねん)(れい)

(くろ)(かみ)()(そろ)えた()は、

(かみ)(たば)()んだ(かご)(かか)えている。



(いっ)(しゅん)(ちん)(もく)が、

(えい)(えん)とも(おも)える(なが)()(かん)(かん)じた。



わたしは、(かの)(じょ)から

(こえ)()けられるよりも(さき)()げた。



(ゆう)()れになると、

(そと)には(しょう)(かん)(おとず)れる(きゃく)()なかった。



(ひろ)()(しゅ)(えん)(ひら)いていたひと(たち)も、

もう()ない。



(はる)とはいえ、(ひろ)()()(かぜ)(つめ)たく、

(すそ)(みじか)いキャシュクは(あし)(ぜん)(たい)(かぜ)()たる。



(さむ)さでまた身体(からだ)(ふる)わせると、

(さわ)がしいくしゃみを(みみ)にした。



(げん)(かん)(とびら)(よこ)()ていた()(ろう)(しゃ)のような

(ふく)(ほつ)れて(やぶ)れたままの(ちゅう)(ねん)(おとこ)



挿絵(By みてみん)



(かれ)()(ぶん)のくしゃみに(おどろ)き、

()()まして身体(からだ)()こす。



(くら)(やみ)()()れてきてその()(ろう)(しゃ)

(ひる)()()(ぱら)いと()()った。



(ひる)()(おな)(じょう)(きょう)でも、

わたしを(たす)けてくれるひとは(だれ)()ない。



()(めん)(すわ)()(ぱら)いが、

(かん)(ぜん)()()がる(まえ)にわたしは(はし)った。



(はし)ることは、(ひん)(かく)()けた(こう)()だと

(おさな)(ころ)から()()(たち)(きび)しく()われていた。



(はし)ってはみたものの、

わたしは(ただ)しい(はし)(かた)ができない。



(ほん)()んだ()(しき)はあっても、

(ひど)(しか)られた(けい)(けん)があって、

(はし)りを真似(まね)たこともない。



(ほん)(おも)()して(うご)いてみても、

(うで)(うご)かし(かた)もよく()からず、

()(はば)(ひろ)くして(いそ)いで(ある)いている。



(いし)(づく)りの(みち)()(いし)()んだ(とき)の、

(そく)(てい)(いた)みは(ほん)()ってはいなかった。



こんな(つたな)(はし)りの()(ども)は、

すぐに(つか)まるはずだった。



「おい、()ってくれ!

 アースラ、ヒルドォ!」



()(ぱら)いは(だれ)かの()(まえ)(さけ)んだ。



()()くと(おとこ)()()がって(はし)ろうとし、

(あし)(もつ)れさせて(ふたた)()(めん)()()した。



()(ぱら)いは()いた(けん)()とすと

(おと)()てて(たお)れても、

また()()がろうと(うごめ)く。



(げん)(かん)(さわ)()(ぱら)いに、

(けい)()(おとこ)(たち)(たて)(もの)(りょう)(わき)(とう)から()てきた。



わたしは(やかた)のあった(さか)(くだ)って

(かど)()がり、()(えい)()(かく)す。



(たて)(もの)(すき)()から西(にし)(とう)()えた。



この()()()(とき)()()げた(ろっ)(かく)(ちゅう)(とう)



その(とう)(かね)()らし、(くう)()(ふる)わせる。



(にち)(ぼつ)()らせる(かね)()



(おび)()()がったロープが、

(かね)()(とも)()()げられていく。



(しょう)(ろう)から西(にし)()かってこの()()()れば、

()(みち)(もど)り、いつか()()(ろう)(かん)(かえ)れる。



(てい)(たく)(へい)(なら)(つう)()(きた)へと(はし)り、

(とお)りに()ると(しるべ)(しょう)(ろう)西(にし)()えた。



(やかた)から(はな)れた()がしても、

(しょう)(ろう)には(ちか)()いていない。



(はだ)()(あせ)(にじ)み、(かた)(いき)()く。



――(はや)く、あの(おり)(かえ)ろう。



(くら)(しゃ)(どう)()()すと、

わたしの()(まえ)()()(しゃ)(はし)()ぎた。



()(きゅう)()()れ、

(しん)(ぞう)(はく)(どう)さえも()まったように(おも)えた。



()()れな()()で、()(かい)(わる)(よる)(みち)



(あや)うく()()(しゃ)()かれるところだった。



(ととの)わない()(きゅう)()(かえ)し、

(かえ)(しゅ)(だん)(かんが)()かずに、

(てい)(たく)(かど)()がる。



(しょう)(ろう)(さき)ばかり()ていたわたしは、

()(ちゅう)()(こん)()はひとに(しょう)(とつ)した。



それは二人(ふたり)()みの(おとこ)



