132 鬼神の活躍
片付け
「これでよしっと」
一通り縛ってから近くに駐屯している騎士団に引き渡すために色々としていると、馬車からセリュー様達が出てきた。
「フォール公爵」
「おや、セリュー様。今終わったところですよ」
辺りにまとめて縛って転がしてある賊を見てからセリュー様は聞いてきた。
「この人達の狙いは僕なんでしょうか?」
「まあ、半分当たりですね。正確にはセリュー様と私の二人でしょう。純粋にセリュー様を狙う者と俺を失脚させるためにセリュー様を狙う二組がありましたから」
おそらくセリュー様を王太子から引き摺り下ろそうとする輩と俺を失脚させるつもりの奴らの思惑が交錯したのだろう。まあ、何にしてもこの程度では驚異にはなり得ないけどね。
「やっぱり僕が狙いだった・・・」
「あまり思い詰めないことです。そういう輩を排除して新しい国を作るのが貴方の目標でしょう?なら、そのことだけを考えるべきです」
「そう・・・ですね」
少しだけショックを受けつつもきちんと前を向けるメンタル。やはりこの子は国王としての才覚もきちんとあるようで何よりだ。
「それにしてもこれ・・・もしかしてフォール公爵は素手で倒したのですか?」
「おや?よくわかりましたね。ええ、この程度なら剣は必要ないですから」
「す、凄いですね・・・」
「剣術だけでは戦えませんからね。剣術はあくまで戦い方のひとつに過ぎません。問題なのはそれをどうやって行使するかです。それさえ守れれば誰にも負けることはあり得ません」
かなり極論になるが、相性というものはなんでも存在する。それらをうまく使い分けることが大切なのだ。まあ、時にはそこに当てはまらないものも多いけどね。
「では、さっさと引き渡してから向かいましょうか」
「いいんですか?」
「こいつらの雇い主は聞きました。予想通りなので問題はありません。これで強請るネタを一つ見つけたのですから」
相手の弱点が多いに越したことはないだろう。いずれ役にたつしね。それに相手の狙いの一つにはセリュー様が他国との交流を持って顔を売ることを防ぐことにもある。だからこそ早めに行くに越したことはないのだ。
「それよりも先程はよく思いとどまりました」
「・・・メフィのお陰です。彼女が側にいるから僕は間違っても道を戻せます」
「それは良かった。私の娘への想いを捨てたのですからそうでなくては困りますしね」
そう言いながら俺はセリュー様と馬車に戻る。この一件で二人の距離はさらに縮まったのだろう。それをきちんと守れるようになればなおいいだろう。そんな風にして俺達は向かうのだった。




