別荘①
ご覧いただき、ありがとうございます!
今回から計4回に分けて花崎さんの別荘(海)回になります!
ということで、今日はいよいよ海へ!
今回は花崎さんが提案した通り、彼女の別荘にお邪魔することになっている。
喫茶店がそんなに長く休みを取れないってことで、一応、俺、桜さん、楓先輩、大輔兄は二泊三日、皐月はその後も花崎さんと一緒に別荘で遊ぶそうだ。
いつの間にそんなに仲良しになった?
そんなわけで、俺と桜さん、皐月は、待ち合わせ場所の喫茶店へと向かう。
「ふああ……奏音の別荘ってどんなとこだろう?」
「うーん、そりゃ花崎グループのご令嬢だもん、それは凄いんじゃない?」
「例えば?」
「何ていうか、その……お城みたい、とか?」
などと二人でキャイキャイはしゃいでいるのを俺は眺めているが、皐月、ほぼ正解。
花崎さんの別荘を実際に見たことはないけど、あの辺りの別荘は、もはや別荘という名の豪邸しかなかったし。
となると、花崎さんの別荘はそれ以上、ということだろう。うん。
喫茶店に着くと、既に花崎さんと葛西さんは到着していて、これまた黒塗りの有名な高級外車のバンが横付けされていた。
や、しかし目立つねコレ。
いつもの外車もそうだけど。
「みなさん、おはようございます」
花崎さんは今日も優雅に朝の挨拶をしてくれた。
「うん、奏音おはよ!」
「はよー!」
桜さんと皐月が挨拶をしながら、花崎さんとハイタッチを交わす。
うん、つい二か月前までは考えられない光景だ。でも良き。
「みんな、おはよう」
お、今度は楓先輩が到着だ。
「「「「おはようございます、先輩」」」」
俺達四人、声をそろえて先輩に挨拶をする。
「うん。そ、それで大輔さんは?」
あれ? そういえば、待ち合わせが喫茶店前にもかかわらず、大輔兄の姿が見えないぞ?
「やあ、おはようみんな」
すると、まるで呼ばれるのを待っていたかのように、満を持して大輔兄が登場した。
「大輔さん! おはようございます!」
「はは……おはよう、楓さん」
「は、はい!」
おおう、先輩朝からテンション高いな。
だけど大輔兄、挨拶の時に先輩の名前を付けたのは正解だと思うよ。
ほら、それだけで先輩、顔が上気して嬉しそうだし。
「あ、そうそう。みんなが来るまでの間にサンドイッチ作っておいたから、道中で食べよう」
「お、ありが「大輔さん、あ、ありがとうございます!」」
おっと、先輩が俺の声に被せてきた。
今日もグイグイくるな……いや、いつもよりも……?
すると、桜さんが俺の傍に寄ってきて耳打ちをしてきた。
「(楓先輩、今回の旅行、すごく気合入ってるんだよ! だって、ボクにわざわざRINEで水着とかアドバイス求めてくるくらいだから)」
おおう、先輩、桜さんにも相談してたか。
「(実は俺のところにもRINE来て、大輔兄の好みだのなんだの色々聞かれた)」
「(あはは……じゃあ先輩、ひょっとして……)」
「(うん、そうかもしれないね。じゃあ俺達は、できる限り先輩のバックアップをしてあげようよ)」
「(うん!)」
楓先輩……うまくいくといいな。
◇
車に乗り込み、出発した俺達は、花崎さんの別荘に向かって高速道路をひた走る。
もちろん運転は葛西さんだ。
「その、葛西さん。疲れたら運転交代しますから、おっしゃってくださいね」
「はは、ありがとうございます須田さん。私でしたら大丈夫ですので……ですが、万が一の時は、お願いできますでしょうか」
「はい、遠慮なく言ってくださいね」
「むうう……!」
そんな大輔兄と葛西さんとのやり取りを見ていた先輩が、顔をしかめて唸っていた。
や、これはさすがに大輔兄は悪くないと思うんだけど……ま、いいか。
「それで奏音、あとどれくらいでその別荘に着くの?」
「そうですね……葛西」
「はい、あと二時間といったところでしょうか」
皐月の質問に答えたのは、結局葛西さんだった。大変だな……。
「じゃあまだ結構時間あるみたいだし、大輔兄が作ってくれたサンドイッチでも食べる?」
「「「「もちろん!」」」」
四人が声をそろえて賛同してくれたので、早速俺と大輔兄はサンドイッチの入ったバスケットを広げる。
「ふああ……!」
「美味しそう……!」
「これは……食べ応えありますね」
桜さん、皐月、花崎さんは色とりどりのサンドイッチを見て感嘆の声を上げる。
いや、確かに圧巻だった。
たまごサンドにハムサンド、照り焼きチキンサンドにフルーツサンドまで。
大輔兄、相当気合入れたな。
チラリ、と大輔兄を見やると、なぜか大輔兄はモジモジしていた。
「あ、そ、その、楓さん」
「は、はい、何ですか?」
「その……楓さんにはこれ……」
そう言うと、大輔兄は別のカバンから、一人用のバスケットを取り出し、先輩に渡した。
先輩はそれを受け取り、おずおずと蓋を開けると、俺達に渡されたものとは違っていた。
あれは……?
「だ、大輔さん、これは……」
「うん……ほら、前にさ、ブルーベリージャムとクリームチーズを挟んだサンドイッチが好きって言ってたから……」
なぬ!? そんな話聞いたことないぞ!?
さては……俺がバイトに出ていない間に、さり気なく先輩と?
「あ、ありがとうございますっ! 大事に……一生大事にします!」
「いや、一生大事にされたら腐っちゃうんだけど……」
「はわわ!? す、すいません!」
「あはは、いいから、早速食べて欲しいかな。その、感想とか聞きたいから」
「は、はい!」
先輩は勢いよく返事すると、サンドイッチを頬張った。
「あ……だ、大輔さん、お、美味しいです……!」
「そ、そう? 良かったよ」
「はい……!」
先輩は嬉しさのあまり、感極まって瞳に涙を浮かべ、それを指ですくい取った。
そうか……大輔兄も覚悟、決めたのかな。
俺は二人の様子を眺めながら、たまごサンドを口に放り込んだ。
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