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金貨の娘  作者: 之#u4e4b
外章 天蓋の島

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外章 第1節 黎明の鐘(第1項)

(くろ)(ねこ)のアルが、また(わたし)()()ってきた。



(むね)への(しょう)(げき)()()けたのに(あさ)ではなく、

(てん)(まど)から(げっ)(こう)()()(よる)だった。



(しゅう)(かく)(さい)(げき)(じょう)(かん)(げき)()えた()()(なか)



アルは(わたし)(むな)(もと)には()なかった。



「ぶあっ!」



(いた)さと(いき)(ぐる)しさに()(きゅう)ができず、

(せき)をすると(のど)()まった(えき)(たい)

(かお)()(さん)した。



(かお)()こうと()(うご)かしてみたけど、

()(あし)(うご)かせずに(げき)(つう)(ぜん)(しん)(おそ)う。



ベッドの(うえ)身体(からだ)(ちから)(はい)らないまま、

(まばた)きを()(かえ)す。



「トリンッ! なんでっ?」



ニクスが()(めい)(ちか)(さけ)びを(はな)つ。



(よる)なのにトリンが部屋(へや)()る。



「ニクス…トリッ…?」



()(まえ)()べないトリンの(くら)()が、

(わたし)()()ろしていた。



挿絵(By みてみん)



トリンはネルタの(もと)()(ぞく)()で、

(だい)()(かく)(めい)から(くに)(はな)れて(とう)(ぞく)(だん)()た。



その(とう)(ぞく)(だん)も1(ねん)(まえ)(かい)(めつ)した。



()()になったトリンの(ひとみ)

(げっ)(こう)(なか)でも(くら)い。



()(まえ)()ぼうとしたのに、

()(ない)(よう)(ぶつ)ではない(えき)(たい)(のど)(ぎゃく)(りゅう)する。



(むね)(いき)(ぐる)しさに(なん)()()()み、

(した)(ひろ)がる(どう)()(あじ)(しゅう)()

それが(わたし)()(しん)()だと()かった。



()(むね)から()き、身体(からだ)(じゅう)から(いっ)(しゅつ)していく。



(むね)(ひょう)(めん)(ねつ)(ひろ)がると(たい)(ない)(ねつ)(うす)れ、

()(あし)(さき)から(つめ)たくなっていくのを(かん)じた。



(いた)みに()えて、()()けるのも()(ろう)(ともな)う。



ニクスとトリンが(こう)(ろん)をしている。



――ニクスは…トリンの…。



(あたま)(なか)()(はい)していた()(しき)(よく)()せ、

(そう)(せん)()けてしまった(かん)(かく)(おそ)われる。



(いた)みと(くる)しさで(かんが)えがなにも()かばない。



なにも(かんが)えられなくなる。



サンサに()(あず)けて(たお)れるトリン。



挿絵(By みてみん)



――()ぬと、なにも()くなるんだ…。



(こわ)くて身体(からだ)(ふる)えた。



(ひかり)(かげ)(おと)(ねつ)(ぜん)()が、

()(もや)(つつ)まれていく。



(わたし)はハーフガンに()()げられて、

メノーの(びょう)(いん)()れていかれる。



サンサの(こえ)がアルを()ぶと、

その(くろ)(ねこ)(わたし)(むね)()()った。



――(おも)た、くない…。



(くろ)(たい)(もう)(おお)われたアルは

(げっ)(こう)(なか)(りん)(かく)(つく)り、

(まっ)(くろ)(どう)(こう)(ひろ)げて(わたし)()つめる。



挿絵(By みてみん)



――アルムデナ。



(あたま)(なか)でその()(まえ)()ぶと(らい)(めい)(とどろ)き、

(わたし)()(しき)はそこで()()れた。




 ◆ 




(わたし)()()ました。



湿(しめ)った(くう)()のする()わった部屋(へや)



