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精錬の鋼鉄英雄  作者: 妖 猫撫で
6/21

初見殺し

走り書きなので足りない部分は自己補完脳内補正でよろしくお願いします。


 鬼を模様したフルフェイス。

 背中には身の丈程はあろう日本刀を背負い。

 近代的なアレンジを施された漆黒の鎧武者が姿を現した。



 「いや〜、吹っ飛ばされるわ。崖から落ちるわ。道を見失うは大変だったわぁ〜。まぁ、怪我の巧妙で社ちゃんと出会えたのは良かったけど…。一歩間違ってたら死んでたわね。」


 真壁さんが黒い武者、社さんを見てため息をついた。

 とうの社さんはさっきから微動だにせず。

 委員長は社さんにべったりとくっ付いている。


 「状況はなんとなくわかったわ。あのデカブツの相手は社ちゃんに任せて。委員長はいつまでくっ付いてんの離れなさい‼︎あんたは重傷者の治療‼︎武器は出せないけど、内部ユニットは動かせるはずよ?」


 真壁さんに首根っこを掴まれ、強引に引き剥がされる委員長。

 すると委員長の腕が指の本数に合わせたように分裂し、指先は開き精密機器の製造アームのように独立して動きだした。


 「これは…。不思議な感覚ですね。虫になった気分です。」


 「放り投げるわよ、委員長?菖ちゃんは委員長達と一緒。私の後ろに隠れてなさい。」


 頼もしい後ろ姿。を、丸出しのお尻が台無しにしていた。


 「今のうちに逃げないんですか?」


 「逃してくれるかしらねぇ?見た目以上に速そうよ、あれ。」


 「怪我人を連れての撤退ほど大変なものはありません。満足に動けるようになるにも今少し時間がかかります。」


 「となると私達の求める勝利条件を満たすには一つしかないわねぇ。私はこの子達のお守りをするしかないけど、社ちゃん一人で大丈夫?」


 『ん、多分、問題ない。』


 機械的な声で言葉短めに答えると巨獣の前に歩み出て行った。


 「社さん一人で大丈夫なんですか⁉︎」


 「大丈夫です。社は強いです。」


 「大丈夫って言ったし、多分大丈夫よ〜?」


 即答する委員長とマイペースな真壁さん。


 「そ・れ・に、社ちゃんはzodiac(うち)きっての規格外(イレギュラー)なのよ?」






 認めん。

 俺様は選ばれた者。やがて王になる存在だ。

 その俺様が下等な連中に、あろうことか『力』もない人間にコケにされた‼︎

 今すぐ八裂きにしてやりたい。脳味噌をぶち撒けてやりたい。挽き肉にしてやりたい‼︎

 なのにっ‼︎

 その人間に手も足もでないっ‼︎

 鞘から剣さえも抜かない相手に‼︎

 認めん認めん認めん認めん認めんっ‼︎断じて認められるものではないっ‼︎

 攻撃が一向に当たらない。

 振り下ろした重撃が空を切り、横薙ぎの一閃が受け流される。

 まるで霞を相手にしている気分だ‼︎


 「もういい…、やめだ…。」


 ボォガスは持っていた大斧から力を抜いた。

 だが、それとは裏腹に大気は悲鳴を上げ、大地は地響きを上げ始めた。


 「周囲の地核は壊してある。浮島となったこの森から誰も逃れられはしない。『アレ』の回収は島ごとお前らを葬った後に探せばいい。」


 大斧を頭上に掲げる。


 「全て‼︎全て全て全て全て‼︎叩き潰してやる‼︎『俺こそが(グラヴィトン)捕食者だ(インパクト)‼︎」


 咆哮と共に禍々しい光が大斧から立ち昇る。

 豪風、轟音と共に天にも届くそうな光はまさに暴威そのものであった。

 世界から音が消えた。

 激しい音で聴覚が壊れたのか。

 圧倒的な力の前に脳が拒絶をしたのか。

 世界を変えたのは禍々しい光だけではなかった。

 刀が鞘から抜かれていた。

 装飾など凝った作りを持たないが、目に映る者を全て魅了するであろう大太刀の刀身。

 それを相手の対になるよう天に伸ばすかの如くの最上段の構え。

 たったそれだけでこの場にいる全ての意識を刈り取ったのだ。

 そして程なく二つの刃がぶつかりあった。



 爆音と地響き、舞い上がる砂煙。

 空に浮かぶ島を外から見たなら、それはまるでケーキにナイフを入れ切り分けたように映っただろう。

 半壊して砕けた浮島の欠片は空の彼方へと消えていった。






 この者達は一体何者なのだろうか?

 見た限りでは個々において自己主張の強い格好をしている。

 人間の兵士、とりわけ将軍クラスや冒険者などは各々の力を体現した装飾をする傾向がある。

 自分に合った武器や装飾品、自己暗示を含めて強化する為だが…。

 一人だけ人間の知り合いの顔が浮かぶが、アレは歴史上の例外。全く参考にならない。

 それに感じる。

 彼らは『力』を全く持っていない只人だ。

 その只人が私の常識を塗り潰していった。


 魔晶を使わない無い未知の道具で獣人の視覚を奪う程の光を生み出したこと。

 攻撃の余波とはいえ飛ばされた岩石の直撃を受けたであろうはずなのに無傷で現れた男。

 私を治療した少女が人ではなかったこと。

 そして何より…。


 魔王軍の十将軍、ボォガス・プルトンの必殺の一撃を黒い鎧の人間が叩き落としたことだった。






 「なんだ.…、お前は…。」


 まるで崩れ落ちる島の最後を思わせるような声だった。

 心の底から溢れるこの感情はなんだ?

 攻撃が全て無効化されたからではない。

 同じ十将軍の中にはそれくらいやる化け物の中の化け物はいる。

 そんな奴らを出し抜いて魔王の座を手に入れる為の計画が今回の襲撃だったのだから。

 じゃあ、自分の全力が防がれたからか?

 それも違う。

 アレは自分の全力だが十将軍の地位に就いてから防がれないと思っていた事など一度もない。

 

 「底が見えない…。」


 例え見えなくとも断崖絶壁の谷底でさえ、想像することは出来るだろう。

 だが、こいつは想像すら出来ない。

 半分に折れた剣を握った腕は今にも千切れそうだ。

 立っているのも限界だろう。

 それでも瞬き一つでさえすればこいつが飛びかかってくるように感じる。

 腕が無くともその牙で俺の喉元を喰いちぎる。

 そんな畏怖を覚える。


 『畏怖』?


 そうか、これは恐怖というのか。

 今までの生で一度も感じなかった恐怖。

 自分よりも強い化け物共を見ても生まれなかった感情を。

 この人間は…。

 この只人は…。

 この俺に抱かせたのか。


 ゆっくりと地面に突き刺さって斧を抜く。

 震える脚で確実に一歩一歩、動けない相手に間合いを詰めて行く。


 今ここで確実に殺さなければ‼︎


 「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇえっ‼︎」


 大斧が振り下ろされる。

 恐怖の咆哮と崩れる浮島の地響き、樹々のへし折れる音。

 そして…。


 『間に合った。』


 ボォガスは森から突如現れた巨人に轢き飛ばされたのだった。

真壁姉さんが死にかけたのは吹っ飛ばされたり、崖から落ちたからではなく。


迷子の社ちゃんと遭遇時、森の中で曲がり角よろしくみたいになり反射でバッサリ斬られそうになったからです。


交差点等の見え難い場所では左右確認を確実にしましょう。

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