表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
金貨の娘  作者: 之#u4e4b
第10章 怨讐の環

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

116/163

第10章 第4節 銀色の冠(第2項)

サンスァラ(おう)(じょ)

テーブルを(ゆび)(さき)()()く。



「さて、(へい)()()(たび)(えん)(せい)

 どのような(けっ)(ちゃく)をつけるおつもりですか。


 (ぶん)(すい)(がい)への(しん)(ぐん)(てき)(たい)(こう)()です。


 (そう)(とく)のマルフは

 この(ぼう)(きょ)(ゆる)すでしょうか?」



「…やっぱりマルフの(つか)いで()たのかっ?」



カーゼルが(いきお)いよく()()()()がった。



()ていたイオスが(おどろ)き、

(みみ)(うし)ろに()せて(しゅう)()(けい)(かい)する。



(ぶん)(すい)(がい)()()としても

 カヴァの()ちにはなりません。」



(おう)(じょ)()()いた()調(ちょう)(つづ)けると、

オルドラスは(よこ)()()ばして

カーゼルを(すわ)らせる。



(えん)(せい)()(かい)()めたことだっ。


 (へい)()(いもうと)とて(おんな)(せい)()(くち)(はさ)むな!」



――(おんな)(よる)

  (せい)()(おんな)(あそ)(どう)()ではないものね。



わたしは(あたま)(なか)(つぶや)いた。



(いきどお)るカーゼルに(たい)しても

サンスァラ(おう)(じょ)(こう)(げき)(つづ)ける。



()(せい)(みじか)(ろう)(じん)(たち)尻尾(しっぽ)()

 (ちゅう)(じつ)(いぬ)ね。


 そんな(いぬ)がドラスに(つか)えるなんて、

 (ぐん)()(れい)(かん)(きょう)(こう)(うち)(がわ)

 (ひど)(よご)れているのでしょうね。」



「なにぉっ!」



カーゼルは(こぶし)(かた)(にぎ)る。



それでも(かれ)はテーブルを(たた)いたり、

(なぐ)りかかりはしないだけの

()(せい)(しん)()っている。



それを()いことに(おう)(じょ)(ちょう)(はつ)()(かえ)す。



「それとも(へい)()

 (ぶん)(すい)(がい)()()とせば、

 (すべ)ての(しょう)(かん)()(はい)ると

 (おも)っているのかしら。」



(おう)(じょ)とはいえ()(ろう)(ゆる)さんぞっ!


 (くち)(つつし)め!」



()(ぶん)(つか)えている(おう)()(あざけ)られ、

(かお)真赤(まっか)にするカーゼル。



オルドラスはテーブルを()ち、

(かれ)(こぶし)(ふる)るわないよう(ちゅう)()する。



カーゼルの(いか)りの(かん)(じょう)(しず)まりはしない。



「あなたがどうして

 (ぐん)()(れい)(かん)なのかわかったわ。」



サンスァラ(おう)(じょ)

カーゼルの(かお)(した)から(のぞ)()る。



「あなたは(げん)(ろう)(いん)から

 (とく)(べつ)(しつけ)()けたのね。」



(けが)れた()(ふん)(すい)めっ!」



「カーゼル。(すわ)れ。」



(ふたた)びオルドラスが(けん)(せい)する。



「ふふっ。

 (ぶん)(すい)(がい)西(さい)(もん)(かい)(ほう)されているのに

 すぐに()めもせず、お(さけ)()びて

 (はだか)になって(おど)(どう)(らく)(もの)(たち)よ。


 (しょう)()(だん)(わら)っていたわ。


 (げん)(ろう)(いん)にも(とら)われて、

 ()(りょ)(おう)()(おく)(びょう)(もの)なのかしらね。」



(へい)()(しん)(ちょう)なのだっ!

 (よく)(まみ)れた(じじい)(ども)(かん)(けい)ないっ!


