ヲタッカーズ14 ビザロですらない
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
時空海賊、ギャング、宇宙人の聖都侵略が始まった!
聖都の危機にアキバのCharlie's angels
"ヲタッカーズ"が立ち上がる!
オトナのジュブナイル第14話です。
今回は、ヲタッカーズと同じDNAのクローンが登場、秋葉原で悪事の限りを尽くします。
ところが、彼女の心に潜む深い悲しみを知った主人公らは、何とか更生の道を探るも決戦の時は来て…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 腹ー・ポッターと秘密の部屋
秘密の部屋の警戒は厳重だ。
入室には指紋と網膜のダブル認証が必要だ。
ドアが開くと中央には車輪付き救急ベッド。
寝ている患者は…腹ポッタの女子?
女子を取り囲む白衣の人々は皆、忙しない。
鋭い指示が飛び点滴量が爆発的に増加スル。
腹ポッタの女子が急に咳き込むw
それに合わせて心拍が上昇、緊張が高まる。
点滴量がさらに増やされ…彼女がピクつく。
「生き返ったぞ」
彼女は薄く目を開く…黒い目を。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
数ヶ月後。
「私は、世界を一変させるマシンをいくつも発明し、未来を変えて来た。でも、貴女と比べたら大したコトは無いわ。貴女こそ、私が生み出した最高で完璧なるアートょ」
ココで、車輪付き救急ベッドに寝ている女子の手を取る。
「私達は、世界を変える。生命の定義そのモノをね。わかる?」
「はい。テリィ御主人様」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ジャドー司令部。
モニター画面のひとつを全員で凝視してる。
ローカル局のニュースショーが流れている。
「…ムーンライトセレナーダーは、銀行強盗に電撃で捕らえ、駆け付けた万世警察署に引き渡しました。万世署員の感謝の声をどーぞ"ありがとうムーンライトセレナーダー!"…」
「あれ?セレナーダー、少し太った?」
「別人?ヘソ出しコス、痛くね?」
容赦なひw
スーパーヒロイングループ"ヲタッカーズ"の波動のセンターこと、ムーンライトセレナーダーのコスチュームはセパレートtypeだw
「確かにポッコリお腹がハミ出してるわね」
「結局、彼女はいくつ?少し痛いわ」
「確かに目を疑うカモ」
溜息をつくのはジャドーのレイカ司令官だ。
「ねぇ。アレって別人というより、アバターじゃないかしら」
「なるほど。現場に"リアルの裂け目"反応が無かったから、実はモノホンでは無いカモしれません。何処ぞのヒロインヲタクが痛いコスプレしてるだけカモ」
「クローンの可能性も考えられます」
「アキバで…いえ、世界中探してもソンなコトが出来るのは、ラズゥ博士ぐらいですね」
「でも、ムーンライトセレナーダーのアキバ出没は最近のコトなので、仮にDNAを採取したとしても、クローンは未だ胎児段階では?」
「ラズゥ博士も、完璧なる生命体を生み出すには至って無いってコト?」
「うーん。確かに彼女は神じゃない。いつか神になるつもりだろうケド」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ワラッタ・ワールドワイド・メディアHQ。
「特ダネよっ!ムーンライトセレナーダーをディスるインパクトある見出しを提案して頂戴!はい、貴方」
「"ムーンライトセレナーダー大暴走"はどうでしょうか?」
「暴走と言うより迷走なの。ダメ。全然パッとしないわ。次!」
「"ムーンライトセレナーダー、月に代わって轟ょ?"は?」
「ソレは質問?ソレとも何か提案してるの?中途半端で使えないわ。他に?」
「"ムーンライトセレナーダーじゃないカモ"なんちゃって」
「…あら?その意見、面白いじゃナイの。続けて」
「実はクローンがモノホンのフリをしてるとか?」
「ソレで?」
「真の狙いは、モノホンの評判を落とすコトです」
「良い切り口だわ。疑わしきは罰せズの精神に立てば、ワラッタをムーンライトセレナーダー擁護の立場における。あ!素晴らしい見出しが浮かんだわ!"ムーンライトセレナーダー?"はどうかしら。?をつけるだけでスゴく良い感じだと思わない?私、天才だわ!よっしゃ!見出しは決定よっ!みんな、かかって!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の御屋敷。
