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金貨の娘  作者: 之#u4e4b
第11章 天秤の貨(後)

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127/163

第11章 第4節 足跡の差(第1項)

挿絵(By みてみん)



「あら、()きたわね。」



わたしは()()(まなこ)でテントを()()ると、

(みずうみ)(なが)めるサンスァラ(おう)(じょ)()った。



(ぶん)(すい)(がい)(しょう)(ろう)(おと)()こえず、

()(どこ)(かた)さと(つめ)たさで()()めた。



オーブの(さん)(みゃく)から()(のぼ)(まえ)のネルタの(あさ)



(みなみ)には(くも)(ゆき)(かぶ)り、

(ぎん)(いろ)(かがや)(てん)(がい)(さん)(そび)える。



「カヴァも(ぶん)(すい)(がい)(ふゆ)(さむ)(ほう)だけれど、

 ネルタはまた(ちが)(さむ)さよね。」



「カヴァは(うみ)からの(かぜ)

 (やま)から()りて()るんだよね。


 ネルタの今日(きょう)

 (くも)があるからまだ(あたた)かい(ほう)だよ。


 ()れの()(あさ)なんて

 (さむ)くて(きり)()くなるもの。」



「これからまた(ゆき)()るわね。」



サンスァラ(おう)(じょ)(ふる)え、

(むな)(もと)()かって(つぶや)くと

イオスの()(ごえ)がした。



(うす)(じろ)(はだ)をした(おう)(じょ)が、

(ゆき)(おな)(いろ)のイオスを(かか)えている。


挿絵(By みてみん)



()(ぶん)はどう?」わたしは(たず)ねた。



()()(たび)(しょく)()()れないだけよ。」



(よる)(はな)してて(おも)ったの。


 (りょ)(こう)(よう)(けい)(こう)(しょく)に、

 テマッサを(つく)れないかな。」



「あなたも(りょう)()(まな)んだら()いわよ。


 (やかた)(ちゅう)(ぼう)()てるのは

 (おとこ)だけではないのだから。」



(ちゅう)(ぼう)への()()りを(きん)()された(おう)(じょ)()う。



(りょう)()(たい)(ぜん)ははムネモスが

 デーンに()ませていて、

 まだ()んでないのよね。」



()らないことがあるのは(うらや)ましいわね。


 ()て。

 あそこにおいしそうなのが()るわよ。


 どんな(あじ)()ってるかしら?」



(かも)だね。


 (にわとり)(くら)べると(あじ)()くて、

 お(にく)にちょっと(くせ)があるよ。


 この()()(えっ)(とう)()(ぼう)()めてるから、

 (あぶら)()(おお)くておいしいのよ。」



()(はん)(みどり)(いろ)()()(あたま)()(おす)と、

(かっ)(しょく)()()()(もう)(めす)()(れき)(ついば)む。



挿絵(By みてみん)



(かも)(ねら)いを(さだ)めるイオスは

(おう)(じょ)(おき)()()わりにされ、

(うで)(なか)から()()せない。



「あそこの(しろ)いのはどうかしら。」



(さぎ)はどうかな。

 ()べられるのかしら?


 (あく)(じき)(ちょう)(じゅう)はおいしくないそうよ。


 今朝(けさ)(しず)かね。

 ()くと(にぎ)やか(とり)だよ。」



(しろ)()()()(さぎ)は、

(ぶん)(すい)(がい)でも(しゅん)(せつ)している(かわ)()かけた。



挿絵(By みてみん)



()(はん)には(ひと)(まわ)(ちい)さな(さぎ)と、

さらに(ちい)さな(さぎ)まで(そろ)っている。



「あ、()て、(ゆき)(がらす)よ。


 (ゆき)(がらす)(なん)()(とり)なのよね。

 (ぶん)(すい)(がい)でも()ないから。」



(こずえ)()まる(ゆき)(がらす)(からす)よりも()(がら)で、

(くろ)()(しろ)()()()つ。



挿絵(By みてみん)