 (みん)(しゅう)(へい)()()(ぞく)(かんが)えて――。」



()(たび)(えん)(せい)は、ただの()(かく)()ぎん。」



カーゼルが(げん)(ろう)(いん)()(なん)し、

オルドラスを(よう)()したことで、

(うなず)いたオルドラスはようやく()(けん)(はっ)した。



――(しん)(こう)(こう)(しょう)(さい)(しゅう)(しゅ)(だん)…。



――二人(ふたり)(かい)()(もく)(てき)()えてきたわ。



サンスァラ(おう)(じょ)はなおも(つづ)ける。



(えん)(せい)(くわだ)てたのは(へい)()ではなく、

 (げん)(ろう)(いん)(きょう)(こう)()ね。


 かれらの(うら)には

 メルセと(つな)がっている(にん)(げん)()るわ。


 (ふたた)(ぜん)(せん)まで()()される()(ゆう)を、

 (へい)()()(かい)しているはずです。


 (かた)()きのみの(おう)()(げん)(ろう)(いん)(かい)(らい)


 (せん)(りゃく)(せい)()(かん)(けい)ありません。


 かれらの(よく)()(げん)(ふん)(すい)です。


 (りゃく)(だつ)し、()(はい)し、(みやこ)(うつ)しますか?


 かれらは(へい)()

 なにをお(のぞ)みでしょうか。」



「…()べよ。」



「これは(らい)(てい)です。」



(きん)(そく)()でソーマの()(いん)になった(こと)()



「なんだ、それは。」



(へい)()()と、(あら)たな(おう)――。」



その(こと)()でオルドラスは()()がり、

カーゼルより(さき)(けん)()くと、

その(けん)(さき)をサンスァラ(おう)(じょ)(くび)()けた。



(くび)()って(だま)らせたところで、

 (てん)(びん)(ぎゃく)には(かたむ)きません。


 (こと)()(かぎ)をかけられるでしょうか?


 (ひがし)からの()(えん)(あつ)(ぶん)(すい)(がい)ならば、

 (こう)(りゃく)はネルタ()(じょう)(なん)()するでしょう。


 (かわ)にはいくつもの(せき)(もう)けられ、

 カヴァへの(ぶつ)(りゅう)()()え、

 (ふゆ)はさらに(きび)しくなります。


 いまの()えたカヴァが

 (とう)()(りょう)(かな)いましょうか?」



「では(おう)()()(よご)せというのか。」



サンスァラ(おう)(じょ)(くび)(よこ)()る。



(つか)える(おう)()わったとしても

 かれらにとっては()(にん)です。


 (おう)(ほう)(いつ)(だつ)すれば

 それがかれらの(つぎ)()(ふだ)になります。


 ()(ぶん)(あら)たな(おう)になるものと(おも)って、

 (おう)()(そば)(わら)って()ていることでしょう。


 (おう)となる(もの)(つね)に、

 (あい)()(ただ)しく()なければなりません。」



(おう)(みち)()()えているのか。」



オルドラスは()(せん)()げ、

()(けん)(しわ)()せた。



(だれ)(とお)ることのない(みち)であれば、

 それは()(どう)(しゃ)(ひら)くものです。


 それが(へい)()だけの、(おう)(みち)です。」



「おれの…?」



「えぇ、ドラスだけの(みち)よ。


 その(みち)には、あなたの()(まえ)()く。


 (えい)(えん)とまではいかないけれど、

 (のち)(れき)()(のこ)るわね。」



(おう)(じょ)()()(ぜん)だった()調(ちょう)(もと)(もど)った。



オルドラスは()(かい)()いつかずに

まだ(こん)(わく)している。



(けん)(さや)(おさ)め、

(たお)れながら()()()(あず)けた。



「長く(せん)(そう)(つづ)ければ

 (くに)()(へい)するのは()()(めい)(はく)よね。」



「それもわかっているつもりだ。


 スァラ、お(まえ)はなにを(かんが)えてる。」



(にん)(げん)(れき)()