ガールズナイト。
「しかし、メイド長の偽物が悪事を働いてるカモと思うとウカウカしてられませんね」
「姉様。私達、何すれば良いですか?」
「ジャドーでも話題になってたけど、ラズゥ博士がヤバいと思うの。念のため、ハッキングで病院から消えた患者がいないか調べてくれる?私ぐらいの歳格好の患者ょ」
「OK。姉様のサイズなら知ってるし」
「お願いね…あら、メール」
「誰から?テリィたん?」
「いぇ。別にタダの…」
「あ、姉様!顔が赤い!」
「そんなコト無いわ!暑くない?今年の冬?」
「厳冬ですっ!」
「バレバレだよ。鼻ピクピクしてるし」
「男…ですね?」
「アダムよ。今夜、デートするの」
「ええっ?使徒とですか?」
「違うでしょ。ワラッタのサリアCEOの息子サンょ。エレギャーナの時に色々借りが出来て断り切れなくなっちゃって…」
「ええっ?ソレでデートを?テリィたんは知ってるの?」
「もちろん、お断りしてアルわ。でも、お話ししてる最中にアダムから電話が…」
「やりィ!さすが姉様。でも、姉様とアダムが接触スルとセカンドインパクトとか起きないの?」
「アンタ、黙ってて。でも、よかったね」
「そう思う?」
「うん。アダムって良い人らしいょ」
「知り合いなの?」
「見たコトある程度。御曹司系にしては、人が良さそうだった…あ、私、もう仕事に戻らないと。ミユリさん、テリィたんにも話してアルなら、タマには楽しめば?」
「ありがと」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、秘密の部屋では深層学習中。
「モニターに映ってるのは誰だ?」
「ムーンライトセレナーダー」
「そうだ。で、どんな奴?」
「悪い奴。とても」
「そうだ。悪い奴は倒さないと。君と入れ替わるべきだ。正しいムーンライトセレナーダーと。誰が秋葉原を守る?」
「私」
「そうだ。もう1回聞く。悪い奴はどうする?」
「悪い奴は殺す」
「そうだ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
速攻でデートしてるミユリさんと…アダム←
「母さんが予約した有名店に行きたかったンじゃないの?」
「あのお店は、貴方の、いえ、私達の好みに合わないような気がしたの」
「ミユリさん…君って最高だ」
「そんな」
「いや、そうだよ。君は違う。人をよく見て理解してる。出来れば僕も…いや。何でもナイや」
「え、何?教えて?」
「僕も君に同じコトをしてあげたい…あ、重過ぎたかな?」
「えぇ…あ、いいえ!そうなれたら素敵だと思います」
ココでブレイキングニュース!
「緊急ニュース速報!突然の大雷雨の中、高層タワー群を繋ぐロープウェイネットワークが緊急停止。ゴンドラが宙づりになっています!救助隊が急行中ですが、間に合わない可能性もあります!」
「あ、私行かなきゃ!」
「え?僕とのデートは退屈?」
「た、た、楽しかったわ。でも、祖母が脳卒中で倒れて…」
「何だって?!そりゃタイヘンじゃないかっ!さぁ急ごう!」
「えっ?」
第2章 秘密兵器"避雷針ファウスト"
アキバは、令和に入り、駅前を中心に高層タワーが乱立する街となる。
タワー間を結ぶロープウェイ網が発達して景観はレトロフューチャー。
ところが、大雷雨の中でゴンドラは停止w
満員のゴンドラにヘリが接近を試みるが…
「ダメだ!夜間だし、この雷雨では、落雷の危険もあり接近は不可能だ!」
「大丈夫です!落雷を撃ち落としながら、私が参ります!」
「おお!ムーンライトセレナーダー!こんな嵐の中でもセパレートtypeのコスなのか!御苦労様!」
何が御苦労なのかわからないが、ムーンライトセレナーダーは、落雷を電撃で撃ち落としながらロープを伝ってゴンドラへと近づく。
ところが…
「待ってたわ、ムーンライトセレナーダー。コレでもくらえっ!」
「え?貴女は…ぎゃあああっ!」
「ホホホ。自分自身が電撃に打たれる気分はどう?もっと苦しむが良いわ!」
ゴンドラの屋根の上に人影!目を凝らすと…何とムーンライトセレナーダーではないか!
遠目&夜目には、全く同じに見える黒ビキニにニーハイのスーパーヒロイン同士の決闘w
ゴンドラの中も大騒ぎだ!
