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 そしてまた、悪夢を見る。

 そこはどこまでも荒廃したビルが続く世界で、永遠とその先から届く赤い光で地面が赤く染まり、ビルは蜃気楼のように揺れながら泣いていた。

 人は一人も居ない。

 ただ一人、その世界に取り残されて地球の終わりを見届けさせられている気分だ。

 虎の穴には節穴が、まだまだ巻けと騒ぎ立て、ぺんしゃらろんぺんだった、と音を上げながら、まだかまだかとパンツの行進。もうダメだと呻き上げ、しんしんと積もる火山灰。曼陀羅の悟りが鉱山をひりださせ、メダカが干からび目玉をひんむき、はらろれぱいられろ、と。

 朝が来た。

 目覚ましを掛けていなかったし、生活音がしない部屋なのにスッキリと起きることができた。

 胸の痛みは和らぎ、生活することに支障がでるような痛みはなくなっている。

 その事が喜ばしいかと言われればどうとも言えぬもどかしい気持ちになり、何とも説明が出来ないが、ゆっくりと気を付けながら起き上がれるくらい動ける事は非常に喜ばしい事だ。

 そういえば、昨日は激しくベッドに身を打ちつけたが、大丈夫だったろうか。

 服の上から胸を弄ってみるが、形状が戻らないという事はなく、湿りもないことから傷が開いていないということは確かだ。

 しかし、豊胸手術だと決めつけている胸だが、本当に生理食塩水のパックを詰めているか、蓋しその通りだ、と言える根拠などなく、自分の脂肪を胸に詰めたり、異物を注入するのを聞いたことがある。

 もしやこの状況は夢で、本当の自分が別にいたり、拷問によって誤った記憶を刷り込まれていたりするのではないか。

 考えは堂々巡りで、考えたことのほとんどは結論に至らなかった。

 そしてまた、夜になった。

 今回は、波のようにうねる機械の見る夢の中を漂うかのような空間に佇んでいる悪夢だ。

 目のような黒い斑点、動物の姿を真似たような柄、不安と狂気を孕んだ不規則な流れ。

 強く目をつぶった時に出る万華鏡のような光景にも似ているが、この悪夢のような空間はそれよりも暗い。

 淀んでいる。

 らりるれば、ばらんたらと、夜が明けずに月が半回転したらバンバンバン、それっと一回転すれば何とかかんとかするべきらんでぶら。

 夕べの土産は猫の灰、頭蓋骨にゃストロー刺してのんべぇ。

 左右対称のディクショナリー。

 まだらのらの字はパラサイト。

 そしてまた、朝が来た。

 昨日と今日で全く違う夢を見た気がするが、夢というものは儚げで朧気なところがあり、忘れやすくなっているようだ。

 だが、そんなことは昔っからの事だから、手術前の事とは比較する必要もない。

 その時、火災報知器が作動した時のようなベルの音が外から聞こえてきた。

 まるでどこかで起きる瞬間を見守っていたかのような偶然で、だ。

 まだ3日目。

 起きてまだ3日目で、現状が理解できていない間に起こる変化には当然、ついていく事は困難であり、どのような醜い姿なのか未だ確認出来ていない事は、人を一番苦しめるにちがいない。

 そう確信させた。

 とにかく、外出するために服装を変えなければならない。

 同じ格好で何日も過ごしていたのだから、臭いや印象がサイアクなのは確かなのだ。

 辺りを見渡し、その目当てであるクローゼットを探してみたが、どうやらないみたいだ。

 なぜ、六畳程度しかないと予想されるこの場所に、ハンガーラックなどを置かなければ服を整理できないようにしてあるのか、ますます謎が深まるばかりである。

 仕方なく、パジャマのような格好で出てみる事にした。

 ベッドに長いこと居たものだから立っているのが辛いが、壁を伝い歩き、まじまじと見ていなかった部屋のドアの前に立ち、引き戸になっているアルミ製のドアに寄りかかりながら横に動かし、嫌な音を立てて止まった。

 どうやらレールから外れてしまったらしい。

 とりあえず外に出られる事が解っただけでも儲け物だが、さらにここから外に出て、人を殴ったり、刺したり、殺したりする事よりも恐ろしい、"冒険"という危険に立ち向かうのだから、これで感動していてはおしまいである。

 外界の様を眺めてみた。

 そこは、場所を特定できるような物が全く見当たらない、どこかの森の奥らしい場所だった。

 遠くから射す日の光が森の暗闇を吹き飛ばすような色彩に神々しさがあり、霧が立ち込めているため余計に神秘的である。

 しかし、逆にいえばそれは恐怖でもある。

 朝だとはいえ、森の中はとても暗く、その先に何があるか分からない恐怖というものが潜んでいるからなのだ。

 少しだけ外に足を出してみる事にした。

 足元には鬱蒼と繁っていたであろう雑草が、建物らしい何かに押し潰された事で寝ており、大自然の絨毯のように、まるでこうして出て来る者を出迎えるように敷かれていた。

 振り向く。

 そこには特別に造られた巨大なコンテナがあり、いわゆるコンテナハウスに入れられたらしい。

 外壁にあたる側面は森に馴染むよう薄い緑で塗られ、迷彩色に施されている事がわかる。

 全く、上の考えている事は理解ができない。

 憤りを感じ頭に血が昇ったが、それと同じタイミングで視界が反転し、踵を返して森を抜け出そうと考えていたため、そのまま体勢を崩して地面にうつ伏せで寝転がる形を取った。

 そこで目で見えている映像が途切れて見えなくなった。

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