「ガキィ! ()にてぇのかぁあ?」



わたしはそのうちの一人(ひとり)(みぎ)(うで)(つか)まれ、

(した)(もつ)れた()(せい)()びせられた。



すると()(まえ)(いっ)(しゅん)(まっ)(しろ)になった。



(ほお)(はな)(いた)さで、

(ひら)()(たた)かれたと()かった。



(みみ)()りが(あたま)(なか)まで()(げき)する。



(つば)()ばして(まく)()てる(あい)()(こと)()は、

(いた)みで(みみ)(あたま)()(かい)(こば)んでいる。



(はな)から(くら)(えき)(たい)(うわ)(くちびる)()れて、

(くち)(なか)(どう)()(あじ)(ひろ)がった。



()(とう)(ぼう)(りょく)()れていたおかげで、

()()()なことに(たた)かれて(こん)(らん)()()いた。



()(たか)(ほう)一人(ひとり)

(あか)(かみ)()(なか)だけを(のこ)し、

()(ひく)(ほう)一人(ひとり)()(ぎゃく)()っている。



挿絵(By みてみん)



二人(ふたり)ともキャシュクを()て、

(しょく)(しょ)(むな)(もと)(わた)らせていた。



(ひど)()っていて、

()(ぶん)のある(にん)(げん)とも(おも)えない。



――(けもの)だわ…。



()(ひく)(おとこ)はガラス(せい)(りっ)()なランタンと、

なぜか(ほし)(くさ)(たば)(かか)えて(わめ)く。



()(たか)(おとこ)(ほう)は、

わたしの(みぎ)(うで)(つか)んだまま(はな)してくれない。



()げようとするほど(かた)(にぎ)られ、

()(いた)くて()(めい)()れる。



「こいつぅ、もしかして

 (あか)(つち)(おか)から()げてきたなぁ。」



「えーもん(ひろ)ったぁ。

 ドレープ(ひろ)ったなぁ。」



()(みょう)調(ちょう)()(うた)い、(さけ)(くさ)(いき)()き、

わたしの(かお)(のぞ)()んで(よろこ)ぶ。



「ドレイプじゃねえなぁ?

 フランジだぁ。


 ()りもんにしては(ひん)(じゃく)だ。

 こりゃ()()かぁ?」



(いや)っ!」



()(ひく)(ほう)(おとこ)が、スーのくれた

(きん)(あか)(いろ)(おび)(ひも)(おび)(ぬの)()()がし、

キャシュクを(つか)んで(まく)()げた。



どんなに(さけ)んで(てい)(こう)しても、

(けもの)(あい)()にしては(こと)()(つう)じず、

()(ろう)(ちから)()ない。



(はな)()()(きゅう)()(がい)して、(ひど)(いき)(ぐる)しい。



(かれ)らはわたしの(はん)(のう)(たの)しんでいる。



「いっけねぇよ。

 そりゃ、ハミース(ほう)()れちまうなぁ。」



「ハミウス(ほう)だって?

 ありゃあハミウスが(やぶ)った(ほう)だ。


 オレ(たち)(こわ)いもんなんてねえ。


 (やかた)()れてきゃ、

 どうせゲッベルが(しょう)()にしちまうんだ。


 いまからオレ(たち)(さき)(はつ)(もの)(いただ)いて、

 (きょう)(いく)手伝(てつだ)っちまおうぜ!」



「げははっ!

 (あたま)()ぃなお(まえ)はよぉ。


 (きょう)(いく)()(かん)だぁ。」



「そんで(しょう)()にしたりゃ、(かね)にならぁ。


 こんな(ざつ)(よう)(ひつ)(よう)なくならぁよ!」



(てん)(さい)かよぉ!

 お(まえ)はよぉ。」



()(おとこ)(ほし)(くさ)(たば)(ほう)()げて(よろこ)ぶ。



「やっ! (はな)して! (たす)けっ!」



(だれ)()うでもなく(さけ)んだけれど、

(よろこ)()二人(ふたり)(おとこ)(ちから)(あらが)えず、

(つか)まれた(うで)ごと身体(からだ)()(まわ)される。



二人(ふたり)とも(けん)()いていた(ため)

