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日々の料理と出発の時

翌日…。


 トーマと共に目を覚ます。

 周りはまだ薄暗いが見えない程じゃない。

 俺とトーマは木のはしごを降り、朝食をとることにした。

 

 簡単にサンドイッチを作った。

 ライガーには魚を与えてみた。ライガーのしっぽはちぎれんばかりに振られている。

 魚もお気にめしたようだ。

 

 昨日、トーマと一緒に眠り、寝言で「お母さん…お父さん…」と言っているのを聞いて決心した。

 いくら逞しく生きているとはいえ、まだ10歳なのだ。

 この時期はまだ親離れできていないだろうし、まだまだ甘えたい年ごろのはずだ。

 それに多感なこの時期に友達の一人もいないのはやはりよろしくない。

 俺はまず人里を目指すことにした。

 そこで情報を集め、元の世界に戻れるかを調べてみよう。

 

 それに、異世界ならではの調理法や食材も気になる。

 そう考えると人里に行きたい。


「トーマ、この辺りに人里はないのか?」


「うーん、片道3日くらいの距離は見に行ったけど人の気配は見つからなかったねー。」


 3日…トーマの行動範囲は思ったより広いみたいだ。

 3日間も動いてよく戻ってこれたなと思うが、ひとまず置いておこう。

 すぐには人里に降りられそうにないな。焦るのはヤバい。

 それにここは異世界だ、何が歩いているのか解らないから少し様子見かな。


 さて…腹も膨れたし。今日は色々と試してみようか。

 創造魔法を使って色々と作ってみることにした。


 ワイン…チーズ…ビーフジャーキー…缶詰…

 記憶にある物なら大抵は作り出せるようだ。


 最新のフライパンや圧力鍋はいけるのに家電関係はダメみたいだ。

 電子レンジとか出そうとしたが無理だった。

 テーブルや机なら出せるのもよく解らないな。

 ジャンルじゃなくて、使い道なのかな。

 料理に使われる物なら作り出せるのかな。


 まぁ色々と細かな制約があるのだろう。そんな事を考えながら、肉をだした。

 軽く塩コショウをかけて、フライパンで炒める。

 ふむ…創造通りの肉質だ。スーパーの安い肉からA5ランクの肉等の高級肉も自由自在に出せる。


 これが創造魔法か…なんて便利な物を頂いたんだろう。

 神様に改めて感謝…祈りをささげる。


 どういたしましてと聴こえた気がした。

 

 肉はライガーにあげた。


----------


午後から、トーマと今後について話し合った。


「やはり元居た世界に戻りたいか?」


「…そうだね。父さんと母さん、妹と弟に会いたい。」


 そりゃあそうだろう。10歳くらいの時はちょっと照れが出るがまだまだ甘えたい年頃だ。

 親元から離れるだけで不安にかられるものだろう。既に1年も独りで生き抜いて来たのだ。

 俺には想像すらつかないレベルで寂しさを感じていてもおかしくはない。

 むしろよく正気を保っていたと思うレベルだ。その事を聞いてみた。


「アキラおじさんが来るまではちょっときつかったんだ。ライターを捕まえてからは毎日話しかけたりしていたけどね。」


 昔、父親に習ったらしい。人形とかを作って話しかけたりすると寂しさが紛らわせるんだと。

 …ってそれって壊れる一歩手前なんじゃ…とも思ったが、無垢な笑顔で笑うトーマをみて大丈夫だと感じた


「少し落ち着いたら人里を探してみようか。」


 昼食に作ったハンバーグサンドを食べているトーマがモグモグさせながら返事をする。


「そうだね、僕がここを離れなかったのは、食料が不安だったのと、結構ヤバい奴がうろうろしてたからね。

アキラおじさんがいると食料の心配しなくていいし、ヤバい奴の縄張りはだいたい解ったし。」


「やばい奴?」


「うん。」


「川を越えて上流の方にまっすぐ登っていくと、黒くて大きい馬や、宙にうく小人みたいなのが戦っているんだ。

どっちかに会うとヤバいね。」


 あっけらかんとトーマは言うが、何だよ宙に浮く小人って…。妖精?