 (せん)(そう)(れき)()でもあるわね。


 ()(えき)(はん)(えい)(もく)(てき)(きそ)(つづ)けるのは、

 (せい)(ぶつ)(てい)()とも()えるわ。」



サンスァラ(おう)(じょ)(きた)(ゆび)(さき)()ける。



「あなたの(みち)(うば)うのではなく(きそ)い、

 ()るのではなく穿(うが)つのよ。」



(てん)(まく)にはなにもなく、

()()げれば(つき)()けて()る。



「…なんだ?」カーゼルが(けい)(かい)する。



「ゼズ(さん)(みゃく)…?」わたしは()(もん)(つぶや)く。



「えぇ、ゼズ(さん)(みゃく)(へだ)てられた(どう)(くつ)(こう)


 そこまで(つづ)くトンネルを()れば、

 ()()(おう)(うみ)()られるわよ。」



(たい)(げん)(そう)()だ。


 おれ(たち)

 (うみ)()(かい)(ぞく)になれというのか?」



「『(やま)をも穿(うが)つ、カヴァの(しゅう)(ねん)。』


 (せん)(そう)(やま)(けず)ったカヴァにとっては

 (むずか)しい(はなし)ではないわよね。」



(みち)()(せつ)(やま)(けず)るのと、

 (あな)()るのとは()(けん)(せい)(ちが)うだろうが。」



カーゼルの()(とお)りで、オルドラスも(うなず)く。



()(よう)()まれて、

 ついでに(こう)(ぶつ)()れる

 かもしれないわよ。」



(らっ)(かん)()ぎるっ。


 そんな(いち)(だい)()(ぎょう)

 (だれ)(かね)(はら)うんだっ!」



(とう)()というのは(さき)()るものよ。」



(さか)えた(みなと)(ひつ)(よう)なのは、(けん)(ろう)(ふね)か…。」



オルドラスが(つぶや)く。



「えぇ、それは(てつ)(ふね)ね。」



(かの)(じょ)()(ぶん)(はつ)(げん)(たの)しんでいる。




 ◆




(てつ)(ふね)などと(たぶら)かして、

 (こっ)()ごと(しず)めるつもりかっ!」



(おう)(じょ)(はつ)(げん)にカーゼルが(なん)()(わめ)くせいで、

イオスもわたしも(みみ)(つか)れてしまう。



(しず)まないわよ、ねぇ。」



()(むすめ)(くち)(はさ)むな!」



わたしが(しろ)(ねこ)のイオスに(つぶや)くと、

(ちゅう)(じつ)(いぬ)尻尾(しっぽ)()んだ。



カーゼルは()(むすめ)(つぶや)きを()(のが)さず、

(いか)り、(さわ)()てる。



()べよ。」



()()ばして(いぬ)(しず)めるオルドラスが、

わたしに()かって(しず)かに(うなが)す。



(なが)いあいだ(せん)(そう)(つづ)けてきた(かれ)らを

(いち)(がい)()(てい)してはならない。



それではまた尻尾(しっぽ)()んでしまう。



わたしは(べん)(きょう)(かい)での(せつ)(めい)のつもりで、

(あい)()()(しき)()(かい)()()いを(さぐ)る。



()から(つく)(ふね)(みず)()くけれど、

 (てつ)(つく)ったところで(ふね)(おも)くて(しず)

 と(かんが)えてるのよね。」



「その(とお)りだろうがっ。」



カーゼルは()って(あご)()()す。



わたしは(くび)(ひね)って()せる。



(みず)()()げて(せい)(ちょう)する()(なか)には、

(みず)よりも(おも)くなる(しゅ)(るい)もある。



(もく)(ざい)(きん)(いつ)(かん)(そう)させる(とき)には(みず)(しず)める

()ったところで、カーゼルは(なっ)(とく)しない。



()(えん)(せつ)(めい)()けて(こと)()(えら)ぶ。



(てつ)よりも()(じゅう)(おお)きな――

 (てつ)よりも(おも)(ぎん)()かぶはずはない、

 という(けん)(かい)でいいのかしら?」



(とう)(ぜん)だろうっ!」



カーゼルが()んだ(うで)()いて、

()のひらでテーブルを(たた)く。



(てつ)より(おも)(ぎん)でも(みず)()くのよ。」



()ってわたしは()()から()()がる。



イオスが(うで)から(かた)(のぼ)り、

ケープの頭巾(フード)(はい)って(おさ)まった。



(しょく)(しょ)(くび)()まって、(すこ)(くる)しい。



わたしはオルドラスから(あず)かった()(ぼく)(あかし)

