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136 勝ちたい理由

焦る気持ち


「ちくしょう・・・!」


物凄く悔しそうに地面に座り込むマベリス殿下。セリュー様に負けたので、悔しそうに先程の発言を撤回させてから、セリュー様はご機嫌でメフィと共にイチャイチャしており、すでにマベリス殿下には全く興味がなさそうだった。


「なんで勝てない!くそ!くそ!」


何度も地面に八つ当たりする様子を見ながら俺はマベリス殿下に言っていた。


「そんな風に頑張っても意味はありませんよ」

「知ったような口をきくな!お前に俺の何が・・・」

「側妃の子供で、父親からも母親から期待されていなくて、それがショックで見返すために頑張ってる。そんなところでしょうか?」


推察を述べると唖然として黙り混むので多分正解だったのだろう。何かを焦るように自分を持ち上げるその態度になんとなくそうかと思っていたら当たっていたようだ。


「まあ、気持ちはわかりますが、今の貴方では誰も認めてはくれませんよ」

「・・・!なら、どうすればいいんだよ!わかってるんだよそんなことは!じゃあ、俺はどうやったら愛してもらえるんだよ!どうやったら兄上達を見返せるんだよ!」


きっ、とこちらを睨み付けてくるマベリス殿下。その視線を受けてから俺は視線を合わせるとそのまま頭をぽんぽんと撫でてから言った。


「マベリス殿下はとても根性がある。こうして誰かから愛されたいともがく姿は決して悪いものではないですよ。ただ、方法が間違っているんです」

「方法・・・?」

「ええ。こうして威張りちらして、辺りに噛みつくのは愚かな行いです。本当に人に愛されたいならまずは愛される自分になること。そして自分から人を愛することが大切です」


子供というのは親の愛情を幼いうちは特に求める傾向にある。それを理解してあげて接すればいいのだが、王族となるとそんな基準から崩れてしまう。より優秀な子供を、よりよき血を求めるのは支配者の常だが、こうして苦しむ子供がいるのもまた現実なのだ。


だからこそ俺はそういう子供に手を伸ばして言うことにする。


「貴方が求める愛情が今、違うと思うならそれをきちんと相手に伝えることです。それがダメなら、自分がその愛を誰かに向ければいいんです」

「誰かを愛する・・・」

「ええ、それが近道です。本当に心から好きになった相手をきちんと守り抜く。そして愛することは男にとって最高の栄光ですからね」


その俺の言葉に呆然としていたマベリス殿下はしばらくしてから涙を流して言った。


「俺も・・・誰かに愛して貰えるのかな?」

「ええ、約束しましょう。君はきっととびきりの美少女を愛して愛されることになるでしょう」


確証なんてないがそう断言する。この出会いがマベリス殿下にとってプラスなのかはわからないが、彼の人生が少しだけ動き始めたのはここからだろう。



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