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幼馴染の親友が幼馴染の彼女に浮気されたので幼馴染の俺が代わりに仕返しする件  作者: サンボン
幼馴染で親友だと思っていたけど違ったので幼馴染の俺は世界一の彼女と断罪する件
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対峙

■遼視点


「それで、どこに向かってるの?」


 僕は、先を歩く凛太郎に、行き先を尋ねる。


「ああ、体育館の裏だ。あそこなら人もいないしな」


 ふうん、人がいない、ねえ。

 本当かな?


「うーん、それは嫌だな。だったら、校舎裏の倉庫の前でいいじゃないか」

「…………………………」

「あれ? 体育館裏じゃないとまずかったかな?」

「…………いや、いい」


 凛太郎、その沈黙は都合が悪いって言ってるようなものだよ。


 ま、どこか抜けてる凛太郎なら仕方ないか。

 相変わらず、扱いやすいね。


 僕達は校舎裏の倉庫前に来ると、凛太郎が真剣な表情で僕に向き直った。


「……早速だけど、例の画像のことだ。あれ、お前の差し金だろ?」


 はあ、何を言い出すかと思えば、当たり前のことを。

 ま、当然言うつもりもないけど。


「ちょっと待ってよ凛太郎。何で僕がそんな真似するんだよ」

「決まってるだろ、俺達を貶めるため、だろ?」

「いやいや待ってよ、おかしいじゃないか。よく考えてごらんよ、実の姉だよ? なんで姉さんのキスシーンを撮影しなきゃならないんだよ」

「だから言ってるだろ! 俺達を嵌めようとして……!」

「だからあ、それがそもそもの間違いだって。大体あの日、僕は街の本屋で買い物をしてたんだ。撮影できるわけないだろ」


 そう言って、僕は財布を取り出し、当日のレシートを見せた。


「ほら、そのレシートの日付と時間をみてごらんよ。日曜日のその時間に買い物していたことがこれで分かったよね?」


 はは、当然アリバイくらい用意するに決まってるじゃないか。馬鹿だなあ。


「ああ……お前はな」

「は?」

「だけど、お前以外の誰かが、お前の指示で撮影してたとしたらどうだ?」

「いやいや凛太郎、何を言ってるか分からないよ」


 僕は大袈裟に肩を竦め、かぶりを振った。


「いいや、分かってるはずだ。あの日、俺の家の付近で、黒塗りの高級外車が走っているっていう証言があった」

「それで?」

「お前も知ってる通り、あの住宅街でそんな車に乗ってる家はない。だから俺達は調べたよ」


 凛太郎は一拍置き、改めて僕を見据えた。


「あの日、あの時間帯、黒塗りの外車で走ったっていう人に直接聞いた……お前も知ってるだろ、葛西さんだよ」

「葛西さん? 葛西さんって誰?」

「はあ!? とぼけるのかよ! 花崎さんの運転手の葛西さんだよ!」


 凛太郎が、今にもつかみ掛かるかのような勢いで僕に詰め寄る。


 しかし……凛太郎にしては珍しく行動的だな。

 まあ、このあたりは桜さんが動いたんだと思うけど。


 だけど、甘いよね。


「まあ凛太郎の言う通り、その葛西さんだったとして、それが僕に何の関係があるの?」

「はあ!? そりゃお前が花崎さんに指示をして、あの場面を撮らせたってことだろ!」

「はあ……憶測でものを言うのはやめてよ。僕が彼女にそんなことさせてどうしようっていうの……」


 はあ、本当にお粗末だよね。そんな勢い任せで言われたところで、口を割る訳ないじゃん。


「大体おかしいんだよ。お前、自分の姉のことなのに、花崎さんが撮影したって俺が言っても、何の反応も示さなかった。普通なら、自分の姉のそんな場面を勝手に撮影されたら、確実に怒るところだろ」

「……それで?」

「つまり、お前は花崎さんが犯人だって知ってたってことだ!」


 へえ、凛太郎のくせに、僕を嵌めたってわけ。

 だけどね。


「仮に僕が、花崎さんが犯人だと知っていたとして、それがどうしたの? 悪いのは撮影した花崎さんであって、僕には関係ない」

「へえ、そうか。なら今お前が言ったこと、そのまま花崎さんに伝えてもいいよな?」

「どうぞ。ただ、桜さんを裏切り、僕の姉さんにあんな真似した凛太郎とこの僕とで、花崎さんはどっちを信じるかな?」


 そう言うと、凛太郎は口の端を吊り上げた。

 ……何かあるのか?


