140 帰りは増えた
増員して帰る
「お世話になりました」
「うむ、またいつでも来るといい」
帰りにわざわざ国王陛下が見送りに来てくれるとは思わなかったが最後まで大人の対応をする。
「では、マベリスをよろしく頼む」
「ええ、わかりました」
もっともこれがあるからこそ見送りに来たのだろう。マベリス様のうちの国での拠点をあれからすぐに準備させたようで一緒に行くことになった。そのマベリス様は相変わらずセリュー様とは険悪なようで、密かに火花を散らしているが、それを見て国王陛下は少しだけ嬉しそうに言った。
「セリュー殿とは仲良くなれたようで何よりだ」
「ええ、そうですね」
これが仲良く見えるのなら大層大物だろう。そんなことを察したわけではなさそうだが、国王陛下は続けて言った。
「マベリスがああして同年代の友人を持てるとは思わなかったな」
「そうなのですか?」
「あれは、誰彼構わずに噛みつく野生の獣のようだったからな。まあ、私のせいだが」
「セリュー様もこうして喧嘩するほどの存在は近くにはあまりいないのでいいことだと思います」
強いて言えば、宰相の息子のマクベスとは一度戦っているが以後は実力差を感じてか噛みつくことはなくなった。しかし、マベリス様は一度ボロクソに打ち負かされているのに、それを糧にしてセリュー様をライバル視しているのでそこは素直に感心する。
セリュー様の才能はおそらく圧倒的だ。同世代の中では抜きん出ている。騎士団長の息子のレベンの成長速度もかなりのものだが、それでも最強はセリュー様だろう。
誰もが遠く感じているそれを抱きながらマベリス様はなお、セリュー様に追い付く・・・いや、越えようとしているのだ。マベリス様はそこまで才気溢れるようなことはないが、それでも天才に食らいつくそのタフさを買いたくなる。願わくばもう少し品が欲しいが、まあ、それは追々でいいだろう。
「マベリス。しっかりな」
「・・・はい。父上」
「セリュー殿、息子と仲良くして欲しい」
「・・・善処します」
そうして二人を見てからマベリス様の頭を撫でると父親らしい表情で言った。
「私もお前の母親のエリザもお前の帰りを待っている。フォール公爵から色々と学ぶといい」
「・・・はい!俺は絶対強くなります!」
「ああ、しっかりな」
思いの外いい父親をしているようで安心した。これからマベリス様は異国で寂しいはずだが、その表情はどこまでも明るかった。きちんと目標が定まったことで目先のことだけを見ることはなくなったようだ。
子供の成長にほっこりしながら俺達は国へ帰るのだった。




