ドワーフ-02
相変わらずの走り書きですみません。
各種書かれてない設定等はご自由に脳内付加してください。
『遅いではないか、貴様ら!家臣の分際で主を待たせるとはなんたる無礼か!』
これはどういうことなのだろうか?
隣にいる真壁さんの顔を覗くと反応に困ったように固まっていた。
つまり、真壁さん達の知るところの、ゲーム内では起こり得ない状況が目の前にあるということだ。
私達は食料を探しに近くの森へと狩猟に出掛け帰ってきた。
するとリンドブルレイア、リアさん(委員長が勝手に略したのだが)が待ちわびたかのようにやって来た。
その原因が今、目の前にあるのである。
積み上げられたコンテナと大型輸送ヘリのオブジェの上に横たわる一体のAF。
そのAFが言葉を発していた。
私達が固まっているとAFの背中にあったハッチが開き、人が出て来た。
片腕の無い長身銀髪の女性。これでも私や委員長と同じ歳らしい。
「真壁姉、《カンナギ》なんか壊れた。」
「なんか壊れたって、こんな喋り出すなんてありえないでしょ!?あんた、今度は一体何やらかしたのよ!バカ!機械音痴!」
『主に向かってバカとは何事か、この下郎!』
「うっさいわねぇ!さっきから聞いてりゃぁ主主と…。あんたの主は私のチームの下っ端!私が創設者!リーダー!私の方が上なの!空っぽの頭で解ったかしら!?」
『お、おぉう…。』
自身の処理限界を超えた真壁さんが社さんと《カンナギ》と呼ばれたAFを畳み掛ける。
社さんはマイペースでどこ吹く風だが、カンナギは押され気味だ。
(ロボットでも狼狽えるんだ…。)
「で?あんたはコレをどうする気なの?」
『無論!完全修…』
「アンタには聞いてないわ。」
『ぐぬぅ…。』
「せめて手足くらい直したい。」
社さんの返答にため息をこばしながら、真壁さんはコントロールパネルを開いた。
複数のモニターが立ち上がり、様々な図形が映し出される。
「ゲーム《Cross lords 〜after The world of war〜》の仕様、覚えてる?」
「弾薬やパーツは消耗品。消耗品の購入や修復は拠点じゃないと出来ない。」
「一般的にはそうね。でも連戦や大規模レイド戦の場合はどうする?」
「敵から奪ったり、補修機能持ちに直してもらう。」
「そういうこと。幸い、大型輸送ヘリ《ファットマン》には補修の他にも小型なら成形出来るユニットが載せてある。足りたいパーツも私や委員長のAFから代用と出来る思う。でも問題が一つ。」
「ヒヒイロカネが足りない?」
「そうよ!消費武器がない純近接格闘系のくせに大規模ギルドの戦略兵器並に資財ぶち込んでんのよ、アンタ!拠点や街じゃでは修理費しか請求されないけど、外じゃ材料が足りないわ!ヒヒイロカネとは言わなくても、せめて一ランク下くらいのレアメタルがあれば…。」
専門用語で話についていけない。
そんな時、メイドのリアさんが手を挙げた。
「あの、事情はよくわからないのですが、稀少な金属があればよろしいのですか?」
「ええ、あくまで見立てだけど、そこまで量はいらないわ。バスケットボールくらいあれば十分かしら?」
「バスケットボールというのわかりませんが、此処より遥か北にドワーフの国があります。確か、最盛期にはアダマンタイトが採掘されたとか。」
「アダマンタイト、悪くはないかも…。どの道、私達には鉱石がいるし、行ってみるのもいいかもね。」
こうして私達はドワーフの国を目指すことになったのだった。
ドワーフの国である鉱山の南。
長い山脈を降りた先にある平原に人間が作った街があった。
この土地の主な生産物は小麦であり、街を囲んで列をなす小麦畑が収穫時に平原を黄金に染め上げる景色が有名だ。
上空から見ると中心の市街地を囲むように二重三重と城壁が築かれ、木の年輪のようになっており、これは街が成長する毎に城壁の外へと生活圏が広がっていったからである。
しかしながら、小麦の生産が多いとはいえ、この規模はそれだけでは説明出来ない程の大きさを持つ。
この街の小麦の生産はあくまでも副産物であり、主戦力は人の売り買いなのである。
人が売り物と言っても人身売買ではない。
周辺国においては奴隷制度を持つ国も少なくはないし、街の法を破らない限りは売春なども一部黙認されている部分もあるが、表立っては個人の能力の売買。つまり、傭兵家業である。
大陸のほぼ中央に位置するという利点で貿易に主軸を置くという方向もあったのだが、多国間の争いの火種に巻き込まれて中立の街が一つ地図から消えてしまったことが過去にはあった。
それ故に貿易ではなく、フリーの傭兵の斡旋に力を注いで来たのである。
街一つで一国に引けを取らない戦力を有することで攻めづらくなるとともに、何らかの失態があった場合フリーであればいつでも切り捨てることも出来るというしたたかさの表れである。
請け負う仕事の内容にもよるが、ハイリスク、ハイリターンと言えよう。
一般市民では対処出来ないモンスターの討伐。何より、未だに続く戦争の影響で空気中の魔素が異常をきたし、モンスターの大量発生も起こっている。
この世界においてはなくてはならない職業であった。
その総本ともいえる街の傭兵斡旋所に一人のドワーフがいた。
ここは人間が作った街ではあるがドワーフがいたからとしても不思議ではない。
ワーウルフ等の獣人や、他種族との交流を嫌うエルフですら探せばいるかもしれない。
戦争や種族間での啀み合いに端を発する因縁があったとしても、この街では個々の力こそが全てなのだ。
そのドワーフは古びた剣を持ってはいるものの身なりは戦う者のそれとは異なる。つまり、依頼をする側であった。
彼の表情は厳しい。
依頼をするということは何かしらの問題を抱えてギルドを訪れるのであるから厳しい顔をしているのは常ではあるのだが、それとは少し異なった。
傭兵にはその実力に合わせてランク付けがされる。
大まかには、駆け出し、または害獣などの小型モンスター単体を複数人ないし単独討伐可能なランクを表し《銅》。
小型モンスターの集団、中型モンスター単体を単独討伐可能なランクを《銀》。
中型モンスターの集団、大型モンスター単体を単独討伐可能なランクを《金》。
大型モンスターを複数相手取れる実力のランクを《白金》。
そして最後に一握りしか存在しないが伝説に謳われる勇者のように人知の域を超えた者達をその力に擬え、色持ち、《色彩》と呼んでいる。
依頼のランクが上がればそれに伴う依頼の掲載費用や、成功報酬なども上がってくるのだが、このランク付けは依頼を引き受ける目安になると同時に貴重な人材を失わない為でもあった。
当然ながら、難易度により依頼主が報酬を払えない場合も多々だ。
そのような場合を想定し、依頼中に得た採取物や戦利品の所有権は依頼に明記されない限り傭兵の自由にしてよい決まりがある。
しかし、お金にならない可能性がある仕事を引き受けようと思う物好きは少ないだろう。
命のやり取りがあるなら尚更である。
ギルドで依頼の貼り紙を載せる掲示板の一角、ここにも誰も手をつけない依頼がまた一つあった。
ドワーフ王国ヴルツェル、ヴルツェル山脈鉱山深層のモンスター討伐の依頼。
依頼主 《ドランク・エールズ》
国内のコロナ感染者の数が減ってきましたね。
いろいろ大変ですが、頑張りましょう。