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精錬の鋼鉄英雄  作者: 妖 猫撫で
3/21

状況把握-1


 「…いっ‼︎…なさいっ‼︎真壁姉‼︎」


 うるさいわねぇ。

 名前を呼ばれた気がするわ。

 でも今日は祝日のはずだし、もう少し寝かせてほしいわね。


 「えっ⁉︎だ、大丈夫なんですか、それ⁉︎」


 「いい加減起きろって言ってんだろ‼︎オカマ野郎‼︎」


 さっきからいったい何よ‼︎

 人が気持ち良く寝ている時にオカマオカマって‼︎

 誰だか知らないけど、ガツンと言ってやるわ‼︎


 「ちょっと〜‼︎さっきからなn…」


 安眠を邪魔され、挙句にオカマオカマと罵倒されたことに文句を言ってやろうと起きかけた矢先。

 真壁は『パンっ‼︎』という音とももにお尻を鞭で叩かれ様な衝撃を受け、「いやぁんっ⁉︎」という奇声と共に飛び上がった。


 「な、な、なになにっ⁉︎何がったの⁉︎っていやぁ〜‼︎ズボンのお尻が丸こげ〜‼︎」


 ズボンを持ち上げたり、上着を引っ張ったりして露出しそうなお尻を隠そうとしていると聞き慣れた苛立ち声が返って来た。


 「こんな時にいつまでも伸びきっているからですよ。よくそんなんで自衛隊が務まりましたね。あぁ、元でした。」と、手に持つ小型の銃をしまった。


 なるほど、私、気絶しちゃってたのね。

 それで私のお尻を焼いてくれたのは委員長ちゃん、と。


 「だ、大丈夫ですか?お尻…」


 「大丈夫よ、菖ちゃん。委員長がびっくりさせゃってごめんなさいね?これ、イベント用の信号弾だから見た目は派手でもダメージは0なのよ。」


 「まぁ、真壁姉なら対人グレネード直撃でも立っていられますから問題ありません。」


 「委員長ちゃんはちょっとは反省なさ〜い?」


 「いだいいだいいだだだだ‼︎あいあんぐろぉ〜やっやめっ‼︎」


 片手で持ち上げられて落とされた委員長は潰れたカエルみないな声を漏らした。


 「さてと、お遊びもここまでにして。で?ここどこなのよ?」


 周囲を見渡すと鬱蒼とした森が広がり、夜の帳が降りている。

 そして、その問いに委員長が乱れた前髪と眼鏡を直しながら話し出し始めた。


 周囲に存在していた砂嵐のエフェクトや、山のようなイナゴの大群のオブジェクトの消失。

 それらの起こる際にグラフィックにノイズが走ったこと。

 砂漠のフィールドマップが真っ暗な底無しの闇のように変わったこと。

 闇は空のグラフィックまで徐々に侵食していたこと。

 搭乗した大型輸送ヘリの推力が急激に落ち、まるで闇に吸い込まれるように見えたこと。

 そして、自分達だけではなく社も巻き込まれたこと。


 「え?社ちゃん来たの?もしかして…⁉︎」


 「その先を言ったら、通りのいいようにケツの穴を増設してあげますよ?たしか、便秘で悩んでましたよね、姉さん?」


 「残念だけど、最近始めた朝バナナで毎日のお通じは快調なの〜。だから、その物騒なのしまいなさい。で、その社は?」


 「私達を庇って逸れてしまいました。」






 地の底が抜けたような穴に吸い込まれるように落ちて行った。

 何処までも真っ暗な世界はまるで長いトンネルに入ったようだった。

 委員長が必死に暴れる真壁さんを抑えようとしている時、私は暗闇の中で緑色の光が点滅したように見えた。

 一瞬の出来事で定かでは無かったが、丁度落下している方向だ。

 何が見えたのか凝視していると暗闇が徐々に赤みを持ってきているように見えた。

 赤い光。

 それが地表に燃え盛る炎であると気付いた時には既に遅かった。

 燃える炎の光によって今まで見えていなかった物の存在に気が付いた。

 それはまるで宇宙に散らばるデブリのように周囲に漂う岩石だった。

 激しい衝撃と揺れ。

 コクピットに響くアラーム。

 いつの間にかに気を失ってのびている真壁姉。

 委員長がレバーを必死に動かすが落下の速度は上がっていく。

 徐々に近付きはっきりと見えてくる地表。


 「この速度、高度で地表に落ちたら私達も万に一つも助からない‼︎コンテナを衝撃の緩和剤にしても、せめて後1、2回はクッションがあれば…。」


 私が悲鳴を上げる中、委員長は冷静だった。