(まっ)(くろ)(からす)(ゆき)(かぶ)ったような(がら)なので

このように()ばれていた。



(なん)()(よう)(えん)(だい)(しゅ)(おお)いのよね。


 わたしの(しょう)(たい)(ふだ)にしていても、

 (やかた)()()()(いん)(そだ)ちだから

 (ゆき)(がらす)()らない()ばかりなのよ。」



(かの)(じょ)(しょう)(たい)(ふだ)()(がら)(ゆき)(がらす)(はい)っている。



(じゅう)(ぎょう)(いん)のキーアも()(ぜん)

サンサの(ふだ)()てただの(からす)()んでいた。



「ファウナなんて

 『()らん』って()ってたわ。」



(どう)(くつ)(こう)からやってきた

(はく)(しき)なファウナでさえも、

(じっ)(さい)(ゆき)(がらす)()たことが()いという。



「あなたはファウナの(しゃべ)(かた)

 ()()うわね。」



(おう)(じょ)()()(わる)()(かた)をされ、

わたしは(しゅ)(こう)して()った。



「あの(とり)(しょう)(たい)(ふだ)にしたのは、

 (ろう)(じん)()(ども)(おそ)って(からか)

 (わる)(がしこ)(せい)(かく)(とり)だからよね。」



(ちが)うわよ。


 (ふだ)(がら)はルービィが(てき)(とう)()めたのよ。


 …(ちが)うわよね?」



(やかた)(ふだ)()(じょう)までは()らないので、

わたしは(こう)()もせずに(ゆき)(がらす)(かん)(さつ)した。



(あつ)まって(よう)()(うかが)ってるみたい。」



いつもの(くせ)で2(しん)(ほう)使(つか)い、

()()(しき)()てた(みぎ)()(ゆび)(いた)む。



(ほそ)()()(えだ)(とど)まる()れが(さえず)る。



「あなたを(けい)(かい)してるのよ。


 あなたは()()つもの。」



「お(ひめ)(さま)って(とり)(こと)()()かるの?


 (こと)()(げん)(りゅう)(おと)、だよね。(たし)か。」



(うなず)(おう)(じょ)はよく(ねこ)

(いっ)(ぽう)(てき)(かい)()をしている。



()れる(とり)(たち)はお(しゃべ)りよね。」



(おう)(じょ)(うで)(なか)でイオスが(くち)(たた)きながら、

(れん)(ぞく)(こま)かく()いて(けい)(かい)(しめ)す。



(にん)(げん)(はつ)()()()

 (あい)()(かんが)えを(つた)えるわね。


 (こと)()()()がなくても、

 ()()()()りや(ひょう)(じょう)だけでも

 (かん)(じょう)(つた)()えたりもするわ。


 (たい)(りく)のエンカー()から

 (しま)(こと)()()()()わっても、

 ()(こう)()(げん)(おな)じ。


 (たい)(りく)(もの)()しや(てん)(びん)(おもり)使(つか)っても、

 (ほん)(しつ)()わらないものね。」



(ひょう)(じゅん)になってる(もの)()しや(おもり)()わったら、

 (たん)()()()える()()があるわ。」



サンスァラ(おう)(じょ)(うなず)いて、

わたしの()(けん)()(なが)す。



(けもの)には()()という(ぶん)()

 (けい)(せい)されていないから、

 ()()(すく)なくて()かりやすいわね。


 (にん)(げん)(ちょう)(じゅう)(おな)(どう)(ぶつ)よ。


 (ひょう)(げん)(しゅ)(ほう)(こと)なるだけで、

 (つた)えている(ない)(よう)(たん)(じゅん)なのよ。」



(たん)(じゅん)っていうけれど、

 それをどうやって()()けるの?」



わたしの()(けん)(おう)(じょ)(うなず)いたのに、

()(てい)もせずにまた()(なが)した。



「さぁ、(ちょう)(しょく)(まえ)にテントを(かた)()けて。」



「それなら(おう)(じょ)(さま)手伝(てつだ)ってよ。」



(かよわ)いわたしはいま、

 イオスのせいで()(ふさ)がっているから

 (むずか)しいのよ。


 (たの)むわね。」



(みぎ)(うで)(うしな)った(かよわ)身体(からだ)(おう)(じょ)は、

(もう)()(かた)()けたままイオスを()き、

わたしを()()(しょう)する。



「イオスぅ。」



イオスは()(ほそ)めて()(ごえ)でミャオと()いた。



テントの(なか)()()()(しゃ)()んでいると、

マリオンが(ちょう)(しょく)(じゅん)()(はじ)めてしまう。



挿絵(By みてみん)