(とお)りかかったひとも()められない。



()(りき)なわたしは(あい)()から()()せず、

(なん)()(てい)(こう)(こころ)みても()(まわ)されて、

(れん)()(べい)(たた)きつけられた。



()たった(とき)()(なか)(いた)みが(ひど)く、

(つか)れと(しょう)(げき)()(きゅう)(くる)しい。



(みぎ)(うで)(つか)まれたまま身体(からだ)()るされ、

(ひざまず)いて()(めん)(たお)れることもできない。



()()(たび)()(なか)(いた)み、

(いき)(ぐる)しさに(なみだ)(こぼ)れた。



(うつむ)いたわたしの(あし)(もと)に、

(くろ)(ねこ)がミャオと()いた。



(ほそ)(わか)(ねこ)()(えい)(どう)(こう)(かがや)かせる。



「ユヴィルの(よう)(へい)が、

 こんな()(しょ)(はしゃ)いで。


 (あさ)ましいわね。」



「おぉんっ?」



(しょう)(じょ)(こと)()()()いた(しゅん)(かん)に、()(おとこ)

(かた)から(むね)()けて(たん)(けん)()()てられた。



挿絵(By みてみん)



(ちか)()いた(しょう)(じょ)

(ほそ)(ひだり)()(くび)(たん)(けん)()じると、

()(おとこ)(みち)(たお)れて(うご)かなくなった。



(かれ)()っていたランタンは(よこ)(だお)しになり、

(ろう)(そく)灯火(ともしび)()えた。



(くら)()()れた(やいば)は、

()(おとこ)(しん)(ぞう)(みゃく)(たっ)していた。



(すこ)しの()()いて、

その()()()(かい)した(ちょう)(しん)(おとこ)



わたしを()()(たお)すと、

(しゅん)()(けん)(さや)から()いて

(しょう)(じょ)のお(なか)(よこ)()りつけた。



(なが)(うで)(かぜ)()()(おと)が、

わたしの(みみ)()たる。



()った(けん)(いきお)いで、(しょう)(じょ)()ている

(くろ)(いろ)のチュニックと(はだ)()()け、

(やみ)(なか)(しろ)(はだ)()かんだ。



しかし(おとこ)()ったのは、(かの)(じょ)(ふく)のみ。



(けん)(さき)(かわ)した(しょう)(じょ)

(あい)()(けん)(ひる)むことなく()()み、

(おとこ)(のど)(ふか)()()した。



(いっ)(しゅん)()()(ごと)にわたしは()(うたが)った。



()っていた(あい)()とはいえ、

(しょう)(じょ)(たん)(けん)(ひと)つで二人(ふたり)(ころ)した。



(くろ)(いろ)頭巾(フード)宝飾巾(ヴェール)をした(しょう)(じょ)に、

なにもできなかった(しゅう)()(ひと)(びと)(さわ)()す。



(しょう)(じょ)(みぎ)(かた)(かざ)(ぬの)をした

(りん)(かく)()かんで()える。



(かの)(じょ)(つめ)たい(ひとみ)がわたしを()る。



この(しょう)(じょ)は『(よる)(やかた)』に()たサンサだった。



「はっ…。はぁっ…。」



なにか()おうと(くち)()けても、

わたしは(こえ)()ない。



()れない(はし)りに(いき)()れて、

(へい)身体(からだ)(あず)けて(ちから)()(すわ)る。



(たた)きつけられた()(なか)(いた)くて、

(つか)まれた(みぎ)(うで)(へん)(しょく)して()れていた。



サンサは()()まりを()んで、

(けい)(れん)()こしていたわたしに(ちか)()く。



そのせいで、

(ゆき)のように(しろ)(かの)(じょ)(あし)()(よご)れる。



()()いて(いき)をしなさい。」



()()でる()(うご)きに()(きゅう)()わせると、

()(ぜん)(いき)(ととの)っていった。



サンサの(まと)(こう)(りょう)(あま)(にお)いに(つつ)まれる。



「グルグス。」



サンサが()ぶと

(おお)(おとこ)(みず)(ぶくろ)()ってきて、

(かの)(じょ)()から(くち)()()まれた(みず)

わたしの(のど)(かわ)きを(うるお)した。



挿絵(By みてみん)



「あなたを()()めはしないけれど、

 (やかた)()ていくつもりなら

 (たい)(りょく)()けた(ほう)がいいわよ。


 ()(けい)なお()()かしら。」



(かの)(じょ)はわたしの(だっ)(そう)()(しか)りもせず、

おかしなことに(はな)(わら)って(じょ)(げん)をする。



二人(ふたり)(おとこ)()んだ。



わたしの(けい)(きょ)のせいで。



(いし)(すき)()に、なにも()わなくなった

(おとこ)(たち)(くろ)()(なが)れる。



それはまるで、

()()(おり)でずっと()ていた景色(けしき)だった。



()かいの(おり)にあった、

()(たい)()(なが)(たい)(えき)()えた。



――あぁ、(かえ)ってきたのね…。



(うす)(くら)(やみ)(なか)(つか)れきったわたしは、

サンサに()かれて(あん)()した。



(かの)(じょ)(むな)(もと)身体(からだ)(あず)け、()(しき)()()れた。




 ▶

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