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森を抜け、人との遭遇

 俺達は森を抜けた。

 森の外は草原が広がっており、樹々がまばらに生えていたりしていた。

 きりがよかったので一旦休憩を取り、今後の事を話し合った。


「これからの事なんだけど…人里についたらどうしたらいいと思う?」

「そうねぇ。まずは宿探し…と言いたい所なんだけど、あなた達お金無いわよね?」

「ないな。まぁ俺の魔法を使って調味料とかを販売できればなんとかなるんだろうけど…」

「私は少しなら持っているけど、いつまでも続くものじゃないし…。それなら商業ギルドか冒険者ギルドに登録すると良いわよ。

 身分証も作れるし、買取もやってくれていたはず。」


「冒険者!?」

 トウマが目をキラキラして冒険者という言葉に反応している。


「俺は商業ギルドに登録するから、トウマは冒険者登録してみるか。

 当分は街でゆっくりしたいし、安定した収入は必要だろう。

 それで、俺の考えを聞いてほしいんだけど…

 俺はトウマを両親の元に返したいと思っている。

 トウマの家にこっちの世界に来る本があったって事は、もしかしたら両親や家族もこちらにくるかもしれない。それに、向こうの世界からこっちの世界に来れるということは戻る方法もあるかもしれない。

 だから、トウマの知り合いがこっちの世界に来た時に探しやすいようある程度有名になったほうがいいと思っている。

 同時にあっちの世界に帰る方法も探していこうと思う。」


「おじさん…。ありがとう」

「だからトウマとティレアは冒険者として、俺は料理人として情報を集めていこうと思っている。

 あと…ティレアは魔物として街に入るのか?」


「いえ…私はあなた達と同じ人間として着いていくわ。

 人間と友好的な魔物は少ないのよ。だから本来の姿なら警戒されて街に入れないわ。

 従魔としてなら結構街にいるんだけど、知識をもった高度な魔物達は人間として入る方が一般的ね。

 それに大きな町に一匹居るかどうかくらいしか人型の魔物は居ないわよ。

 だから人間達もそこまで警戒してないわ。

 あと、ライガーやライターは従魔になったと言えば連れて入れるはずよ。」


 なるほど。まぁさすがにティレアクラスの魔物がウヨウヨ暮らしてたら、どこの人外魔境だよと思ったところだ。


「あとは…人里についてから考えようか。」

 賛成と皆が頷く。


「うーん…あの山は見覚えがあるから、もう少しあっちにいった方に街があったはずよ」

 山のふもとを指さすティレア。

 山の形でだいたいの場所を覚えてるのね。


 俺達はやっと人里が近づいてきた事に喜びを感じ、ちょっと早足になりながら草原を歩いた。

 右手に森はまだ続いている。改めてみると、本当に広い森だ。


「おじさん!あれ!」

 トウマが前方を指さす。

 そこには馬車が1台あり、周りには沢山の蟻たちが群がっている。

 蟻と言っても大型犬くらいありそうな蟻だ…。

 その蟻たちが馬車を襲っている。

 馬車の周りを5人ほどで守っている。


 初めての人だ…と一瞬感動したが、それどころではないと思い、トウマとライガーに続き駆け出した。

 馬車に向かい走っていると5人もこちらに気付いた。


「おーい!こっちにくるなっ!俺たちに構わずあっちにいけ!」

 そのうちの一人がこっちに叫んでいる。

 悪い奴じゃなさそうだ。


「追い払うの手伝います!」

 トウマは蟻の一体に槍を突き刺した。

 槍の先端は俺が作った包丁だ。

 この包丁は俺以外のものが持っても使えるが、俺が使った時みたいなぶっ飛んだ性能はでなかった。

 トウマは石で作った物より全然良いといって喜んで使ってくれた。

 トウマは腰にも、包丁を差しており、もう一匹蟻を真っ二つに切り裂いた。


 見た目硬そうに見えるのに、凄いな。

 俺も負けじと…と思ったが包丁を投げつけるのは加減が効かない…。

 ライガーは蟻に爪を突き立てたり、体当たりをして追い払っている。


 馬車の周りにいる5人もトウマとライガーの戦闘力に呆然としていたが、気を取り直したようで剣を突き立てたり、火の魔法を打ったりしている。

 これなら俺の出る幕はないなぁ。完全にトウマが無双状態だ。

 走るペースを落としてティレアと二人で向かうことにした。


「いや〜凄いもん見せてもらったわ!」

 五人組は冒険者のパーティーらしく、珍しい食材の採取依頼を受けて、最果ての森に入った所までは良かったが、帰りに襲われたそうだ。


「珍しい食材?」

 俺は食材と聞いて興味をもった。


「そうだ。森に入ったとこにあるハニービーと言われる蜂の魔物が集めている蜜を採取しに来たんだ。

 ハチミツはなんとか取れたんだが、ハニービーの蜜はさっきのアント系の魔物の大好物で帰りに襲われたってわけだ。一匹や二匹くらいならなんとでもなるんだが、あそこまでいるとなぁ…」


 この5人パーティーだけでも、時間をかければなんとかなりそうな感じだったが、素直に助かったと喜んでいる。

 そのことを尋ねると、既に最果ての森で連戦していて、ボロボロな状態だったので、本来ならなんとかなる相手でも苦戦していたそうだ。


「本当にこの森は魔物が多くて、結構ギリギリだったぜ。」

 せっかくだし、街まで連れて行ってもらうことになった。

 この五人組はクリムゾンブレイドというパーティを組んでいて、結構有名だそうだ。

 リーダーはカイルという剣士、女性ヒーラーのセリア、斧使いのブランドック、女性偵察のネヴィア、女性弓使いのテリアンの五人組で世界中を旅して回っており、最果ての森の採取依頼をうけてきたそうだ。

 なお、このパーティーでは髭面で強面のブランドックが料理人らしい。ザ・キャンプ飯って感じだな。


 トウマが最果ての森に迷い込んで、生還したというと驚かれた。

 俺とティレアは森の奥に住んでいて、トウマを保護したという設定で通した。


「いや…なんであんな森に住んでんだよ…。」

 っと皆に呆れられたので、はははと返したが次からはもう少しちゃんとした理由を考えた方が良さそうだ。


 しばらく何も起きず、草原を歩いていると徐々に家や畑が見えてきた。

 結構大きい街のようだ。

 田舎っぽい畑や家が並ぶ中を進んでいくと城壁が見えてきた。

 城壁を通ると街があるようだ。


 門番は訝しんでいたが、商人の口添えで入る事ができた。

 入るのにお金がいるらしいが、商人が建て替えてくれた。


 かなり大きな門をくぐるとそこはキレイな街並みだった。

 多種多様な人種が歩いており、よく解らない動物が引く馬車が走っていたりする。

 街も中世ヨーロッパという風ではなく、現代の昔ながらのヨーロッパ風に近い。

 所どころに街灯のようなものが建てられており、文明も発展してそうだ。


 正直もっとボロボロで臭いんだろうなと想像していたが、まったく問題なかった。

 むしろ、現代のビルまみれの日本より、好きだな。


 俺達はカイル達に連れられ、依頼主の屋敷へと向かうことになった。

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