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森の奥、サバイバル開始

一瞬目の前が真っ白になった。

まわりの景色が一瞬で切り替わった。


遠くからよくわからない鳴き声が聴こえる。

日本では味わえない匂い。

湿度。

近所の裏山には咲いてない草木。

家の中にいたはずが、一瞬でどこかの森の中に居た。


頭の中は真っ白になった。


「おとうさぁーん!おかあさぁーん!」


まったく人の気配が感じられないが心細さから叫んでみた。

予想はしていたが、なんの変化もない。

何かが起こって、森の中に来てしまった事は理解できた。



本を開いてたらいきなりこんな所に来てしまった。

もしかしたらだれかが探しに来てくれるかもと期待して。

頭を整理させながら、待ってみることにする。


父さんがよく「ピンチの時こそ冷静になれ」って言ってたなと思い出し、涙をぬぐった。



まわりには人の気配は無い。

所持品は何も持っていない。

服は着ているが、靴はない。

食べ物や水は無い。

まわりはジャングルのような熱帯雨林だ。

やけに蒸し暑く。

気温や湿度、植物から日本では無いと思う。


「このまま、待っていてだれも来なかったら…」


そう考えると、泣くより先に色々とやっておくことがある。


夏休みに父さんとよくキャンプをしたのを思い出した。


「森や山で迷ったらまず川を探せ」


だったかな…


川や水辺の周りは人が住んでる事が多いし、水を飲みに来る動物や、果実にも期待でき、

食料や水分の確保ができるからだったかな。

周りを見渡して、一番高い木を探す。


「あった…」


その木のすぐ脇に、グルグルと巻き付いてるツルを見つけた。

両足に巻き付けて、足と足の間のツルを木にひっかけて登っていく。

木登りは慣れたものだ、昔父さんと死ぬほど登った。

それになんだか身体が軽い気がする。


トウマは。

木のてっぺんまで来て周りを見渡した。


「え…」


見渡す限り、緑だった。

まわりには山と森しか無い。

幸い近くに川がある。

少し歩けば行けるところだ。

遠くにかなり大きな山が見える。


人工物は見つからなかった。


木からおりたトウマは何か食べるものが無いか探していた。


ガサガサ…

ガサガサ…


すぐ近くで何かがで動く音がする。

ソーッと近づく。

葉っぱをめくるとトカゲと目が合った。

結構な大きさだ。お互い見つめっていた。

手を伸ばそうとしたらトカゲは走った。

「逃がすかっ」

トウマはトカゲの首をつかんで捕獲した。

こういう時の爬虫類は貴重な食料だ。

とりあえず、さっきのツルで縛っておこう。

と、手の中のトカゲを見る。

やっぱり記憶にないトカゲだ…


トカゲというより小さい恐竜みたいだ。


やけにゴツゴツしてるな…とか思いながらトカゲの顔を見ていた。



「グルウゥゥウ…」


ん…威嚇音…?


「ボッ!」


「うわぁ!」


トカゲが火を吐き出した。

トウマはとっさに顔をかわす。

火を吐くトカゲ…そんなの居たっけ?


