ドワーフ-05
長く溜めると掲載しなくなる可能性があるので、ポツポツ載せています。
時間や余裕が生まれたら修正や加筆して纏めたいです。
毎度の事ながら、読む場合には自由に脳内補填を行ってください。
モンスターの中には二つ名を与えられた者がいる。
同種のモンスターにしても見た目の差異、性格や行動などから名を付けられるのが一般的だ。
唯一無二の二つ名。名は異なれどもそれらには共通するものがある。
それは畏怖の感情。
住む世界が、見える世界が全く違う。
他とは異なる、一線を超えた存在。
そんな者に与えられた名である。
そしてそれはモンスターだけではなく人間の間にも存在した。
ボルグ・ボルト・ブリッツは騎士を輩出する貴族の家系に生まれた。
幼少期から騎士として育てられた彼は同年代の騎士達とは一線を画した。
ブリッツ家において歴代最高傑作とまで言わしめた程である。
だが彼はある時に家を去る。
約束されていたであろう将来は彼にとってはどうでも良いものであった。
彼が求めたのは力の証明。
大陸に数人しかいないという強者の頂上、《彩色》と呼ばれる色持ちの次元へと踏み入ること。
生まれ持った才と、そこから生まれる傲慢なまでの自信が彼をより強くしていった。
しかし、それ故に彼は多くの問題も起こした。
今回のことも起こるべくして起きたと言える。
初めは肩がぶつかるという些細なことであった。
第三者から見れば批があるのはよそ見をしていたボルグで間違いはない。
普段なら悪態の一つで済んだであろう。
だが相性が悪過ぎた。
彼は典型的な人種差別者だったからだ。
獣人や亜人達を目の敵にする傾向があった。
ぶつかった相手のドワーフ、ドランクも持ち前の性格で売られた喧嘩を買ってしまったのが悪かった。
そして場面はギルドの屋内へと移ることとなる。
ボルグは自分の軽率さに反省をしていた。
反省とは人種差別のことではない。
そもそも天地がひっくり返ろうとも彼がそのことを悔いることはないだろう。
彼が反省したのは戦う相手を見縊ることだ。
戦士の頂点を目指す自分が慢心とはいえ遅れをとることはあってはならない。
相手の見た目で侮り、地に伏せられたことには怒りを覚える。
だからこそ、手を抜くことなく捻じ伏せる為に武器を出したのだ。
しかし、それは行われなかった。
いや、行えなかった。
間に割って入った男の登場によってだ。
男はこの都市のギルドマスターにして元色持ちの戦士。
青の彩色において二つ名《紺碧の大海》を授けられた。
名をロドス・オーケアノスという。
「お前ら、喧嘩なら外でやれ。周りには一般人もいるんだ。」
吹き抜けの二階から飛び降りて来た男性が大声を上げる。
周囲の傭兵達も体格に恵まれた人は多かったが、それよりも大柄な体付き。
着ている服装は質の良い物で、ギルド職員と似ている装飾から彼らの上司にあたるのではと思われる。
ややサイズが合わないのかピッチリだ。
「特にボルグ。街中での武器出しは御法度だ。捕まえられても文句は言えん。それにその殺気は冗談じゃ済まされんぞ。これ以上ことを荒立たせるなら、代わりに俺が相手になるが?」
「…。あんたとやり合うつもりはない。だがいずれ、色持ちの座は俺が貰う。」
そういうとボルグは踵を返して去って行った。
「やれやれ、俺は元彩色なんだがな。若い連中は元気で羨ましいよ。しかし、壊れたドアはどうすんだ、これ?」
ロドスは外れたドアをどうにか取り付けようとするが、かえって他の部分が外れる事態に別の職員に仕事を取り上げられた。
他の職員達も野次馬の人集りを解散させたり、後片付けに動き出した。
「俺の出番はなさそうだな。おっと、忘れるところだった。一応、こっちにも説教をしなきゃならんかった。」
そう言うともう一方、社達の前へと歩み出た。
今回の件は明らかにボルグに非があるのだが、一応、体裁を取る必要がある。
ロドスとしてはこの場で立ち話でも良いのだが、当事者だけでなく、自分自身も目立ってしまうことで仲間達の仕事の邪魔になるのは忍びない。
そこで彼はギルドの別室へと社達を案内することを決めたのであった。
コロナもあり大変ですね。
色々しっちゃかめっちゃかです。