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金貨の娘  作者: 之#u4e4b
第1章 悪夢の檻

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第1章 第1節 丘上の館(第1項)

――もう(だれ)も、

  わたしの()(まえ)()びはしない。



(うつ)ろを()つめるわたしに()()けたのは、

(こと)()(はっ)さない(あし)(もと)(ねずみ)だった。



挿絵(By みてみん)



(くら)(にび)(いろ)(ねずみ)はわたしの(あし)(ゆび)(かじ)って、

わたしの()(かく)(にん)する。



なにをされたのか()(かい)できず、

(はん)(しゃ)(あし)()いて(いた)みから()げた。



この(うご)きに(おどろ)いた(ねずみ)()ねて部屋(へや)()げ、

わたしが()ぬのを(ろう)()()つ。



部屋(へや)(ろう)()を、

(ふる)()びついた(てつ)(ごう)()(へだ)てる。



この()(しょ)は、(あく)()(なか)(ろう)(かん)



(なん)()()ても、(なん)()()きても、

(ゆめ)から()めずに、いつもの()(しょ)

いつもの(くら)(やみ)、いつもの(あく)()



(とお)くの()(ぐち)から(まよ)()んだ()かりが、

(くら)(やみ)(あい)(まい)(りん)(かく)()()す。



(かべ)(すき)()から(みず)()み、

(ゆか)には(かび)(くろ)(かげ)(つく)る。



(わず)かな(ひかり)(なか)でも蜘蛛(くも)()()み、

()(もの)()かるのを()っている。



(ほそ)くなった(ゆび)(ほそ)くなった(ひざ)(かか)えて、

(かす)()(しゅう)()(なが)めた。



わたしのベッドは(つち)()った(だい)()で、

(かたち)(うしな)いつつある(つち)(くれ)()(なか)(ゆだ)ねる。



(てつ)(ごう)()(しん)(すい)()(しょく)し、(ゆが)んでいる。



この()()(おり)()れられて、

(なん)(にち)()ったかは()からない。



(かん)(しゅ)()なければ、(しょく)()(はこ)ばれない。



湿(しめ)った(くう)()()ざる(かび)(しゅう)()にも()れ、

()(くう)()()(よう)(ぶつ)(しゅう)()にも()れた。



(あま)()()くような(しゅう)()(じゅう)(まん)する。



(なが)(くう)(ふく)()()(そく)で、

(あたま)(なか)には(つね)(もや)がかかっている。



()()()(ねずみ)蜘蛛(くも)などは、

(えさ)(もと)めて(とも)()いを(はじ)める。



(つぎ)()()ます(とき)は、

これが(ゆめ)であればと(ねが)って、

また(まぶた)()じて(あさ)(ねむ)りにつく。



(かお)(ちか)くを()()(はえ)

(みみ)()(よこ)()(おと)()て、

(ねずみ)(ふたた)(あし)(ゆび)(かじ)り、

わたしの(すい)(みん)(ぼう)(がい)した。



(ぬの)()れを(あたま)まで(かぶ)っても(ねむ)れずに

()(かい)(かん)から(つめ)(とう)()()(むし)る。



それから(くび)()(なか)()(えだ)のような(うで)

(ふく)()()(すき)()()()れて

(ろっ)(こつ)()いたお(なか)(あか)(つめ)()ぐ。



いまは(ぜん)(しん)()(かい)(かん)(つつ)まれている。



――こんな(ふく)を、

  チュニックと()べるのかしら…。



チュニックと()ばれるこの(ふく)は、

わたしの(くに)では()(れい)()せる

とても()(まつ)(ぬの)だった。



(ほん)によるとこの(ふく)(つく)(かた)(かん)()で、

どこにでも()えて(すい)(ちょく)()びる

(なん)()(そう)(つく)られる。



挿絵(By みてみん)



(ばっ)(さい)した(なん)()(そう)(くき)(たた)いて(やわ)らかくし、

(かん)(そう)させて(せん)()にする。



(たい)(りく)にあった(せん)()(だい)(よう)(ひん)なので、

ペヌンとも()ばれている。



挿絵(By みてみん)