()(ぎわ)(わる)いわたしの姿(すがた)()()ねて

マルフが(へい)()(めい)じたらしく、

テントは(おとこ)(たち)()ですぐに(かた)()けられた。



(せい)(れい)する(わか)(へい)()でも

(いき)()(かた)(つか)れが()える。



わたしの(みぎ)()

(あい)()わらず(おも)(どお)りに(うご)かない。



(さむ)さで(うご)かす(たび)(いた)みを(かん)じて、

(うご)かす(まえ)身体(からだ)(こう)(ちょく)する。



(しん)(ちょう)にアームカバーを()け、

わたしは()(りょく)さに(ふか)()(いき)()いた。



(はこ)(がた)()(しゃ)(なか)での(せま)景色(けしき)()き、

わたし(たち)()()(しゃ)(うつ)って(しゅう)()(なが)めた。



()わりに、(あさ)まで(けい)(かい)していたハーフガンや、

マルフの()れた(へい)()(たち)(きゅう)(そく)()(しゃ)(ゆず)る。



挿絵(By みてみん)



これにはマルフも『(あま)やかすな。』

と、(おこ)って()せた。



挿絵(By みてみん)



まだ3(にち)()とはいえ(なが)(たび)なので、

(おう)(じょ)(きゅう)(そく)(ひつ)(よう)(せい)()き、(かれ)(さと)した。



マルフには(そう)(とく)という(たち)()があり、

(へい)()(たち)()(ぶん)(しば)られる。



(いち)()(へい)()にのみ(きゅう)(そく)(あた)えると、

()(へい)()(まん)(つの)らせてしまう。



()(めい)(やく)にさせられたわたしは、

(つか)れの()える(わか)(へい)()から(じゅん)(やす)ませた。



どんなに身体(からだ)(きた)えていても、

(くう)()(うす)()()への(じゅん)(のう)には

(たい)(しつ)(もん)(だい)()てしまう。



マルフが()せない(てい)(あん)を、

(おう)(じょ)(こう)(じつ)として(あた)えた(かたち)になる。



わたしが(へい)()(たち)(きゅう)(けい)()(かん)を、

(くも)(ぞら)(たい)(よう)()()から()()して

()()しなければならなかった。



(しょ)()(ばん)にスタイラスを()て、

(かん)()(てき)()時計(どけい)(つく)り、

(ほう)(がく)()(こく)(つめ)(みつ)(ろう)(きざ)んでいく。



()()したはずの(おう)(じょ)(さま)

(もう)()(うえ)()(がわ)(かぶ)せると、

イオスを()いて(なか)(はい)ったまま()てこない。



「こうすると(あたた)かいわよ。ほら。」



(つめ)たい(かぜ)(さら)される()()(しゃ)(うえ)で、

わたしもサンスァラ(おう)(じょ)

(もう)()()()()まれる。



()(がわ)(もう)()とケープの頭巾(フード)(まも)られて、

(かぜ)(みみ)(いた)くならずに()む。



なにもしていない(おう)(じょ)でも

(ほう)(がく)(きゅう)(けい)()(かん)()()しが(せい)(かく)で、

(うす)(かげ)(なが)さと(かく)()から(みちび)()す。



(どろ)(ぬま)()にしか()えない(みずうみ)(みなみ)(すす)めば、

(こう)(だい)(みず)(たま)りへと(へん)()する。



(へき)(しょく)(うつく)しいかったネルタの(みずうみ)は、

(はい)(いろ)がかった(どろ)(みず)のまま

()()(まば)らで(みどり)()せていた。



(ひる)には(みずうみ)の、

(くび)れ』と()ばれる()()()けた。



――ダムが(ほう)(かい)したのよね。



ネルタが(みずうみ)(けん)()(しゅ)(ちょう)(はじ)めた(むかし)

