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幼馴染の親友が幼馴染の彼女に浮気されたので幼馴染の俺が代わりに仕返しする件  作者: サンボン
幼馴染で親友だと思っていたけど違ったので幼馴染の俺は世界一の彼女と断罪する件
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恋慕

 次の日の日曜日の朝。


 俺はいそいそと家を出る準備をする。

 だって、いくら桜さんが俺の家の場所知ってるからって、迎えに行かないのは彼氏として、ねえ? ……なんて言ってみたものの、単に俺が桜さんに早く逢いたいだけなんだけど。


 ということで、家を出て駅へと向かう。


 ……とりあえず、今日の課題は家に母さんと理香がいることだな。

 まあ、理香は桜さんと既に会ってるからいいとして、問題は母さんだよなあ……。

 母さん、桜さんに会ったら絶対余計なこと言いそう。


 よし、母さんに遭わないように、桜さんを素早く俺の部屋に連れて行こう。


 などと今日についてシミュレートしていたら、あっという間に駅に着いた。

 今は朝の九時。うん、早く着きすぎた。


 だってしょうがないよね?

 桜さんと俺の家で勉強会だなんて、何かを期待せずにはいられない。


 さて、それで桜さんは今日はいつ来るかな

 休日だし、この前のデートの時みたいに待ち合わせ時間ギリギリに来るのかな。


「凛くん、おはよ!」


 うん、今日は早かったな。


 桜さんの今日の服装は、ノースリーブのサマーニットのセーターに、麻のロングスカート、少し底の厚いサンダル、そして麦わらのフリンジハットだった。

 勉強のための筆記用具や参考書、ノートなんかが入ってるんだろう。今日はいつもより大きめのトートバッグを持ってきていた。


「? 凛くん?」


 うん、桜さんは今日も。


「めっちゃカワイイ超カワイイマジカワイイ」

「ふああ!?」


 おっと、心の声がだだ洩れだった。


「も、もう……その、ありがと……」


 ああ、モジモジしながらはにかむ姿、カワイイなあ。


「じゃ、行こうか」

「うん!」


 俺と桜さんは恋人つなぎで俺の家へと向かった。恋人同士だしね。


 ◇


「ええと、桜さんチョット待ってね」

「?」


 家の前に着くと、桜さんにはとりあえず玄関で待ってもらい、先に俺が中に入る。

 うん、母さんはリビングでテレビを見ているみたいだ。これなら……。


「桜さん、どうぞ」

「う、うん」


 そして桜さんを家に招き入れるんだが。


「あ! 桜さんだ!」

「理香ちゃん!」


 しまったあ!? 思わぬ伏兵が!?


「なになに? お客さん? ……って、あらあらひょっとして?」


 あああ……母さんが出てきた……。


「あ、は、初めまして、そ、その、北条桜といいます。い、いつも凛くんにはお世話になってます……」

「まあまあ、ご丁寧に。凛太郎の母です。うちの馬鹿息子がお世話になってます。ねえねえ凛太郎、ひょっとしてアンタの彼女?」


 桜さんと挨拶した後、母さんがニヤニヤしながら聞いてきやがった。ウザイ。


「は、はい! 凛くんとはお付き合いさせていただいてます!」


 うん、桜さん、そんな元気よくはきはきと答えられると、俺、恥ずかしい。


「あれ? お兄、この前桜さんが来た時は同級生としか言ってなかったよね? しかも、彼女? って聞いても否定したし」


 チッ! よく覚えてやがる……。


「あ、う、うん。実は、その、凛くんに告白してもらって……」


 ああああ!? 桜さん、わざわざ説明しなくていいから!

 あと、嬉しそうにモジモジするのヤメテ!? 俺がニヨニヨしちゃうから!


