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冥き途

作者: すらいむ

君はアイツと手をつないで歩いている。僕はそんな二人の後ろから声をかけた。

「おーおーお熱いねぇ」

「でしょ。かわいーんだよ●●」

僕がおどけて話しかけると君もおどけてちょっと得意気にアイツを可愛いといじる。

ちょっと照れてるアイツは少し可愛いかもしれない。

胸が苦しい。

「あはは、そういえばさ、けっこう久しぶりだよね。こうやって話すの。」 「そうかも?確かに久しぶりかも!全員違うとこ行ったもんね~高校。」 「全然久しぶりな感じしなかったわ。不思議。」 前に話したのは2,3週間くらい前だったような気がする。 僕はそんな話をしながら昔のことを思い出していた。

僕が最初に君とアイツと出会ったのは小学校六年の夏休みのことだった。 家にいても延々と終わらない夏休みの宿題と無意味に過ぎていく変わらない退屈な日常に 飽き飽きして、いやいやながらもうだるような夏の街に繰り出した日。 僕は水道と木陰を求めて少し遠くの公園へ向かった。 そこには僕ともおなじ考えだったかは知る由もないが君とアイツがいた。 僕らはなぜかすごく気が合った。

二人の前では自然体でのびのびと過ごすことができた。

それは二人も同じだったのかそれからも時々公園に行ってはなんでもない話をした。

それから少したって、僕らは中学生になった。 もともと二人とも違う小学校だったのだが中学校は学区が広いのか同じ中学校に進学した のだ。 それからはずっと三人で過ごした...わけではなく学校ではクラスが違うのもあってあまり 三人で一緒に過ごすことはなかった。 でもスマホでグループを作って学校が終わった後に話すことはあった。 学校で話せばいいと思わなくもないのだが僕らにはそのくらいの距離がちょうどよかった。 卒業の時には三人で遊びに行ったりもした。

そうして中学時代は過ぎて行った。


そして高校生になったある夏の日、君とアイツが付き合っていることを知った。 聞いた直後は少し動揺した。けど、薄々感じていたことだったからそこまでの衝撃ではなか ったような気がする。 直前に三人で出かけていたからその時のことを思い出して少しアイツに申し訳なかったか なと思った。だけど、どこかで三人でよかったという安堵もあった。

それから僕は恋愛をした。二人とは少し疎遠になっていた。 付き合ったのは一つ下の後輩。部活で話しているうちに意気投合して割と出会ってから早 めに付き合った気がする。

その時は彼女になった後輩とたくさん一緒にいた。 でも、だんだんだんだんお互いの欠点が見えてきてしまった。そうして数か月後に後輩とは 別れた。

そして恋愛が儚く敗れた僕はまた君とアイツと久しぶりに一緒に遊んだ。

昔と変わらず楽しかった。

けど、苦しかった。

そして最近。 最初は付き合っているのを隠していた二人も今では少しずつ隠さなくなってきた。 世間一般から見れば本当に少しなのだが。 僕は最初一人でいることも考えたのだが、君から誘われることも多かったのでなんだかん だ三人で一緒に過ごすことが多い。

「ん、じゃあ僕はこっちだから。」「またね~。」 思い出しながら適当に話を続けていたらいつの間にか分かれ道に差し掛かっていた。 僕は一人になってぼーっと家まで歩いていた。

何かが胸につかえていた。

その日の夜、僕は手首を切った。

赤い血で手首が染まって少し綺麗だった。

無性にこの世界からいなくなりたかった。

手首を切ってちゃんと死ねる確率がかなり低いのは知っていた。

僕はこんなところでも臆病だったのだ。


実のところ、二人と一緒にいる自分を許すために切ったことの方が大きいのかもしれない。

自分に嫌気がさしていた。

それからも時々思い出しては切っている。

他には食べ物を一切食べずにいたこともある。

正直に言うとこれも気休めだった。 死に近づいていく感覚はただ苦しかった。そのくるしさを感じているときには少し自分の ことを許せる気がした。

結局体がおぼつかなくなって食事に手を出した。

おいしかった。

あんなに死にたかったのに。おいしく食事をしている自分に吐き気がした。

今日も夜が終わる。

明日が来る。

僕はこうしてこの先も生きながらえていくのだろう。

忘れることのない像を追いかけて生きていく。

決して手の届かない幻想の像を心に宿す。

気づかれるわけにはいかない。

「おはよー!」

「おはよ。」 今日も二人との時間が始まる。

感想とかくれると作者が小躍りします。

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