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金貨の娘  作者: 美穂
第5章 混濁の庭

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第5章 第5節 酔客の病(第2項)

ハーフガンは席(せき)に戻(もど)って手(て)札(ふだ)を持(も)つと、

東(ひがし)側(がわ)の席(せき)でスーがサンサに意(い)見(けん)した。



「いまになって言(い)っても遅(おそ)いけど、

 ニクスに会(かい)談(だん)はまだ早(はや)いよね。」



わたしは無(む)言(ごん)で首(くび)を縦(たて)に振(ふ)る。



「過(か)小(しょう)評(ひょう)価(か)ね。」と、サンサ。



「みんなサンサみたいに

 器(き)用(よう)には生(い)きられないんだよ。」



「ニクスはものを知(し)らないだけで、

 察(さっ)しも要(よう)領(りょう)も良(よ)くて賢(かしこ)いでしょ?」



今(こん)度(ど)は無(む)言(ごん)で首(くび)を横(よこ)に振(ふ)る。



サンサに指(し)名(めい)されて

教(きょう)育(いく)室(しつ)でみんなの前(まえ)に立(た)たされたり、

メノーの話(はなし)に苦(く)労(ろう)した記(き)憶(おく)が蘇(よみがえ)る。



「札(ふだ)を彫(ほ)ってみて気(き)付(づ)いたよ。


 頭(あたま)の中(なか)では完(かん)成(せい)形(けい)が出(で)来(き)ていても、

 技(ぎ)術(じゅつ)はすぐには上(じょう)達(たつ)しないって。


 アイリアも言(い)ってたよ。」



「彼(かの)女(じょ)はなんて?」



「技(ぎ)術(じゅつ)は知(ち)識(しき)と経(けい)験(けん)で磨(みが)かれるんだって。


 絵(え)の巧(うま)いレナタでも、

 経(けい)験(けん)がなければ壁(へき)画(が)は作(つく)れないのと

 同(おな)じことだよね。」



サンサはわたしを見(み)て目(め)を細(ほそ)め、

またスーを見(み)た。



「なるほど。それも良(い)いわね。」



口(こう)角(かく)を上(あ)げて怪(あや)しく笑(え)みを浮(う)かべる。



「ニクスもニクスだよ。


 元(もと)はと言(い)えばサンサが全(ぜん)部(ぶ)悪(わる)いし、

 ハーフガンが相(あい)手(て)だから良(よ)かったけど、

 お客(きゃく)さんに家(か)庭(てい)の話(はなし)をしたらダメだよ。」



「わたしは悪(わる)くないでしょ。」



「俺(おれ)だから良(い)いってこともないだろ。」



二人(ふたり)から責(せ)められてスーは笑(わら)う。



「それならスーがなにか話(はなし)をしなさい。


 詐(さ)欺(ぎ)師(し)の話(はなし)は前(まえ)にやったわよね。」



「詐(さ)欺(ぎ)師(し)ってお前(まえ)のことか?」



ハーフガンのそんな指(し)摘(てき)に、

わたしはテーブルに顔(かお)を伏(ふ)せ、

下(した)唇(くちびる)を噛(か)んで笑(わら)いを堪(こら)える。



「くふっ…。」



堪(こら)えられなかった。



「ちょっとニクス、不(ふ)敬(けい)の罪(つみ)に問(と)うわよ。」



「仕(し)方(かた)がないよ。

 サンサだもんね。」



「くふふっ、詐(さ)欺(ぎ)師(し)だって。サンサ。」



太(ふと)腿(もも)の上(うえ)で寝(ね)ていたイオスが起(お)きて

仰(あお)向(む)けになると、わたしの前(まえ)髪(がみ)に

前(まえ)足(あし)を伸(の)ばす。



「もー。なんなの。二人(ふたり)して。」



サンサは不(ふ)満(まん)を顕(あら)わに、

アルの頭(あたま)を指(ゆび)で何(なん)度(ど)も突(つ)いた。



深(ふか)く息(いき)を吐(つ)き、わたしは貝(かい)札(ふだ)を並(なら)べる。



「ほら、黙(だま)って続(つづ)け始(はじ)めたわ。


 黙(だま)り続(つづ)けるのなら、

 誰(だれ)も居(い)なくなった話(はなし)でいいわよ。」



「それ、結(けつ)末(まつ)でしょ?