とりあえず口もツルで縛った。



トカゲ(食料)を手に入れたので。

あとは水と寝床だ。

トウマは木に登った時に見つけた川のほうに向かう。

森の中をかき分けるように進む。


とくに何事もなく川に到着した。


水は流れていて、透明だった。

トウマは少しホッとした。


流れが無いと。

食中毒や寄生虫の可能性がぐっと上がるって父さんに教わった。

これなら、いざという時は飲めそうだ。


軽く口をすすいで、寝床の作成に取り掛かる。


寝床を作る場所を探す。

たき火ができそうなスペースがあり。

近くの木にYかVみたいな形の枝を探す。


幸い寝床を作る場所はすぐ見つかった。


二本の枝に木を敷いていき、ツルでグルグル巻いて固定する。

三角形の寝床の完成だ。


ツルがそこら中に生えていて助かった。

これだけだと身体が痛いので。

落ち葉を敷いていく。


おぉ、かなり快適になりそうだ。

ちょうど真上に同じような枝もあるので、屋根も作った。


あとは…たき火か。


「火おこし疲れるんだよな…」


はぁ…とため息をつきながら薪と火おこしできそうな木を探す。

ちょうどよいまっすぐな木の枝と平な木を見つけた。

いつもの容量で火口を作り、木を回し始める。

トウマは火おこしが得意だったがなかなか火が着かない…。


「それなら…、蔦と木を使って…と。」


木の枝をさらに増やし、蔦を巻き付け押すだけで回す簡単な道具を作成した。


ゴォォォ!

かなりの勢いで木の枝は回すも火が付く気配がない。


「はぁはぁ…。なんで着かないんだ…。別に濡れてるわけでもないのに…。」


火をおこすのをあきらめようかとトウマが考えたその時。

トカゲと目が合った。


あ…

ピコーンと頭の上で電球が光った。


「ボッ!」

トカゲ(食料) からトカゲ(ライター) に昇格?した。

いや、かなりこいつ便利だ。

むしろ餌あげて育てておこうかなと思えるくらい。

この辺りにたくさん居るのかな。


晩御飯の予定だったトカゲがライターになってしまったので。

食料を探しに行かないといけない。

幸いまだ、日は沈んでいない。

木の実とライター探しに川沿いの森を散策しよう。


目ぼしい葉っぱをめくりまくった。


ん〜…ライターいない。


代わりに小さな幼虫みたいなのを捕まえた。

葉っぱで作った箱にいれておく。


あとリンゴ?みたいな果物もなってたので何個か取って寝床にもどった。


「カシュカシュ…ん…うまい!」


ちょっと酸っぱいけど喉も潤うし、甘味もあって。うまい。

腹ごしらえもできたし、日も沈んできた。

今日はもう動くのはやめよう。


でも寝る前にやっておく事がある。

罠作りだ。


木をメガホンのように組んでいく。

それに蓋をするように木を入り口におく。

奥にさっき取った虫を入れておく。


その罠をできる限り作って夜の内に沈めておく。

5個くらい作って沈めておいた。


魚かかってるといいなー…。


今日はもう寝よう。


不安でなかなか寝付けないし。

寂しさから涙がこぼれる。


こうして一日目が終わった。


二日目の朝だ。

あまり寝付けなかったけど、特に何かに襲われるでもなく過ごせたのはよかった。

この辺りに動物はいないのかな。

でも昨日散策してるときに。

動物の足跡見つけたな…。

襲ってくる奴じゃなければいいなー。


とりあえず、川に向かう。

夜に仕掛けた罠の確認と餌の補充だ。


なんと! 罠に魚が3匹もかかっていた。

大きさは鮎程度だが。

食料としては十分だ。


「うわぁぁ…」


少し感動した。

この調子だと、食料事情は問題なさそうだ。

よし、これからはいけすを作って魚をそこにいれて保存しよう。


とりあえず、これで救助が来るまで過ごせそうだ。


魚を木に刺して。

たき火にくべながら考える。


とりあえず、拠点もできたことだし、まわりを散策しよう。

今日は、まわりの地形の把握と食料を確保することに決めた。


今日の目標は、目の前にある丘を登ろう。

1日あれば。

夜には戻ってこれそうだ。

なんかこの森に来てから、体が軽い。

今までこんなに早く走れたっけ?