ダムの(けん)(ぞう)(しっ)(ぱい)した(とう)()(はなし)

()(しょ)(かん)のゴレムに(おし)えて(もら)ったことがある。



(みずうみ)(きた)(がわ)(ぬま)()()していたのは、

およそこの(けい)(かく)(しっ)(ぱい)(えい)(きょう)している。



(けん)(ざい)(おお)(なが)れて(きた)(がわ)()(がい)()ったのは、

(せん)(そう)(はじ)まる(まえ)の20(ねん)()(じょう)(むかし)になる。



イオスを()いてサンスァラ(おう)(じょ)()う。



(しゅう)()()()いでしょう。」



「うん…。」



(どろ)(にご)った(すい)(しつ)はどこも(おな)じで、

(しゅう)(へん)にひとの()める(たて)(もの)もない。



()()(あと)があり、

ひとが()(けい)(せき)(のこ)っている。



ネルタはひとが()むには()()(せま)く、

()(げん)(とぼ)しい(なか)(いえ)()て、

(のう)()(ひら)(ため)()()(ばっ)(さい)した。



()(ちゅう)(くさ)った()(みず)()()げず、

(つち)(みず)(あま)(みず)()(なが)されてしまう。



さらに(かん)()(みず)(うしな)われると、

()(ちゅう)(くう)(どう)()()てしまい、

()(めん)(しょ)(しょ)(ほう)(ぼう)(あな)()いていた。



(ゆき)()もれた(あな)からは、

(あか)()をした(しろ)()(うさぎ)(かお)(のぞ)かせる。



挿絵(By みてみん)



ここはひとの()()()ではなくなっていた。



「あなたの()んでいた()()(とう)は、

 (たい)(がん)からでも()えるかしら。」



今日(きょう)(みずうみ)との()(おん)()のせいで

西(にし)(たい)(がん)さえ()えない。



「もう()()とされてるよ。


 (ふる)(たて)(もの)だったもの。」



(おう)(じょ)(だま)って(じょう)()(かす)(みずうみ)()(わた)した。



ネルタという(くに)は、

(もと)(ふく)(すう)(みん)(ぞく)でできた(こっ)()だった。



(みずうみ)(ひがし)(がわ)(おさ)めていたソーマ(ぞく)は、

20(ねん)(むかし)にあった(だい)()(かく)(めい)

西(にし)のネルタ(ぞく)(しゅく)(せい)された。



(ひがし)のソーマ(ぞく)()()()(みん)(しゅう)は、

(ころ)され、()()()われ、()られ、

(きた)へと()げて(とう)(ぞく)になるか、

(ぶん)(すい)(がい)(うつ)って()(さん)(がい)(なん)(みん)になった。



ネルタ(ぞく)はソーマ(ぞく)()()から(うば)えるものを

(すべ)(うば)い、()()()(めつ)させた。



()(てい)()()むはずの(ひかり)

 (どろ)(しゃ)(だん)されて、(ねつ)(とど)かなくなると

 (ちい)さな(せい)(ぶつ)()きられなくなるのよ。」



「まだお(さかな)がいるのね。」



(にご)った(みず)(なか)でも、

()(めん)(ちか)くは(こう)()(とお)るので(ぎょ)(えい)()えた。



(まっ)()のネルタでの()(じょう)(あみ)(りょう)(げん)(いん)で、

(みずうみ)にはお(さかな)()ってしまった。



()(ざかな)()えないでしょ?