 もう…。」



スーは唇(くちびる)を舐(な)めて濡(ぬ)らしてから、

両(りょう)の唇(くちびる)を噛(か)んで軽(かる)い音(おと)を立(た)てて開(ひら)いた。



「これはソーマの時(じ)代(だい)の、

 ずっと昔(むかし)の言(い)い伝(つた)え。


 船(ふね)に構(かま)わず荒(あ)れ狂(くる)う海(うみ)。


 波(なみ)が船(ふね)を倒(たお)そうと、船(せん)体(たい)は前(まえ)へ後(うし)ろへ。


 船(ふね)の中(なか)の輸(ゆ)送(そう)品(ひん)は、

 慣(な)れない海(うみ)に酔(よ)い、倒(たお)れる。


 異(い)国(こく)の奴(ど)隷(れい)達(たち)は、

 船(ふな)底(ぞこ)で転(ころ)がらないように櫂(かい)に抱(だ)きつく。」



「櫂(かい)?」ハーフガンが訊(たず)ねた。



「櫂(かい)は水(みず)を掻(か)いて

 船(ふね)を進(すす)める長(なが)い棒(ぼう)状(じょう)で――。


 箆(へら)の柄(え)を長(なが)く、

 先(さき)を広(ひろ)くした形(かたち)の道(どう)具(ぐ)ね。


 酔(よ)っ払(ぱら)いは知(し)らないでしょ。」



「知(し)るかよ。」吐(は)き捨(す)てるように言(い)う。



「言(こと)葉(ば)遣(づか)いに品(ひん)がないわね。


 海(かい)船(せん)ではそれを、数(すう)十(じゅう)人(にん)単(たん)位(い)で使(つか)うの。


 川(かわ)岸(ぎし)に衝(しょう)突(とつ)しないように、

 水(すい)夫(ふ)が艀(はしけ)に使(つか)う

 ただの棒(ぼう)とは違(ちが)うわよ。」



ネルタの湖(みずうみ)でも、櫂(かい)を使(つか)って漕(こ)いでいる

水(すい)夫(ふ)の姿(すがた)を見(み)たことがある。



水(すい)夫(ふ)が何(なん)十(じゅう)人(にん)も必(ひつ)要(よう)な船(ふね)は、

湖(みずうみ)では見(み)たことがない。



「荒(あ)れた海(うみ)でも使(つか)えるものなの?」



「使(つか)えないわね。だから、

 波(なみ)が横(よこ)に当(あ)たって転(てん)覆(ぷく)しないように、

 舵(かじ)をとって波(なみ)の方(ほう)向(こう)に船(ふね)を合(あ)わせるの。


 舵(かじ)というのは船(ふね)の後(うし)ろ側(がわ)の底(そこ)にあって、

 水(すい)流(りゅう)を変(か)えることで進(しん)行(こう)方(ほう)向(こう)を

 調(ちょう)節(せつ)する機(き)構(こう)のことね。


 舵(かじ)で船(ふね)を操(あやつ)ることを操(そう)舵(だ)と呼(よ)ぶわ。

 歴(れき)史(し)書(しょ)にも登(とう)場(じょう)する単(たん)語(ご)よ。


 櫂(かい)を握(にぎ)る奴(ど)隷(れい)は

 獲(え)物(もの)の船(ふね)に逃(に)げられないように、

 早(はや)く近(ちか)付(づ)いて襲(おそ)う為(ため)の道(どう)具(ぐ)扱(あつか)い。


 波(なみ)に揺(ゆ)られる船(ふね)に慣(な)れていない奴(ど)隷(れい)は、

 酔(よ)っ払(ぱら)いも同(どう)然(ぜん)ね。」



「お前(まえ)は海(うみ)に出(で)たことなんてないのに、

 なんでそんなに詳(くわ)しいんだ。」



捓(からか)われたことに気(き)付(づ)いていない

ハーフガンが、疑(ぎ)問(もん)を口(くち)にする。



「自(じ)分(ぶん)に関(かか)わりがなければ、

 知(し)らなくていいなんて思(おも)ってるの?