「うわっ!ムーンライトセレナーダーがふたり現れて闘ってるぞ!僕達を助けに来たのはどっちだろう?」
「ゴンドラの屋根の方じゃない?ロープを伝って来る方かしら?屋根の方が|腹ポッタけど…」
「でも、落雷を防いでくれてるのはロープの方だ!頑張れ、ロープの方!」
確かに、屋根の上から放たれる電撃は容赦なくロープ上のヒロインを撃つw
一方、ロープ上からはゴンドラへの落雷を撃ち落とす電撃が放たれている。
「貴女は何者?私のクローン?誰かに命令されてるの?ぎゃああっ!」
「私テリィ様の命令。ムーンライトセレナーダー殺す」
「え?テリィ様?ぎゃああっ!」
さらに、ゴンドラの屋根から放たれた電撃がロープ上のヒロインを直撃!
ロープ上のヒロインは、電撃を満身に浴びて絶叫しながらも落雷を撃つw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌日のジャドー司令部。
「昨夜現れた私のニセモノは、電撃もバンバン放って、私と互角に闘ってた。話し方が少し変なトコロ以外、私にソックリです」
「レッドタイフーンは、明らかにムーンライトセレナーダーの戦法をマネしてた。モンロ博士の行方不明後も、設計図はネットに流失したママだけど…」
「昨夜の対戦相手は、アンドロイドではありませんでした。だって、目を合わせると、睨み返して来たモノ。明確に意思を持ってるし、性格も私と似てる気がします。クローンなんて非現実的だと思ってたけど、姿だけじゃなくて、身も心も中身も私ソックリなのです」
「でも、今宵の相手がムーンライトセレナーダーと同じ遺伝子なら、きっと弱点も同じハズ。"避雷針ファウスト"が使えるのでは?」
「"避雷針ファウスト"?神曲系の兵器ですか?」
「避雷針の原理を応用した電撃を封じ込めるロケット弾ょ。弾頭に特殊な仕掛けがしてある」
「使用を許可する。でも…怪我をさせない程度にね」
「了解。レイカ司令官」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、ワラッタ・ワールドワイド・メディアHQでは…
「ママ!僕、ミユリさんとのデート中に何か悪いコトでもしたのかな?ミユリさんがデート中に急にいなくなって…」
「いいえ、アダム。秋葉原のヲタクって意外に臆病なトコロがあるの。馬みたいに。ねぇソンなコトより、代わりにママと過ごして、私にガッカリしなかった?」
「そんなコトないょママ!楽しかったょ!」
「そう?ママもょ!」
ソコへサリアCEOに電話。
「あ、ミユリさん?アダムも一緒なの。スピーカーにスルわね」
「もしもし?」
「もしもし?ミユリさん?」
「昨夜は、途中でハグれたキリ、電話も折り返さズにゴメンなさい!祖母が緊急入院してバタバタで…」
「お祖母様は大丈夫?」
「えぇ」
「良かった…入院じゃ仕方ないよ。でも、埋め合わせして欲しいな。ねぇママ」
「そうね!ミユリさん、お願い出来る?」
「あ、はい」
「じゃ今宵?ね、アダムも空いてるでしょ?」
「え?今宵ですか?」
「ごめんね。ママが強引で」
「わかりました。では、コレで失礼します」
このママ一気に結婚させられちゃいそうだw
身の危険を感じたミユリさんは電話を切る←
「ねぇ、アダム。貴方達、キスも未だなの?まるで出来損ないね」
「ヒドいな、ママ。彼女とは未だ初デートだょ?」
「いいえ、違うの。例のロープウェイでの決闘に現れたムーンライトセレナーダーのニセモノのコトょ。ビザロが言い過ぎなら、ビザロッテはどう?どちらにせょ、ムーンライトセレナーダーの出来損ないってぐらいの意味だけど」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の御屋敷1番乗りはスピア。
「ミユリ姉様!彼方此方ハッキングして、やっと見つけたわ。姉様とホボ同じサイズの身元不明女性。2年前事故に遭って丘の上の大病院に入院して以来、ずっと意識不明」
「え?今、ドチラに?」
「良い質問です。彼女は今、ある施設に移されていますが、その施設のオーナーは誰でしょう?」
「もしかして…ラズゥ博士?」
「ピンポーン。ソレに他にも気になる点が。この数ヶ月間、さらに6人同じような患者が引き取られています」
「まぁ。全部で7人ってコト?」