(しっ)()(しょく)(だい)(ふと)(ろう)(そく)(ちい)さな()が、

なにもない部屋(へや)(かべ)(つめ)たく()でる。



(だい)()には()()れた(かわ)(ぶくろ)がある。



(いき)(ぐる)しさからは(かい)(ほう)され、

(むね)(いた)みもなくて()(あし)(さき)まで(うご)く。



(いし)のベッドの(うえ)(じょう)(たい)()こそうとすると、

(むね)(おも)たくて(くび)だけを()こす。



「…アル。()らないで。」



(おも)さの(しょう)(たい)()()いて()()ければ、

アルは(わたし)()てミャオと()いた。



()(ごえ)()()(かん)(おぼ)えても

それを(ただ)しく(げん)()にできずに、

アルを()()げたまましばらく(かんが)えた。



アルは(かる)く、(ほそ)(ほね)には(わず)かな(きん)(にく)と、

(ふゆ)(あつ)()(がわ)(おお)われている。



――(ゆめ)、ではないのね。



(さむ)さを(かん)じるのに、(さむ)くはない。



(うす)(ぐら)さを(かん)じるのに、(くら)くはない。



――サンサの(ねこ)



サンサが(わたし)()()けた(ねこ)



(わたし)身体(からだ)には(てい)(れん)なチュニックが

()させられていた。



()(だん)()(とき)はキャシュクなので、

(だれ)かが(わたし)(ふく)()()えさせた。



(おも)()たる(じん)(ぶつ)はメノーだけど、

(かの)(じょ)姿(すがた)はここにはない。



チュニックの(ひろ)(えり)()()れて

(むね)(いた)みのあった()(しょ)()れると、

()()(いと)()われていても(きず)(あと)()えない。



(つめ)()いてみても()(しょう)もされていない。



()(あと)もなく、(ぬぐ)()られている。



(つめ)のあいだには、

(たし)かに(なが)れた()

(かわ)いて(くろ)(のこ)っていた。



ニクスから(もら)った(てい)(てつ)のお(まも)りは、

()(とき)にも()(くび)()けたままだった。



()(よご)れた()(ぶん)(つめ)()がす。



(いし)(づく)りの(つめ)たさのあるベッドに(すわ)り、

()()いた(よご)れと部屋(へや)(のこ)(しゅう)()から、

(あたま)(なか)(あふ)れる()(おく)辿(たど)る。



()された(とき)(うし)われた

()(しき)(よく)(そう)(せん)(もど)されていて、

()(しき)()(みず)(ふん)(すい)になって

(そう)(なか)()たしている。



(ほく)()(にゅう)(しょく)()(ろく)(はじ)めて()んだ(とき)のような、

()(しつ)()(しき)(こう)(ずい)()(しき)(こん)(だく)する。



――…ニースだね。



(わたし)()(いち)()()じて(かんが)えを(しゅ)(しゃ)し、

(あふ)れる()(こう)(せい)()しなければいけない。



しかし(かべ)()こうから()こえる(あし)(おと)が、

()()いて(かんが)えさせてくれない。



(とびら)()けられるとランタンを()った(おとこ)が、

部屋(へや)(まえ)()って(わたし)()らして()つめる。



挿絵(By みてみん)



(かれ)()(けん)(しわ)(つく)って、

()()(もん)()かべた。



(ぜん)(しん)(くろ)(ぬの)(おお)われていても、

(きん)(にく)(しつ)身体(からだ)をしているのが()かる。



(わたし)()()ったまま

(おとこ)(つぎ)(こう)(どう)()こさない。



(おそ)ってきたり、()げないところを()ると、

(とう)(ぞく)ではないらしい。



(くろ)(いろ)頭巾(フード)(かぶ)り、()(こう)には

パイル()()(あつ)宝飾巾(ヴェール)(かお)(かく)す。



(こし)(なた)()いているので

この()(せつ)()(えい)には()えないし、

この(まち)(ふえ)(くわ)える(だん)(しょう)にも()えない。



(かお)はよく()えないけど、

()(えい)(なか)ではディーゴに(ちか)(ねん)(れい)(おとこ)



(そで)のある(くろ)(いろ)のキャシュクと、

スラックスを()いた(くろ)(しょう)(ぞく)姿(すがた)



