コント:タイムスリップ芸人
――ボケのナレーション「俺の名前は小田海心。名前の通りどこにでもいるような何の変哲もない男だ。けど笑いに賭ける情熱は誰にも負けないぜ! そんな芸人志望の俺だが、ひょんなことか25年も前にタイムスリップしてしまった!!! いったいどうなるんだ俺様ちゃん!」
ボケ「……なんて言ってたのも今は昔、この時代にコンビを組んで、未来の漫才知識がある俺が、天下取ってやるぜ! まさに一昔前に流行ったチートだな。ま、相方は未だに信じてないけどな」
ツッコミ「1人でぶつぶつ言ってるけど、ネタ合わせ始めるぞ」
ボケ「ああ分かった、それじゃあやろう」
ツッコミ「じゃあ行くぞ、はいどーもー」
ボケ「どーもー。丸三角漆黒の翼!」
ツッコミ「・・・・・・」
――うんざりするツッコミ
ツッコミ「前々から思ってたけど、そのネタ絶対受けないと思うんだけど……」
ボケ「いや大丈夫! あと8年後に中二世代を直撃して爆笑ネタになるから!」
ツッコミ「全然そうは思えないけど……。じゃ続きやるぞ。最近暑いですねえ」
ボケ「え、2039年に比べたら全然涼しいけど……」
ツッコミ「そんなん分かるかい!」
――ツッコむツッコミ
――しかし不思議そうな顔をするボケ
ボケ「え、今なんでツッコまれたの?」
ツッコミ「いや、お前の言ったことどう考えてもネタだろ。ようやく真面目にネタ作ってくれて安心したわ。もっと掘り下げるか?」
ボケ「……いや、いい。続きやろう」
ツッコミ「じゃあ――。こんなに暑かったらもう身体溶けてしまいますね」
ボケ「スライム!」
――そう言って突然床にうつぶせで身体を広げるボケ
ツッコミ「……まあ相方も暑さで頭おかしくなってますが」
ボケ「いや、今のは2031年に大ブレイクした、ひょっとこ兄弟の一発ネタだぞ。これ見た総理大臣も爆笑したし」
ツッコミ「笑いのツボが緩い総理大臣だな」
ボケ「でもマツコグランド先生はぴくりともしなかったんだよな」
ツッコミ「誰だよ!? なんか名前の響きからマツコデラックスさんのことだとは思うけどさ!」
ボケ「未来になったらあの人はもう政治家辞めて、改名して塾の教師になってるんだよね」
ツッコミ「そもそも現在バリバリの芸能人だよ! まったくお前が言う未来わけわからないわ。とりあえず、先行くぞ。でも僕、この温暖化を一掃出来るアイディアを考えたんですよ」
ボケ「それ特許大丈夫?」
ツッコミ「いや、別にそこまで心配することないでしょ」
ボケ「何言ってんだ!? 今のは2029年にヒットする、ネクストガールズの「それ特許大丈夫?」だぞ! ここは「特許庁か!」で返すのが当たり前だろう!」
ツッコミ「そんなもの知るか!」
――ツッコミがツッコむ
ツッコミ「しかし、お前が流行るって言ってる未来のネタは、全くセンスが感じられないな。未来から来たなら、そんなものより競馬の結果でも教えてくれよ」
ボケ「悪い、俺お笑い意外興味が無いんだ。お笑い1本で生きていくって、小学生の頃から決めたからな。テレビも観たことないし、知識は全部ネットのお笑いからだ」
ツッコミ「偏ってるな……。でもせめてオリンピックとかは誰が勝ったか知ってるだろ? イギリスのブックメーカーとかでも儲けられるみたいだしな」
ボケ「オリンピックか……。俺が知ってるのは、オリンピックの時に流行ったネタが「ジョンソン!」っていう一発ネタぐらいだな……」
ツッコミ「どんな競技だ!?」
――ボケ、無言でシェーのポーズを取る
ボケ「これ」
ツッコミ「ねえよそんな競技! しかもイヤミのシェーのパクリじゃねーか!」
ボケ「そ、そうだったのか……。どうりで年寄りからの受けが悪かったはずだ」
ツッコミ「お前のセンスだと、年寄りだろうが子供だろうが誰にも受けないだろうな」
ボケ「なんてこと!?」
――ボケ、万歳のポーズを取る
ツッコミ「それはいつ流行ったんだ?」
ボケ「いや、これは俺の持ちネタ」
ツッコミ「やっぱりお前、未来以前にセンスがなさ過ぎるわ。もういいわ」
2人「どうもありがとうございました」
――2人でしばらく頭を下げたあと
ツッコミ「……で、この漫才が未来で流行ると?」
ボケ「ああ、2040年に戦闘機関車が流行らせたんだから間違いない」
――了――