「想像だけど被験体no.7にして、やっと姉様のコピーを作るのに成功したって感じ?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。秘密の部屋では…
「あぁ!こんなに電撃を受けて…今すぐに治してあげるょ」
「でも、この倍の電撃を彼女に浴びせた」
「殺せと言ったのに」
「テリィ様、ムーンライトセレナーダー悪者と言ふ。でも、彼女はゴンドラを守り落雷を撃ち落とす人。彼女は悪くない?」
「なるほど。同じDNAの君が彼女を善人と思いたがる気持ちは理解出来る。だが、どっちを信じる?ムーンライトセレナーダーか?僕か?秋葉原は、ものすごく複雑なトコロだ。時に、正義と思えるモノが、実はとんでもない悪のコトもアル」
彼女は…うなずく。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、秘密の部屋の遥か上方ゼロリタワー最上階にはレイカ司令官が怒鳴り込んでるw
「ラズゥ博士!懲りないわね。また何か企んでるの?」
「まぁまぁ落ち着いて。完全武装の特殊部隊まで引き連れて、今度は何の御用かしら?」
「女性達の件よ。合計7名の生きた女性」
「あのね。全員脳死で回復の見込みはゼロだったの」
「だから、実験台に?」
「生きるチャンスを与えたの!あ、コレは、自白じゃないわょ。だけど、もし誰かが、もしソレが私だったら、簡単な遺伝子操作をするだけなの。ムーンライトセレナーダーのゲノムDNAを被験者に注入スルだけ」
「どこで彼女のDNAを?」
「人はね。あちこちに自分の痕跡を残すわ。皮膚片とか抜け毛とか。触れれば何処でもDNAが付着する。ましてや、スーパーヒロインならね」
「ゲス野郎」
「下品ね。乙女ょ?ソレにしても、何で貴女がソコまで怒るの?スーパーヒロインとは言え、所詮は民間軍事会社の社員でしょ?ソレ以上の関係でもあるの?」
「バカ言わないで」
「バカ言ってない。進化の法則だわ。強いモノだけが生き残る。人類は"リアルの裂け目"から襲来スル怪人より強くならねばならないの」
「救世主にでもなったつもり?貴女のやってるコトは、犯罪スレスレなのょ?」
「でも、ジャドーは証拠がないと動けない。万一無理に動けば、司令官の周りの人も痛い目に遭うわ」
「おや?脅迫かしら?」
「ムーンライトセレナーダーは脅威なの。だから、私達人類は、その脅威に対抗する手段を持たねばならない…では、失礼」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
再びジャドー司令部。
「ラズゥ博士が認めたわ!彼女は、女性達を実験台にしてビザロッテを作ったわ」
「ビザロッテ?」
「ワラッタがニュースショーでそう呼んでたけど」
「ソレで、どう戦うの?その…ビザロッテと?」
「簡単ょ。彼女をおびき出して"避雷針ファウスト"で仕止める」
「待って。ビザロッテは、悪党じゃないわ。ある意味、被害者のハズ。黒幕のラズゥ博士こそ捕えるべきだわ」
「ビザロッテは、完全な失敗作。ラズゥ博士というマッドサイエンティストがイカれた実験で生み出した怪物ょ」
「そうか。じゃ彼女を逮捕スル?」
「ジャドーは極秘組織ょ。民間人の逮捕は出来ません。しかも、相手はアキバの超有名人だモノ。では極秘裏に"避雷針ファウスト"で仕止める作戦で」
レイカ司令官は、特殊部隊の指揮官に待ち伏せの詳細を打ち合わせるように命令。
一方で、ムーンライトセレナーダーを呼び出して小声でガールズトークを始めるw
「ねぇねぇ。ラズゥ博士がミユリさんの話をしてたのょ」
「え?嫌だ。どんな風に?」
「私達が、何だか家族か血縁かと思ってるみたい…そんなコトあるの?」
「 まさか韓流ドラマじゃあるまいしw動揺させようと口から出まかせ逝ったのよ。ムカつく」
「あら?何してるの?」
「アダムにデートを断るメールを送ってる。今宵は、ソレどころじゃないでしょ?」
「NO NO NO!こーゆー時こそ行くべきょ。デートを先延ばししても、状況は変わらないわ。貴女には、ムーンライトセレナーダーであると同時に、ミユリさんでもあって欲しいの。青春を楽しまなきゃ。だから…行って。後はジャドーに任せて」
「ありがと、司令官」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