 その時、再び通信が入る。


 「衝撃に備えて。」


 「社⁉︎どこにいるの⁉︎レーダーが壊れてわからないの‼︎」


 「真下。」


 「真下?」


 「蹴るよ?」


 「え?」


 返答も返さないうちに下から再び衝撃が走り、機体が下から押し上げられた。

 衝突の衝撃でコクピット内でシェイクされそうになった私は委員長が捕まえてくれて難を逃れた。

 捕まえてくれなかったら、真壁さんのように壁に頭が突き刺さっていたかもしれない。

 一時的に落下の速度が下がった隙を委員長は見逃さなかった。

 機体のコントロールパネルのボタンを押すと何かが外れる様な音がして、次の瞬間…。






 「で、山積みのコンテナに私のヘリが盛り付けられれるわけね。」


 真壁さんの言う通り、ヘリに三つ付いてあったコンテナが縦に折り重なり、最後にヘリが真上に落ちて来た構図だ。


 「で?なんで私のコンテナが一番下にあるの?」


 一番下のコンテナ。

 見るも無残に押し潰れ原型を失いつつある、の壁面には潰れたエンブレムが描かれている。

 真壁さんの背中に描かれているエンブレムと同じ物だ。


 「真壁の機体はヘヴィ級の中のヘヴィ級のガチタンです。ランカーの社長氏にも硬さでは負けないと思います。ですから、衝撃緩和剤としては最適と判断して一番目です。」


 「うれじぐないゔぁよぉ〜‼︎」


 涙を流しながら真壁さんは委員長を揺さぶった。

 委員長は「もげる‼︎首がもげる‼︎」と言いつつ話を進める。


 「後は単純に装甲値の順です。」


 下から二番目には委員長の胸に付いているエンブレムと同じマークがあった。

 三番目には見慣れないエンブレム。

 では、このエンブレムが助けてくれた社という人の物なのだろう。

 そして話は最初に戻るのだった。



 「初めに、落下中だったので定かではありませんが私達のいるこの地表は空に浮かぶ島の様な物だと思います。そして、その周囲にデブリの様な砕けた破片が浮いています。おそらくはこの大地と同じ物。何らかで砕けて浮いているのでしょう。それが偶然の防衛機構の様に働いて撃墜されたというわけです。真壁姉にわかりやすく言うと、EU(イーユー)E(エレクトリック)の天空城と言えばわかるでしょう?」


 「あんなものを浮かべて喜ぶか、変態共め…。」


 委員長の説明に真剣な顔付きで意味の分からない言葉を返しているが、お互いに意思疎通は出来ているらしかった。


 「それで落下の衝撃を緩和する為に社ちゃんがファットマンを蹴り上げてくれたわけね?」


 ファットマンと呼ばれた私達が乗っていた大型ヘリはもう動かないらしかった。

 見た目はさることながら、私達を助ける為に入れられた蹴りがジェネレーターを直撃しているとかで、よく爆発炎上しなかっただの、奇跡だと言うことらしい。


 「う〜ん。よくわからない状況ねぇ〜。今、イベントは開催してないし、製作中のデータによるバグかしら?まぁ、オープン後の最初のイベントアプデで二十四時間メンテ延長レースに比べれば可愛いものね‼︎『メンテが終わるとどうなるの?』、『知らないの?メンテが始まる(キリッ‼︎』みたいな‼︎」


 後半、何を言っているか分からなかったが、このような自体にも慣れている様だ。

 真壁さんが徐ろに手を正面で左右に払う様な動作をすると空中に大きなコントロールパネルが現れた。


 「運営にバグの報告するにも一度ゲームから落ちましょ?万一、キャラデータが消えちゃったらシャレにならないわ‼︎って、あら…。」


 テンションの高かった真壁さんが急に押し黙ってしまった。

 そして…。


 「ログアウトボタン…どこよ…?」


 と、素の声を漏らしたのだった。

コロナで皆さん大変です。


私もコロナ影響直撃で職を失いました。職欲しい…orz


そんな中、外出自粛している人達の0.0000001%でも娯楽の楽しみになれたらなぁ、と思っています。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公がこの先どう動いていくかなど今後の展開が楽しみです。ブックマークに登録させていただきました。今後とも執筆頑張って下さいませ。
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