(から)(ぎん)(ぱい)()にして()せる。



()(がく)に、オルドラス(きょう)()(こう)()(こう)ない

 とだけ(さき)()っておくわね。」



オルドラスは()(まえ)(かっ)()使(つか)われて(いぶか)しむ。



(ぎん)(ぱい)(みず)()かばなければ、

 ()(けい)(つみ)()われるのかしら。」



「なんのつもりだ…。」



(いら)()つカーゼルは()(ぶん)(ぎん)(ぱい)(あお)り、

(さけ)()ぎ、また(うで)()(なお)す。



(さけ)(たよ)ったところで(はん)(だん)(にぶ)り、

(さけ)()(かい)(うなが)してはくれない。



「その(さかづき)()って、こちらに()なさい。」



山間(やまあい)田舎(いなか)(もの)とも(さげす)まれている

カヴァの(へい)()が、(ふね)()()みがなくても

()(ぢか)なもので()(かい)できる(ほう)(ほう)がある。



わたしは(こし)ほどの(たか)さの(かめ)(よこ)()つ。



挿絵(By みてみん)



()(ども)でも(はこ)べる(おお)きな(かめ)には、

()(さい)(ふせ)(ため)(みず)(はい)っている。



()るされたランタンの灯火(ともしび)があっても

(かめ)(そこ)(くら)い。



(のぞ)()むイオスがに()ちないように

(ぎん)(ぱい)()()(かお)(おさ)えた。



(てつ)より(おも)(ぎん)(さかづき)

 この(かめ)(みず)には()かばないのよね?」



(かく)(にん)()るとカーゼルはなにも()わず、

(かめ)(うえ)から(ぎん)(ぱい)()(ばな)した。



(さけ)(はい)った(さかづき)(らっ)()(いきお)いで(みず)(ばしら)()て、

すぐに(かめ)(そこ)へと(しず)んで

(ちい)さな(おと)()かせた。



カーゼルは(はな)(いき)()くので、

わたしもこの(けっ)()(よろこ)

(くび)(たて)()った。



(しず)んだわね。」



(おと)(みみ)にして(おう)(じょ)(すわ)ったまま()う。



(てつ)よりも()(じゅう)(おお)きな(ぎん)でも、

 (なか)(さけ)(はい)っていなければ

 (ふね)(おな)じで(ぜん)(たい)(みつ)()(ひく)いの。


 (おな)()(ゆう)でわたしの(から)(ぎん)(ぱい)は、

 この(かめ)()かべることができるわね。」



カーゼルを()()び、

(ぎん)(ぱい)(てい)(めん)から(かめ)()けた。



(かめ)(みず)(ひた)した(から)(ぎん)(ぱい)

()(はな)しても(すい)(めん)(ふち)()して()れる。



(さかづき)(みず)()退()けて(しず)(ちから)よりも、

 (みず)(さかづき)()()げる(ちから)(ほう)

 (まさ)っているわ。


 (さかづき)(かん)(ぜん)(しず)まずに(いち)()(すい)(めん)から()て、

 (さかづき)()いていると()えるわね。


 これを(へい)(こう)(じょう)(たい)というの。


 (てつ)(ふね)(つく)った()(あい)(おな)じように

 (たい)(せき)(おお)きくして(みつ)()(ひく)ければ、

 (うみ)から()()げる(ちから)(はたら)くわ。


 (てつ)(ふね)でも(うみ)()くのは()()(めい)(はく)ね。」



「お、おう…?」



カーゼルは(くび)(ひね)って(どう)()した。



()(かい)(はや)くて(たす)かるわ。


 オルドラス(きょう)(さい)(りょう)

 カヴァの(きん)(ぞく)()(こう)()(じゅつ)()わされば、

 (てつ)(ふね)(つく)るのも()()(のう)ではないわね。


 カーゼルが(さっ)する(とお)り、

 二人(ふたり)()(てき)()()()わしたのよ。」



「おうん?