女子が盛り上がる一方、男子は…飲んでるw
溜り場のマチガイダサンドウィッチズでは…
「アンタがテリィたん?」
「え?そうだけど…」
「俺はアダムだ。ミユリさんとデートするならココでアンタに挨拶しとけって」
「え?誰に逝われたの?」
「ママ」
僕は、コレがアダムとの初対面だ。
ミユリさんから話は聞いてたけど…
「実は、前のデートでミユリさんに途中にまかれて、俺は傷ついてルンだ。テリィたんはソンな目に逢ったコトは?」
「待てょ。デート中にまかれるって…隠れんぼでもやってたのか?」
「否。おばあちゃんのお見舞いだ…ソンなコトよりテリィたんは構わないのか?ってかソモソモ君って悩みがアルの?」
「…うーん無い。まぁ乾杯」←
「アンタ、何者?何してんだょ?」
「チリドッグを食べてる」
「そーじゃなくて、ミユリさんのコトだょ。なぜ俺とのデートを祝福するンだ?」
「ミユリさんは喜んでた。だから応援を…」
「違うだろ?どうやら俺は、彼女とはお友達ゾーンの男らしい。でも、アンタは望めば彼女と付き合える。なぜ告白しないんだ?」
「おいおい。僕は彼女のTOだぜ?」
「TO?TOって何だ?」
「魂と魂で結ばれた仲ナンだ。つまり…倦怠期の夫婦みたいなモンだ」←
「はぁ?もはや何が何だか…とにかく、コレからデートに行って来る」
「ミユリさんは、冬の女子ニットで気合いが入ってる。頑張れ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
電気街口のイルミネーションの下を歩く。
ミユリさんはモコモコしたニットワンピw
「アキバで働くのは、苦労もあるけどスゴく楽しいの」
「池袋時代は色々とあったンだって?」
「え?誰に聞いたの?でも、気にしない。昔のコトだもの。アキバで温かいTOに引き取られた。だから、ハッピーエンドょ」
「そう?」
「実は、最近自分のコトを普通だと思えなくなって悩んでた。スーパーヒロインは、アキバのヲタクには受け入れてもらえないような気がしてた…逝いたいコトわかる?」
「わかる。わかるけど…ひとつ良い?」
アダムは捨身の勝負に出るw
ミユリさんの耳元で甘い声…
「みんな、そうさ」
すると、ミユリさんはグルグル巻きにしたマフラーに顔を埋めたママ、アダムを見上げ幸せそうに微笑むwアダムはキスをしようと…
顔を近づけ、次の瞬間…消失w
第3章 ビザロッテ・ハンターズ
ビザロッテが超加速でアダムを拉致、ソレを見極めたミユリさんも直ちに変身スル。
モコモコのニットワンピの下は黒ビキニにニーハイのムーンライトセレナーダーだ!
「ヤメて!こんなの間違ってる」
「ムーンライトセレナーダーは悪い女。浮気の現行犯。だから男、奪った」
「浮気じゃないわ!テリィ様も公認よっ!」
ムーンライトセレナーダー同士が電撃ポーズをキメる…が、ビザロッテの方が腹ポテw
次の瞬間、両者の間の空気がザワめき、眩い光の帯が現出して真っ正面から衝突スル!
「貴女も闘いたくはないハズだわ!」
「でも、テリィ様闘えと私、命じた!」
「伏せろ!ムーンライトセレナーダー!」
振り向くとスクランブルしたジャドーの特殊部隊が続々到着。
音波銃、デス光線、原子分解銃…様々な武器を手に散開スル。
「撃て!」
ムーンライトセレナーダー同士が殴り合い投げ飛ばされたビザロッテに砲火が集中スルw
「あぁ!顔はヤメてあげて!」
「ムーンライトセレナーダー?」
「攻撃中止!攻撃中止!」
顔面に被弾し路上を転げ回るビザロッテ。
ムーンライトセレナーダーが駆け寄るが…
「アンタなんか、大っ嫌い!」
絶叫するビザロッテの顔の組織は、ロケット弾の直撃を受け焼け爛れている。
抱き起すムーンライトセレナーダーの腕を振り払い、真冬の街角を走り去る。
「待って!ビザロッテ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ジャドー司令部。
「ビザロッテは知ってました」
「何を?ミユリさん」
「ビザロッテは、ムーンライトセレナーダーではなく、デート中のミユリを襲って来ました。彼女は、私の身元もジャドーのコトも、全部知っています。もう、私にはアキバの何処にも安全な場所など無いわ」
「と言うコトは、やはり黒幕は…ラズゥ博士かしら?で、ビザロッテは?」
