グッバイ現世!
僕は、強さが欲しかった。ただ純粋に強さを求めた。これは僕が異世界を崩壊させる物語である。
はぁ……
すっかり暗くなった街にビルの明かりがいくつも浮かんで見える。暗闇に染まることを拒むかのような光の群れだった。ここは眠らない街、東京。
僕こと神城悠斗は友人である黒瀬双葉とともに宝石を散りばめたようなイルミネーションの下を歩いていた。
「こんな美女の前で溜め息?良い身分ね。」彼女は足を止め、少し怒り気味に言った。美女かどうかは知らないが可愛い分類には入るだろう。
「はいはい、ごめんごめん。」僕は適当に返事をし、また歩き出す。
今日、僕と双葉は先輩から大学のサークルで飲み会に誘われ、断れずにいやいや行ったのだが、やはり断っておけば良かったと今更ながら後悔しているところだ。
僕と双葉は同じアパートに住んでおり、入学時からなんでも言える仲だった。かといって恋人に至るような関係ではなかった。
街から少し外れ、朧な明かりが僕等を照らす。その明かりの奥深くに1人の男が立っていた。
僕等は特に意識もせず、その男の横を通り過ぎようとしたその刹那、いきなり殴りかかって来たのだ。
僕はその衝撃で地面に打ち付けられる。痛い。口の内側から血の味がする。早く逃げなくては……
「双葉!早く逃げるぞ!」僕は立ち上がり様に言った。しかし、双葉は動かなかった。呆然と立ち尽くしたままだった。
双葉を置いて逃げるわけにもいかない。戦うか……幸い柔道と空手のは経験あり、一通りの護身術は身につけている。
どうすれば勝てるか。僕は必死に頭の中でその答えを探した。凶器なし。体格は若干細め。先程の殴り方から考察するに柔道や空手の経験者ではない。などと分析した後相手の出方を伺う
相手はそのまま直進してきた。これならいけると思い、相手の攻撃を最低限の動作で躱す。そのまま相手の足を引っ掛け転ばせる。そして頭に強打を与える。相手は動かない。
終わったか。と思い、
「双葉!警察に連絡してくれ!」
双葉は
「わ、わかった!」
とたじろぎながらも携帯を動かした。
一件落着かと思ったその刹那、重厚な金属的な衝撃音が発せられた。そして双葉が倒れたのは同時だった。それが拳銃だと気付くまでしばらくかかった。
そして僕が押さえていたはずの男がいなくなっていると同時に頭に冷たく黒い銃口が自分の頭に当たっている事に気づいた。ああ俺の人生終わったな……グッバイ現世。そして漆黒の夜に2度目の金属音が鳴るまで時間がかからなかった。




