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エッセイ

工業用水を砂漠国に売ればウハウハなんだって。スゴーイ!

作者: ロロサエ

何が凄いって、説得力皆無な妄想をドヤ顔で晒せる、その面の皮の厚さがスゴーイ!

と、攻撃的な文言になって申し訳ありません。

余りに馬鹿らしくてつい・・・


だって、石油タンカーのバラスト水に工業用水(下水処理水)を用い、砂漠国に持って行けばウハウハだと仰るんですから。

日本の水道を民営化する必要がなくなるんですって。

どうやったらそんな結論になるのか、全くもってスゴーイ!

では、その提言を考察してみましょう。

まず、日本が輸入している石油の量は1億9104万キロリットル(2016年)です。

(ソース①)

その内の87.2%を砂漠国である中東が占めています。

となると、中東からは1億9104万の87.2%で、1億6659万キロリットル輸入しています。


次に、石油タンカーは平均して35万キロリットルの石油を運ぶのだそうです。

(ソース②)

1億6659万キロリットルをタンカーの平均運搬量35万キロリットルで割ると、中東から日本に運んでいる船の便数が出ます。

476便です。

膨大な数ですね。

1年365日で割ると、1日あたり1.3隻となります。


さて、この船のバラスト水に工業用水を使い、中東に運ぶ事を考えてみましょう。

因みにバラスト水とは、船舶のバラスト(ballast:底荷、船底に積む重し)として用いられる水のこと。

貨物船が空荷で出港するとき、港の海水が積み込まれ、貨物を積載する港で船外へ排出される(Wikipediaより)だそうです。

そして石油タンカーのバラスト水は、積載量の概ね40%だそうです。

(ソース③)

35万の40%なので、14万キロリットルのバラスト水となります。

中東から来る便数はイコール中東に行く便数なので、14万キロリットルに476便を掛けると中東に運べるバラスト水の量が出ます。

つまり6664万キロリットルです。


これを売ってウハウハだそうです。

その前に、いくらで売るつもりでしょう?

向こうはいくらで買ってくれるのでしょう?

それを書いてないから妄想もいいとこだと言いたい。

机上の空論に過ぎないと。


机上の空論ついでに工業用水の料金を調べてみましょう。

工業用水は水道局が売っている商品ですから、中東に持って行くにしてもまずは買わないといけません。

愛知県の工業用水の料金は1立方メートル、つまり1000リットルで32円です。

(ソース④)

14万キロリットルのバラスト水の料金を計算するには、1時間あたりの契約水量の値が必要で、ちょっと計算出来ません・・・

とりあえずホームページの数字(1時間あたり13立方メートル)で計算すると、使用量に関わらず月に33万円です。

工業用水は詰まる所、蛇口から出る水の勢いで料金が決まり、使った量は計算しないようですね。

ただ、蛇口の開きを契約以上にすると超過料金が発生するようですが。


これだけ聞くと、1ヵ月33万円で工業用水を使い放題だと感じるかもしれません。

砂漠国に持って行けばウハウハじゃんと。

でも、甘いんだなぁー。

では、1時間あたり13立方メートルの水量で、14万キロリットルを積むにはどれだけ掛かるのか計算してみましょう。

14万キロリットルは140、000、000リットルなので、割る所の13立方メートル、13000リットルで、1万769時間となります。

24時間で計算すると448日となります。

バラスト水を積み込むだけで1年以上掛かるのですね。

航海は往復40日ですが、別の船が出港し、航海から帰って来てもまだバラスト水を積んでない状態です。

話にならない。


明和海運株式会社の船員のスケジュールは68日勤務で22日の休暇を繰り返す感じです。

(ソース⑤)

となると22日でバラスト水を積み込まないといけません。

1時間あたり13立方メートルの水量では到底間に合わないとなります。

22日で終えるには、14万キロリットルを22で割り、更に24で割った数字、1時間で265000リットル、265キロリットル出せる蛇口が必要となります。

そんな蛇口があるのですかね?

なければ絵に描いた餅ですよね。

その辺りはサッパリなので確かな事は言えませんが・・・

ただ、25メートルのプールは350キロリットルくらいなので、プールを1時間半くらいで満たす性能と言えます。

ちょっとあり得ないと思いませんか?

詳細をご存知の方はいらっしゃいませんかね?


因みに、タンカーはどうやってバラスト水を取り込んでいるのか?

