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オーラクラッド

「騎士たちは前に出てしかけろ。魔導士(ウィザード)は支援魔法をかけつつ、上位の攻撃魔法を準備!」


 ギルバーンの号令と共に騎士が突撃する。

 リールは一歩前に進み、両手を構えた。


「オーラクラッド」


 体中にリールは魔力を纏わせる。紫色のオーラがリールを包んだ。

 剣が振り下ろされる。

 リールは右手でそれを弾くと、肩を前にし、タックルをした。風が舞い、騎士の一人が吹っ飛ぶ。

 タックルされた鎧の部位がひしゃげるどころか、肩から両断されていた。斜めに体を切断された騎士は、状況を理解する前に絶命し、地面を転がる。


「ひっ」


 怯んだ若い声の騎士。

 リールは笑みを浮かべたまま、その首を断つ。手刀が容易に首を切断し、地に落とす。

 血しぶきを上げながら、若い声の騎士は倒れ伏した。


 オーラクラッドは魔力の込め方で手甲の代わりにも剣の代わりにもなる。

 全身を刃の代わりにして戦う姿は、かつての敵を彷彿とさせた。


 仲間を殺した、黒騎士の立ち回り。


 大柄の大剣使いが剣を薙ぎ払う。リールはその剣の側面に乗って身を屈める。振り切った大剣の側面から、大剣使いに突っ込むと踵落としを決めた。

 蹴るのではない。頭頂部から股にかけてまで、縦に切断した。


「皆のもの、下がれ!」


 犠牲が増えていくだけの騎士たちを、ギルバーンは下がらせる。


「撃てェ!」


 そして魔導士(ウィザード)たちの魔法が炸裂した。

 火属性のサンダーボルト。高熱の雷をぶつける魔法だ。

 リールの元にサンダーボルトの集中砲火が迫る。


「ディア・ボルグ」


 リールの右手に黒い稲妻が発生するとサンダーボルトに向けて放たれた。

 黒い雷を放つ、火属性魔法としては最上級に分類される魔法だった。かつての仲間が、魔導士ミルキィが使ったことのある魔法と同じだった。

 質対量。

 激しい雷魔法のせめぎ合いが展開される。しかし、それも一瞬だった。


 白い光の波を、黒い光が貫通する。


 精鋭部隊のサンダーボルトの群れ。それをたった一人で撃ちぬいてみせた。

 防御魔法を展開したウィザードたちが悲鳴を上げる。

 他の者よりも前に出ていた三人が、防ぎきれずに黒焦げにされる。


 やがて黒い光が止む。


 既に十数人、死んでいた。聖騎士部隊は半分ほどに数を減らされている。なんの武器を装備していないクーシュを倒す為に編成されたものだ。魔王討伐時の連合軍より練度は低いだろう。

 しかし国でもトップクラスの部隊のはずだ。

 それがこうもあっさり、半数、命を散らしている様に、その場の全員が息を呑んだ。


「……貴殿、何者だ」


 剣を向けながらギルバーンが睨む。


「ディアリール」


 リールは、名乗った。

 クーシュの知らない名前を。


「魔王、グランディアボーグの息子。ディアリールだ」


 その場の全員に戦慄が走る。

 魔王の息子がいるなんて聞いたことがない。メインの戦力は全て決戦で倒しきったし、魔王さえ殺したのだ。

 今更、凶悪な魔族が出てくるわけがない。

 それは、ギルバーンも思ったのか、額に手を当てて笑い出した。


「はははっ! このバルザン王国で、よくぞそのような世迷言を吠えたなッ」


 そして魔法剣を構えて突っ込んできた。

 魔導士(ウィザード)たちの強化魔法を一身に受け、強力なモンスターさえ単独で相手にできるような力を手に入れたギルバーン。そんな彼が迫ってくる。


 剣が振るわれる。

 しかし、リールは全てオーラクラッドで保護された体を巧みに動かし、ギルバーンの剣捌きを全て防ぐ。

 どころか反撃に出た。

 両手、両足、肩。

 突き出す体の部位は全て形のない剣となる。

 動きはまさに黒騎士のごとく。


「ぐっ、ぬぉおお」


 ギルバーンの剣速が上がる。クーシュでさえ、目を凝らさないと追えないほどの神速だった。

 しかし、リールはいなす。打ち合う。かわす、防ぐ。

 ギルバーンの剣技をあざ笑う。


「メリアに遠く及ばないね。敵じゃない」


 回し蹴りを魔法剣に叩き込み、ギルバーンを大きく後退させる。

 剣技だけで言えばクーシュやティッツァにも引けを取らないほどの猛者だ。連合軍の英雄として世界に名を轟かせたほどの。

 そんな男が、押されている。


 信じられない光景に空いた口が塞がらなかった。


「フレアバースト!」


 掌を前に向け、ギルバーンは魔法を放つ。

 高火力の熱線が、リールを焼き尽くさんと襲ってくる。


 リールの左手に炎が灯る。


 その炎の色に、クーシュは驚愕した。


「イ・フレイト」


 赤い炎を上書きしたのは、紫色の炎だった。

 紫炎魔法。


 魔王のみに扱えるという、特別な魔法。


 クーシュも数々の魔族と戦ったが、確かに紫炎魔法を使えたのは魔王だけだった。


「なにぃいい!」


 紫炎魔法に、ギルバーンの声が吞み込まれる。


 視界を埋め尽くすほどの紫が晴れたころには、ボロボロのギルバーンのみが立っていた。

 騎士もウィザードも、全員等しく倒れている。

 死んでいるのか、生きているのかわからない。


「キミ以外気絶させたよ、紫炎魔法(コイツ)は随分加減ができるからね」


 ギルバーンが悔しげに周りを見て、歯を食いしばる。


「キサマァ」

「まぁまぁ、そんな怒らないでよ。髪によくないよ?」


 自分の頭を指差しながら、リールは勝ち誇った。


「ボク相手に勝てるわけないじゃないか、人間風情が」

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