(しょく)(しょ)もない(ひも)()しの(おとこ)は、

(くろ)(いろ)(ぬの)(かた)()ける。



(あたま)(かお)(おお)(かく)すのは

(くち)(ぬの)(おな)じで(よご)れを(ふせ)(もく)(てき)で、

(まち)()かけることもある

マルフの(せい)(じょう)()姿(すがた)になる。



(にび)(いろ)()(ろう)(そく)(ひかり)()らされている。



「…お(まえ)(ほん)(とう)()んだのか?」



()(たい)()うべき(こと)()ではない(かれ)(しつ)(もん)に、

(わたし)(たわむ)れに(うなず)く。



(わたし)(かれ)()っていても、

()(おく)(なか)姿(すがた)とは(いっ)()しない。



今日(きょう)(しろ)(ひげ)をつけて、

 (ろう)(ぎょ)(しゃ)(かっ)(こう)をしないんだね。


 ゼオ。」



(ため)しに(わたし)()(おく)(なか)にある、

(かれ)()(まえ)()ぶと、

(ちん)(もく)という(へん)()があった。



(やかた)(とき)(おり)姿(すがた)()せる(ろう)(ぎょ)(しゃ)は、

(ふっ)(とう)()()する()(まえ)()つ。




ニクス(たち)(ゆう)(かい)した

(よう)(へい)(やと)(ぬし)、ユヴィルの(さい)(ばん)で、

(かれ)(ろう)(ぎょ)(しゃ)姿(すがた)(しょう)(にん)(えん)じていた。



いまは(しろ)(ひげ)(たくわ)えた

(ろう)(ぎょ)(しゃ)姿(すがた)でも()ければ、

(えん)()もしていない。



(はじ)めまして。でいいかな?


 (わたし)()(まえ)はスース。

 ()ってるよね。


 スーでいいよ。」



()ってる。


 …いや、(おれ)(ほう)

 ()られてるなんて()()(わる)いな。


 …(だれ)にも(おし)えてはいないはずだ。」



「ゼオって(りゃく)(しょう)よね?


 (げき)(じょう)でも(おな)()(まえ)()()ってるの?」



「カヴァでは()()れた()(まえ)だ。」



()(しん)(おも)(かれ)は、

宝飾巾(ヴェール)(おく)(あご)()()てて()でる。



()(どう)(しゃ)ソーマはゼオだったんだ。


 (しゅう)(かく)(さい)であなたの(げき)()たよ。

 まだ昨日(きのう)だよね?」



(さい)(ぜん)(れつ)()たのは()ってる。」



()(たい)(じょう)真赤(まっか)なコートを(なび)かせる、

()(どう)(しゃ)ソーマの(やく)(えん)じていたのが

(かれ)だった。



「…スァラに(せき)(よう)()させられたからな。」



――スァラ…、サンサのことね。



(かれ)がサンサに(きょう)(よう)された(そう)(ぞう)に、

(すこ)(わら)って(きん)(ちょう)(ほぐ)れる。



(ろう)(ぎょ)(しゃ)()(たい)(はこ)び、それと(やく)(しゃ)…。


 あなたは()(さい)(やく)(えん)じられて、

 ()(よう)()きられて(うらや)ましいね。」



(えん)じられる(ぶん)(しん)(よう)(うしな)うもんさ。」



「…それは(やく)(しゃ)だからでもないよね。


 ()(ぎゃく)はサンサに()てるね。


 (ほか)()(ごと)は?

 マルフ(そう)(とく)(かん)()? それとも(あん)(さつ)?」



(わたし)(じょう)(だん)()ぜて(たず)ねても、

宝飾巾(ヴェール)(おく)(ひょう)(じょう)()わらない。



(やく)(しゃ)(ごと)きが()(よう)()真似(まね)で、

 (あい)()(ころ)せるはずがない。


 (ころ)すのなら(かく)()(ひつ)(よう)だ。」



(かく)()…。(たし)かに、ね。」



(かれ)(かんが)えに(なっ)(とく)する。



(ころ)しに(かん)しては(おれ)なんかより、

 オーブの(にん)(げん)がやった(ほう)(はや)いだろ。」



「…オーブのひとは(けん)()(つよ)いもんね。」



オーブ(りょう)(ふう)(くろ)(しょう)(ぞく)()(おとこ)()う。



(わたし)()(おく)(なか)に、

(おも)()たる(じん)(ぶつ)()(どう)()した。



(こん)(かい)はなにを()われて()たの?」



()(たい)(うん)(ぱん)だ。」



「あなたが()(そう)()に?

