迫真空手部
「ぬわああああああん疲れたもおおおおおおおん」
間抜けな声をあげる彼は田所浩二、別名野獣先輩。三人いる空手部の中で真ん中の立ち位置にいるホモである。
「チュカレタ…」
赤ちゃん言葉を放つ彼はМUR。この中では一番年上、つまり先輩だ。
空手部の部活終わり、三人はお風呂に入るため着ているジャージを脱いでいる最中である。
「МURきつかったっすねー今日は」
高い声で堂々と先輩を呼び捨てする野獣。
「あぁ今日はもう…すっげぇキツかったゾ~」
「ホントに…」
ようやく喋った二人の後輩であるKМRはいつも聞き取りずらい声量である。無論、二人にはほぼ聞こえていない。
そしてまるで二人だけで話しているかのような会話が再開する。
「何でこんなキツいんすかねぇ~も~…やめたくなりますよ~部っ活ぅ~」
「あーどうすっかなー俺もなー」
「МUR(脱ぐの)速いっすね…」
「シャツがもう…ビショビショだよ」
「あーもう待っててあげますよぉ」
急に話の内容が変わるなか、KМRは「ウフフッ」とわざとらしく笑う。
「風呂入ってさっぱりしましょうよ~」
「入ろうぜ二人とも」
野獣より脱ぐのが遅かったはずのМURがいつのまにか全裸になっており、その姿にKМRは驚いたが表情は表には出さず、「そうですね」と小さくつぶやいた。
野獣もその異変に気づき、「あ待ってくださいよぉ」と慌てて風呂場に向かおうとするМURのあとを追いかけた。
「おいKМR、早くしろ~」
待ちかねたМURが不機嫌そうに言う。
「早くしろよ~」
便乗する野獣。
そして三人は風呂場に向かいお互いの体をじっくり洗うのだった。
バン↑ババン!↑バン!!↓
建付けの悪いドアが強引に開かれる。
「あっつ~」
「ビール!ビール!」
「おい、冷えてるか~?」
МURが問う。
その言葉を聞いた野獣は「んぁ、大丈夫っすよ、バッチェ冷えてますよぉ」と自信満々に答える。
和室に移動した三人は満足そうに畳に座る。
「МURさん、夜中腹減んないすか?」
呼び捨てからさん付けに変わったことに気づいたМURだったが、そこは触れないことにした。
「腹減ったなぁ」
まだ夕方なのに既に腹をすかすМUR。
「ですよね?」
「この辺にぃ、美味いラーメン屋の屋台、来てるらしいっすよ」
頭を抱えながら「あっ…そっかぁ…」と答えるМUR。
「行きませんか?」
深刻そうな表情で答えるので野獣はつい言葉をにごらせてしまった。
「行きてーなー」
「行きましょうよ」
どちらも棒読みである。
「じゃけん(じゃあ今日)夜行きましょうね~」
「おっ、そうだな。あっそうだ。オイKМRァ!」
体育座りで読書していたKМRは突然呼ばれたのですごくビックリし、反射的に「えっ何」と言ってしまった。
「お前さっき俺らが着替えてる時、チラチラ見てただろ」
身に覚えのないことを追求され、困惑せざるを得なかった。
KМRは正直に、
「いや、見てないですよ」
と答える。
「嘘つけ絶対見てたゾ」
しつこく追求してくるМURに若干腹が立ち、
「何で見る必要なんかあるんですか」と正論をたたきつけてやった。
すると野獣が「あっお前さKМRさ、さっきヌッ、脱ぎ終わった時さ、なかなか(呼んでも)出てこなかったよな?」とM字開脚で告げる。
その姿はまるで大人になった劣化版鈴木福のようだった。
「そうだよ」
便乗するМUR。
二人の勢いにおされ、負けてないはずなのに負けた感じがし、「いやそんなこと…」と弱めに言ってしまう。
そんなKМRの様子を見たМURは勝ち誇った顔で立ち上がり、
「見たけりゃ見せてやるよ」とKМRの前で履いていた白色のパンツを脱ぐのだった。