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幼馴染の親友が幼馴染の彼女に浮気されたので幼馴染の俺が代わりに仕返しする件  作者: サンボン
第一部 幼馴染の親友が幼馴染の彼女に浮気されたので幼馴染の俺が代わりに仕返しする件
17/64

開始

 次の日。


 俺と桜さんは、朝からそれぞれのクラスでステマに励んだ。


「おい、知ってるか? あの中原先輩とサッカー部の大石先輩、破局寸前なんだってよ」

「はあ!? マジかよそれ!」

「おうよ。なんでも、もうかれこれ半年近くほとんど口もきいてないらしいぜ」

「はあ~、立花お前よくそんな情報知ってるな」

「いや、確かな情報筋から聞いたんだけど、サッカー部のお前から見てどうなの?」

「そういやサッカー部でも事務的なこと以外話してるの見たことないんだよな。しかも中原先輩、サッカー部のマネージャー辞めたんだよ……」

「おいおい! 決定的じゃねえか!」

「お、だったら俺にも中原先輩、ワンチャンあるかな?」

「ある訳ねえだろ」

「だよなあ……」


 うん、いい感じに伝わったな。

 あと二、三グループに同じように噂流して、より広まるようにするか。


 次のグループに目星をつけ、その輪の中に入ろうとしたところで、グイ、と肩を引っ張られた。

 振り返ると、皐月が顔を歪めて睨んでいた。


「んあ? 何か用か?」

「ちょっと凛太郎! そんな根拠のない噂を振りまくなんて、最低だよ!」


 何言ってんだコイツ?

 根拠なんかありまくりだろ。なにせ、中原先輩本人の談なんだから。


 ま、やめさせたい気持ちも分かるけどな。

 だが。


「なにお前。俺はマジ話として聞いたんだぜ? この話が根拠ないって、なんでお前が知ってんの?」

「っ!? そ、それは……」


 皐月は悔しそうに苦虫を噛み潰したような表情で少し俯く。

 だよな、ホントは根拠あるって、知ってんだもんな。


 なのに皐月は、にやり、と笑ってとんでもない爆弾を放ちやがった。


「そ、そうよ! 私は大石先輩に聞いたの! いつも中原先輩とののろけ話を聞かされて、むしろ困っちゃうくらいなんだから!」


 本当にバカだコイツ。

 俺の幼馴染って、こんな奴だったか?


「あ、そう。ていうかお前、いつから大石先輩と知り合いなの? 俺、初耳なんだけど?」

「う……」


 自分で墓穴掘ってどうすんだよ。


「まあいいや。とにかく、俺の話が違うってんなら、証拠持ってきてからにしろよ……おーいお前等、聞いたか? あの中原先輩が……」


 俺は皐月を一瞥すると、また別のグループへと入って行った。

 皐月は拳を握りしめ、噂を言いふらす俺を射殺すような視線を送り続けていた。


 ◇


「凛くん、上手くいった?」

「バッチリ」


 放課後、喫茶店に向かって歩いている最中、俺達は進捗状況を報告しあっていた。


「私のほうは、とりあえず奏音にも協力してもらって、上級生にも話が伝わるようにしたよ」

「え? 花崎さんって、上級生に伝手でもあるの?」

「うん。奏音は吹奏楽部なんだよ。だから、三年生の先輩もいるから、上手くいくと思って」


 へえ、花崎さんが吹奏楽部ねえ。初耳。


「そうか。もうここまでしたんだ。俺達、突っ走るだけだね」

「うん」


 店に着き、中に入ると既に先輩は制服に着替え、ウエイトレスの仕事に励んでいた。

 ……といっても、客は一人しかいないけど。

 お、その客もちょうど店を出るところか。


「じゃあ桜さんはいつもの席に座ってて」

「うん」


 ということで、俺は制服に着替え、早速パフェの準備に取り掛かる。

 だって、桜さん好きだもんよ。

 するとそこへ。


「おっと、季節外れだけど、桃があるから使えばいいよ。後は……柚子の皮をすりおろしてかけてごらん」

「? 大輔兄、いつも柚子なんてかけてないよね?」

「お、よく見てるな。だけど、お前がかけることで意味があるんだよ」


 本当に何言ってんだ?