まぁいいや…。


森の中を進んで少し歩くと、岩がゴロゴロしてる所にでた。

蛇とかいればタンパク質がゲットできそうだなと探していると


「こ…これは」


黒い塊が落ちてる。


「これ、黒曜石だよな… でもちょっと違うな…。」


しかも結構ゴロゴロ落ちてる。

鉱石も父と探しまくった記憶がある。


黒曜石なら、叩くとかなり鋭利に割れるんだよな。

きっとこの石もそうだとありがたい。


よし。

叩こう。


「カンカンカン」

一心不乱に叩きまくった。

幸いまわりにはゴロゴロ落ちてるから多少失敗しても問題ない。

木の棒にくくりつけると一本の槍が出来上がった。

余った分で、手にもてるナイフも作った。

これで色々とできる事が広がった。


いざという時の武器にもなる。

まだ獣には出会ってないが今後出会う可能性も高い。かなり時間を使ってしまったので。


丘にはたどり着けてないが、今日は寝床に一回戻ろう。



帰り道、何か気配を感じた。

直感的に「何かに狙われている」と感じる気配だ。

息を整え、耳を澄ました。


「パキ」


そこには、猪が居た。

しかし、2本の牙が異様に長いし、一般的な猪の倍くらいの大きさだ。


しかもすでに戦闘体勢だ。


「ブゥゥウ…グルグル」


「ん…?

