間章〜朝の習慣〜
時系列は投稿とは別です。
朝、日が昇り始める前に目を覚ます。
異なる世界に来て、はや一週間になるが幼い頃から身に染み込んだ習慣は中々抜けそうに無かった。
それに寝心地は良いのだが大き過ぎるベットが私の性に合わない。
ベットから起き上がると私は日課のランニングをする為、寝間着を脱ぎコントロールパネルを開いた。
普通に着替えても良いのだが、この世界にはランニングウェアという概念がないのか走るのに適した服装がなかった。
試行錯誤のうえ、たどり着いた結果がゲーム内の衣装であった。
白地の半袖に紺色のブルマ、胸元には『あやめ』と書かれた大きなワッペンが貼られている。どう見ても小学生用だ。
同年代よりも発育が良かったため体操着を着ることは恥ずかしかったのを思い出す。現に今も恥ずかしいのだが…。
これには深い訳がある。断じで個人的な趣味ではない。
当初はゲーム内のアバターが最初に着ている下着でいいと思っていた。
アバター作成時に何種類かデザインがあり、見た目はランニングウェアそのものだったからだ。
コントロールパネルの装備で服装を全て解除すると下着になれる。
余談だが、この下着は通常の着替えで脱ぐことが出来た。
いざランニングへと行こうとすると真壁さんが反対をしてきた。
服装を解除した状態は防御力がないから危険であると。
ゲームCL(Cross lords 〜after The world of war〜)にはレベルという概念がない。
ではどうやって強くなるのかというと装備を強化したり、プレイヤースキルを磨いたりする他ないらしい。
HPや防御力は装備や服装で変わるのだという。本当はもう少し複雑でボディパーツの換装とかもあるらしいのだが、今は出来ないそうだ。
そういうことで真壁さんが衣装を貸してくれることになった。
結果だけ言えば、真壁さんの持ち物の中には走るのに適した服装はなかった。
どの服装にも真壁さんの趣味が満遍なく散りばめられていた。
フリルやレース、フリフリのスカート。
初日の衣装選びのように時間だけが過ぎて行った。
申し訳なさそうな真壁さんが連れてきたのは社さんだった。
真壁さんがが社さんのコントロールパネルを代わりに開く。
彼女がAFカンナギを壊した?後から、社さん限定で機械接触禁止令が発令されたためだった。
真壁さんの持ち物に比べ、社さんの衣装は動きやすい物が多かった。
丈が短く網タイツが印象的なクノイチ衣装や、中身は晒しに褌と聞いて驚いた祭りの法被など、露出の高い数々…。
言わずもがな却下であった。
そして最後に社さんが連れてきたのが委員長である。
真壁さんが嫌そうな顔をしていた。
理由は持っていた衣装でわかった。
赤いランドセルとセットの制服、名前の縫い付けられたスクール水着など。それらを一つ一つ情熱的に説明された。
ランドセルにはリコーダーが必須だとか、スクール水着は旧式でネームは平仮名など…。
真壁さんが虫でも見ているような目で委員長を見ている。
社さんは相変わらずマイペースで立ち寝を始めた。
長引くと変な方向に行きそうと思った私は目の前にあった中で最善と思える一着に手を伸ばした。
それがブルマとセットの体操着であったのだ。
上着の丈が合っておらずヘソまで丸見え、上下共にぴちぴちである。
自分で着ていてなんではあるが、恥ずかしさのあまりに顔から火が出そうなほどだ。
私はその熱を振り払おうと一心に走り出した。
菖の異世界生活、毎日の習慣であった。
行き詰まったら間章にしようかな