(ソース⑥)

水面より下にある取水口から、直接海水を取り込んでいるようです。

簡単に言えば船体に穴を開け、ジャブジャブと水を入れている状態です。

そうじゃなければ間に合わないのでしょう。

外来種を拡散しているとして、バラスト水の処理装置の義務化が図られたみたいですが、処理装置が精々です。

工業用水を使う事は現実性が薄いと言わざるを得ません。


更に言いましょうか。

仮に14万キロリットルの淡水を運べたとして、それをどこに降ろすのか?

だって石油タンカーなんだから、当然石油の積出港に投錨する筈です。

石油の積み込みと同時にバラスト水を下ろさねば非効率です。

石油の積出港に貯水槽を作るのでしょうかね?

14万キロリットルの水を溜める施設?

25メートルプールで400杯分の貯水槽を石油の積出港に付帯させねばならないとか、どんな無理ゲーでしょう?

しかも、石油タンカーはひっきりなしに訪れる筈であり、1隻分だけあっても仕方ない。

どんだけ貯水槽を作ると言うのでしょう?


ここで仮に、6664万キロリットル全てを運べたとしましょう。

それがどのくらいの数字なのか?

愛知県の工業用水使用量は一日あたり144万立方メートル、つまり144万キロリットルです。

(ソース⑦)

6664万キロリットルとは、愛知県で使用する工業用水の僅か46日分に過ぎません。

たったそれだけの量でウハウハとなるには、一体いくらで売らないといけないのですかね?

因みに日本全国での水使用量は、取水量ベースで839億立方メートル、839億キロリットルだそうです。

(ソース⑧)

たった0.08%でしかない6664万キロリットルで、日本の水道事業の何を賄うつもりなのか?

ついでに言うと工業用水は121億キロリットルなので、0.5%と若干上がりますが。

まあ、これは石油タンカーだけの話なので、LNGタンカーなども含めると、運べる数字はもっと上がりますけどね。


とはいえ、分かって言っているんですかね?

ちょっと考えただけでこれだけ問題点が浮き上がるのに、目の前のモノで調べる事さえしないのでしょうか?

しないのでしょうね。

でなければあんな恥ずかしい事を、臆面もなく言える筈がありません。

処理水を輸出すれば日本はそれだけで蘇る、だなんて。


何度目かの因みにですが、日本における下水処理水の再利用状況です。

(ソース⑨)

下水処理水は139.3億キロリットルに対し、再利用率はたったの2億キロリットル、1.5%です。

工業用水の後ろに()で下水処理水とか書いてましたが、これも利用しようと言っているのでしょうか?

マジで?

いくら綺麗になっているとはいえ、自分達のウンコを処理した水を海外に持って行き、高値で売りつけようって?

マジで言ってんの?

違う、雨水だけだって?

知らんがな!


因みに、私個人はバラスト水に下水処理水を用い、水資源に困っている地域に運ぶ事には賛成です。

ただ、それは企業の社会貢献活動、環境保護活動の一環で行う範囲の事であり、お金は一切頂かないのが鉄則です。

それ以外は認めません。

第一、水で儲けたければペットボトルのミネラルウォーターを輸出すればそれで充分。

運んだ先でもそれが一番扱いやすいし。

なのに水だけ運んでどうする?

何も考えていない証拠。

行きの空のタンカーに何か売り物を積めないか?

石油を輸入するようになってこの方、その事を石油運搬会社の人が考えないとでも思ったのでしょうか?

そうしていないのは何故なのか、考えた事もないのでしょうか?

想像力が著しく欠如していると言わざるを得ません。


追記(2019年10月10日)

他サイトのURLを記載する事は宜しくないと注意を受けましたので削除しました。

ソースを知りたい方はその旨ご連絡下さい。

メッセージでお伝えしたいと思います。

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― 新着の感想 ―
[一言] うん。水を詰む部分に他の物積んだら確実に汚染されるから飲まないのでも無理だと思う。
[一言] 水のタンカーとなると、水の汚染が怖いから帰り道積む手段がね… 何でバラストかと言うと、タンカーって普通の船と違ってそれを積む専用に改造するから、石油タンカーなら石油を積み込む区画メインで、…
[気になる点] ウハウハかは別として日本豪州間では実証実験一歩手前の段階まで検討に入ってたみたいですね、採算も取れるかも?みたいな。 http://www.mlit.go.jp/common/0012…
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