夏祭②
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アフターストーリー夏祭り編、2話目(全4回)です!
「はああ……相変わらず盛況だなあ」
土曜日の午後四時を過ぎた頃、桜さんの家に彼女を迎えに行くため、俺は駅前通りを駅に向かって歩いていた。
そして、駅前通りをあえて歩いているのは、屋台の配置などをあらかじめリサーチしておくためだ。
だって、桜さんとの夏祭りデート、ちゃんと成功させたいもんね。
「ふむふむ。たこ焼きはあの店のほうが同じ値段で数が多かったな。定番の金魚すくいは二件か。そこはその時の流れでどちらに行くか決めよう……」
などとブツブツ言いながら歩いていると。
「あたっ!?」
「いて!?」
しまった!? シミュレーションに夢中で、人とぶつかってしまった!
「「す、すいません!」」
おっと、謝罪の言葉が被ってしまった。
おずおずとぶつかった相手を見ると……おおう、こいつはイケメンだ。
マッシュヘアに鼻筋の通った中性的な顔立ち、背も一八〇近いだろうか。
うん、まごうことなきイケメンだ。
だけど、歳は俺と同じくらい、かなあ。
「そ、その、すまない……少し考え事をしていて……」
「あ、ああいやいや、コッチも同じようなもので……」
そう言って、俺達はお互いペコペコしながら別れた。
うーん、腰の低いイケメンだったな……や、それは俺もか。ただし、イケメンの部分を除いて。
「おっと、こうしちゃいられない」
スマホの時計を見て、俺は少し早歩きをして駅に向かった。
◇
「凛太郎くん、いらっしゃい」
桜さんの家に着くと、出迎えてくれたのは桜さんのお姉さん、美代さんだった。
「桜はまだ準備してるから、ちょっとリビングで待っててね」
「あ、ありがとうございま……す……」
美代さんにリビングに通されると、そこには……桜さんのお父さんがいた……。
「お、おじゃましています……」
「…………………………」
テレビを見ていた桜さんのお父さんは俺をジロリ、と一睨みすると、またテレビへと視線を戻した。
な、何だコレ。俺は何か悪いことをしただろうか……。
気まずい空気の中、俺は早く桜さんに来てくれと心の底から願い続けた。
すると。
「……凛太郎くん、だったな」
「へ!? あ、はい! た、立花凛太郎と申しますでしゅ!」
しまった! 舌噛んだ!?
「……そう畏まらなくていい。それより、私は君に聞きたいことがあるんだが……」
「は、はい……」
き、聞きたいことって何だろう……?
お、お願い桜さん! 早く、早く来て……!
「……君は……」
「凛くんお待たせー!」
あああ! 桜さんナイスタイミング!
た、助かった……。
「あれ? 凛くん、お父さんと話してたの?」
「う、うん……」
力なく返事をした、その時。
「……また今度、ゆっくり話そう。二人きりで、な」
「は、はいいい……」
桜さんのお父さんに肩をポン、と叩かれ、そして、お父さんはリビングを出ていった。
と、とりあえずこの場は凌げたけど……つ、次は二人きりとか言ってなかったか!?
「えへへ、凛くんとお父さんが仲良さそうにしてくれてよかった」
え、ええー……アレのどこが!?
ま、まあそれは置いといて。
「その、桜さん……浴衣、似合ってるよ」
「あ、うん……えへへ」
桜さんの浴衣はピンク地に朝顔の絵が描かれていて、これ以上ないくらい似合っていた。
はあ……最高に良き。
「そ、それじゃ、お祭りに行こっか」
「う、うん」
「うふふ、二人とも楽しんできてね」
「……立花くん、またいつでも来るといい」
「は、はいい……」
俺達は美代さんと、なぜかお父さんに見送られ、夏祭りへと向かった。
◇
「ふああ……屋台の数がすごいねー!」
桜さんは所狭しと建ち並ぶ屋台の様子を見て、思わず感嘆の声を漏らした。
あれ? だけど……。
「桜さん、ここの夏祭り来たことないの?」
「あ……うん。ほら、中学の時はボク、浮いてたし……去年も特に一緒に行く相手もいないし……」
「あ……」
アホか俺は! 何余計なこと聞いてんだ!
「あ、で、でも! 今年はずっと大好きだった凛くんとこうやって来れたから、ボクはすごく幸せだよ?」
……………………グハッ!
もうダメだ。
今日は絶対桜さんをお持ち帰りしよう。そうしよう。
「俺も、桜さんとこうやって夏祭りに一緒に来れて、本当に幸せだよ」
「えへへ、じゃあ二人とも幸せだね」
ダメだ、一挙手一投足カワイイ。
俺、今日最後までもつかな……。
「と、とりあえず、屋台を見て回ろうよ。桜さんはどこに行きたい?」
「ええと……じゃあまずは腹ごしらえしようよ!」
「よし! じゃあたこ焼きなんてどう?」
「たこ焼き! 食べたい!」
ということで、俺達はたこ焼きの屋台に向かう。
「はいよ! たこ焼き一つね!」
「ありがとう! ふああ……早く食べようよ!」
「うん」
俺達はたこ焼きをつまようじで刺すと……。
「はい凛くん。あーん」
桜さんが早速俺の口元へとたこ焼きを差し出すので、俺は一口でかぶりついた。
「ハフハフ……あちち……」
「あはは、大丈夫?」
「うん、じゃあ次は桜さんね。あーん」
お返しとばかりに桜さんにたこ焼きを差し出すと、桜さんはそのカワイイ口でたこ焼きをかじった。
「ん……はむ……ハフハフ……熱いね!」
そして残りもかぶりつき、桜さんはハフハフしながら美味しそうに食べた。
なんてことを交互に繰り返しながら食べていると、たこ焼きがあっという間に無くなってしまった。
「じゃあ次は……」
「りんご飴! りんご飴食べたい!」
次は何にするかと提案しようとしたところで、桜さんはりんご飴の屋台を見つけ、即座に反応した。
「よし! じゃあ次はりんご飴で……おじさん、りんご飴二つちょうだい」
「はいよ!」
俺達はりんご飴を受け取ると、被せてある袋を取って、りんご飴を舐める。
「はむ……れろ……ちゅ……」
何だろう。
桜さんがりんご飴をチロチロと舐めると、ものすごくなまめかしく感じてしまう。
「れろ……あれ、凛くんどうしたの?」
「あ、い、いや……」
桜さんのりんご飴を舐める姿を見て興奮しただなんて、とても言えない。
「あ……んふふ、また……後でね(ボソッ)」
察した桜さんが、こっそりとそんなことを耳打ちした。
……俺はもう、桜さんには頭が上がりません……。
お読みいただき、ありがとうございました!
明日も夜更新予定です!
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また、「戦隊ヒロインのこよみさんは、いつもごはんを邪魔される! ~僕の料理は、彼女の心と胃袋をつかみます!~」も絶賛連載中ですので、そちらもぜひ!
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