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幼馴染の親友が幼馴染の彼女に浮気されたので幼馴染の俺が代わりに仕返しする件  作者: サンボン
第一部 幼馴染の親友が幼馴染の彼女に浮気されたので幼馴染の俺が代わりに仕返しする件
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名前

「大石先輩?」

「うん」


 誰それ。


「知らない? サッカー部のキャプテンで、すごくモテるんだよ。確か、マネージャーの、ええと……同じく三年の中原先輩と付き合ってたんじゃなかったっけ」

「そうなの? ていうか中原先輩って誰?」

「ええー……学校じゃかなりの有名人なんだけど……」

「有名人? 何かやらかしたの?」

「違う違う! 大石先輩と同じで、可愛くてすごくモテるの!」

「へえー」


 知らないや。

 俺、そんなに疎い訳じゃないんだけどなあ。


「(まあ、立花くんは知らないほうがいいけど……)」

「何か言った?」

「何にも。それより、そうなるとお互い浮気してるってことかー。うわあ、こじれる未来しか浮かばない……」

「それは激しく同意」


 うーん、どうするかなあ……。


「だけど、いっそのことこじらせるってのもアリかも」

「え? どういうこと?」

「ええとね、例えば中原先輩にこの情報をリークして、大石先輩と中原先輩がこじれたら……」

「あ、そうか。皐月はその大石先輩とつながってるんだから、当然そこから波及するってことか」

「そういうこと」

「うわあ、黒いなあ……」

「当たり前だよ! ボクはね、浮気をする人、大っ嫌いなんだよ。不誠実極まりないし、何より気持ち悪い」


 その意見にも激しく同意。

 俺は絶対浮気なんかしないぞ! ……まだ付き合ったこともないけど。


 だけど。


「その……中原先輩、だっけ。遼みたいになったりしないかな……」

「それは分からないよ。だけどね」


 北条さんが真剣な表情で俺を見つめる。


「ボクがあの踊り場で立花くんに言った通りだよ。……もし中原先輩が知らないままだったら、それこそもっと傷つくことになっちゃう」


 北条さんは少しつらそうな表情でそう言った。


 そうだった。

 俺は北条さんに教えてもらったはずなのに、なんで忘れるかな。

 それに、北条さんだって好きでこんなことするわけじゃないのに、俺は彼女になんて言った? 「黒いなあ」? バカかよ!


「……北条さん、ごめん。俺の考えが浅かった」

「ちょ、ちょっと、なんで立花くんが謝るの!? と、とにかくそういうことだから、明日は中原先輩に接触しよう」


 ああ、本当に北条さんは……。


「うん、分かった。じゃあ学校でその中原先輩に会って、大石先輩が浮気してる事実を伝える、でいいよね」

「うん。そうすると、放課後はサッカー部の部活があるから……接触するなら昼休み、かな」

「分かった、昼休みな」


 だけど、そうすると昼メシ抜きかあ……。

 あの弁当食べられないのかな……。


「だからお昼ごはんは手早く食べなきゃいけないから、明日のお弁当、おにぎりとかになっちゃうけど、いい?」

「えっ? 作ってくれるの?」

「ああ、うん。そのつもりだったんだけど……迷惑だった?」

「そんなことない! ぜひ! ぜひお願いします!」

「ふあ!?」


 やった! 明日も北条さんの弁当が食べられる!

 くうう……最高かよ!


「えへへ……そんな喜んでくれるとボクも嬉しいよ」

「そりゃそうだよ! 何たって超美味いし、それに、北条さんが作ってくれるんだよ! 嬉しくない訳がない!」

「あうう……」


 ようし、俄然やる気が出てきた!


「そ、それじゃ、話もまとまったし、今日はもう帰るね」

「う、うん。じゃあ送ってくよ」

「うん、ありがと」


 俺達は部屋を出て、玄関に向かう。


「あ、桜さん帰っちゃうんですか?」


 俺達の足音を聞きつけた理香が、リビングから出てきた。

 それより、なんでお前が(俺より先に)北条さんのことを名前呼びしてるんだよ。

 叔父さんといい理香といい……。

 

