表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
金貨の娘  作者: 之#u4e4b
外章 天蓋の島

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

152/163

外章 第2節 蹄跡の街(第1項)

挿絵(By みてみん)



(あさ)になるとハンドベルが(たた)()らされ、

()(ども)(こえ)(とお)くに()こえる。



()()(いん)(たて)(もの)(となり)には、

(あか)(れん)()()()しになった(べっ)(かん)がある。



そこは()(なん)(じょ)()ばれる()(しょ)で、

(しょう)()(ぼう)(きゃく)から()げられるように

(そう)(とく)だった(ちち)(おや)(よう)()した。



トリンに()された(わたし)(びょう)(いん)()け、

この()(なん)(じょ)(まい)()()ごして

(あさ)()るのを()った。



()(ぞく)(ころ)されて()()になった(とき)も、

(わたし)はこの()(なん)(じょ)()ごした。



(べっ)(かん)(なか)にある(すう)(だい)()()()と、

(さむ)さを(しの)(ため)(だん)()()わっていない。



(ふる)くなった(もう)()(わず)かばかりの(ほん)



(ほか)()られてしまい、

ここには(さい)(てい)(げん)(もの)しかない。



――(よく)()(げん)(ふん)(すい)ね…。



(ほし)(どり)…。おはよう。」



「おはよう、クイナ。」



挿絵(By みてみん)



(わたし)(すわ)っていた()()()(もう)()(なか)から、

(あか)(がみ)(しょう)(じょ)()()がって(うで)(つか)んだ。



(わたし)はゼラチンを()ぜたインクで(かみ)()め、

(みち)(ばた)()(しょう)()(いつわ)(ほし)(どり)()()っている。



(ため)した(せん)(ぱつ)()(ごと)(しっ)(ぱい)して、

()()(はん)(てん)()(めい)()(らい)になった。



挿絵(By みてみん)



(ほし)(どり)()(がた)(とり)

(くら)(にじ)(いろ)()()(しろ)(はん)(てん)があり、

()(ほし)(ぞら)()つ。



(せい)()になれなかった(とり)――、

というのはサンサの(つく)(ばなし)



(ふゆ)(まえ)(きた)のゼズ(さん)(みゃく)(みなみ)(やま)(ふもと)にある

(えい)(そう)()(はな)れ、(あたた)かなこの(まち)(おとず)れる。



(くろ)(くも)(つく)るほどの

(おお)きな()れで()(どう)して(さわ)がしい(ため)