 (たまご)()んで()()したところで、

 (みず)(くさ)()えない(どろ)(なか)では(えさ)()いから、

 ()(ぶん)(たち)(たまご)()(ぎょ)()べてしまうのよ。」」



()(ごろ)しみたいな(じょう)(きょう)ね。」



(さかな)(にん)(げん)(ほう)(りつ)(りん)()(つう)じないわよ。


 (さい)()この()(にん)(げん)(かつ)(どう)するには、

 (せい)(ぶつ)(じゅん)(かん)できる(かん)(きょう)(つく)って

 ()()しないといけない。」



(たて)(もの)(すべ)()(かい)され、()やされている。



(だれ)()んでないんだよね。」



(けん)(ざい)(ねん)(りょう)(さい)()(よう)ができても、

 (はこ)ぶだけでお(かね)()かるのよ。


 マルフが()(りょう)をエルテルに(はこ)ぶのとは

 (はなし)(ちが)ってくる。(じゅ)(きゅう)だけではないわ。


 (はしけ)がもし(てん)(ぷく)したら、

 (かわ)(けん)(ざい)()(かい)されたり(かわ)()まれば

 ()(ちゅう)(はん)(らん)するかもしれない。


 ()(てん)(けっ)(てん)(ほか)にも()(けん)(せい)()(かい)して、

 (たい)(さく)(こう)じなければいけないわね。」



(ほう)()せずに()やすのは、

 (とう)(ぞく)(きょ)(てん)(つぶ)(ため)?」



「それもあるのかしらね。


 ここには()()(しん)(じょう)(やく)があるのよ。」



(じょう)(やく)? (ほう)(りつ)の?」



(とう)()(りょう)(どう)(くつ)(こう)、いまの(ぶん)(すい)(がい)

 (とう)()(ちゅう)(おう)(りょう)()()めた(ふる)(めい)(しょう)ね。


 カヴァみたいに(だれ)かが(かっ)()(かい)(たく)して、

 ()()()(はい)したり(けん)()(しゅ)(ちょう)(きん)じたの。


 (じょう)(やく)がいまでは(きん)(そく)()

 (かい)(しゃく)されてるわね。」



「ネルタで(さだ)められてた(きん)(そく)()って、

 (ふか)(もり)のことだった。


 (てん)(がい)(さん)(ふもと)の。


 (じょう)(やく)なんて()(ろく)(しょ)(しつ)にはなかったよ。」



「マルフの…

 (きゅう)メリエ(てい)()(かん)されてるわよ。」



「スーの?」



サンスァラ(おう)(じょ)(うなず)いた。



(みず)(ゆた)かな()()()て、

 かれらは()ることを(おそ)れたのよ。」



()ることって、なにを?」



わたしの()(もん)に、

(おう)(じょ)からの(こた)えは(かえ)ってこなかった。




 ◆




(ゆき)()って()たわね。


 頭巾(フード)をした(ほう)()いわよ。」



サンスァラ(おう)(じょ)()かりきったことを

わたしに()えて()げた。



(おう)(じょ)(ふところ)にいるイオスが、

()(ゆき)(むし)(かん)(ちが)いして

(まえ)(あし)()って(つめ)()ばす。



(みずうみ)(おく)()(しゃ)()(さき)

(しゅう)()(かか)げた(てん)(まく)がいくつもあった。



(きん)(そう)(しょく)(ひん)(はい)した(ごう)(しゃ)(うま)が、

(かん)()(きゅう)(しゃ)(ちか)くで(まえ)(あし)()げて(いなな)く。



()(りょう)(ふくろ)()んだ()()(しゃ)西(にし)から()た。



(すい)(えん)()がり、

(ぎん)(ぱつ)(おんな)(たち)(せわ)しく(うご)(まわ)る。



「おい、(はた)()げぇ!」



(はこ)(がた)()(しゃ)から(かお)()したマルフが、

(せん)(とう)()(しゃ)()かって()った。



()(えい)()(しゃ)(うえ)(ぶん)(すい)(がい)(しゅう)()(かか)げる。



挿絵(By みてみん)



(よる)(やかた)でも(かか)げている

(ぶん)(すい)(がい)(かわ)(しめ)()(がら)は、

(こう)(ちゅう)()(なか)()えてしまう。



()めた()(しゃ)()(さき)は、

(てい)(てつ)(えが)かれた(しゅう)()(かか)げる(てん)(まく)



挿絵(By みてみん)



