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20 無意識なフラグクラッシュ

糖分が足りない・・・次回はあるはず(多分)



弱々しく挨拶をしてから、赤毛の少年・・・レベンはグリーズ子爵の足の後ろに再び隠れてしまった。そんなレベンにグリーズ子爵はため息をついて言った。


「こらレベン。挨拶は大きい声でしなさいと何度も言っているでしょうに」

「ち、父上・・・でも・・・」

「でもじゃない!お前は我がグリーズ子爵家の長男で、いずれは騎士団の一員としてこの国を守護することになるのだ。もっとしっかりしないと」


・・・これは、また、組み合わせの悪い親子だな。見るからに弱気な息子に、スパルタなのが想像できる父親・・・まあ、他の家庭の事情だからあまり首を突っ込むべきではないかもしれないが・・・俺は叱られているレベンを見て、なんとなく我が子を見ているような気持ちになって思わず言っていた。


「失礼・・・他人から口を挟むことではありませんが・・・グリーズ子爵。あまり息子さんを怯えさせてはいけませんよ?」

「む?ですが、息子はこの通り軟弱なのです。我がグリーズ子爵家の息子ならもっと堂々としていないと・・・」


うーん・・・まあ、他人の家の教育にあれこれ言いたくはないけど・・・


「息子さんが気弱だとしても、無理に強要してはいけません。人には個性があります。確かにあなたのように厳しい教育も時には必要でしょうが・・・はじめから息子さんを否定してはいけません。息子さんは貴方ではないのです。息子さんはこの世でただ一人の息子さん・・・だから、もっと息子さんと話をすることをオススメします」

「話ですか・・・?」

「ええ。息子さんと目をあわせて、本音を聞いてあげる・・・きっと、それでお互いに納得のいく答えにたどり着けますよ」


そう言ってから困惑するグリーズ子爵から視線を後ろで怯えているレベンにあわせて俺は優しく言った。


「えっと・・・レベン君だね?私はカリス・フォール。フォール公爵家の長だ」

「は、はぃ・・・」


びくびくと小鹿のように震えるレベン。きっと怒鳴られると思っているのか、目をぎゅっと瞑るその子の頭を俺は優しく撫でてから言った。


「えっ・・・?」

「初対面の人間に緊張するのは仕方ない。だけど、君は立派な父親がいるのだ。もっと堂々としていいんだよ」

「で、でも・・・僕、父上みたいに剣の才能なくて・・・」

「君の年で才能の話をするのは早いよ。それに・・・ないなら作ればいいんだよ」

「つく・・・る・・・?」


びくびくと怯えながらも不思議そうに首を傾げるレベンに俺は笑顔で言った。


「君はお父上のことが好きかい?」

「えっと・・・はい・・・」

「じゃあ、お父上に憧れているかい?」

「・・・・はい。僕もいつかは父上みたいな・・・立派な騎士になりたい・・・です・・・」


そのレベンのか細いがはっきりとした答えにグリーズ子爵はどこか驚いた表情を浮かべていたが・・・俺はそれに構わずに言った。


「なら、君は君なりのやり方でお父上以上の騎士を目指せばいい」

「僕なりのやり方・・・」

「それが何かは君がこれから何を見て、体験するかによって変わってくるだろうが・・・どんな方法でも、君が憧れて尊敬する父上に近づけるなら精一杯頑張ることだ。君のお父上が君に厳しいことを言うのも君を期待しているからだ」

「期待・・・」

「重く捉える必要はない。ただ・・・君はお父上に愛されて、望まれている。それを忘れないことだ」


そう言うとレベンは俺の言葉にしばらく悩んだ様子を見せてから・・・震えながらも確かな声で言った。


「僕・・・頑張ってみます。怖いけど・・・父上みたいな格好いい騎士になりたい・・・です・・・!」

「うん。頑張りなさい」


ポンポンと俺は軽く頭を撫でてからグリーズ子爵に視線を向けると・・・信じられないような表情を浮かべているグリーズ子爵に言った。


「横からでしゃばってスミマセン。でも、あなたの息子は気弱でも、心は強い・・・きっと、あなたの想像以上の騎士になりますよ」

「驚きました・・・息子がこんなことを口にするなんて・・・」


呆然としているグリーズ子爵。まあ、コミュニケーション不足の親子にありがちなことだけど、子供の考えていることは時に親の想像を越えるものだ。子供のことを何でもわかるのが親だろうが・・・同時に見えにくいのも親なのだろう。


「息子さんともっと沢山話すといいですよ。では、私は仕事がありますので」

「は、はい・・・」


唖然とするグリーズ子爵の横を通ってから俺は仕事に戻ろうとすると、「あ、あの・・・!」という控えな声が聞こえてきたので、振り替えるとーーーそこにはどこか決意の籠った表情を浮かべるレベンがいた。


「僕・・・父上みたいに格好いい騎士になります・・・!」

「うん、頑張りなさい」


ペコリと頭を下げたレベンに俺は微笑んでからその場を後にした。お節介かもしれないが・・・まあ、多少は問題ないだろう。



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