 まあ、本職が言うんだ。素人の俺は従うのが一番。


「桜さん、はい」

「ふああ……今日は桃まで入ってる! しかもこの香り……柚子だ!」


 良かった。俺が作ったやつだけど、とりあえず喜んでくれた。


「えへへ……凛くん、ありがとう」

「ごゆっくり」


 美味しそうに口へ運ぶ桜さんを見て、俺はニヨニヨしながらカウンターに戻った。


「そうだ、二人が噂を広めてくれたおかげで、早速効果が表れていたよ」


 中原先輩が近づき、教えてくれた。


「へえ、もう三年生にも噂が」

「ああ、昼休みに何人かに聞かれたよ。今はまだ、苦笑いしながらはぐらかしたけどね。だって、本番は来週の月曜、だろ?」

「ええ、もちろん」


 俺と先輩はニヤリ、と笑うと、お互い食器洗いに専念した。

 ていうか大輔兄、使用済み食器を溜めすぎ。全部俺達に押し付ける気でいたな、これ。


「そ、そうだ! ね、ねえ凛くん、その、明日って、何か用事あったり、する?」

「ん? 明日は一日バイトだよ。土日って結構客来るんだよねー」

「そ、そう……」


 桜さんがなぜか緊張しながら尋ねたので、明日はバイトがあることを伝えると、桜さんはあからさまにガッカリした。何で?


 すると。


「お、おい、そ、それはイカンぞ! 健全な高校生たるもの、休日は遊ぶべきだ!」


 いや先輩、急に何言いだすの!?


「だ、だから、立花くんは、北条さんと一緒に遊んでくるべきなんだ!」


 だから、バイトあるって言ってんの!

 大体、俺が抜けたら先輩一人で客を捌かなきゃいけないんですよ!?

 とにかく大輔兄、助っ人よろ!


「うーん……明日は一番客が来る日だから、凛太郎は外せないなあ……」

「「そ、そうですか……」」


 桜さんがガッカリする。だけど、なんで先輩も一緒になってガッカリしてんの?


「だけど、日曜日なら中原さんがいれば回せると思うから、休んでも大丈夫! ていうか、むしろ休め!」

「「や、やったー!」」


 大輔兄の宣言に、桜さんと先輩がキャイキャイ言いながらはしゃいでいる。

 待て待て!


「……大輔兄、そんなこと言って、ホントにいいの? 日曜のモーニング、大変だよ?」

「な、何とかなるさ!」


 はあ、不安でしかない。

 だけど。


「……よし! 責任者である従兄の許しもいただいたことだし、その、桜さん……日曜日、どっか行こうか?」

「! う、うん!」


 桜さんがすごく嬉しそうに俺の手をつかんだ。

 ど、どうしよう、桜さんの手、すごくスベスベする……!


「ふっふっふ……そんな二人に朗報だ。君達、これを見たまえ!」

「おお……!」

「そ、それは……!」

「そう! かの有名なテーマパークの一日フリーパス券だ!」


 先輩が高く掲げたそのフリーパス券に、思わず俺達は釘づけだ!

 見てみろ! 桜さんなんて、パフェを見る時と同じくらい瞳をキラキラさせてるぞ!


「えと、そ、その……ひょっとして、それ……?」

「ああ、君達に進呈しよう!」

「「や……やった——————!」」


 俺と桜さんは、手を取り合って思わず飛び跳ねた……って、あああ!?


「ご、ごめん!」


 俺は慌てて桜さんの手を離すと、なぜか桜さんが少し悲しそうな表情になった。

 あ……選択間違えた……。

 い、今からやり直しって、できるかな……。

 試しに、おそるおそるもう一度桜さんの手を握ってみる。


「あ……」


 桜さんが顔を真っ赤にして、俯いてしまった。

 だけど、桜さんは俺の手をさっきよりも強く握りしめてくれた。


「コホン。そろそろこのチケットを受け取って欲しいんだが……」

「「あ」」


 俺達は、先輩からおずおずとチケットを受け取った。

 その時、桜さんが先輩に近寄った。


「(先輩も頑張ってくださいね!)」


 ? 桜さんが先輩の耳元でささやいた。なんの話?

 先輩が顔を真っ赤にしてるんだけど。


「じゃ、じゃあ桜さん、日曜日はよろしくお願いします……」

「こ、こちらこそ……」


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【俺の理解者は、神待ちギャルのアイツだけ】
― 新着の感想 ―
[一言] 大石先輩と皐月への攻めが良い感じですね。 不安だったのは、多くの読者と違う感性をお持ちの某氏が、またこの攻撃に対して何らかのクレームを言ってくるんじゃないかという事でしたが、この話ではそこま…
[良い点] もう付き合えよw
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