(せん)()のペヌンを()き、(ほそ)(なが)(いと)(つむ)ぎ、

(ふく)(すう)(いと)(なら)べて()るし、(よこ)から(いと)

(なん)()(こう)()させて1(まい)(ぬの)()る。



(しつ)(わる)(ぬの)(もと)から(はだ)(ざわ)りが()われず、

パンの(げん)(りょう)(こく)(もつ)のブレズの

()(じつ)()める(ふくろ)だった。



挿絵(By みてみん)




(ふくろ)(いた)めば()(れい)(よう)(ふく)(てん)(よう)される。




チュニックはペヌンで()られた(たて)(なが)(ぬの)(ぶくろ)(そこ)(がわ)を、

(ちゅう)(しん)から(はん)(えん)()り、(あたま)(とお)(あな)(つく)る。



(ぬの)(ぶくろ)(わき)(うで)(とお)()(しょ)(つく)れば、

()(れい)()せる(ふく)、チュニックが(かん)(せい)する。



挿絵(By みてみん)



ロープと(どう)(よう)に、()(ざつ)()かれた

(せん)()のペヌンで()られたこの(ぬの)は、

(くび)(まわ)りに(えり)がなくて()()(いた)く、

(つね)(かゆ)みを(あた)える。



(りょう)(わき)()(いと)()りなくて、

(さい)(しょ)から(なん)()(しょ)(ほころ)(やぶ)れている。



――()(ぶん)(ひく)(もの)()(ふく)

  チュニックではなくて、

  ()()(しつ)(わる)いから、

  ()(れい)はこんな(ふく)()せられるのね。



(ほん)から()られない()(しき)(ひと)(なっ)(とく)した。



(みじ)めな(かっ)(こう)

(あさ)ましく身体(からだ)(じゅう)()いても、

(しか)られないこの(あく)()(なか)では

()(とう)(ぼう)(りょく)(ちょう)(しょう)もされない。




(ろう)()(おく)の、(こう)()(さき)にも(おり)がある。



(かお)()こすと、()かいの(おり)にある

(ぶっ)(たい)()(かい)(はい)った。



あるのは(ひと)つ。(やみ)(いろ)(ぶっ)(たい)



(いのち)()(うしな)った()(たい)



()(たい)(あま)()()くような()(しゅう)(はな)ち、

その(しゅう)()はこの()()だけではなく、

わたしの()(くう)(あたま)(なか)まで(せん)(りょう)する。



(うご)かないものの(うえ)を、(しろ)(うじ)(うごめ)く。



()(たい)()()けた(はえ)(たまご)(うじ)になり、

()(たい)(うじ)(ねずみ)(えさ)になる。



――わたしが()ねば、(ねずみ)()べられ。

  (ねずみ)()ねば、(うじ)()べられる。



――(せい)(めい)(じゅん)(かん)する。

  (ほん)()かれている(とお)りだわ。



(おり)(かべ)から()()(わず)かな(みず)

(かび)()やし、(ゆか)()みるばかりで、

()(よう)(ぶつ)(あら)(なが)してはくれない。



――(みずうみ)から(あふ)()(みず)(みずうみ)(もど)らない。



わたしの()(こう)はこの()(みず)のように、

(ゆか)(つち)(なか)へと()えていく。



()びた(つめ)()み、()まった(あか)(くち)にした。



――わたしの身体(からだ)鍍金(めっき)…。



これがこの(おり)での(ゆい)(いつ)(しょく)()になる。



(たい)(しゃ)によって(はい)(しゅつ)されたものは、

(くう)(ふく)()たしてはくれない。



(ほお)(たた)かれた(とき)

()(あん)(てい)になっていた(おく)()()けて、

()のひらに()()した。



(くち)(なか)()()いて()る。



――(どう)()(あじ)がする。



(どう)(こう)()()べられるものではないのに、

()(あじ)はこのように(けい)(よう)される。



わたしはもうずっと、

まともな(しょく)()をしてない。



()()(おり)()ごすわたしは、

(ちゅう)()(かん)(かく)(うしな)っている。



(ほし)(くさ)()いた()()()もなければ、

(ほん)(だな)(みずうみ)()(わた)(まど)もない。



(あた)えられた(ぬの)()れは(うす)(あな)だらけで、

(ろう)()から(なが)れる(つめ)たい(かぜ)