「遺憾ながら"避雷針ファウスト"は、ジャドーの作戦通りに機能しなかったみたいだ、レイカ司令官」
「あら、テリィたん。作戦に参加してくれてたの?」
「恐らく、ビザロッテはパワーを蓄えるtypeだと思う。つまり、自らの発電器官で電気を創り出すムーンライトセレナーダーとは正反対のtypeだ。だから、電撃をぶつけ合えばぶつけ合うホド…」
「エネルギーを蓄えて強くなる?」
「YES」
「ヤレヤレ。またも厄介な、しかも充電済みの電撃悪女が秋葉原に放たれたワケね?」
「そして、その悪女を操ってるのは、恐らくラズゥ博士」
「…わかったわ。でも、秋葉原の脅威は、ジャドーが必ず排除スル」
「司令官。"避雷針ファウスト"の弾頭組成を変えてみたらどーかな?イオン電荷を反転させれば、理論的には、ビザロッテの力を逆に奪える弾頭が出来るハズだ」
「ROG。しかし、秋葉原には脅威が多過ぎる。エレギャーナにレッドタイフーン…未知の敵もいるかも。同時に全部とは闘えない。今は、ビザロッテを徹底的に叩くタメに外部の頭脳を使いましょう」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ワラッタ・ワールドワイド・メディアHQ。
「ママ!」
「アダム!無事だったのね?なぜ貴方がさらわれなきゃいけないの?」
「運が悪かっただけさ」
「死ぬほど心配したのよ!万世警察署に捜索願も出した…あら、ミユリさん?」
感激の母子の再会の場にミユリさん登場。
「アダムと2人にしてもらえますか?」
「あ、あら。そう?オーナー自らオフィスの廊下をうろつくコトにスルわ」
「ねぇアダム」
「ミユリさん、もう別れ話?未だ付き合ってもいないのに」
「触れたくナイけど、コレは誰かからのメッセージなの。デートに邪魔が入り、貴方はさらわれて…」
「君が苦労したのは分かってる。でも、心を開けば人は離れないょ。コレだって運命だと思う。違う?」
「貴方は素敵な人よ。でも、私は誰とも付き合えない運命…と逝えば少しは気が楽になる?」
「ならない。ダメになるのは僕のせいだと落ち込むだけだ。僕自身が臆病だからだと」
「なら、ソレでも良いわ。ごめんなさい」
「仕方ないさ」
「じゃ行くね」
「ダメだ。僕が秋葉原を去るょ。ココは…ミユリさんのホームだ」
「さよなら」
「さよなら」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃。アキバの何処かにある秘密の部屋。
手術台に横たわるビザロッテは顔ボロボロw
「誰だ?誰がこんな酷いコトを!ムーンライトセレナーダーの仕業か?絶対許さない。仕返しに、彼女が愛する者を奪ってやる!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
御屋敷のあるタワーの屋上。
ヘリポートに佇む黒い人影。
「やぁミユリさん。大丈夫?」
「あ、テリィ様。夜の空気を吸いに来ただけです」
「そう。どうかした?」
「別に。ただアダムと…」
「え、まさかフラれた?」
「私から切り出しました」
「もし、僕が話を聞いた方が良いのなら…」
「…御承知とは思いますけど、今は何を逝われても辛いだけです。ミユリを1人にしてくださいますか?テリィ御主人様」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。別の高層タワーの最上階。
「レイカ司令官?足繁く通ってもらって光栄だわ。でも、アポ無しで来るのは、もうヤメて。特にメイド服じゃない時は」
「しっ!メイド服の話はココではしないで!でも、どっちにせょコレが最後の訪問ょ」
「何のマネ?」
「ラズゥ博士、貴方を逮捕します」
「容疑は?被疑者の権利は?」
「貴女には、弁護士を呼ぶ権利もトイレに行く権利もナイ。私達は、超法規的な秘密機関なの。ビザロッテは何処?」
「何の話?でも、知ってる情報なら話せるわ。貴女方が雇ってるスーパーヒロイン女子、何て言ったっけ…」
ラズゥ博士はレイカ司令官の耳元で囁く。
「ミユリさん…ょね?で、貴女と彼女って…百合でしょ?」笑
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
さらに同時刻。
ミユリさんに追い払われ、屋上ヘリポートからトボトボ降りる僕の目の前に…
ムーンライトセレナーダー?