 物(もの)事(ごと)への関(かん)心(しん)。未(み)知(ち)への好(こう)奇(き)心(しん)。

 探(たん)究(きゅう)心(しん)を失(うしな)えばどうなるかしら。


 お酒(さけ)に溺(おぼ)れて病(や)めば、

 炎(ほのお)を崇(あが)めるだけの愚(ぐ)者(しゃ)になるわね。


 無(む)知(ち)は妄(もう)想(そう)に耽(ふけ)り、

 知(ち)識(しき)は創(そう)造(ぞう)を形(かたち)作(づく)るのよ。」



スーはサンサの顔(かお)を見(み)て言(い)う。



「人(にん)間(げん)が鳥(とり)のように

 空(そら)を自(じ)由(ゆう)に飛(と)べなくても、

 飛(と)び方(かた)の原(げん)理(り)を学(まな)んでいけば、

 いつか星(ほし)にも手(て)が届(とど)くんだって

 家(か)庭(てい)教(きょう)師(し)の時(とき)に言(い)ってたね。」



「昔(むかし)の話(はなし)をよく覚(おぼ)えているわね。


 『星(ほし)を掴(つか)む』というのは流(なが)れ星(ぼし)の夢(ゆめ)、

 欲(よく)望(ぼう)の比(ひ)喩(ゆ)よ。


 そして話(はなし)が逸(そ)れてるわ。」



――いまのはヴィカロスの神(しん)話(わ)の話(はなし)かしら。



二人(ふたり)の話(はなし)に耳(みみ)を傾(かたむ)けて、

テーブルに置(お)かれた札(ふだ)を見(み)た。



札(ふだ)を置(お)いたハーフガンは

顎(あご)髭(ひげ)を撫(な)でて、静(しず)かに喜(よろこ)んでいる。



――せっかく、98を並(なら)べたのに、

  恐(きょう)慌(こう)札(ふだ)を出(だ)されてしまったわ…。



挿絵(By みてみん)



――ヴェールした札(ふだ)はないから、

  回(かい)収(しゅう)は無(な)いのよね?