(ふせ)いではくれない。



(ぬの)()れに(つつ)まれたまま

(あやま)って()(あし)()ばせば、

すぐに(やぶ)れてしまう。



(ぬの)()()(かぞ)()れない。



ここにあるのは()(たい)(ちい)さな(せい)(ぶつ)と、

(とお)(ろう)()()かりしかない。



()()(ひかり)(もり)(みどり)

(とう)から(なが)めた(みずうみ)(あお)さを

(わす)れかけている。



(くら)(やみ)と、(くろ)(こけ)(てつ)(ごう)()蜘蛛(くも)()を、

(ぬの)()れの(すき)()から(なが)める。



()のひらに()()ちた(あか)(かみ)()も、

ここではなんでも(くろ)()える。



()(しゅう)(いと)い、

()()には(だれ)姿(すがた)()せない。



――(はや)(ねむ)ろう…。



また()()じて、(あく)()(なか)(あく)()(のぞ)む。



わたしはこの退(たい)(くつ)(おり)(なか)(ひと)り、

()()っていた。




 ◆ 





()()(おり)に、(かい)(だん)()りる(あし)(おと)(ひび)く。



(あつ)(くつ)(おと)

それともう(ひと)つ、(やわ)らかな(かわ)(ぐつ)(おと)



()()ましたわたしは

(ちか)くの(ぬの)()れを(かぶ)り、

(りょう)(みみ)(ふさ)いで()(かた)()じた。



(いし)(くれ)のように身体(からだ)(まる)くして、

()(きょう)(ひろ)(みずうみ)(おも)()かべた。



(まぶ)しい(ひかり)(はん)(しゃ)する()(めん)

()りや(あみ)(りょう)をする(まる)()(ぶね)



(みなみ)()けばその(さん)(ちょう)(くも)(いただ)く、

(ゆう)(だい)(てん)(がい)(さん)()(まえ)(そび)える。



(あし)(おと)はさらに(ちか)()き、

(てつ)(ごう)()(とびら)()けられる。



(ふと)(こえ)大人(おとな)(おとこ)(たち)(かい)()



(はっ)せられた()(せい)(ろう)()(はん)(きょう)する。



(みみ)(ふさ)()のひらから、

(しん)(ぞう)(はく)(どう)(つた)わる。



――(はや)(ねむ)ろう。(はや)く…。



(ちから)()めて(あせ)れば(あせ)るほど

(ねむ)りから(とお)のく。



すると(ぬの)()れが()()られ、()()られた。



わたしの身体(からだ)(ぬの)()れごと()(たお)され、

(おどろ)いて、()(めい)()てしまい、

(さむ)さで()(きざ)みに身体(からだ)(ふる)わせた。



「こっちを()ろ。」



ランタンの灯火(ともしび)真赤(まっか)(かお)(するど)()

(あか)()()もれた、獣のような(かお)をした(おとこ)



挿絵(By みてみん)



(くろ)(うで)(くろ)(あし)



(ふと)()(みぎ)(うで)(つか)んで()たされると、

わたしの()(しき)はそこで()()れた。



――(ゆめ)だった。まだ(ゆめ)だと(おも)う。



(つぎ)()()めると

(しゅう)()(ひど)(まぶ)しくて、

()(ぢか)(ぬの)()にして(かお)(おお)った。



その(ぬの)()()っても(やぶ)れず、

(おり)(ぬの)()れではなかった。



『キャッ!』



『おいっ。(はな)せっ!』



(おんな)(たか)(こえ)

()(こく)()(めい)()(こく)(こと)()



(しら)()(かい)(なか)()かび()がる、

()たような(かお)をした二人(ふたり)



挿絵(By みてみん)



わたしはその(うち)一人(ひとり)から、

(みぎ)()(ふく)(すそ)()()っていた。



()()めた()(しょ)

