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精錬の鋼鉄英雄  作者: 妖 猫撫で
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プロローグ-1

 

 初めてゲームをした。

 それは歩んできた十六年という人生の中で初めての体験だった。


 中学や高校でVRを教材として扱う普及率は八割を超えている。

 センター街の看板や信号のみならず、スーパーの鮮魚売り場や街角の商店街に至るまでARやホログラム映像が使われ、デジタル技術が溢れているのが日常だ。

 そんな中で私事ではあるのだが一度もゲームに触れたことがなかったことに今更ながら驚いている。




 母は体が弱く、私を産んですぐにこの世を去った。私は未熟児として生まれた。

 そんな私を慮り、父親は幼少期から様々なスポーツをさせた。

 最初は水泳。次はランニング。腕立てやクランチ、スクワット等の筋トレの数々。

 私自身、体を動かすのが嫌いでは無かったし、昨日の自分に出来なかったことが今日の自分には出来るということが何よりも嬉しかった。


 小学、中学と全国トライアスロンの大会で数々のトロフィーを手に入れたのは良い思い出だ。

 そんな私にとっては体を動かさないこと。ゲームというのは別の世界のように感じられたのかも知れない。

 来年、日本で開催されるオリンピックでもEスポーツの種目としてゲームが幅広く認知されているのだが、きっと今の状況でなければ自分とは一生縁のないものだったに違いない。


 この世界は、全てが未知で溢れていた。





 中東の石油資源、領土の奪い合いから端を発した第三次世界大戦。


 第二次世界大戦後も平和を謳う世界の局所では覇権を求めて大国間の代理戦争が起こっていた。

 この中東の出来事も当初は数年で収束する小競り合いの類と思われていた。

 しかし、誰もが想像しなかったこと。大国自らの参戦が起こる。


 後は想像に難くないだろう。 

 ギリギリで支えられて来た均衡が崩れ、ひたすらに泥沼へと向かった。

 大国が背後で支援をする局地的な代理戦争は大国同士の直接戦争へと、戦場は新型兵器の実験場へと移り変わるのに然程の時間は掛からなかった。


 とりわけ、多く投入されたのが無人兵器、ドローンであった。

 制空権、地上への支援を目的とした飛行型。

 海上での輸送の妨害を目的とした潜航型。

 そして地上制圧を目的とした多脚や戦車型。

 戦場は様々な兵器をより先鋭化させ、それらを制御するAIもまた急速な進化を遂げた。

 そして、それは必然だったのかも知れない。


 人と同じ思考を行うAIを搭載したアンドロイド、メンタルモデル、通称《MⅡ(エムツー)》と凡用戦術機《AF(アーマーフレーム)》の誕生であった。






「と、まぁ、触りはこんな感じかしらね?」


「荒廃していく世界が舞台で、私達はその《MⅡ(エムツー)》という設定なんですね?」


「そ・ゆ・こ・と〜‼︎ 呑み込みが早くて()()()()感激〜‼︎」


 私の受け答えに目の前の()()が身体をくねらせる。


 高身長のうえに何か格闘技でもやっていたかのような引き締まった体がはだけた胸元から見える。

 丸く刈り上げ、剃り込みの入った短髪にモデルのような顔立ち。

 毎日、恋話に尽きないクラスメイトも悲鳴を上げそうなタイプだろう。

 ただ、その着込んだ衣装や装飾品、髪色に至るまでピンクや紫などド派手にキラキラしている。

 どこか異国のお祭りの最中に抜け出してきたコメディアンのような風貌だが、彼にとっては普段着らしい。


 街中には様々な格好をしたプレイヤーが見られるが、彼ほど目立つ人はそうそう見付けられなかった。

 逆にすれ違う人達がこちらを一瞥してくる始末だ。

 奇々の視線から気を逸らすように目的地に着くまでの間、その原因たる人物との会話に集中した。






 「お・ま・た・せ〜♪」


 「五分十七秒の遅刻です。時間厳守ですよ、真壁(ねぇ)さん。」


 「んも〜。委員長、そんなに真面目過ぎるとおデコが広がるわよ?」


 「広がりません‼︎あなたが不真面目過ぎるだけです‼︎」


 待ち合わせ場所で会ったのは同年代くらいの少女だった。

 委員長と呼ばれた彼女は真壁姉と言われた彼の言ったように前髪をおデコ分けに、後ろ髪は二つの三つ編みに纏めていた。

 真壁姉とは異なり落ち着いた服装。

 唯一目立つのは瓶の底のような大きな眼鏡であった。




 「委員長〜。それより他のメンバーは〜?」


 委員長と呼ばれた彼女は大きな溜息を吐き、心底呆れているように話し出した。



 「SOLさんは以前から予定されていた新婚旅行で欠席です。今頃は奥さんとパリです。」


 「そうだったわね‼︎きゃ〜‼︎熱々で羨ましいわぁ〜‼︎リア充爆発しろぉ〜‼︎」


 「もえさんはコスプレイベントへの参加で来られません。これも以前から話していましたよね?」


 「さすがは売れっ子コスプレイヤーねぇ。衣装は全部自作だし。今度、裁縫教えて貰おうかしら?」


 「猫撫でさんは急なバイトのシフトが入って来られないとブラック上司への恨み節を吐いてました。『どうして無能な上司しか日本にはいないんだ‼︎』だそうです。」


 「目に見えるようね。そんなに嫌なら辞めればいいのに…。なんならうちのお店で働かせてあげようかしら?うふっ♪」


 「心底嫌がる顔も想像に難くありませんね。」と、委員長は続ける。



 「最後に(やしろ)PS6(プレイステージ6)を起動させたら煙が出たそうで、直り次第来るそうです。」


 「?なんで?あの子はなんで機械触れる度に異常を起こせるの?この前ガラケーも壊してたわよね?」


 「そこが社の魅力の一つです。」


 「あんたもあんたでおかしいわよ‼︎恋は盲目じゃダメなのよ‼︎」



 いつもこのような調子なのだろうか。

 それから幾通りかのコントのような流れが終わるとようやく私に話が回ってきた。



 「この人がギルド入隊希望者ですか?」


 「そうよ。素材がいいから衣装選びで迷っちゃったわぁ♡」


 「なるほど、それが遅刻の原因ですか…。」



 実際、待ち合わせに遅刻したのは真壁姉と言われた彼による所が大きい。

 初めてのゲームということもあり、不慣れな私はキャラクター作成の際にVRディスプレイの顔認証による自動生成というものを知らずに行ってしまった。

 出来上がったキャラクターは鏡を覗いたような現実の私そのものだった。

 そのキャラを見た彼に「初期衣装じゃ勿体ないわ‼︎」と連れ回されたのである。

 そうして彼はコーディネートされた私の背を押し満足気に一歩前へと持ち出した。



 「初めまして、立花 勇気の姉、立花 (あやめ)です。」

気ままに殴り書き走り書きなのでミス等多いと思いますがお手柔らかにお願いします。

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