水着②
ご覧いただき、ありがとうございます!
今日は水着(を買いに行く)回の後編!
「だって、凛くんの水着選びがまだだよ?」
…………………………は?
桜さんの言葉に、俺は一瞬耳を疑った。
いや、俺は持ってるから買う気なかったんですけど?
「さ、桜さん、俺はその、いらないかなー……なんて」
「ええー……」
俺が意思表示をすると、桜さんはあからさまにガッカリした。
うぐう、ショボンとする桜さんもカワイイけど、こんな思いはさせたくないし……チクショウ。
「そ、そうだった! ちょうど俺も水着買い直さないといけないんだった!」
「ホ、ホント? じゃ、じゃあボクが凛くんの水着、選んであげるね!」
すると、桜さんの表情は一八〇度変わり、嬉しそうにニコニコと微笑む。
うん、どうやら正解だったようだ。
だが、そのおかげで俺は痛い出費を被ることになったけど。
というわけで、俺達は男性用の水着コーナーに行き、その水着を物色する。
「あ、これなんか似合うかも、でも、コッチも捨てがたいし、ん〜〜っ! 悩むっ!」
なぜか桜さんは俺よりも嬉しそうに水着を物色してる。や、そんな姿もカワイイからいいんだけど。
「とりあえず、この二着に絞ってみたんだけど、どうかな?」
桜さんが選んでくれたのは、グレーと黒のツートンの柄のものと、青を基調にしたハニカム迷彩のサーフパンツだった。
ふむ、決して桜さんのセンスを疑っていた訳じゃないけど、変なもの選ばれずに済んで良かった。
「うん、じゃあこの中から……」
「その前に、試着しないとね」
「え? や、サイズも問題なさそうだし、別に試着は……」
「ダ、ダメだよ! ちゃんと試着しないと! そ、その、着てみないと良く分からないよ!」
ええー……なぜか桜さんがやたらと俺に試着を勧めてくるんだけど。
ま、まあどうせ海で見られるんだし、別に見られて困るものでもないからいいんだけど。
「じゃ、じゃあ、試着するよ」
「うんうん! そのほうがいいよ!」
ということで、今度は俺が試着室で試着したわけだけど。
「ふああ……!」
桜さんが頬を染めながら口元を押さえている。
なんだろう、妙に恥ずかしい。
「え、ええと、桜さん。それで、ど、どう?」
俺は桜さんに感想を聞きたくて声を掛けると。
「え?」
突然、桜さんは試着室の中に入ると、カーテンを閉め、そして、俺の首筋に吸いついた!?
「え!? え!?」
いきなりの出来事に俺は困惑し、されるがまま俺は硬直していた。
「ちゅ……ん……はむ……」
ええと、その……お、俺も男なわけで……。
こんなことされると、俺としても興奮してしまうわけで……。
だけど、桜さんの行動の意味が分からず、ただ黙って受け入れるしかないわけで……。
「ちゅ……ぶは」
桜さんはようやく首を吸うのをやめ、俺から離れた。
後ろの鏡へと振り返ってみると、俺の首筋には、桜さんのキスマークがついていた。
「その……桜さん?」
「ご、ごめん……あの、その……凛くんの水着姿見たら……その……」
桜さんは俯きながら、申し訳なさそうな表情を浮かべる。
俺はそんな桜さんの肩をつかみ、そっと抱き寄せた。
「ねえ桜さん、今のって、何か理由あるんでしょ? その……俺に教えてくれる?」
俺は桜さんの背中をさすりながら、できる限り優しく尋ねる。
すると。
「……水着姿の凛くんがかっこよくて、その、もし他の人が凛くんを見て、好きになっちゃって、それで、凛くんがその人のほうが好きになっちゃったらって思ったら、急に怖くなって……」
桜さんが思いを俺に伝えると、申し訳なさそうにますます身体を小さくする。
「その、ご、ごめんね? 凛くんがそんな人じゃないってこと分かってるんだけど、不安になっちゃって、その、凛くんはボクのものだって、急に証が欲しくなって……幻滅、したよね……」
ああもう、桜さんは……!
俺はたまらなくなり、桜さんを強く抱き締めた。
「ふあ……」
「俺は、桜さん以外の女の人を、好きになんてならないよ。だって、桜さん以上の人なんて、これまでも、これから先もいないんだから。だけど……ありがとう。俺は、桜さんにそこまで想ってもらえて、本当に幸せだよ? だから、桜さんがつけてくれたこの証、ずっと大事にするね?」
俺は桜さんへの想いを伝えると、そっと桜さんの顔を見る。
桜さんは、瞳に涙を浮かべながら申し訳なさそうな、だけど、嬉しそうな表情を見せると、そっと目を閉じた。
「ん……ふ……ちゅ……」
そして俺は、そんな桜さんにそっと口づけをした。
◇
「ありがとうございましたー!」
店員さんの元気なお礼の言葉を背に、俺達は恥ずかしそうしながらに店を出た。
よく考えたら、俺達試着室で何やってんだよ……。
アレ、隣の人に聞こえてたんじゃないかな……。
「そ、その……ごめん……」
そんなことを考えてたら、桜さんが暗い表情で俯いてしまった。
いかんいかん、俺が余計なこと考えてたからだ。
俺は繋いでいる桜さんの手を、より強く握った。
「桜さん、その、さっきも言った通り俺は幸せだし、そんな風に想ってくれて嬉しかったよ? 俺だって、桜さんが他の男にって思ったから、ビキニに反対したんだし。だから、桜さんはなにも悪くないし、むしろ、ありがとうって思ってるよ」
「ん……やっぱり凛くんは優しいね」
「優しいのとは違うよ。俺は、本当にそう思ってるってだけ」
そう言って、俺は桜さんに向かって笑顔で頷くと、桜さんもやっと笑顔で返してくれた。
そして、その後はいつも通りデートを楽しんだ。
お読みいただき、ありがとうございました!
明日から凛太郎達は花崎さんの別荘へと向かいます!
あと4回更新を予定していますので、引き続き、どうぞよろしくお願いします!
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