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閑話 少年の輝き

芽生え


「お疲れ様、セリュー」

「姉さん、それにローリエ嬢もご一緒でしたか」


休憩に入ったセリューに声をかけたのは丁度ローリエに会いにきていたセレナだった。後ろにはローリエの姿もあるが、何やら複雑そうな表情をしていた。


「ローリエ嬢、どうかなさいましたか?」

「・・・なんでもありません。お父様に会ってきます」


そう言ってからカリスに走っていく、ローリエを不思議そうな表情でセリューが見ていると、セレナはくすりと笑いながら言った。


「嫉妬してるのよ、あなたがフォール公爵を独り占めしたことに」

「嫉妬ですか?」

「ええ、ついさっきからここで見てたけど、あなたと楽しそうに打ち合うフォール公爵の姿に疎外感を感じたのでしょう。女の私達ではできないコミュニケーションだから」


その言葉を聞きながらチラリと見ればカリスと楽しそうに話すローリエの姿があった。そんな彼女の横顔に不思議な感覚を抱いていると、セレナが笑いながら言った。


「意外ね、打ちのめされてへこたれると思ったら、ローリエさんの横顔に見惚れるなんて」

「な、見惚れ・・・そんなことないですよ」

「あら?そうなの?」

「それに僕がへこむことはありません。憧れのフォール公爵に近づく機会ができたのですから」


何度木刀を振っても絶対に倒せない存在。それほどまでに圧倒的な差だったが、セリューはまったく気にしていなかった。むしろそれほどの距離を感じれただけでも今日は収穫があった。


「姉さん、やっぱりフォール公爵は凄いです」

「知ってるわよ。あなた稽古の最中笑ってたの気づいてる?」

「誰がですか?」

「あなたに決まってるでしょ、セリュー」

「笑ってましたか、僕?」


記憶にないのでそう聞くとセレナは笑って言った。


「ええ、物凄く笑顔で楽しそうにしてたわ。前なら剣術なんて嫌な顔してたのに」

「そうですか・・・多分フォール公爵の格好良さに憧れたからですかね」


剣術を楽しいと感じるようになったのはカリスの剣を見てからだ。少しでも彼に近づきたいと思い頑張るようになった。それを少しでもカリスにぶつけられたのがセリューにとってはとても楽しかったのだ。


そんな弟の様子にセレナは苦笑しながら言った。


「弟がきちんと男の子してて、お姉ちゃん安心したわ。これからも時々様子を見に来るから頑張りなさい」

「はい、ありがとうございます姉さん」

「まあ、可愛い弟のためだからね」


そんな会話をしながらも、セリューは時折ローリエの方を見ては目線を反らしてしまう。あまりにもカリスと楽しそうに話すローリエの横顔がどこか輝いていて眩しくて、何故か照れ臭くなったからだ。それが小さな想いの始まりと知るのは後になってから、それに気づいたのは彼の姉だけだったのだろう。






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