「うん、お邪魔しました」

「ぜひ! ぜひまた来てください!」

「うん! もちろん!」


 二人は手をつなぎながらキャイキャイはしゃいでる。

 まあ、二人が仲良くなったのはいいんだけど。


「じゃ、行こうか」

「うん。理香ちゃん、またね!」

「はい!」


 俺達は家を出ると、北条さんが早速話し掛けてきた。


「理香ちゃんって可愛いね! 立花くんにあんな可愛い妹さんがいるなんて知らなかったよ!」

「そうかなあ……仲は悪くないけど、可愛いかどうかっていうとどうなんだろ……」


 たまにメンドくさい時あるしなあ。今日の悪絡みとか。


「いいなあ……ボクもあんな妹欲しいなあ……」

「理香でよかったらあげるけど」

「ふああ!? な、何言ってるの!? そ、それって……って、違うか……」

「?」


 北条さんが驚いたかと思ったら、すぐにガックリと項垂れた。

 まあいいか。


「そういや北条さんの家ってどの辺りなの?」

「ああ、うん。ボクの家はここから一駅先の富士見駅の近くだよ。だから駅まで送ってくれたら」

「え? そんな、何かあってもいけないから、家の近くまで送るよ」

「そんな、悪いから!」

「遠慮する必要ないからね?」

「えと、じゃ、じゃあお願いしても、いい?」

「もちろん!」


 ◇


 ということで、俺は彼女を家の近くまで送り届けるために、一緒に富士見駅に来たんだけど……。


「え? え? ひょっとして桜の彼氏!?」

「ちょ!? お姉ちゃん!」


 駅を降りてすぐのところで、北条さんのお姉さんと出会った。


 しかし、俺が北条さんの彼氏だなんて……。

 北条さん、迷惑に思ってるんじゃないか?

 でも……とりあえず、今だけは夢を見させてもらおう。


「うふふ、いつも桜がお世話になってます。姉の美代です」

「は、はい! 立花凛太郎です! いつも桜さんにはお世話になってます!」


 俺は思わず直角にお辞儀をした。

 いや、北条さんもカワイイから分かるけど、お姉さんもすごい美人だな……しかも、北条さんのお胸様をさらに発展させたような、素晴らしいモノをお持ちで。


「ちょ!? 立花くん!」


 北条さんがほっぺたを膨らませて詰め寄る。

 ええ、何で怒ってるの!?


「あらあら」


 お姉さんは頬に手を当て、首を傾げながら微笑ましそうに俺達を見ていた。


「と、とにかく! お姉ちゃんとも一緒になったから、後はちゃんと家まで帰れるから!」

「あ、う、うん……」


 そうか、今日はここでお別れか……。

 なんだか名残惜しい。


「じゃ、じゃあ立花くん、また明日ね!」

「おう、北条さんまた明日」


 北条さんはお姉さんの背中をグイグイ押しながら歩いていった。

 さて、俺も帰ろう……ん? 袖を引っ張られてるんだけど。


 後ろを振り向くと、引っ張っていたのは北条さんだった。


「あ、その、えと、ほ、ほら! 立花くんって呼ぶと、理香ちゃんと紛らわしくなっちゃうからその……下の名前で、呼んでも、いい?」


 北条さんからまさかの提案だった。

 いや、そりゃあ下の名前で呼んでくれるなんて、俺としては超嬉しいんだけど。


「あ、も、もちろん!」

「じゃ、じゃあ凛太郎くん……ううん、凛くんって呼んでも?」

「え、い、いいよ」

「やった」


 北条さんがその立派な胸の前で小さくガッツポーズをした。

 ナニコレ、最高にカワイイんですけど。


「それじゃ北条さん、今度こそ……」

「桜」

「……はい?」

「ほら、ボクも苗字だと、その、お姉ちゃんと紛らわしくなるから」


 ええ!? 下の名前で呼べと!?

 い、いや、さすがにそれはマズイんじゃ……。


「下の名前で呼んでくれなきゃコンビ解消する」


 なにその究極の選択。


「あ、あのその……さ、桜、さん……」

「う、うん……えへへ」


 ああ、駄目だ。今すぐ北条さ……いや、桜さんの顔を写真に収めて鍵を掛けたい。


「そ、それじゃ、今度こそ……凛くん、また明日!」

「う、うん、また明日、桜さん!」


 俺は踵を返して駅の改札へと向かう。

 その後ろで。


「うふふ、あの子が例の……」

「お、お姉ちゃん!」


 北条姉妹の楽しそうにじゃれ合う声が聞こえてきた。


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【俺の理解者は、神待ちギャルのアイツだけ】
― 新着の感想 ―
[一言] 桜ちゃんの「不誠実極まりないし、何より気持ち悪い」このセリフ激しく同意だが、中原先輩にリークは黒いしやりすぎかなと思う。ストーリーの展開上しょうがないですが、中原さんまで遼君と同じ想いさせる…
[良い点] あま!! 甘いよ先生!! 俺もこんなラブコメがしたかった ただし、こんなめんどい幼馴染みはイランが
[一言] グイグイくる桜がめっちゃ可愛い。 凛太郎、そこは桜さんじゃなく桜だろって個人的にツッコミ入れてしまいました 笑
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