 (わたし)はどうなる()(てい)だったの?


 (じつ)はあの()(せつ)(けん)()(しゃ)とか?」



(めん)(どう)(けん)()()たん。


 ()(ぞく)(びょう)(にん)なら()(そう)()()くはずだ。


 ただの()(たい)なら(はこ)びやすいように

 ()(かさ)ねて(しば)ってから、

 こいつに()めて(なん)(もん)()てる。」



ゼオが(ぬの)(ぶくろ)(ひろ)げた。



(わたし)(ぜん)(しん)()まるくらいの(なが)さの(ぬの)



(ほか)はマルフの(のう)(じょう)(はこ)ばれて、

 ()められるはずだ。」



「マルフ(そう)(とく)の? …()(たい)(しょ)()(じょう)ね。」



このゼオという(おとこ)は、

マルフの()(とく)する(のう)(じょう)()にせず(はな)す。



マルフは(かわ)(さかのぼ)った(みなみ)(へき)()に、

(とく)(べつ)(たい)()(つく)(のう)(じょう)()っている。



()(さん)(がい)(ころ)がる()(たい)(ぜん)()()いていたら、

この(まち)(はい)ってくる(ねん)(りょう)では()りなくなる。



その(ため)この(まち)には(せい)(じょう)()(かげ)(かく)れた、

()(たい)(はこ)びという()(ごと)()(せい)された。



()(よう)(ぶつ)(いっ)(しょ)(はこ)び、

()(たい)()(りょう)とする(のう)(じょう)がある。



――あれもサンサが(かんが)えたのね…。



アルが(わたし)()()つめた。



(ほう)()すれば(じん)(たい)(ゆう)(がい)()(たい)でも、

(てき)(せつ)(かん)(きょう)()いて(かん)()すれば、

やがて(ちい)さな(せい)(ぶつ)()べて(ぶん)(かい)する。



()(たい)(ぶん)(かい)には、

(ひと)(つき)から(はん)(とし)(ひつ)(よう)になる。



(ほね)(はん)(とし)()っても(ぶん)(かい)されない。



マルフの(いとな)(せい)(じょう)()は、

(まち)(じょう)()(やく)()っている。



(かれ)(しょ)(ゆう)する()(たい)(しょ)()(じょう)からは、

()(りょう)()(がい)(ふく)(さん)(ぶつ)()(やく)(げん)(りょう)()(はい)る。



むしろ(しゅ)(さん)(ぶつ)かもしれない。



ただの(たい)()(つく)るだけなら(はな)()みをするか、

(うま)(わす)(もの)でも(ひろ)(あつ)めた(ほう)(こう)(りつ)()い。



()()のソーマが(のこ)した

退(たい)()()(がく)(ろん)には(しる)されない(せい)(ほう)を、

サンサがマルフに(おし)えた。



この(せい)(ほう)(こう)(りつ)(わる)い。



()(やく)(げん)(りょう)(けい)(ふん)からでも(つく)れるので、

サンサはマルフに(まち)(なか)()(たい)

(しょ)()させる(ため)(そそのか)した()(のう)(せい)(たか)い。



(わたし)()(たい)ではなかった()(あい)

 どうするの?」



(はたら)かなくて()むなら(かん)(げい)だ。」



ゼオの(たい)()(へん)(とう)(わたし)(わら)ってしまった。



「ここって、メノーの(びょう)(いん)だよね?」



「あぁ、(べっ)(かん)だ。」



(べっ)(かん)はメノーの(しょ)(ゆう)する(びょう)(いん)(となり)(たて)(もの)で、

(かの)(じょ)(けん)(きゅう)(ため)(かよ)っている。



挿絵(By みてみん)



(かい)(ふく)()()みのない(びょう)(にん)(はこ)び、

(けい)()(かん)(さつ)して(げん)(いん)調(ちょう)()(かい)(ぼう)(おこな)う。



そして()(ぞく)には(ほう)(しゅう)()(はら)われる。



(わたし)(かい)(ぼう)してみたら()かったのに。」



(となり)(すわ)るアルがミャオと()いた。



メノーは(わたし)(むね)()(そう)()って()じた。



(しょう)()みたいな、

 (あさ)ましい真似(まね)をするな。」



「あら。(しつ)(れい)したわ。」



()(ぶさ)(うえ)()われた(きず)

