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幼馴染の親友が幼馴染の彼女に浮気されたので幼馴染の俺が代わりに仕返しする件  作者: サンボン
第一部 幼馴染の親友が幼馴染の彼女に浮気されたので幼馴染の俺が代わりに仕返しする件
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約束

 次の日。


 俺は目をこすりながらいつもの通学路を歩いていると、後ろからバシン、と背中を叩かれた。


「凛くんおはよ」

「あ、おはよう、ほ……桜さん」

「あ、今、北条って言いそうになったでしょ」


 い、いやいや、だってまだ名前呼びになってから一晩しか経ってないんだよ!?


「ま、いいけど。それより、学校一緒に行こ」

「う、うん……あれ? そういえば桜さんって、花崎さんと一緒に登校してるんじゃないの?」

「ボク? ううん、違うよ? 奏音はいつも車で送り迎えしてもらってるし」


 おおう、さすが人生のカーストの頂点に立つお嬢様。

 下々の俺とは雲泥の差だ。


「だけど、どうしてそんなこと聞いたの?」

「え? いやほら、いつも朝うちの教室に入ってくる時、二人揃って来るじゃん? だから朝の通学も一緒なのかなーと」

「ああ、そういうこと。あれはね、いつも奏音がボクが登校してくるの待ち構えてるんだよね。ああ見えて、一人で凛くん達の教室に入る勇気はないんだって」


 へえ、意外だな。

 いつも物怖じしないで皐月とやりあったり、遼にグイグイ迫ったりしてたから。


「という訳で、ボクは朝の通学は一人なのです」

「なるほど」

「……じゃなくて、ボクは朝は一人なの!」


 ん? どういう意味だ?


「ええと桜さん、それは……」

「もう! だから、これからはボクと一緒に通学しようって言ってるの! ……ホントいつも鈍いんだから(ゴニョゴニョ)」


 ええ!? 桜さんと一緒に登校!?

 い、いいのかな……この三日間どん底から急に天まで昇っちゃったんだけど、俺、死ぬのかな。

 絶対一生分の運、使い果たしてるよな。


「そ、その、俺でよければ喜んで」


 うん、運に関しては、死んだら考えよう。

 とにかく俺はこの幸せを享受したい。


「よし、絶対だよ!」


 桜さんは俺にビシッと指差す。

 ついその指をくわえそうになっちゃたのは内緒だ。


 そして、一緒に学校へ向かった。


 ◇


 昼休みになり、いつものように桜さんが教室にやって来た。


「凛くん、行こ?」


 桜さんが不用意に放ったその言葉に、教室中が凍りついた。


「お、おい立花! お前今のは一体なんだ!?」

「い、いつから名前呼びで……」


 クラスの男連中がワナワナと震えながら俺と桜さんを凝視した。

 マズイ……非常にマズイ!


「ほ、北条さん、は、早く行こう!」

「ちょっと凛くん! 北条じゃなくて桜!」


 あああああ!? 今その話しちゃダメええええ!


「へえ。凛太郎、北条さんとそんな仲なんだ」


 メンドくさいことに、皐月のバカが絡んできやがった。


「は? 海野さんには関係ないよね? 如月くんとでもイチャイチャしてたら?」

「何ですって!?」


 ちょ、ちょっと!? 遼が学校来てないの踏まえて、あえてそんな煽り方する!?


「あ、そうか。如月くん今学校来てなかったんだっけ? ひょっとして海野さん、如月くんと何かあったの?」

「っ!?」


 ダメええええええ! それダメえええええええ!


「ほ、ほら! 早く行くよ!」

「あっ!」


 俺は桜さんの手をつかむと、引っ張りながら教室を出て行った。


 そして、いつもの踊り場に着くと、


「ハア、ハア……ちょ、桜さん、あそこまで言っちゃダメだよ……」

「……………………」


 あれ? 桜さんが返事しない……。


「あの、桜さん?」


 桜さんは耳まで真っ赤にして俯いていた。


「ど、どうしたの?」

「……手」


 手? ……あ、夢中だったからつかんだままだった。


「ご、ごめん」


 桜さんは無言で首を左右に振った。


 そして、カバンから弁当箱を一つ取り出した。


「……た、食べよ?」

「う、うん……」


 俺達は気まずい雰囲気の中おにぎりを食べると、三年の教室へと向かった。


「そ、それで、その中原先輩って、どの教室なの?」

「う、うん。確か三組だったと思うんだけど……」


 ぎこちないまま、その中原先輩がいるらしい三組の教室を覗く。


「あ、いた」

「え? どれ?」

「ほら、窓際の席で話してる二人組の、黒板側のほう」


 桜さんが教えてくれた中原先輩は、黒髪ポニーテールのものすごい美人の先輩だった。


 整ったその顔で凛とした表情。

 イメージ的には、マネージャーというより武道とかしてそうな感じだ。

 弓道着とかすごく似合いそう。


「よ、よし、行くよ」

「お、おう」


 俺達は教室から出てきた三年生をつかまえて、中原先輩を呼び出してもらうように頼むと、その先輩は特に気にすることなく、すぐに中原先輩に声を掛けてくれた。


 中原先輩がこちらに気づき、首を傾げながらも教室の入口にいる俺達の元まで来てくれた。


「ええと、私に用があるというのは君達でいいのかな?」


 百七十センチの俺と同じ位の長身から放たれるハスキーボイスで言われると、思わずドキッとしてしまう。

 これ、女子生徒のファンとか結構いそうな気がする。


「そ、その、昼休みにすいません。じ、実は、お話ししたいことがありまして……」

「話?」


 中原先輩は(いぶか)しげな表情で俺と桜さんを交互に見た。


「はい。それで、お忙しい中申し訳ないんですが、放課後お時間いただけませんか?」


 桜さんがよどみなく中原先輩にお願いする姿を見て、思わずキュン、としたのは内緒だ。

 なにこれ、カッコイイ。


「うーん、だけど私はサッカー部のマネージャーをしていて、部活が終わってからじゃないと時間が取れないんだが……」

「それで構いません。ボク達、待ってますから」

「そうかい? なら、そうだな……部活が終わり次第、校門で待ち合わせでもいいかな?」

「はい、それで大丈夫です。で、できれば先輩お一人でお願いします。その、大事な話なので……」


 中原先輩はあごをさすりながら、少し考えこむ。

 だけど、桜さんの真剣な表情を見てニコッと笑うと。


「分かった、一人で行こう」

「ありがとうございます。それじゃ、お待ちしています。凛くん、行こ?」

「あ、ああ。中原先輩、失礼します」

「ああ」


 中原先輩と別れ、俺達はまた踊り場に戻った。


「はあ……緊張した」


 桜さんが深い溜息を吐き、そう呟いた。


「そ、そうなの? 何だかすごく堂々としてたから」

「そんなことないよ。ほら、凛くんも見た通り、中原先輩カッコイイから、女子にもすごくモテるんだよ?」

「ああ、それは俺も思った。だけど、あのチャラそうな皐月の浮気相手……大石先輩だっけ? とても釣り合いそうにないんだけど……」

「そうだよねえ」


 俺達は二人揃って腕組みしながら、首を傾げて(うな)った。


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【俺の理解者は、神待ちギャルのアイツだけ】
― 新着の感想 ―
[気になる点] 釣り合わなさそう(実際、一方的な欲情) 的なオチになりそうだな。 傷心の引き籠りくんを引っ張り上げてくれるのに適してそうだけど、 それはそれで幼馴染くんにはもったいないというか上物過…
[良い点] 桜さんの指加えてみたいw
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