すぐ突進してくるかと思ったけど来ないな…。」


その瞬間、

キュイィィィ


狼の顔の前当たりに魔法陣が光った。

「ボッ」


石がもの凄い速度で飛んできた。


「うわっ」


トウマはとっさに横にかわす。

かわした先に猪が突進してきて、跳ね飛ばされた。


「ぐはっ」


木に叩きつけられて呼吸が止まった。


このままだと、やばい…。

これは覚悟を決めないといけないな…。


トウマは猪を狩る覚悟を決めた。



手に持った槍に力を入れる。

突進してくる猪を見る。

当たる直前猪の目に槍を突き刺そうとした。


しかし…猪は身をかわしかすっただけだ。


すぐに横にとび。

木を蹴り、猪の首元を石のナイフで掻っ切った。


「ぐぉぉぉぉ」


猪は絶命した。


「ハァ… ハァ…」


石を飛ばす猪とか聞いたことないな…。

まるで魔法みたいだ…。


とりあえず、この猪を処理しないと…。

獣の血の匂いで他の獣が寄ってきてはまずい…。


解体は何度も父さんとやった。


まず。

足を引っ張り川に突っ込む。

血抜きを行いながら、解体していく。

トウマは迷うことなくスイスイとナイフを入れていく…。


しかし、記憶にある猪より遥かに強く、得体の知れない技を使って来たな…。


ライターもそうだけど。

やっぱり何かがおかしい…。


なにはともあれ貴重な肉を手に入れた。


この大きさなら、かなりの期間持つだろう…。


余った分は干したり燻したりして保存食にしよう。


非常に疲れた為、寝床に戻った。



トーマが森で生活を初めて1ヶ月がたった。


食料は周囲の魔物の肉と。

罠にかかった魚、木になっている果実等があり、特に飢える心配がない。

とはいえ、普通の11才だと、この状況で生き残るのは不可能だ。

トーマは幼い頃から父に連れて行かれ世界中の秘境を旅してきた。

その経験と恵まれた身体能力でなんとか生き残ってこれたのだ。


土の塊を打ち込んでくる猪。

毒の体液を打ち込んでくる蛙、風の刃を飛ばしてくる蛇など…

数々の魔物に襲われながらもなんとか撃退していた。


そして徐々にではあるが、行動範囲は広がっていた。


それと同時に色々と気づく事が出来てきた。



どうやら…ここの獣達は魔法を使えるらしい…。

という事。

周りの生物達は魔法使いの様に魔法を使ってくる。

いきなり光ったと思った瞬間打ち込んでくるので最初は焦ったものだ。

そして。

魔法が使えるという事と、書斎から今の状況を考えると…


どうやらここは違う世界の様だ…。


昔、絵画の中のファンタジーな世界に入って冒険するって映画を見た。

そういった事が現実に起きてしまったのだと理解した。

そしてこの世界に来てから。

やけに身体が軽い。

全力で走ってみると、おそらく2〜3倍近く早く走れてる様だ。

そして腕力もおかしい。

木を全力で蹴ってみると、そこそこ太い木なのに折れてしまった…。

この世界の木がもろいのか…それとも腕力が上がっているのかは解らない。

おそらく後者なのだろう…。

どういう原理なのかは解らないが。

現状を考えるとかなりありがたい事だ。


そんな事を考えながらトカゲ(ライター)に餌をやる。


このトカゲにライターと正式に命名し話しかけている。

餌を与えて、話しかけていると愛着が湧いてしまったので、もはや食料にする気は無くなった。


最近は一緒に魔物の肉を食べる中だ。


もちろん縛っていたツルもほどいている。

逃げる素振りも無く懐いている。


たまにフラッと居ない時もあるが、火が欲しい時はすぐに帰ってくる。

そして僕にグルグルと言って甘えてくる…。

可愛い奴だ。

ライターが居なかったら僕の精神はきっと持たなかっただろう…。

まだ1ヶ月とはいえ。

一人で過ごしていると気を休める機会がない。

かなり気を張り詰めていた…。


そして、いくら待っても救援が来ない事を見越してそろそろ行動を移す事にしようと思う。


丘に登ってまわりをみわたしても。

山と森しか見当たらない。


トーマは野生的に、順応していった。

食料を求め、寝床を作り、快適なハンモックまで作った。

この辺りの魔物なら大抵はなんとか撃退できるようになった。

とはいえ、生傷は絶えない。


つい先日。

狼に雷をくらって、瀕死の重傷をおわされたばかりだった。


傷口に貼ると傷が癒える謎の草を見つけていなかったら危なかった。


たまたま、傷ついた熊が草を傷口に擦り付けていたのを目撃したのだ。

それをトーマも真似してみると。

傷が治るのが早かった。

それ以来、その薬草をトーマは集めている。

すり潰してペースト状にして、傷口に塗りつけると軽い擦り傷くらいなら一晩で治るのだ。


狼にやられた時は。

傷口に貼りつつ、草を口からも摂取した。


この薬草は食べられるらしい。

食べると元気になる気がする。


最近では果物と、薬草、動物の肉や魚で生きている。

食生活には困って居ないし。

拠点の蓄えも充実している。

土で作った、器や木の実をくり抜いたコップも作っている。


本来なら、さっさと森を出て家に帰りたいのだが…

この森はたまにとんでも無い怪物が出る。


一度。

森をまっすぐ数日ほど歩いた所、遠くに見えた黒い馬…


見た瞬間寒気がした。

しかも、かなりの距離が離れて居たというのに、目があったのだ。

その瞬間、本能が逃げろと叫んだ。

黒い馬はこちらを見ながらも興味なさそうに足元の草を食べていた。

トーマはそろりそろりと。

後ろに下がり、十分な距離が取れてから、全力で拠点に逃げ帰った。

あれは、敵対してはいけない… 子供ながらにそう思ったのだった。


それ以降、森を脱出する勇気が湧かず。

日々生きていた。


何度か行動を移すが、命の危機に見舞われ、家に戻るという生活を繰り返していた。

すでに、この森に来て1年が経とうとしていた。


さすがに、精神的に限界を迎えている。

最近では、木で作った人形に話しかけたり、友好的な動物に餌を与えたりして。

精神を維持している。

このまま、ずっと森の中で過ごすのは嫌だ。

なんとか、黒い馬に合わない事を願って強行すべきか…そんな事を、毎日考えていた。


そんな時、空から何かが落ちてきた。

明らかに鳥では無い。

昼間から流れ星?と思いつつ、木の上から見ていると、それは森の中に落ちていった。


一瞬しか見えなかったが、あれは… 人だ。


トーマは、人らしき物が落ちていった付近に向かった。

木をかけわけ。

人が落ちたところに辿り着く。

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