(えり)(ひろ)げて()ていたら、

ゼオは(わたし)から(かお)(そむ)けた。



ゼオの(はん)(のう)(くち)(もと)(ゆる)む。



(おんな)ばかりの(よる)(やかた)での()らしが(なが)いと、

()(しゅつ)(てい)(こう)がなくなり(どん)(かん)になっていた。



「…それで(うん)(ぱん)()(らい)したのが

 サンサ、あなたの(あね)だよね。


 『オランゼオル』。」



(おれ)(しゅつ)()まで()いていたのか。」



カヴァの(おう)()(どく)()(いかめ)しい()(まえ)(なが)い。



(ほん)(にん)からは()いてないよ。


 (しゅつ)()()わないのが(やかた)()まり。


 でもカヴァのことなんて

 すぐに調(しら)べがつくもんね。


 それにあなた(たち)(おう)()(にん)(げん)って、

 (なが)()(まえ)()けて(りゃく)したがるから。」



サンサを()()っているサンスァラ(おう)(じょ)

スァラと()(じん)(ぶつ)は、カヴァの(なか)でも

(かの)(じょ)(ちか)しい(もの)(かぎ)られる。



「『(けん)(しん)(おう)(じょ)』がカヴァに()(ざい)だと、

 (おとうと)のあなたは()()(しょ)もなかったんだね。」



もし(おう)()のオルデウスが

ネルタとの(せん)(そう)()(きょ)した()(あい)

ゼオが(けい)(しょう)(けん)()てしまう()(のう)(せい)もある。



(おれ)(めぐ)まれた(ほう)さ。


 それに(くに)()けて

 これで()かったとは(おも)ってる。」



「いつからこの(まち)()るの?


 サンサが()た10(ねん)(まえ)に?」



(おれ)(ぶん)(すい)(がい)()たのは15(さい)(ころ)で…

 もっと(まえ)だ。もう13(ねん)になるな。」



(なん)()(なま)りが()けてるのは(やく)(しゃ)だから?


 (なが)(とど)まってるのは、

 なにか()(ゆう)があるの?


 こっちに(さい)()()るとか?」



「そんな(めん)(どう)なのは()ない。

 まぁ、スァラが()るからだな…。」



「ふぅん…? (ふか)()(ゆう)はないわけだね。」



ゼオは()()(まん)(あら)わにしたけど、

()っても(はん)(ろん)(かえ)ってこない。



(わたし)はアルを(かか)えて部屋(へや)()た。



(みぎ)(ひだり)(おな)(くら)(ろう)()(ひろ)がる。



「ゼオ。(あん)(ない)して。」



(やかた)にか? (のう)(じょう)にか?」



「ふふっ。どっちも(ちが)うよ。」



()(そう)()ならまだしも、

マルフの()(たい)(のう)(じょう)という

(おも)いがけない(じょう)(だん)(わら)える。



(ふくろ)(わす)れてるぞ。」



ゼオは(しょく)(だい)(ちか)くに()かれた(かわ)(ぶくろ)(しめ)した。



()(ぶん)(しょう)()いてくんだよ。」



あの(ふくろ)には(わたし)()(ぶん)(しょう)(はい)っている。



「…(やかた)(もど)らないつもりか?


