14 王女様まで・・・
別作品なら主役を張りそうな王女様・・・スピンオフでも書こうかな?
城の反対側にある小さな庭園で子供と話してから俺はローリエがお茶会をしているであろう中庭の庭園を目指していた。天気もいい本日は外でやっているらしく、中庭にはセレナ王女が招いたとされる貴族の子女が何名かいた。
そんな中でも一際目立つ銀髪の美少女・・・もとい美幼女である家の愛娘のローリエを俺は真っ先にみつけることができた。ローリエも他の貴族の子女と軽く話していたようだが・・・俺の姿が近づくと気づいてこちらに駆けよってきてくれた。
「おとうさま!」
「おっと・・・」
勢いよく抱きついてきたローリエを優しく受け止めて俺はよしよしと撫でて言った。
「お茶会は終わったのかい?」
「はい!おとうさまおしごとは?」
「私も早く終わってね。それよりも・・・楽しかったかい?」
「はい!」
俺の質問に元気よく返事をするローリエ・・・うん、よかった。楽しめたなら何よりだ。そんな親子のやり取りをしていると、何やら近づいてくる気配がして、俺はそちらを見てから頭を下げた。
「セレナ様。本日は娘を招待していただきありがとうございます」
そこにいたのは今回ローリエを呼んだ本人である第2王女のセレナ様だった。セレナ様は俺がローリエを抱き締めているのを面白そうに見つめてから言った。
「ごきげんよう、フォール公爵・・・私こそ、本日はローリエさんと楽しい一時を過ごせましたわ」
・・・本当に5才児なのだろうかと疑うレベルの優雅さを持っているセレナ様に俺はなんとなく違和感を覚えつつも、それに安堵したように言った。
「そうでしたか・・・でしたら幸いです」
「あ、それと・・・フォール公爵が作ったというお菓子も大変美味しくいただきましたわ。あれは本当にフォール公爵がお作りになったのですか?」
「そうですが・・・どうかなさいましたか?」
そう聞くとセレナ様は何やら納得したように頷いてから笑顔で言った。
「お世辞ではなく本当に美味しかったので・・・もしよければまた頂かせていただいてもよろしいでしょうか?」
「はい。いつでも」
「では来週、フォール公爵家にお邪魔するので、その時にまた食べさせもらいたいですわ」
・・・社交辞令が社交辞令じゃなかった件について。なんて、ことを思いつつ俺はそれにノーとはいえずに苦笑気味に言った。
「お待ちしております」
「はい。では・・・ローリエさんもまた来週お会いしましょう」
「はい!ほんじつはありがとうございました。せれなさま」
丁寧に淑女の礼ができる娘に俺は微笑ましく見守っていると、セレナ様は思い出したようにこちらに近づいてくると、俺にだけ聞こえるような小声で言った。
「来週は詳しくお話を聞きたいのでお時間を下さい・・・フォール公爵。いえ・・・その記憶を持つ異世界人さん」
そう言ってから離れていくセレナ様・・・今の発言はなんだ?もしかしなくても俺の正体に気づいているのか?
「おとうさま。だいじょうぶ?」
俺が戸惑っていると、ローリエが心配そうにこちらに首を傾げていた。いかんいかん・・・娘に心配かけるなんて、父親失格だ。しゃっきりしよう!
「大丈夫だよ。ところでローリエ。セレナ様とは仲良くなれたかい?」
「はい!いろんなおはなしができました」
「そうか・・・ならよかったよ」
先ほどの言葉が気にはなるが・・・そんなことよりもローリエが楽しめたことの方が重要なので俺はその疑問を頭の片隅に置いてから笑顔で言った。
「来週我が家に来るらしいが・・・どんな話をしたんだい?」
「うん?えっと・・・おとうさまとおかあさまがなかよしなこととか、おかしのことをきかれました」
・・・そうか。ローリエ視点からの俺とサーシャの関係を聞いてはみたいが、少しだけ怖くもあるが・・・まあ、とにかくローリエはセレナ様と仲良くなれそうで良かったよ。
「なるほど・・・じゃあ、来週の訪問の時にはもう少し凝ったお菓子を作ってみるよ」
「ほんとに?やった!」
嬉しそうに微笑むローリエ・・・うん、セレナ様のことは気になるけど、この娘の笑みがみれるならよしとしよう。
そんなことを考えて俺とローリエは帰宅したのだった。




