141 帰宅も襲撃
帰りも襲われるけど返り討ちにするカリスさん
「さてと、行きますか」
馬車での帰り道。行きと同じように襲撃があると思っていたら案の定その気配があったので馬車を止めて貰うとマベリス様が聞いてきた。
「行くってどこにだよ?」
「少しだけ用事を済ませてきます。皆さんは馬車にいてください」
「はぁ?なんだそれ?」
「いいから、大人しく待ちましょう」
「待つって言っても・・・いや、まさか敵襲とかか?」
驚いたことに自力でその答えにたどり着いたマベリス様。そこまで頭が悪くないようでほっとしながら俺は言った。
「どうにもお二人は狙われやすいみたいですからね」
「・・・やっぱりそうなのか。俺は力にはなれないのか?」
「ええ、セリュー様に負けるようでは話になりません」
「ちっ、足手まといかよ」
そう言いながらセリュー様に視線を向けるとマベリス様は聞いた。
「それで?今のを聞いてお前は行かないのか?」
「僕はフォール公爵に従います」
「はぁ?なんだよそれ。仮にも王子だろ?」
「だからこそ、僕はフォール公爵のことを信じて待ちます。足手まといになるのは嫌ですし、それに僕には守りたいものがありますから」
そう言いながらさりげなく隣に座るメフィの手を握るセリュー様。なんとも大胆だが、その行為にマベリス様は少しだけ眉を潜めてから言った。
「まさかな・・・いや、あり得ないが、お前はこいつの娘と婚約してるはずだろ。なのにそこの使用人はまさか・・・」
「マベリス様。深追いは禁物です。知らなくていいことも世の中には沢山ありますから」
そうして口止めをするが、まさか自力でそこにたどり着くとは思わず彼の認識を改める必要が出てきた。決して才能には恵まれてはいなさそうだが、それを補うように観察力に優れているようだ。これは、そこそこ大物になりそうだと思ってから俺はセリュー様に視線を向けると微笑んで言った。
「セリュー様。見事な判断です。だから油断せずにきちんと守ってあげてください」
「あ、ありがとうございます!はい、もちろんです!」
そうして嬉しそうにするセリュー様から視線をマベリス様に向けてから俺は言った。
「マベリス様。今はまだ弱いですがあなたも十分強くなる素質があります」
「それ、褒めてるのか?」
「もちろんです。だから腐らずにきちんと前を見てください。こんなところで細事に構うほどあなたは暇ではありませんよ」
そう言ってから俺は馬車を降りて賊を迎え撃つ。前回の二倍近い戦力だが、一人で余裕だろうと思ってそこからは文字通り蹂躙するのだった。