超加速で出現したのは少し腹ポテの…ビザロッテか?思わず不適切ワードがw
「太目も悪くないなぁ」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ココがジャドー司令部なの?何だかゲーセンみたいね」
目隠しを取ったラズゥ博士の素っ頓狂な声。
実際にゲーセン以外の何者でもナイのだが。
「博士をNo.19研究ラボへ」
「私のラッキーナンバーだわ。でも、貴女達。いったい何を考えてるの?私は、秋葉原を代表スル巨大スタートアップのCEOょ。1秒でも姿を消せば、世界が私を探し始めるわ」
「貴女は、秋葉原の安全を脅かす。秋葉原を守るためなら、私は、どんなコトでもスル。どんなメイド服でも着るわ」
「あ、ソッチだったの?今度は何?」
「超特急で発明して」
「何を?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ガチャガチャ!
覚醒した僕は、暗闇の中で腕を動かすと…どうやら鎖で繋がれてるよーだ。
さらに、闇に目を凝らすと目の前に電撃のポーズを取る太めのシルエット…
「わ、わかった!動かない。電撃は勘弁だ。なぜ僕をさらったんだ?ビザロッテ」
「ムーンライトセレナーダー、貴方を大好き」
「え?そりゃどうも」
思わぬ展開に暗闇だが赤面w
「でも、ミユ…じゃなかった、ムーンライトセレナーダーが僕を好きだとナゼわかる?」
「私、ムーンライトセレナーダーと同じDNA」
「(げ。そーなの?)なぁ顔を見て話そうょ」
「嫌」
「どーして?」
「醜いから」
「君…ビザロッテだょね?ねぇビザロッテ、人は誰でも自分が醜いと思う時がある。しかも、自分は誰にも愛されてなくて…もしかしたら、一生誰からも愛されないカモって」
「そーなのか?」
「君の心の中には、未だムーンライトセレナーダーがいる。僕にはわかる。なぁ彼女は、ナゼ愛されると思う?」
「美人だから」
「え?アラサーだぜ?巨乳でもない…だが、僕は彼女が大好きだ。ソレはね。心がキレイだからさ。彼女は、勇気があり、人にも優しい。そして、常に正しくあろうとする。だから、君もなれる。君こそムーンライトセレナーダーだ」
目の前のビザロッテが、暗闇の中で屈みこんで、ジッと僕の両目を覗き込む気配がスル。
「ホラ。君の瞳は、こんなにも澄んでいる」
「テリィたん…貴方はウソつき!」
「えっ?!」
電撃w
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「こちらコンピューター衛星"シドレ"です。拉致されたテリィたんのスマホ信号を受信。ブルーのレッドの3」
ジャドー司令部に、衛星軌道上からの走査結果を告げる人工音声が響く。
何故だかメイド服のレイカ司令官が、ムーンライトセレナーダーを呼ぶ。
「ムーンライトセレナーダー、現場は、神田川沿いの廃発電所ょ。ジャドーの全部隊で強襲スル!エアボーンをかけるわ!」
「ソレから、コレが最先端のヒモ理論に基づく逆構造弾頭を装着した"避雷針ファウスト"。試作品なので1発しかないけど」
「ありがと、ラズゥ博士。お約束の1発必中パターンね。でも、コレ効くの?」
「わからない。テリィたんが言い出した理論だから…でも、試すしかないわ。失敗しても自業自得だし」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ムーンライトセレナーダー、殺す!」
「ぎゃあああっ!」
「愛する者の眼の前。死ね!」
激しく電撃を撃ち合い、にじり寄りキック、バク転してパンチ!
廃発電所の窓から投げ飛ばされても電撃で壁を壊し戻って来るw
「ヤメて!ヤッパリ貴女と闘いたくない!」
「ても、テリィ様アンタ巨乳じゃないと言った!」
「えっ?」
思わずズ棒立ちになるムーンライトセレナーダーの背後に回ったビザロッテが、彼女を逆さに抱え上げてパイルドライバーをキメる!
「ぐふっ…私、負けましたわ(回文)」
廃発電所の床に大の字になり四肢を痙攣させるムーンライトセレナーダー。
勝利したビザロッテが、敗北したヒロインを見下ろしトドメの電撃ポーズ…
ミユリさん、どーもガヤりに弱いw
「エチソ・カンターメン・クソルキ・ザクリナーニエ…テリィたん、早く!」
「ありがと、エアリ!」
「あ、あん…もぅらめぇ」
振り返るとヲタッカーズ妖精担当のエアリが呪文を唱えてビザロッテを金縛りにしてるw
だが長くは持ちそうにない!僕はピクつくミユリさんの手から避雷針ファウストを取る…
避雷針ファウストは細長いパイプの先に拳大の弾頭を付けた簡易な作りのロケット弾だ。
ミユリさんに覆い被さり弾頭でビザロッテを狙うのと彼女の指から電撃が迸るのが同時!