(のう)(かん)()にやってきた()(かせ)ぎの(ろう)(どう)(しゃ)や、

(おご)った(あい)()(べっ)(しょう)として使(つか)われる。



「ここに(のこ)ってくれるの?」



「クイナが()きてから、

 ここを()()くつもりだったからね。


 ちゃんとクイナに、

 お(わか)れを()いたかったんだよ。」



()(くび)にしていた(てい)(てつ)のお(まも)りを(はず)す。



(しょく)(しょ)(おな)(きん)()(ひも)の、

鍍金(めっき)がされた(てい)(てつ)のお(まも)りを

クイナの()(おさ)める。



「これをあげるよ。

 ここに()めてくれたお(れい)――。」



()らないっ!」



クイナは()にしたお(まも)りを()げられず、

ベッドに()いて(わたし)のお(なか)()きつく。



()ていたアルが()()き、

(たな)(うえ)()()した。



クイナは()()なのに()()(いん)(たて)(もの)ではなく、

この()(なん)(じょ)()らしている。



(かの)(じょ)(とう)(ぞく)(だん)(とも)()らしていたせいで、

(ほか)()()(たち)とは(きょ)()()いていた。



「ずっとここに()てよ。」



明日(あした)も?」



クイナは(わたし)()きついたまま(うなず)く。



昨日(きのう)(よる)も、

(かの)(じょ)()るまで(わたし)()()()(つづ)けた。



――ここで()らすクイナにも、

  退(たい)(くつ)()()(がい)(えら)べるものが

  ()いんだね…。



この(べっ)(かん)()ごしていた(ころ)(おも)(かえ)す。



「クイナは(わたし)とずっとここで()らして、

 大人(おとな)になったら(しょう)()になるのかな?」



(わたし)(しつ)(もん)(かお)()げた(かの)(じょ)は、

()(なみだ)()らしながら(くび)(よこ)()る。



クイナは()(ぶん)()()()っていることを、

(あたま)では()(かい)している。



(かの)(じょ)(みじか)(じん)(せい)(けい)(けん)(なか)では、

()()としての()らしも、(しょう)()になることも、

(いま)だに()()れられずにいた。



明日(あした)()(ぶん)(そう)(ぞう)して、

 今日(きょう)()(ぶん)(ほこ)れる(こう)(どう)をしなさい。

 ってね。」



(うわ)()(そで)(なみだ)(ぬぐ)ってあげると、

クイナは(はな)(すす)って(なみだ)(こら)える。



(かの)(じょ)(たい)(りく)には()れていけない。



()()(あい)()でも(ひと)(さら)いになってしまうし、

(おさな)身体(からだ)での(なが)(たび)(たい)(りょく)()たない。



クイナは()(しき)があって()(しん)()っていても、

(こう)(どう)(うつ)すのは()(ぼう)と自分で()(かい)している。



(どう)(くつ)(こう)から()たファウナも(おな)じで、

(かの)(じょ)はいつも()()げていた。



()(きょう)()(かえ)りに()られる(あん)(ねい)()て、

(やかた)(だっ)(そう)したのはあの()だけだった。



「…もう()くの?」



(みずうみ)から(あふ)れた(みず)は、

 (かわ)になって(うみ)(なが)れるんだよ。」



(わたし)(かの)(じょ)(まえ)(がみ)()でて(ととの)える。



「…なに、それ?」



(みずうみ)から(あふ)()(みず)は、

 (みずうみ)には(もど)らない。』



ネルタで()らしていたクイナは

この(ことわざ)()っているからこそ、

(わたし)(こと)()()()(さぐ)ってくれる。



()(かげ)(にわ)で、

(ひがし)(がわ)()()(すわ)っていた(ころ)(おも)()す。



(わたし)(ちい)さく(のど)()らす。



(わたし)(たち)()(せん)(てん)(こう)(いの)ります。


 (てん)()(せい)()(てん)(たい)(うん)(こう)調(しら)(はじ)め、

 (まい)(にち)()わる(かげ)(なが)さから(たい)(よう)

 (つき)(かたむ)きを(かん)(そく)しました。


 (かぜ)(つめ)たさ、(くも)(おお)きさ、(あめ)(りょう)

 (つち)(あたた)かさや(どう)(しょく)(ぶつ)(へん)()(かん)(さつ)して

 (のこ)すひとも()ます。


 (たて)(もの)(せっ)(けい)()、お(かね)(けい)(さん)

 (さく)(もつ)(ふく)(りょう)()(つく)(かた)(しる)しました。


 (ほう)(せき)(はな)(せい)(ぶつ)(うつく)しさや(いさ)ましさ、

 (よわ)さや(みにく)さを()()(うた)われます。


 こうして(ほん)というものは、

 ()れる(はな)(はかな)さを(つた)えてるのよね。」



「…うん? (ほん)()()?」



クイナは(こん)(わく)するだけではなく、

(わたし)(はなし)(うなず)いて()()()(かい)する。



(ほん)()いたひとは()(ぶん)()(しき)を、

 (こう)(せい)(つた)える(もく)(てき)があったはず。


 ()(しき)(はっ)(てん)させる(ため)に――、

 (はん)(しょく)(おな)じだね。


 ()(しき)()ければ(れき)()()(かえ)され、

 (じん)(るい)はいまも(いし)(うす)(まわ)(つづ)ける。


 クイナはこれから

 もっと(おお)くの()(しき)()(ため)に、

 (いろ)(いろ)なひとに()()って()しいの。


 だから(ひと)つの(もく)(ひょう)として、

 (あか)(つち)(おか)()()すといいよ。」



(しょう)()(いや)よっ。


 わたしはお(じょう)(さま)にも(えら)ばれなかったのよ。


 みんながみんな、

 ノーラみたいな(けい)(しゅう)

 なれるわけないのに。」



クイナの(そっ)(ちょく)()(けん)(わたし)(わら)ってしまう。



(よる)(やかた)ではどんなに(すぐ)れたドレイプでも、

(けい)(しゅう)()めたりはしない。



()()(しょう)(かん)(あふ)れる(ほう)(まち)で、

この()(こと)()(あい)()(けい)()して

(しょう)()(あつか)いする(とき)使(つか)われる。



(まち)()(こう)として()られるアイリアや

()(ざい)()として(たい)(せい)したソフィなど、

(おんな)(かつ)(やく)(ねた)()()(ふく)まれる。



(よる)(やかた)のドレイプを()りもしないのに、

 ()(てい)するクイナは(むかし)(わたし)(おな)じね。


 ()んでもいない(ほん)(なか)()は、

 (かた)れはしないはずだよ。」



「うぅ…。」



(しょう)()というのは(いや)しい(しょく)(ぎょう)で、

(わたし)(かの)(じょ)(おな)じく()(しょ)(かん)()てない。



()(だい)から(そん)(ざい)する(れき)()ある(しょく)(ぎょう)でも、

(でん)(とう)として(ほこ)りをもって(はたら)けはしない。



(はだ)(かさ)ねるのは(どう)(ぶつ)(てき)(こう)()()ぎない。



(かい)(らく)()()てに(よく)(かい)(しょう)したい(にん)(げん)と、

(せい)(かつ)()(かせ)(ため)()(きょう)した(ふた)つの(にん)(げん)