商品(グッズ)をヴェールしていないので、

市(し)場(じょう)の札(ふだ)を手(て)札(ふだ)に戻(もど)す必(ひつ)要(よう)はない。



わたしの考(かんが)えを読(よ)んだスーが、

なにも言(い)わずに頷(うなず)いた。



恐(きょう)慌(こう)札(ふだ)を並(なら)べたハーフガンは、

公(こう)開(かい)している数(すう)字(じ)の0の札(ふだ)、

商(しょう)人(にん)札(ふだ)を手(て)にする。



「さっきの話(はなし)の続(つづ)きね。」



スーが瞼(まぶた)を閉(と)じては開(ひら)き、

金(きん)の睫(まつ)毛(げ)から碧(へき)色(しょく)の目(め)を覗(のぞ)かせる。



「一人(ひとり)の奴(ど)隷(れい)が風邪(かぜ)を患(わずら)います。


 荒(あ)れる海(うみ)の中(なか)で風邪(かぜ)は酷(ひど)く長(なが)引(び)き、

 奴(ど)隷(れい)は死(し)んでしまいました。


 船(ふね)の中(なか)には遺(い)体(たい)を埋(う)める土(つち)も無(な)く、

 焼(や)く為(ため)の薪(まき)も油(あぶら)も使(つか)えません。


 海(うみ)の上(うえ)ではお墓(はか)も作(つく)れませんでした。


 奴(ど)隷(れい)の遺(い)体(たい)は海(うみ)に投(な)げ捨(す)てられます。」



スーは低(ひく)い声(こえ)で、男(おとこ)の咳(せき)を真似(まね)する。



「すると、他(ほか)の奴(ど)隷(れい)も風邪(かぜ)を患(わずら)いました。


 次(つぎ)から次(つぎ)へと咳(せき)をして、

 呼(こ)吸(きゅう)もままならず苦(くる)しみ、

 眠(ねむ)ったまま起(お)きなくなります。


 奴(ど)隷(れい)達(たち)はこれを『呪(のろ)い』と言(い)いました。


 弔(とむら)われずに荒(あら)波(なみ)に落(お)とされた奴(ど)隷(れい)が、

 悪(わる)い魂(たましい)となって奴(ど)隷(れい)達(たち)を苦(くる)しめ殺(ころ)す

 と言(い)うのです。」



次(つぎ)は低(ひく)い声(こえ)で笑(わら)ってみせた。



「船(せん)長(ちょう)は笑(わら)いました。


 異(い)国(こく)の奴(ど)隷(れい)の言(こと)葉(ば)など、

 信(しん)じるはずもありません。


 しかし、呪(のろ)いを畏(おそ)れた奴(ど)隷(れい)達(たち)は騒(さわ)ぎます。


 ならばと船(せん)長(ちょう)は奴(ど)隷(れい)達(たち)に命(めい)じました。


 呪(のろ)いの禁(きん)止(し)です。」



「なんだそれは。」と、ハーフガン。



「呪(のろ)いという言(こと)葉(ば)を禁(きん)止(し)したのよ。」



「言(こと)葉(ば)遊(あそ)びで病(やまい)が治(なお)るもんか。」



「その通(とお)りね。


 あなたが聞(き)いて感(かん)じたことは

 誰(だれ)も否(ひ)定(てい)しないから、

 お話(はなし)を妨(さまた)げないことね。


 続(つづ)けていいわよ。」



「咳(せき)をした者(もの)、呪(のろ)いと口(くち)にした者(もの)、

 それらの奴(ど)隷(れい)を生(い)きたまま

 荒(あ)れる海(うみ)へと落(お)とします。


 それでも風邪(かぜ)は船(せん)員(いん)にも広(ひろ)まり、

 病(びょう)人(にん)は死(し)者(しゃ)へと変(か)わります。


 迷(めい)信(しん)を恐(おそ)れた船(せん)員(いん)までも海(うみ)に落(お)とされ、

 船(ふね)の中(なか)で命(いのち)を奪(うば)い合(あ)います。


 こんな状(じょう)況(きょう)でも船(せん)長(ちょう)は笑(わら)いました。」



「なにがおかしいんだ。」



「笑(わら)わずにはいられなかったのよ。


 迷(めい)信(しん)に揺(ゆ)れる船(ふね)は

 人(にん)間(げん)社(しゃ)会(かい)の縮(しゅく)図(ず)だもの。」



それを聞(き)いてハーフガンも黙(だま)った。



「やがて嵐(あらし)は過(す)ぎ去(さ)って、

 海(うみ)は穏(おだ)やかになりました。


 船(ふね)は海(うみ)を漂(ただよ)います。


 櫂(かい)を使(つか)う奴(ど)隷(れい)も、

 奴(ど)隷(れい)を使(つか)う船(せん)員(いん)も居(い)ません。


 甲(かん)板(ぱん)に残(のこ)ったのはただ一人(ひとり)。


 船(せん)長(ちょう)だけでした。」



スーが低(ひく)い声(こえ)で、咳(せき)払(ばら)いを一(ひと)つした。



「ニクス、聞(き)いてた?」



「…聞(き)いてたよ。」



――わたしはいま、それどころではないの。



8巡(じゅん)目(め)。



先(せん)手(て)のわたしは再(さい)度(ど)、同(おな)じ98を出(だ)した。

手(て)札(ふだ)は残(のこ)り3枚(まい)。



挿絵(By みてみん)



7巡(じゅん)目(め)で0の札(ふだ)を使(つか)ってしまい、

100の雷(らい)霆(てい)で勝(か)つ方(ほう)法(ほう)を失(うしな)った。



――あれ、これって…。もう終(お)わり?



10巡(じゅん)ルールでは手(て)札(ふだ)を先(さき)に無(な)くすか、

先(せん)手(て)後(ご)手(て)が10回(まわ)ずつ出(だ)し終(お)えた時(じ)点(てん)で

手(て)札(ふだ)が少(すく)ない方(ほう)が勝(か)ちになる。



そこに昼(ひる)と夕(ゆう)の星(ほし)札(ふだ)が市(し)場(じょう)に並(なら)べられた。



挿絵(By みてみん)