 (ふか)()(ゆう)があるなら()ってみろ。」



ゼオからの()(しゅ)(がえ)しに(わたし)(うなず)く。



「もう()んだ(にん)(げん)だからね。


 ()(ぞく)(うしな)って()られた()()が、

 (だれ)にも()うことのできないドレイプの

 ()()()けても、サンサは(あと)()げとは

 ()って()なかったからね。


 (しゅ)(たい)(せい)のなかった(わたし)でも、

 サンサは()(ぶん)()(そう)()()けなかった。


 (しょう)()がドレイプなんて()(まえ)()えても、

 (いや)しい(しょく)(ぎょう)()わりないもんね。」



(しょう)()(たい)する(わたし)(けん)()(かん)をゼオが(はな)(わら)う。



「でも(わたし)は、(ちち)(おや)のやっていた

 (そう)(とく)()()したつもりもない。


 マルフや(げん)(ろう)(いん)にとっては、

 (わたし)って()(ざわ)りな(そん)(ざい)だよね。


 ゼオなら()かるかな。


 メリエは(れき)()ある(そう)(とく)()(すじ)だもの。


 いつまでも(そう)(とく)(むすめ)でもないんだし、

 あの(しょう)(かん)(なが)()()ぎたんだね。


 ()(ぞく)として()まれ(そだ)った(わたし)が、

 ()()になってやっと()かったわ。


 ニクスに(えい)(きょう)されたのかな。


 ()ってることはあっても、

 ()らないことの(ほう)(おお)かった。


 これは(かんが)()(だい)だけど、

 いまの(わたし)はあなたと(おな)じだね。」



ゼオは(うで)()んで(くび)(ひね)ったものの、

すぐに(うなず)いてくれた。



この(まち)(かり)()めの()()(しょ)だった。



『スーッ! ()って!』



(やかた)()いていってしまったあの()の、

()(つう)(さけ)(ごえ)(あたま)(なか)(ひび)く。



()(くび)にしたままの(てい)(てつ)のお(まも)り。



「サンサは(わたし)(たち)(こう)(じつ)(あた)えたんだよ。」



(おれ)も、か?」



「ゼオがこの(まち)(げき)(だん)(ひき)いていたから、

 サンサはあなたを()つけることが

 できたんだよね。」



(えん)(げき)(きん)()するカヴァの(おう)()が、

(けん)(えつ)(ほう)()()して()(ちょう)をしているとは

()(つう)(だれ)(おも)いはしない。



「さっきも(たず)ねたけど、

 ゼオはなにかしたいことがある?


 この(まち)(とど)まる()(ゆう)。」



「さぁな…。なんだろうな。」



ゼオは(ふっ)(とう)という()(まえ)(はん)し、

(しず)かな(おとこ)だった。



(ひろ)く、(ふか)(かんが)えてみて。」



(なが)いこと(やく)(しゃ)をやっていたが、

 スァラを(さが)(もく)(てき)(とど)まったに()ぎない。


 この(まち)(けっ)(きょく)(けん)(りょく)(かね)(ぼう)(りょく)ばかりだ。


 カヴァに()(ころ)(おな)じで、

 (おれ)()()(しょ)はここにはない。」



ゼオはランタンを(かか)げて、

(くら)(やみ)(ろう)()()らしながら(まえ)(しず)かに(ある)く。



(くに)()(ぶん)(みずか)()てて、

()んだはずの(あね)(さが)した(おとこ)



()(たい)(うえ)(えい)(ゆう)(えん)じ、

(ろう)(ぎょ)(しゃ)(よそお)い、()(たい)(はこ)びに()た、

(ふっ)(とう)という(げん)(しょう)()(まえ)をした(かたち)()(おとこ)



(わたし)(そう)(とく)(むすめ)で、()(さん)()てた()()で、

サンサのフランジなのに、なにもない(むすめ)



(わたし)(たち)には(もく)(ひょう)(もく)(てき)()かった。



ランタンに()らされるゼオの(かげ)()(ある)く。



「あなたも(わたし)(おな)(なが)(ぼし)ね。


 ゼオは()(どう)(しゃ)ソーマを(えん)じることで

 (しま)(さま)(ざま)()(しょ)(たび)してるけど、

 ()きたいところにはもう()ったのかな。


 (わたし)(ほん)()んで(たい)(りく)()(しき)はあっても

 (まち)からも()たことがない。


 サンサは『(ひろ)く、(ふか)(かんが)えなさい。』

 って()うんだよ。」



「スァラがよく()っていたな。


 (おれ)はただ、

 (なが)退(たい)(くつ)()くしたいだけなんだよ。


 お(まえ)はここを()て、どこに()くんだ?」



()れて()きたいひとが()るから、

 そのひとの(ところ)(あん)(ない)して。


 この退(たい)(くつ)から()()すんだよ。」



(わたし)(たち)(べっ)(かん)(くら)(ろう)()から、

(そと)()(とびら)()ける。



(つめ)たく(かわ)いた(かぜ)(なか)(はい)()み、

(かわ)いた(くう)()()(こう)(くすぐ)った。




 ▶

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