 なんだよ戦ってるって…おっさんには理解が追い付かない。


「トーマは無事だったのか?」」


「一度会ったとき、最初に黒くて大きい馬にあったんだけど、すぐ逃げだしたら見逃してもらった。

その後、帰り道で空飛ぶ小人にあったんだけど、こっちはすぐ襲ってきて、ものすごく早くて逃げ切れなくて…

戦いながら黒い馬の方に連れて行ったら、馬と戦い始めたから逃げられたよ。」


 なんというか…ちゃっかりしてるな。


「馬と小人の両方から襲われると思わなかったのか?」


「それも考えたけど、どちらにせよやられるって思ったから必死だった。

それにこの森の生き物って基本的に共存っていうより弱肉強食って感じだからね。

たぶんいけると思ったよ。」


 しかし、あのカマキリみたいな奴を瞬殺するトーマにヤバいと言われるやつらも居るのか…。

 この子、見えないような速度で動くし、移動中も的確に魔物を狩っていた。

 森の中では敵は居ないだろうと思えるくらい強いのに…。さすがにそんなのに出くわしたくはないな…。


「あと、反対側のほうにいくとやたらと硬くて見えにくい蜘蛛の糸が張ってあった。蜘蛛が沢山住んでそうだね。」


「蜘蛛かぁ…この世界の蜘蛛だから普通じゃないんだろうなぁ…」


「まぁでも、焦って動くことはないんじゃない?

だっておじさん、サバイバルやキャンプの経験無いよね?

まずはこの環境になれたほうがいいよ。思った以上にストレスって感じるものだし。

森の暮らしに少し慣らしてから移動したほうがいいと思うよ。この辺りは比較的安全だし。」


 うーむ…。たしかに。

 それにここにあるこの世界の食材も気になるし、魔法の練習もしたいからなー。

 今なら話し相手もペットもいる。

 何より、トーマが作った家がある。

 下手に焦って冒険に出るより、少しでもこの環境に慣れてからのほうがいいか。


 俺はトーマの提案をのむことにした。

 軽く数日ここで暮らしてみて、大丈夫だと思ったら人里探しに出発する事になった。


 それから数日間、俺はトーマから食材を貰いつつ、異世界料理に励んだ。

 異世界とは言ってもほとんど食材に差は無さそうだ。

 さすがに足りない材料や調味料各種は創造魔法で補った。


「おじさんの料理…さいこーだね!」


 トーマが良い笑顔で俺の料理をほめてくれる。

 料理人にとってはとてもありがたい言葉で、本当に嬉しい。


 前世では厨房で料理を作っていたから、面と向かって言われる事にあまり慣れていない。

 やはり面と向かって言われるのは嬉しいものだ。

 前世でももっと客先に立つべきだったかな。

 でも、人付き合いはあまり得意じゃなかったんだよな。

 そんな事を思いながら、トーマが仕留めてくる獲物をできる限り今あるもので料理を作ってみた。


 色々と創造魔法も試してみた。

 創造魔法で完成した料理を作る事もできるのは解ったが、基本的に素材までにしようと思っている。

 料理人として、何かズルしてる気がするし、他人の味付けを盗んでいる気がしたからだ。

 とはいえ、カレールーにはじまり、カップラーメンまで作り出せた時はびっくりした。

 ペットボトル、缶ビール、ワイン、容器ごと再現できてしまう。

 どうなっているのだろう。

 そして作り出した物は消すことも出来るが、意図的に消さない限りは残り続ける事が判った。

 

 これはうまく使えばお金には困らないな。

 しかし、自分の魔力総量がいまいちわからない。

 一日中練習していたが、少し疲れた程度で、まだまだ作れそうだ。

 何かが減っていく感じはするのだが、枯渇する気がしない…。

 数百人の炊き出しとかをやらない限りなくならないんじゃないか…これ。


 まぁ、一通り作ったし、カップラーメンは何気にトーマが喜んでくれたし、俺は超高級ワインが飲めて幸せだしいっか。


 数日が経ち、この環境にも慣れてきた。

 そろそろ出発の日は近い。

 今日の晩御飯は今まで食べた中で最高級の牛肉と、最高級のワインを魔法で作り出して楽しもう…。トーマにもコーラとポテチを出してあげる。ライガーやライターには最高級和牛をあげる。

 あぁ。この魔法は人間をだめにしそうだ。


 ちなみに。異世界の果物や魔物の肉はなかなかのうまさだった。

 俺の最高級食材シリーズに匹敵する質だった。

 もっと色々と手に入れば、最高級食材シリーズより美味い物に出会えるかもしれない。

 そう考えると楽しみになった。

 

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