()(うご)()()()()(しゃ)(ゆか)で、

(たい)(りょう)(ほし)(くさ)(うえ)には(じゅう)(たん)()かれていた。



(たた)いて(やわ)らかくなった(ほし)(くさ)が、

(はげ)しく()れる()(しゃ)(しん)(どう)(きゅう)(しゅう)する。



(しゃ)(ない)には(くさ)(あお)(にお)いと、

(おんな)(たち)(こう)(りょう)(にお)いが()ざっている。



挿絵(By みてみん)



()(はだ)()(がら)(おんな)がわたしの(みぎ)(うで)(つか)む。



(きょう)(こう)をして(ほそ)(けん)()く。



わたしは(なん)()(まばた)きを()(かえ)し、

(しゅう)()(なが)めて()(ほそ)め、

(はだ)()れた(くび)()いた。



(おり)(ぬの)()れも()(たい)()いのに、

身体(からだ)(かゆ)みは(ゆめ)(つづ)きのままだった。



(ゆめ)(なか)で、(すわ)っている()(こく)(おんな)

一人(ひとり)から()(せい)()びた。



わたしは()(かお)二人(ふたり)(おんな)から

()らない(こと)()()()られながら、

(おも)たい(かわ)(みず)(ぶくろ)とパンを(もら)った。



()え、(しょく)()。』



(おんな)(たい)(りく)()使(つか)っても(はつ)(おん)(めい)(りょう)で、

わたしに(つう)じるように

()()()()りを()(かえ)す。



(きょう)(こう)(おんな)はわたしを(けい)(かい)して(にら)む。



身体(からだ)(おも)(どお)りに(うご)かず、()()がれず、

わたしは()(じょう)(たい)のまま(みず)()むと、

(のど)(とお)らなくて()()んで(こぼ)した。



(かた)いパンを(ふる)える(ゆび)の、

()びた(つめ)()()って(くち)(ふく)んでみても、

()(かい)(かん)()()げて、(じゅう)(たん)(うえ)

(みず)()()してしまった。



(のど)(いた)みに(なん)()()()んで、

(はな)(いた)さに()きたくなったけれど、

(なみだ)()れて()なかった。



()(しゃ)()まり、(ぎょ)(しゃ)(だい)への(とびら)(ひら)かれる。



(しろ)(ひげ)(たくわ)えた(ろう)(ぎょ)(しゃ)(となり)に、

あの(あか)(けもの)(かお)をした(おそ)ろしい(おとこ)()た。



挿絵(By みてみん)



わたしの()(おく)はまた(おぼろ)()になり、

しばらく(おう)()(ふく)(つう)()(かえ)した。



――あの(おり)(もど)りたい。



()(つう)(なか)で、()(ぜん)とそう(ねが)った。



わたしは(ねつ)()して

()たきりだったせいもあり、

()()(おり)()てから(なん)(にち)宿(やど)()まった。



(ねつ)(おさ)まれば(けもの)(おとこ)(かか)えられ、

わたしは()(しゃ)(なか)(ほし)(くさ)(うえ)で、

(ゆか)()たままどこか(ひがし)へと()(どう)した。



()(どう)(ちゅう)(しょく)()は、

パンを山羊(やぎ)のお(ちち)()かした

(かゆ)だけだった。



()(どう)()(ちゅう)でわたしの(ねつ)(ひど)くなった(ため)に、

また(なん)(にち)宿(やど)()まることになる。



(あま)(おと)(えん)(らい)(あたま)(なか)(ひび)く。



(はつ)(ねつ)でなにも(かんが)えられず、

(かす)()は、よく()(かお)をした

二人(ふたり)(おんな)()(ぜん)()っていた。



――()(れい)(ふく)、チュニックの(おんな)

  わたしの(かい)(じょ)をしてくれるひと。



二人(ふたり)(なつ)かしさを(おぼ)える。



――これは、(だれ)なのかしら…。



()(おく)(なか)(おぼろ)()姿(すがた)



(みずうみ)()()ろす(とう)(なか)にある

わたしの部屋(へや)(おな)景色(けしき)に、

いくつもの(かお)(かさ)なり(かす)む。



わたしには()()()た。



(かず)(おお)()()()だけれど、

いまとなっては()()(たち)(かお)は、

(だれ)一人(ひとり)として(おも)()せない。



わたしは()まれた(とき)から

(はは)()らなかった。




 ▶

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