「え? え? その話詳しく!」

「やめい! 桜さん、は、早く俺の部屋に行こう!」

「あっ! え、えと、理香ちゃんまた後で! お、お母さま、し、失礼します!」


 俺は桜さんの手を取り、急いで自分の部屋へと向かった。

 後ろから「へえ~~」とか「お兄のくせにやるじゃん」とか聞こえてくるが、無視だ無視。


「ゴ、ゴメンね桜さん。うちの二人が……」

「ぜ、全然! 理香ちゃんとはもう仲良しだし、お母さまもすごく優しそうだし、これから上手くやっていけそう」

「あ、そ、そう? と、とりあえず“お母さま”なんて呼び方しなくていいから」

「そ、そんなわけにはいかないよ! だ、だってその……(ゴニョゴニョ)」


 あう……そんな風にされると、まだ高二なのに将来のこと意識しちゃうんだけど……。


「じゃ、じゃあ飲み物取って来るから適当に座ってて。この前と同じオレンジジュースでいい?」

「う、うん」


 俺は部屋を出てリビングに向かうと、案の定二人に捕まった。


「いやあ、でかした! 桜ちゃん、すごく良さそうな子じゃない!」

「ホントホント! お兄にはもったいないよね!」

「ウルセー」


 俺はそんな二人を振り切るように、冷蔵庫からジュースを取り出してコップに注いだ。


「んじゃ、俺達はテスト勉強してるんだから、部屋には来るなよ! 絶対だぞ!」

「ハイハイ、分かってるわよ」

「お兄、ちゃんと事後報告よろ!」

「するか!」


 俺は逃げるようにリビングを出ると、部屋へと戻ったんだけど……。


「ええと、桜さん?」

「ふああ!?」


 桜さんがまたベッドに顔をうずめていた。


「だ、だって、その、このベッド、凛くんの匂いがするから……」

「うぐう……そ、その、ひょっとして前回の時も……?」

「あうう……」


 桜さんはうめきながら、おずおずと首を縦に振った。

 ああもう何だよ! カワイ過ぎるだろ! 俺の理性、耐えられるのかよ!?


「そ、その……勉強、しよっか……」

「う、うん……そだね……」


 俺達は気まずいというか恥ずかしいというか、そんな雰囲気の中勉強を開始した。


 ◇


「ぐふう……、も、もう無理……」

「ほら凛くん、このページが終わったら休憩にするから。頑張って!」


 くそう、そんな可愛く応援されたら、頑張るしかないじゃないか。

 すると。


「はいはーい! 桜さん、お兄、お昼だよ!」


 理香が元気よく昼メシを持って来てくれた。ほほう、冷やし中華か。

 で、理香よ。なんで器が三つあるんだ?


「あ、ありがとう理香ちゃん。もちろん理香ちゃんも一緒に食べるよね?」

「当然!」


 あああ、桜さん、余計なことを……。

 はあ……ま、いいか。


 俺と桜さんは参考書や筆記用具で散らかったテーブルを片付け、その上に理香が器を並べる。


「さて、じゃあいただきます!」

「「いただきます!」」


 ふむふむ、冷やし中華を食べると夏を感じるな。美味い。


「そうだ、桜さんに聞きたかったんだけど、どうしてお兄を好きになったの?」

「ぶほっ!?」


 な!? なんてこと聞きやがる!

 おかげで吹き出しただろうが!


「え、えーと……ね? 実は、中学の時から、その、片思いだったんだ……」、

「ええ!? そうだったの!? ていうか同じ中学!?」

「う、うん……」


 うそーん。桜さんくらいカワイイ女の子、絶対気づくはずなんだけど。

 なに? 俺の目、節穴なの?


 俺が驚く様子を見て、桜さんが苦笑いした。


「あはは……あの頃のボクは地味だったから、凛くんはボクのこと気づかないと思うよ。あ、そ、そうだ……」


 そう言って、桜さんはトートバッグから眼鏡ケースを取り出した。

 そして、眼鏡を掛けて両手をお団子のようにして首元に置いた。


「あ……」


 見覚えがあった。


 中学一年の時、女子トイレの前でいじめられてた女の子。

 俯き、肩を震わせていた女の子。


 あの時の俺は、気が付いたら身体が動いていたのを覚えてる。


「まさか、あの時の女の子が桜さんだったなんて……」

「…………幻滅、した?」


 桜さんが少し暗い表情になって俯いた。

 だけどそんなの、聞くまでもないよな。


「まさか! むしろ俺のほうこそ、気づかなくてごめん。しかも、そんな頃から俺のこと想ってくれてたなんて……俺、本当に桜さんを好きになって良かった」

「ありがとう……凛くん、大好き」

「ウォッホン!」

「「!?」」


 しまったあ!? 理香がいるんだった!


「ハア……もう、私もいるんだから少しは遠慮してよね!」

「「はい……」」


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【俺の理解者は、神待ちギャルのアイツだけ】
― 新着の感想 ―
[良い点] 口の口角が戻らないくらいニヨニヨしてます
[良い点] この多量の糖分は…苦味への布石ですね。 週明けの学校は荒れそうですねぇ [気になる点] 遼と花崎さんって遼が不登校の間にできちゃっててもおかしくないんだよね。遼が花崎さんに、凛太郎が全部…
[一言] 主人公にはせめて休みの日だけでも心を穏やかにして貰いたいところですね。 次の一週間がある意味勝負かもしれないですから……。
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