(おう)(じょ)(うで)(なか)

()(ゆき)(はしゃ)いで(あば)れていたイオスは、

(こう)(しゃ)(どう)()(ゆき)(うえ)(かい)(ほう)された。



イオスは(ゆき)()まったことで、

(はじ)めて()ったその(つめ)たさに(ふる)えて

わたしを()()げると、(かよわ)()いて(こう)()した。



わたしがイオスを(ひろ)()げると

(ゆき)(かたまり)(しろ)(なが)(たい)(もう)(から)()き、

()(はら)わなければいけなかった。



(ゆき)(つち)(した)(しも)(ばしら)()めば、

(けい)(かい)(おと)身体(からだ)(つた)わる。



(かわ)(ひも)()まれたサンダルでは

(あし)(さき)(ゆき)ですぐに(つめ)たくなる。



カヴァの(てん)(まく)から(ろう)(じん)姿(すがた)(あらわ)した。



(かみ)()(もと)(いろ)(うしな)い、

(ぎん)(ぱつ)をさらに(しろ)くしている。



挿絵(By みてみん)



(あか)(いろ)のコートに(ぎん)()(なが)(しょく)(しょ)

(かれ)がサンスァラとオルドラスの(ちち)

オルデウスだとすぐに()かった。



――サンスァラ(おう)(じょ)()てるわね。



オルデウスはわたし(たち)(ちか)()き、

(となり)(おう)(じょ)(かお)()(ふる)える。



「まさか、(まこと)にスァラか!」



「オルデウス(おう)(みずか)らお()(むか)えご()(ろう)さま。


 ()(がみ)(とど)いて()かったわ。」



オルデウスはサンスァラ(おう)(じょ)(まえ)()ち、

(ゆき)(どろ)(なか)でも(しゅう)()(かま)わず

カヴァの(おう)()(めん)(かた)(ひざ)()いた。



サンスァラ(おう)(じょ)(ひだり)()()()す。



()()(おお)(おう)のことだから、

 ドラスみたいに(おこ)って(もの)()げて(おど)し、

 (けん)(さき)()けて()ると(おも)ったわ。」



「あの(あら)(うま)(いっ)(しょ)にするでないわ。


 どんな(おう)でも、()いの(やまい)には(かな)わんよ。


 (ひど)(わか)(かた)をしたもんだ。


 あのドラスが(みと)めたのだから、

 (いつわ)りの(むすめ)でも(かま)いはせん。」



「あれから20(ねん)()っているものね。


 (ひと)(じち)になった(あに)(こう)(かん)()して、

 (こう)(かい)してくれたならそれでいいわ。」



オルデウスはサンスァラ(おう)(じょ)(ひだり)()()り、

(しわ)(きざ)まれた(ゆび)(かの)(じょ)(ゆび)()()れる。



(かれ)(ぶん)(すい)(がい)(そう)(とく)のマルフよ。


 ()ったことはないはずよね。


 この10(ねん)