わたしの手(て)札(ふだ)の数(かず)は、

彼(かれ)の並(なら)べた星(ほし)札(ふだ)の課(か)税(ぜい)で2枚(まい)も多(おお)くなる。



彼(かれ)の手(て)札(ふだ)は残(のこ)り3枚(まい)になり、

課(か)税(ぜい)を受(う)けたわたしの手(て)札(ふだ)は5枚(まい)。



わたしはもう、

手(て)札(ふだ)を全(すべ)て無(な)くして勝(か)てなくなった。



9巡(じゅん)目(め)。

わたしが市(し)場(じょう)に貝(かい)札(ふだ)を置(お)く先(せん)手(て)番(ばん)。



運(うん)行(こう)の原(げん)則(そく)を逸(いつ)脱(だつ)する恐(きょう)慌(こう)札(ふだ)の前(まえ)札(ふだ)と、

後(あと)札(ふだ)には夜(よる)の星(ほし)札(ふだ)を並(なら)べる。



挿絵(By みてみん)



この2枚(まい)の札(ふだ)を並(なら)べることで、

小(ちい)さな値(あたい)が優(ゆう)位(い)になる逆(ぎゃく)順(じゅん)に変(か)えた。



わたしは恐(きょう)慌(こう)札(ふだ)を並(なら)べたので、

公(こう)開(かい)している0の商(しょう)人(にん)札(ふだ)を手(て)札(ふだ)に加(くわ)える。



ハーフガンは星(ほし)札(ふだ)による課(か)税(ぜい)――、

厳(げん)密(みつ)には還(かん)付(ぷ)を受(う)けて手(て)札(ふだ)が1枚(まい)増(ふ)える。



ハーフガンはスーに前(まえ)もって言(い)われた通(とお)り、

市(し)場(じょう)の商品(グッズ)にヴェールをしていない為(ため)、

彼(かれ)の手(て)札(ふだ)は4枚(まい)になった。



わたしの手(て)札(ふだ)も残(のこ)り4枚(まい)。



最(さい)後(ご)の10巡(じゅん)目(め)で貝(かい)札(ふだ)を並(なら)べても、

手(て)札(ふだ)が無(な)くならない。



後(ご)手(て)のハーフガンは04の貝(かい)札(ふだ)を並(なら)べ、

彼(かれ)の手(て)札(ふだ)は残(のこ)り2枚(まい)になった。



挿絵(By みてみん)



値(あたい)の評(ひょう)価(か)は逆(ぎゃく)順(じゅん)のまま。



「負(ま)けね。」サンサがアルに囁(ささや)く。



10巡(じゅん)目(め)。



ハーフガンの並(なら)べた04よりも

小(ちい)さな値(あたい)の貝(かい)札(ふだ)を作(つく)れなければ、

わたしは包(ほう)囲(い)されて負(ま)けになる。



――01。



挿絵(By みてみん)



「これで、わたしの勝(か)ち?」



スーがこちらを見(み)て頷(うなず)いた。



「相(あい)変(か)わらず弱(よわ)いわねぇ。」



「ヴェールが出(で)来(き)ねえんだから、

 手(て)加(か)減(げん)してやったんだよ!」



「ヴェールで回(かい)収(しゅう)しても、

 10巡(じゅん)の枚(まい)数(すう)差(さ)で負(ま)けてるわよ。


 星(ほし)札(ふだ)も持(も)っていなければ

 秩序化(オーダー)もできないのに、

 99だけ手(て)元(もと)に残(のこ)してどうするのよ?」



ハーフガンの手(て)札(ふだ)も見(み)ずに

サンサは彼(かれ)を責(せ)める。



「ちっ!」彼(かれ)の舌(した)打(う)ちが庭(にわ)に響(ひび)く。



「舌(した)打(う)ちは禁(きん)止(し)だよ。」



「お前(まえ)があんな話(はなし)をするからだぞ。」



「負(ま)けた言(い)い訳(わけ)を並(なら)べても、

 勝(か)ったことにはならないわよ。」



「詐(さ)欺(ぎ)師(し)め…。」



悔(くや)しさを滲(にじ)ませるハーフガンと、

喜(よろこ)び笑(え)みを浮(う)かべるサンサ。



わたしは長(なが)い溜(た)め息(いき)を吐(つ)くと、

去(さ)り際(ぎわ)のハーフガンにまた酷(ひど)く睨(にら)まれた。



 ◆ 第(だい)5章(しょう) 『混(こん)濁(だく)の庭(にわ)』 おわり

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