思わズ目を瞑りロケット弾を撃つ…ん?
「テリィたん、良く狙って!ソレじゃ私の翼に穴が開いちゃう」
「え?あ!マリレ!」
「早く!私の翼も長くは持たないわ!」
今度はヲタッカーズのロケット兵、マリレ。メカ仕掛けの翼で電撃を跳ね返してるけど…
コッチも長くは持たないw
僕は今度こそ引鉄を引く!
すると、全ては、まばゆい光に包まれて…
第4章 ヲタクの女神
「ムーンライト…セレナーダー…」
「ココにいるわ」
「ホントに…ごめんなさい」
ジャドー司令部のメディカルセンター。
ストレッチャーにビザロッテが寝てる。
「薬で眠らせてから、昏睡状態に戻します」
「痛みは感じない?」
「恐らく…何も感じないでしょう」
「彼女を助けてあげて」
「ジャドーの全力を尽くします」
医療スタッフに頷きムーンライトセレナーダー…ミユリさんがビザロッテに話しかける。
「貴女が眠るまで手を握ってるわ」
「怖いょ…ムーンライトセレナーダー」
「わかるわ。私も不安だった。でも、目覚めたら1人じゃなかった。貴女もょ」
「どうも…ありがと。ミユリさん」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
眠りに落ちたビザロッテを見届けてから、続いてラボNo.19…改め独房No.19に顔を出す。
やって来た僕達の顔ぶれを見て、ラズゥ博士は、明らかにガッカリした顔で肩を落とす。
「どーやら、ウチの娘は敗れたようね。あの弾頭には細工しておいたのに…」
「ラズゥ博士。今回ばかりは、独房を簡単に出られると思わないで」
「みなさんは、真実と正義を守るとは公言しない秘密組織ナンでしょ?でも、だからと言って、人を無期限で拘束するのはヲタクの主義に反さない?」
「もう誰も2度と傷つけるワケにはいかないの」
「ムーンライトセレナーダー。池袋の乙女ロード育ちょね?東インド会社を模した貿易カフェの出身だっけ?その頃から好きだったのね?ヘソ出し」
ミユリさんの顔が見る間に真っ赤になり、ヤニワに電撃のポーズ…僕が慌てて制止スル。
「ヤメよーょ。電撃の価値もない」
「…ふぅ助かった。命拾いしたわ、テリィたん。じゃねヲタッカーズ」
「また会いましょう、ラズゥ博士」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
最後にワラッタ・ワールドワイド・メディア。
「サリアさん。聞いたかもしれませんが…」
「アダムから聞いたわ。あの子、五反田に帰るわ」
「もう?」
「そろそろ元の生活に戻りたいそうょ。秋葉原に留まる理由はなくなったと…私とミユリさんって、共通点が無いと思ってた。でも最近気づいたの。意外と似てるのょね」
「どんな風に…ですか?」
「私の元をアダムが去ったのは、私が他の何かを息子より優先したから。恐らくソレは自分なの。そして、会社は成長したけど、私生活は孤独になった。家族は大事にすべきよ。かけがえのない人達だもの」
「あの…私、説明させてください」
「なぜ貴女がアダムをフッたのか?必要無いわ。アダムとのコトは貴女個人の問題」
「でも、コレだけは…」
「知りたくない。今後はお互い仕事の関係を優先しましょ。貴女は、秋葉原を救うスーパーヒロイン、そして、ヲタクの女神。私は、女神様を追う巨大メディアのCEOょ。それなら、誰も混乱せずに、私達は誰も傷つかずに済むわ」
「…わかりました。ソレをお望みならば」
ミユリさんは会釈しCEOルームを出る。
その背中に向かって、躊躇いがちな声。
「ねぇミユリさん」
「はい?サリアCEO?」
振り向くミユリさん。
サリアさんは微笑む。
「うぅん。何でもナイわ、女王様」
おしまい
今回は海外ドラマでよくモチーフになる"不出来なクローン"を軸に、クローンをつくるマッドサイエンティスト、ソレを迎え撃つスーパーヒロインのグループ、味方する秘密組織の司令官、ハッカー達などが登場しました。
海外ドラマで見かけるNYの都市風景を、コロナ第3波に揺れる大晦日の秋葉原に当てはめて展開しています。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。