「はは、これなーんだ?」

「? それって……」

「そうだ、ボイスレコーダーだよ。さすがにお前の声が録音されたこれを聞かせたら、花崎さんはどっちの言うことを信じるかな?」


 凛太郎はまるで鬼の首でも取ったかのように、嬉しそうにそのボイスレコーダーを高々と掲げて余裕の笑みを浮かべた。


 まあ、しらを切ればいいけど、それで学校内での僕のイメージが悪くなっても困るから、何とかしようか。


 やれやれ……本当にこの立花凛太郎というのは、忌々しい男だよ!


「ふうん、それ、本当に録音してるの?」

「ああ? そんなの、してるに決まってるだろ!」

「どれどれ」

「あっ!?」


 ぷぷぷ、本当にバカだ!

 簡単に僕にボイスレコーダーを奪われちゃうだなんて!


 僕は詰め寄る凛太郎から全力で逃げながら、その奪ったボイスレコーダーに録音されたデータの消去ボタンを押した。はい、これでおしまい。

 おっと、もうこんなバカな真似をされないように、念のためバッテリーも抜いておくか。


「あはは! これじゃ、もうどうしようもないね!」


 僕はバッテリーを抜いたボイスレコーダーを凛太郎に投げ返した。


「テメエッ!」

「それで? 凛太郎は憶測だけで花崎さんに説明するのかな?」


 悔しそうに見つめる凛太郎に、僕は満面の笑みで応えてやった。

 ああ、愉快だ。


「……だけどこれでハッキリした。やっぱりお前が花崎さんに指示してやらせたってことがな! じゃなきゃ、わざわざ俺からボイスレコーダーを奪って、こんな真似するはずないからな!」

「それがどうかした? だけど、なんの証拠もないよね? つまり、お前が何か叫んだところで、誰もお前の言うことなんか信じないってことだよ!」


 ボイスレコーダーを出してきた時は少し……ほんの少しだけ焦ったけど、まあ、結局は僕の勝ち。

 むしろ、これをネタに学校内での凛太郎の立場を追い込んで、二度と学校に来れなくしてやる。

 そうすれば、後は北条桜はどうとでもなる。花崎奏音を使って、僕になびくように仕向ければいいんだから。


 あは、愉しみだなあ。


「……つまり、お前が指示したことを認めるんだな?」

「ああもう、せっかく気持ちよく浸ってるのに、うるさいなあ。そうだよ、僕がやらせたんだよ」

「何で……何でこんな真似したんだよ……」

「ん? 決まってるじゃん。大体、凛太郎に北条桜はふさわしくないんだよ。それに、お前が僕より幸せになるなんて、我慢できないしね」

「それがお前の本性か! 俺は……俺はお前のこと、大切な幼馴染だって……!」

「いや、僕は違うから。お前の存在なんて、ただ鬱陶しいだけだよ」


 あはは、凛太郎の奴、悔しさで肩が震えてるよ!

 もうあと一押しで、凛太郎、壊れちゃうんじゃないかな?


「そうそう。もちろん姉さんについても、僕がそうさせたんだ。嬉しかっただろ、キスできて」

「……ふざけるなよ。なんでそんなことが平気でできるんだよ。おかしいだろそんなの……!」

「あはは、姉さんは子どもの頃から、僕の言いなりだからね! いやあ、扱いやすかったよ! ちょっと甘えるだけで、何でもしてくれるんだからさ!」


 あはは、愉しくなって、ついつい余計なことまで話しちゃった。

 まあいいか、だって、証拠もないんだし。


「じゃあ、僕はもう教室に戻るよ」


 そう言い残し、僕はその場から離れる。

 背中から、悔しそうに、つらそうに眺める凛太郎の視線を感じながら。

 ああ、気持ちいい。


「あはは、じゃあ今日の昼休みにでも、凛太郎、壊しちゃおう。うん、そうしよう」


 僕は昼休みのことを考えると、胸が躍った。


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【俺の理解者は、神待ちギャルのアイツだけ】
― 新着の感想 ―
[一言] なんとなく想像つくけど…僚もチョロいな。 桜さんが一枚噛んでてこれで済むわけないよな…。
[良い点] 嵐が来る前触れそろそろざまぁが決ますかね。 [気になる点] 今更なんですが、ギャグ的展開だから突っ込むのもどうかと思いますが結局38話でパフェのおごりという話、皐月の分も本当に引かれたんで…
[良い点] 遼君はどこまでも薄っぺらっすなぁ。 [気になる点] 「ボイレコがががg(なーんちゃって」 1.予備を隠し持ってる 2.花崎さん陰で待機中(飛び出しそうだけど 3.教室に生放送 お好きな…
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