37 日常への帰還
本日2話目。
まずは軽いものから・・・娘ターンかな?
「はぁ・・・やってしまった・・・」
帰りの馬車の中・・・俺は自分のやったことに頭を抱えていた。
理由はもちろん先ほどのビクテール侯爵の子供・・・いや、正確には養子であり、乙女ゲームの攻略対象のキャラクターであるマスクを結果的に助けてしまったことだ。
いや、助けてしまったことに後悔はないよ。
ローリエみたいな境遇の子供を放置はできないし、俺が引き取らなかったから、マスクがあんな劣悪な環境に行ったことは明白だから、そこに関しては特に何も思わないけど・・・
「よりによって自分から攻略対象に接触することになるとは・・・」
結果的に剣術の指導をしていた男は解雇。俺が引き継ぐことになったが・・・冷静になってみると、自分からローリエのマイナス要因になりかねない存在に接触するなんて愚行に頭を抱えずにはいられなかった。
何故だ・・・?俺はローリエに付きそうな悪い虫の見極めのためにあの家に行っただけなのになんでこんなことに・・・
「それに週一とはいえ自分から仕事を増やすなんてな・・・」
ただでさえ忙しいのに自分からスケジュールをさらにキツくするような真似をしたことを心底反省。
「まあ、でも・・・」
そこで思い出すのは帰り際のマスクの表情。純粋にこちらに尊敬の眼差しを向けてくる子供の様子を思い出すと、まあ、むしろ俺があの子の性格を真っ当にしてローリエの害にならないようにすればいいかと思う。
うん。前向きに行かなきゃな。
「おとうさま!」
屋敷に帰るとローリエが出迎えてくれた。
無邪気にこちらに抱っこを要求してくるローリエに俺は先ほどまでの一連の出来事を忘れて思わず緩みそうになる表情をなんとか抑えて優しくローリエを抱き上げた。
「ただいまローリエ」
「おかえりなさいおとうさま!」
ニコニコ顔でそう言ってくる我が家のエンジェル・・・うん!やっぱり家の娘が可愛すぎる!
まあ、もちろんそんなことは口にはせず、表情もあくまで穏やかに抑えて俺はローリエに聞いた。
「ずいぶんタイミングがよかったけど・・・もしかして待っていてくれたのかな?」
「はい!おとうさまにはやくあいたくて・・・だめだった?」
ごふ!吐血しそうになるくらいに強烈な一撃が俺に突き刺さる。先ほどの剣での対決ではかすり傷ひとつつかなかったのに、幼い我が愛しの娘の言葉にこれほどまでにやられるとは・・・やっぱりローリエとサーシャは俺を萌え殺す術を自然体で身につけておいでか!
まあ、ローリエは娘だから理性的にはセーフなんだけど・・・サーシャの場合はもし妊娠中じゃなければ簡単にオオカミさんに変身して、ローリエの弟、妹の量産に入ってしまうことは必然だろう。
「さて・・・とりあえず私はサーシャに帰還の報告をするから行くが・・・ローリエはどうする?」
「おとうさまといっしょがいいです!」
「そうか・・・じゃあ、このまま抱っこしていくけどいいかな?」
「はい!」
満開の笑顔・・・あぁ・・・この笑顔を見れただけでも今日一日の疲れが無駄じゃなかったと思えるよ・・・
そんな風に可愛すぎる娘を抱っこしながら俺は愛する妻がいるであろう部屋へと向かったのだった。
やはり俺のオアシスは娘と嫁だけだな!