 その(とお)りだろう…。」



もうカーゼルは(おお)(ごえ)()(てい)せず、

わたしから()()わせず、

()かぶ(ぎん)(ぱい)()つめていた。



「くははっ。」



オルドラスが(こう)(しょう)する。



サンスァラ(おう)(じょ)(こん)(わく)するカーゼルを()て、

(なか)(かか)えて(わら)っている。



「サンサと()ったな。おかしな(むすめ)だ。


 (こう)(せい)とは(おご)った()(まえ)だと(おも)ったが、

 お(まえ)(ごう)(たん)(せい)(かく)はその()(しき)

 ()(りょう)(そな)わっておればこそか。」



――その()(まえ)

  (もと)はあなたの(いもうと)のものよ…。



わたしは(ぎん)(ぱい)()()し、

(みず)(はら)ってからテーブルに()く。



カーゼルの(しず)んだ(ぎん)(ぱい)(かれ)(まか)せる。



頭巾(フード)(はい)ったイオスを()そうとすると

(いや)がられた。



「おれも(むすめ)にそんな(けん)(じつ)()(まえ)

 ()けてやれば、()かったか。」



わたしからすればサンサという()(まえ)は、

(けん)(じつ)という(しょ)(かん)から(とお)(はな)れていて、

(こう)()()()(もと)()(まえ)()(ぬし)()た。



「わたし(たち)(おう)()(あそ)びに

 あなたが()ざるなんて。


 おかしな()よね。」



(おう)()(あそ)び…。」



(えん)()めいた(しゃべ)(かた)をしていた(おう)(じょ)には

(わる)(だく)みを(かん)じていた。



(おう)()(あそ)びに()()わされたカーゼルも

わたしと(おな)じく(こと)()(うしな)った。



「おれは(たわむ)れで(おう)()(すわ)っただけなのに、

 スァラが(しん)()真似(まね)(ごと)をしたのだ。


 それで(しか)られるのは

 いつもおれだったぞ。」



「わたしも(しか)られたわよ。」



「オランドルとサラシュが、

 (おう)()(ざい)()(おな)じことをやって

 (あそ)んでいたんだと。」



「そこは(ちち)()たのね。」



()められた(こう)()ではないが、

 これは(よろこ)ぶべきことか?」



()われたサンスァラ(おう)(じょ)(うなず)いていた。



「しかし…なんの(せい)()もなく

 ()(かん)して()いんでしょうか。」



(みぎ)()(ひじ)まで()らすカーゼルが

(かんが)えを()()した。



(せい)()ならあるだろう。()(まえ)に。」



(かえ)らないわよ?


 20(ねん)()なかった(しょう)(ふく)が、

 いまさら(かえ)ってきたところで

 わたしに(おう)()(よう)()されないし、

 (くに)(こん)(らん)させるだけだもの。



(おう)()(のぞ)んでいるわけでもない(おう)(じょ)(こと)()

わたしは(いき)()く。



(だい)()(ひん)(つぎ)(せん)()(ひん)になるわね。」



わたしの()()(わる)(けん)(かい)に、

サンスァラ(おう)(じょ)()(ほそ)めて(した)(さき)()す。



(げん)(ろう)(いん)()(ふだ)になるなんて(いや)よ。


 わたしを退(たい)(くつ)(しば)()けるだけで

 なにも(かい)(けつ)にはならないもの。


 カヴァは(えん)(げき)(けん)(えつ)(ほう)(きん)()してるのよ。


 (もり)(けん)(じょ)のあなたが

 なにか(かんが)えてあげなさい。」



「またわたしに()()けて…。」



()(まん)(つぶや)いたけれど、(そう)(ぞう)()いていた。



(ぶん)(すい)(がい)(はい)って

 (かん)(こう)するってのはどうでしょうか?


