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33 酒の肴に

甘さが欲しい方はしばしお待ちを・・・少しだけストーリーを進める予定です(^_^;)



失敗した・・・まさにその表現がふさわしい状況に現在俺は追いやられている。


「だからぁ・・・聞いてるのかぁカリスぅ・・・私はなあ・・・」

「はいはい。父上。ちゃんと聞いてますよ」


目の前にはいつもの毅然とした父上や驚いたような表情の父上とは別種の存在にしか見えないほどに出来上がってしまっている父上の姿が・・・うん、まだほんの数杯しか飲んでないのにかなり酒に酔っていた。どうやらかなり酒に弱いらしい父上。最初は気のせいかと思ったんだけど、気がつけば酔っぱらい特有の面倒くさいテンションになっていたので俺は父上と酒を飲んだことを早々に後悔していた。


「お前のことを相談するたびにリシャーナに慰められる日々・・・うぅ・・・ローリエが産まれた時には私は本当に涙がでそうになったぞ」

「そうですか」


この脈絡もない話は何度目だろうか・・・酔っているから話が支離滅裂だが、要約するといつも俺のことを母上に相談すると強制的に甘い展開になり、色んな意味で大変だったということ、あとは・・・まあ、孫であるローリエが産まれた時にはそれはそれは表情では毅然としていたが、内心ではかなり涙ものだったということに要約されていた。


特に母上との甘い話をするときの父上はどこか遠くを見つめるような哀愁に満ちた表情を浮かべており、少し可哀想になったが・・・まあ、嫁から愛されることはいいことなので深くは言うまい。


俺もいっそのことサーシャから嫌になるほどに愛されてみたいものだ・・・もちろん今でもかなり愛されているとは思うが、どうやら俺の愛情が重すぎるせいかサーシャからの好意が霞んで見えてしまうのが自分でも手に取るようにわかる。

多分他者からみたら俺はかなり重い男でサーシャは犠牲者に見えるのだろうが・・・まあ、でもサーシャもわりと依存心が強い傾向にあるので丁度いいのだろう。


「うぅ・・・頭痛い・・・」

「大丈夫ですか父上?」


そんな風に考えていたらいつの間にやら父上の酔いが軽くさめたのかダルそうにしている父上。うん、いるよねたまに。すぐに酔うけど酔いからさめるのも早い人。そんなことを思いつつ俺は水を差し出して言った。


「父上はあまりお酒は強くないのですね」

「・・・これでも昔はそこそこ飲めたのだがな。ありがとう」

「いえいえ」


俺の差し出した水を飲んで一息つく父上。しばらくして父上はグラスを眺めながらポツリと呟いた。


「ローリエが産まれてからもう3年も経つのか・・・」

「そうなりますね」

「先程あの子と二人で話せた時に驚いたよ。あの年であそこまで知的なことにもそうだが、何よりも幸せそうな表情を見てな・・・」

「幸せそうですか?」


知的なところは確かに俺もかなり驚いてはいる。確かにリアルに子供の成長を見れる親からしてもローリエは年齢の割にはかなり頭の回転が早いことは色んなことからわかっている。女の子というのは男の子よりも遥かに早く成長するものだが、きっとあの子の場合は産まれてきた環境のせいで賢くならざる得なかったのだろうと思うと少し心が痛むが・・・それはこれから変えていけるのでそこは放置してもう片方の言葉に首を傾げた。


「ああ。あの子がお前のことを語る姿が凄く嬉しそうに見えてな・・・あんなに幸せそうな表情を孫がすることに私は嬉しくなったよ」

「そうですか・・・」


二人きりの時にローリエが父上にどんな話をしたのかは不明だが、嬉しそうに俺のことを話す姿というのは想像するだけでもかなり萌えるものがある。やべぇ・・・想像だけでも娘が可愛すぎる!


「あれなら将来は王族に嫁いで王妃だってこなせるだろ・・・か、カリス?」


父上の言葉が途中で疑問に変わったのはきっと俺の表情を見たからだろう。酒のせいもあるが、この場には父上しかいないので、ローリエが嫁ぐと聞いて俺の顔は般若のようになってしまっていた。


「父上。まさかとは思いますが父上にローリエ宛てに縁談が来ていてそれを受けた・・・なんてことありませんよね?」

「も、もちろんだ。似たような話がなくもないが・・・」

「あるのですか?」

「そ、それは・・・」


きっと俺は今、前のカリスさんでも向けたことがないくらいに刺々しい視線を父上に向けているのだろう。親孝行の飲みのつもりが父上のうっかりの一言で尋問に切り替わって父上は大層顔を青くしていたが・・・やがてポツリと答えた。


「その・・・懇意にしているマテール公爵家と、ビクテール侯爵家・・・あとは、他国の知り合いの貴族にも少なからず似たような話をされたことはある。も、もちろん話だけだ!正式なものではないし、どの家もローリエと釣り合う年齢の子供は少ないから基本的には問題ないが・・・」


そこで言葉を濁してから父上は言った。


「ビクテール侯爵家・・・あそこの家は少し本気かもしれない」





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