これを(じゅ)(きゅう)――、

(じゅ)(よう)(きょう)(きゅう)という(けい)(ざい)(こと)()(よそお)

便(べん)()(てき)()てはめたに()ぎない。



(どう)(ぶつ)(よっ)(きゅう)()(よう)して、

(にん)(げん)(しゃ)(かい)(しょう)(ばい)()()みが(こう)(ちく)された。



(せん)(ぎょう)(ひと)つで、(こう)(しゅう)()(あら)(じょ)や、(ふん)(すい)(ぬま)

(みず)(たま)り、(どぶ)などに(たと)えられ、(さげす)まれる。



(こう)(きゅう)(しょう)(かん)(しょう)()になったところで、

(せん)(ぼう)()けられるとは(かぎ)らない。



(はな)寿(じゅ)(みょう)(みじか)い。


(ほん)()(しき)()ただけの

(せま)()()(あさ)(けい)(けん)しか()たない(わたし)を、

()(てい)(きょう)()でやってきたドレイプが(くつがえ)した。



『サンサ』。



挿絵(By みてみん)



(こう)(せい)()(まえ)(かた)(おんな)



エルテル(りょう)から()たという

(みぎ)(うで)()(きず)(もの)(しょう)()は、

(だれ)にも()うことのできないドレイプと

この(まち)(たか)(だか)(せん)(でん)されていた。



(ひかり)()()(くろ)(かみ)

(あや)しい(しょう)()()(てい)(きょう)()にさせられた(わたし)は、

()()って()もなく(かの)(じょ)()(しき)(ため)した。



――(あさ)はかだったね。



サンサは(にっ)(しょく)(にち)()(はか)り、

(なが)(あめ)()わりを(ただ)しく()()て、

(まっ)(くら)(そら)()(なが)(ぼし)()せてくれた。



()(しょ)(かん)のどんな(ほん)にも()っていない、

()(みょう)(ほう)()()(しき)()っていた。



(かの)(じょ)(にっ)(しょく)(りゅう)(せい)(ぐん)()てられたのは、

(しま)(こよみ)(おお)(はば)(へだ)てられていた(ため)で、

いまでは()(ゆう)(げん)()()かった。



()(ゆう)()かったおかげで

(わたし)()()()(かい)できて、

()(ぶん)(しつ)(ぼう)せずに()んだ。



(わたし)()(しん)がなにも()らないということを

サンサから(まな)んだ。



そんな(わたし)はクイナに、

()(ぶん)()てきた()()景色(けしき)

()せてあげたかった。



()(こく)(たび)()れて()くよりも、

(よる)(やかた)()()のクイナには()(ぢか)

()(そう)()(しょ)になる。



(よる)(やかた)(はい)ったからって、

 ドレイプになる(ひつ)(よう)はないんだよ。」



クイナは(やかた)(はい)れる(ねん)(れい)()たない。



(かの)(じょ)(すで)に、

(にん)(しょう)(かん)()()()ができるほどの

()(しき)(おお)(そな)えている。



()(ぼう)(えい)()(あつ)まる(よる)(やかた)だものね。

 ふふっ。


 あの()(しょ)にはあなたにとっての

 (みち)(しるべ)があるはずだよ。」



(わたし)(てい)(てつ)のお(まも)りを(ゆび)(はら)()で、

(ひょう)(めん)(ほどこ)された鍍金(めっき)(ぬぐ)()った。



――ニースだね。



(きん)のお(まも)りは(あか)(どう)へと()わり、

(あか)(かみ)をした(かの)(じょ)(あたま)(よこ)(かか)げた。



クイナが()()ってくれるのを()つ。



(かの)(じょ)()()(かん)(じょう)(こら)えきれず、

(ふたた)()から(なみだ)(こぼ)()ちる。



(うみ)に…、(うみ)(なが)れたら、

 わたし(たち)、もう()えないのよ。」



(なみだ)するクイナは()()けて、

(てい)(てつ)()()ってくれた。



ニクスから(もら)ったお(まも)りを、

(わたし)はクイナに(たく)したかった。



「いつか、あなたにも()えるよ。」



「だって、そんなの…

 (こん)(きょ)がないわ…。」



クイナにとってその()(らい)が、

いまではまだ(えい)(えん)にも(おも)えるかもしれない。



また()(つづ)けるクイナを(りょう)(うで)()きしめた。



(わか)れも()げられなかったひと(たち)

(おも)()して、クイナと(おな)()()ちになる。



(かの)(じょ)身体(からだ)(なえ)()のように(ほそ)く、

(かぜ)()かれた(えだ)()のように(ふる)えている。



(わたし)はあの()、ウラの(たましい)()(おく)った(みどり)(うえ)

(うた)った()をクイナに()かせた。




 ▶

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