 ()()()(ろう)()ねて。


 なにせあの(まち)(しょう)(かん)(おお)い。」



()らした(うで)をキャシュクで()きながら

(うれ)しそうにするカーゼルの(てい)(あん)に、

わたしを(ふく)(ぜん)(いん)(かお)(しか)めた。



「ドラスの(みぎ)()だけあるわね。」



「おれまで(おとし)めるな。」



(へい)()()ってたではないですか!」



「20(ねん)(むかし)(はなし)だ。


 いまさら穿(ほじく)(かえ)すな。」



オルドラスはカーゼルの()()

(かる)()りつけた。



わたしは(ひと)つ、

おかしなことを(おも)いついた。



「カヴァは(けん)(えつ)(ほう)があっても、

 (しい)()(ふだ)(あそ)びもするのよね。」



(おう)()(おとし)める(えん)(げき)(きん)じ、

 ()(ごと)ならば(きび)しく()()まるぞ。


 (ふだ)(あそ)(てい)()なら(ゆる)すが…。


 (ぶん)(すい)(がい)のようになっては(こま)る。」



「ユイガス(きん)()まで()けて

 わたしに()けたものね。」



サンスァラ(おう)(じょ)(くち)(はさ)んで(なつ)かしみ、

オルドラスは(かの)(じょ)から()()らした。



「…なにか(あん)があるのなら()べよ。」



(しょう)(かん)はやめて(とう)()(じょう)ってのは?」



「はぁ…。」



カーゼルの(おとこ)らしい(だい)(あん)で、

わたしの()わりに(おう)(じょ)()(いき)()いた。



「いまのカヴァの(じょう)(きょう)

 (しい)()(ふだ)(あそ)びに()()てた(とき)

 (のこ)っている()(ふだ)はなにがあるのかしら。」



(ぶん)(すい)(がい)より(よわ)いとでも()いたいのか?」



()(かい)するカーゼルに(くび)(よこ)()ってみせる。



(となり)のサンスァラ(おう)(じょ)

わたしを()(うなず)いてくるので(まぎ)らわしい。



「カヴァには()()(ざい)()や、

 (ほう)(せき)から(そう)(しょく)(ひん)(つく)れる

 (すぐ)れた()(じゅつ)があるわね。


 (こく)(ほう)(はっ)(きん)(ぞう)とかね。


 それはとても(おお)きな(すう)()(ふだ)ね。」



サンスァラ(おう)(じょ)(あき)れるけれど、

カーゼルは(むね)()って(くに)(ほこ)って(うで)()む。



(えき)(びょう)()(きん)(せん)(そう)(まね)く。


 これを(きょう)(こう)(じょう)(たい)って()ぶのは

 ()ってるわよね。


 (ぎゃく)(じゅん)になってるのなら、

 (おお)さな(すう)()ばかりの()(ふだ)

 ()()になって()えるわね。」



()(じつ)ね。」



サンスァラ(おう)(じょ)がもう(いち)()(うなず)く。



「でもこれは

 ただの(こと)()(あそ)びに()ぎなくて、

 ()(まわ)しを()えただけだよ。」



「なんだぁ?」



わたしの(ねら)いを(おう)(じょ)(つた)えたもので、

カーゼルが()(かい)できないのは()()もない。



「それ()いわね。

 やりましょう。


 カーゼル! (かみ)とペン、

 インクの一式を()ってきなさい。


 (はや)く。」



オルドラスよりも(さき)

()(よく)(みなぎ)らせるサンスァラ(おう)(じょ)は、

()()でもないカーゼルに(めい)じた。



オルドラスがなにも()わずに(あご)()()

カーゼルを(はし)らせる。



「え、()いの?」



「お(まえ)(たち)のやりたいように

 やらせてみようと(おも)う。


 (せき)(にん)()(おう)オルデウスにでも

 ()らせよう。」



――(いもうと)はいまもドラスのお(ひめ)(さま)なのね。



わたしはそれを()して(くち)には()さず、

オルドラスの(はん)(だん)(くび)(たて)()った。



 ▶

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