 ()しみない()(えん)をしてくれたわ。」



「いや、わしが()(えん)()けた(がわ)だ。


 いまの()()にあるのも(おう)(じょ)のおかげだ。」



マルフ(たち)(あく)(しゅ)()わす。



「それでこちらはわたしの(みぎ)()。」



「おれの(まご)か?」



(おや)()(そろ)っていつからそんな、

 (わら)えない(じょう)(だん)(たしな)むように

 なったのかしら。ねえ。」



「…サンサよ。


 はじめましてオルデウス(おう)。」



わたしは(ふか)(あたま)()げた。



(ほろ)ぼした(くに)(むすめ)()らず、

(かれ)(あく)(しゅ)(もと)めてきた。



わたしはそれに(おう)じる。



(あく)(しゅ)した(みぎ)()(きず)のせいでまた(いた)む。



オルデウスは()いているとはいえ、

(ちから)()(げん)()らない。



(いっ)(しゅん)()(なか)(いや)(あせ)()()て、

身体(からだ)(さむ)()(がい)(ふる)えた。



(もり)(けん)(じょ)(こう)(せい)()のサンサか。


 オルドラスから(ほう)(こく)()けている。」



(しょう)()()きのドラスは

 どんな(ひょう)()をしたのかしら。」



(おも)ったままを()って(からか)(おう)(じょ)に、

オルデウスは(いきどお)ることもなく、

(わら)いながら(なみだ)(こぼ)していた。



ネルタの(しろ)(べっ)(かん)()(かい)され、

(くろ)()えた(ざん)(がい)(うえ)に、

(しろ)(ゆき)()もっている。



ネルタにあったものは

(おう)(じょ)(のぞ)んだ(とお)りに(ゆき)(おお)(かく)す。



そこにカヴァの(こう)(へい)(たち)

(にく)(たい)(ろう)(どう)(しゃ)(つか)い、(いし)(はしら)(はこ)()れた。



「あれはなにかしら?」



()()てさせている。


 ここに()たのは、

 (もと)(もと)あれを()てる()(てい)だったのでな。」



(くろ)(いろ)(だい)()(せき)(つく)られた(ふと)(ろっ)(かく)(ちゅう)が、

(いわ)にある(あな)()して()てられる。



(ちか)くで()られていたモルタルを、

(あな)(すき)()()めて(はしら)()(てい)する。



(せき)()…か?」



()()らしてマルフが()った。



「この()()んだ(もの)(たち)に、

 おれにはこんな()()けしかできん。」



(おや)()(そろ)って()()(よう)ねぇ。」



わたしの()よりも(たか)(せき)()



――(にゅう)(しょく)(れき)364(ねん)

  カヴァの(おう)は、ネルタの(みずうみ)にて、

  ()(しゃ)(たましい)(ほし)(かえ)ることを(ねが)う。



(もく)(どく)して(にぎ)()めた(みぎ)()(いた)む。



――あ、これは(ふな)()りの(とむら)いの(こと)()だわ。



()(そう)()でウラに()けた(ちょう)()()ているのは、

カヴァの()(ぞく)(たい)(りく)から()(ふな)()りの

(まつ)(えい)()(げん)だからかもしれない。



(せき)()(きざ)まれた(なが)れる(うつく)しいい(しょ)(たい)

(ちょう)()(のこ)されたのは(みずうみ)()(まえ)のみ。



――ネルタの(くに)はもう()いのね。



イオスが(うで)(なか)でわたしを()()げて()いた。



(おう)()()むのね。


 (むかし)はあんなに(きら)っていたのに。」



「お(まえ)()なくなって20(ねん)


 (しろ)()()姿(すがた)()なくなって、

 (いろ)(いろ)()わったのだ。」



(しょう)()()()(ため)でしょう。」



「それもあるがな。がははっ。


 スァラはその(くち)()りも、

 ()わっておらんな。」



「ふふっ。

 オルデウス(おう)はこの()で、

 (わす)(もの)()つけられたのかしらね?」



「…なんのことだ?」



わたしにしたサンスァラ(おう)(じょ)(つぶや)きに、

(となり)()いていたマルフが(たず)ねる。



わたしも(はつ)(げん)()()()からず(くび)(ひね)った。



(ゆき)()ってきたから、

 (なか)(やす)んだ(ほう)()いわ。


 ネルタの(ふゆ)(ろう)(たい)(こら)えるわよ。」



「お(まえ)(さい)(かい)したせいで、

 (こう)(ふん)して(やす)んでられんわ。


 ちょっと(はし)ってくる!


 よし! お(まえ)らぁついて()いっ!」



オルデウスは(しょう)(へい)(たち)()()れて、

コートを(なび)かせて(はし)()ってしまった。



()いの(やまい)はどこ()ったのかしら。」



「お(まえ)()ておるなぁ。」



「マルフも()いて()(わる)くなってるのよ。」



()(てい)するサンスァラ(おう)(じょ)だけれども、

わたしは(かれ)()(けん)(どう)()する。



――(わす)(もの)って、なんのことかしら…。



わたしは(となり)(おう)(じょ)()て、

そんなことを(かんが)えていた。




 ▶

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